自分では見えにくく、ケアもしにくい背中のシミ。年齢とともに、夏のファッションを楽しめなくなったと悩む方も少なくないでしょう。背中のシミは放置していると濃くなる可能性があるだけでなく、思わぬ病気が隠れていることも。今回は背中のシミを消したいとお考えの方に向けて、シミができる原因や種類を解説するとともに、適切なケアや治療方法をご紹介します。
1.【原因別】背中のシミの種類をチェック
※画像はイメージです
まずは背中のシミの種類を、考えられる原因と一緒に解説します。ご自身の背中のシミがどのタイプに該当するかチェックしてみましょう。なお、見た目はシミのようでも、皮膚がんの「メラノーマ」や感染症の「癜風(でんぷう)」などの病気が隠れている場合があります。シミが気になるときは自己判断で放置せず、医療機関に相談することも検討しましょう。
■紫外線による「老人性色素斑」
背中にできやすいシミとして代表的な「老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)」。1cmほどの円形や楕円形のシミで、老人性と名がつきますが30~40代から現れるとされています。主な原因は、加齢や紫外線ダメージによる肌のターンオーバーの乱れ。ターンオーバーとは肌の細胞が生まれ変わるサイクルのことを指します。このサイクルが変化すると、シミのもととなるメラニンが必要以上に生成されたり、排出が遅れて蓄積したりし、シミとなって肌の表面に現れます。
■強い日焼けによる「光線性花弁状色素斑」
日焼けをしたあと、月日が経ってから花びらや金平糖のような輪郭のシミとなって現れる「光線性花弁状色素斑(こうせんせいかべんじょうしきそはん)」。強い日焼けによるメラニンの過剰生成が原因とされており、肩や上背部のような肌の露出が増える箇所にできやすいシミです。海水浴やプール、スポーツなどで紫外線を浴びる機会が多い方に見られ、20~30代の若い年齢層でも現れます。
■皮膚のダメージによる「炎症後色素沈着」
「炎症後色素沈着(えんしょうごしきそちんちゃく)」は、その名のとおりニキビや虫刺され、やけどといった皮膚の炎症後にできるシミです。炎症をきっかけにメラニンが急激に生成されることで現れ、炎症が起きた範囲や症状の重さによってシミの大きさは異なります。炎症後色素沈着は月日が経つごとに消える可能性もあるのが特徴。しかし加齢による肌のターンオーバーの乱れや、摩擦、繰り返される背中ニキビによって消えにくくなることもあります。
■摩擦による「摩擦黒皮症」
「摩擦黒皮症(まさつこくひしょう)」は、入浴時にナイロン製のボディタオルでゴシゴシ擦ることで引き起こされるシミです。摩擦によって炎症が起き、メラニンが過剰生成されてシミや黒ずみの原因に。ボディタオルの素材を肌にやさしいものに変えたり、強く擦らないように意識したりすると薄くなっていきますが、完全に消えるまで数年かかるケースもあります。
■加齢による「脂漏性角化症」
シミがイボ状になっている場合は、「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」かもしれません。脂漏性角化症は老人性色素斑が進行した状態とも言われています。皮膚はケラチノサイトと呼ばれる細胞によって構成されており、シミが肌に現れた部分にケラチノサイトが増殖することで盛り上がるのが原因。なお皮膚がんの一種メラノーマと見た目が酷似しているため、シミが隆起している場合は医師に診てもらうことをおすすめします。
2.背中のシミを消したいなら美容クリニックでの治療が効果的
背中のシミは自分でケアしにくいだけに、医療機関での治療がおすすめです。美容クリニック(美容皮膚科)でのシミ取り治療は、基本的に保険適用がされません。しかしそれぞれの肌状態を考慮した治療方法が提案されるため、より効果的にシミを消せるでしょう。ここでは実際に美容クリニックで行われている、シミ取り治療例をご紹介します。
■背中のシミ取り治療①レーザー治療
シミ取りといえばレーザー治療を思い浮かべる方も多いでしょう。レーザー治療は皮膚の奥にあるメラニンを破壊し、分解されたメラニン色素を肌のターンオーバーによって排出することでシミを取り除きます。レーザー治療では「ピコレーザー」や「Qスイッチレーザー」など、1秒よりもさらに短い単位でエネルギーを照射する機械が用いられ、肌へのダメージを抑えながら、シミの濃さや範囲に合わせた施術が可能です。
メラニンの蓄積が原因となる「老人性色素斑」や「光線性花弁状色素斑」に効果的とされており、料金の相場はシミの範囲によって変動します。
一方で、シミが盛り上がった状態の「脂漏性角化症」には隆起の度合いによって効果がなく、その場合はより確実に削れる「炭酸ガスレーザー」などが用いられます。
また、通常のレーザー治療は「炎症後色素沈着」や「摩擦黒皮症」には、余計なダメージを与えてしまうため逆効果に。そのようなシミには後述する「イオン導入」や、マイルドな刺激で徐々にメラニンを減らす「レーザートーニング」での治療が可能です。
■背中のシミ取り治療②イオン導入
「炎症後色素沈着」や「摩擦黒皮症」のように、炎症や摩擦による色素沈着が原因のシミには「イオン導入」が最適とされています。イオン導入とは、色素沈着の解消に有効とされるトラネキサム酸やビタミンC誘導体を、電気の力を利用して皮膚の真皮層まで浸透させる方法です。表皮からは吸収しにくい成分を皮膚の深部まで届けることで、効率的にシミやくすみを軽減できます。さらにシミだけでなく、保湿や肌のキメを整える相乗効果も期待できるでしょう。イオン導入はほかの種類のシミにも効果はありますが、シミの濃さや悩みの大きさによっては、古い角質を剥がしてターンオーバーを促す「ケミカルピーリング」や、上述したレーザー治療とも併用されることがあります。
■背中のシミ取り治療③医療用塗り薬
背中のシミ取り治療として、美容クリニックでは「ハイドロキノン」が含まれたクリームを処方するのが一般的です。ハイドロキノンはメラニンの生成を抑制させ、メラニンを生産する工場のメラノサイト自体を減少させる2つの効果を持っています。市販のシミ取りクリームや化粧水にも含まれていますが、クリニックで処方されるもののほうが高濃度となっており、よりシミの軽減にアプローチできます。
■背中のシミ取り治療④医療用飲み薬
背中のシミを取りたい場合、内服薬で肌の内側から治療していく選択肢もあります。美容クリニックでは下記のような成分の飲み薬を、いくつか組み合わせて処方される場合が多いです。
トラネキサム酸 | 炎症のもととなる「プラスミン」を抑え、メラニンが過剰に生成されるのを防ぐ |
L-システイン | 肌のターンオーバーを促し、メラニンの生成を抑える |
ビタミンC | メラニンの生成を抑える |
ビタミンE | ビタミンCをサポートし、肌のターンオーバーを促す |
市販の飲み薬にも「L-システイン」や「トラネキサム酸」のようなシミへの有効成分が含まれたものがありますが、塗り薬と同様に成分濃度が異なります。また、薬には副作用がつきものですが、美容クリニックで処方される飲み薬はそれぞれの肌や健康状態が考慮されており、気になることは医師に相談できる点が安心です。
3.背中のシミを自宅でケアする方法はある?
セルフケアでは背中のシミを完璧に消すことは困難ですが、シミを薄くしたり、肌表面に現れていないシミ予備軍の進行を抑えることは可能です。まずは「ハイドロキノン」が含まれたスキンケアアイテムや、「L-システイン」「トラネキサム酸」が配合された飲み薬を取り入れてみましょう。
また、紫外線や乾燥による肌へのダメージは、メラニンの過剰な生成を促します。日ごろから顔だけでなく背中もしっかり保湿することや、背中にも日焼け止めを塗って紫外線対策をすることが重要です。
加えて、お風呂では背中を強く擦らない、十分な睡眠時間を確保して肌のターンオーバーを整えるなど、生活習慣を改善することも背中のシミを進行させない大切なポイントです。
■まとめ
背中のシミは、主に5つの種類があります。背中にシミができる原因は加齢や外的刺激などさまざまですが、メラニンが過剰に生成されることが根底にあると言えるでしょう。できてしまった背中のシミを消したい場合、シミの種類に合った治療を行うことが背中美人への第一歩。機械を使った施術や処方薬に頼って、シミのない背中を取り戻しましょう。セルフケアも意識しつつ、ぜひ美容クリニックへ相談してみてくださいね。
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