肌悩みの改善にレチノール(ビタミンA)を使い始めたものの、「ニキビが増えたような」と症状の悪化を感じる方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、レチノールがどういう成分なのかを改めて説明したうえで、レチノールが原因でニキビが悪化する理由や、肌トラブルが起きたときの対処法を紹介します。レチノール製品の正しい使い方についても説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.レチノールとはどんな成分なの?
最近は、レチノール配合化粧品がいくつも販売されており、比較的身近に感じている方もいらっしゃるかもしれません。では、レチノールとはどんな成分なのでしょうか。まずは、レチノールの役割や効果をチェックしていきましょう。
■レチノールとは?
レチノールはビタミンAの一種で、ビタミン誘導体のことです。ビタミン誘導体とは、ビタミンの構造や性質を変えない程度の変更を加えた化合物を指します。
ビタミンAの仲間であるレチノールは、油に溶けやすい性質を持っており、体内の活性酸素の働きを抑制する役割があることから「抗酸化ビタミン」と呼ばれています。
また、ビタミンAは人間の体内では合成できない成分です。そのため食事によって摂取する必要があります。ビタミンAの具体的な作用は、皮膚や粘膜を健やかな状態に保ったり、抵抗力を高めたりすることです。
■レチノール配合製品でどんな効果が期待できる?
スキンケア製品や美容医療での治療でも用いられるレチノールによって、肌にはどのような効果が期待できるのでしょうか。主なものは以下のとおりです。
- ニキビ・ニキビ痕
- 毛穴つまり
- シミ
- シワ
レチノールには炎症を抑える働きがあるため、ニキビや毛穴のつまりをケアする際におすすめだといわれています。また、レチノール配合製品を使うことで、肌細胞を活性化してターンオーバーを促進し、シミの原因である蓄積したメラニン色素を排出しやすくする効果も期待できるでしょう。
ターンオーバーに働きかけることで肌内部の細胞も入れ替わるため、ニキビ痕やシワケアにも有効だと考えられます。
2.レチノールでニキビが悪化する理由
「レチノールはニキビケアに有効だ」といわれていますが、レチノールについてウェブ検索すると、「白ニキビができる」や「ニキビが悪化した」などの口コミを見かけた方もいらっしゃるでしょう。なぜレチノール配合製品の使用で、ニキビが悪化したのでしょうか。
ここでは、レチノール配合製品で肌トラブルが起きる理由を紹介します。
■A反応が起きているため
レチノール配合製品の使い始めに肌トラブルを感じた場合は、レチノールによる好転反応の可能性が高いでしょう。
ビタミンA不足の方がレチノール配合製品を使用すると、肌が過剰に反応することがあります。急激に起こるターンオーバーの正常化によって、「A反応」と呼ばれる状態に陥るのです。主な症状は以下のとおりです。
- ニキビ
- 乾燥
- 赤み
- かゆみ
- 皮むけ
肌にビタミンAがなじんでくると、A反応に伴う副作用も治ってくるでしょう。
■肌が紫外線ダメージを受けているため
レチノールには、紫外線による細胞の損傷を防ぐ働きがあり、レチノール自体が壊れることで太陽光線による日焼けを予防してくれます。そのためレチノールは、「天然の日焼け止め」といわれているのです。一方で、紫外線の感受性を上げる性質があるため、肌が焼けやすくなることも。
紫外線ダメージを受けると、皮膚が乾燥しやすくなったりニキビができやすくなったりします。また、紫外線をたくさんあびた肌はレチノールの刺激を強く感じやすく、炎症や肌荒れを起こす可能性が高いのです。
■ビタミンAの代謝がうまくできていないため
一般的には、肌のビタミンA量が増えてくればA反応は落ち着くといわれています。しかし、ビタミンAの代謝がうまくできない方にとっては、強い刺激となるでしょう。強い刺激がずっと続くと、肌が耐えられなくなり、皮脂バランスが崩れて肌トラブルが増えるケースがあります。
3.「レチノールでニキビが増えた」と感じたらどうしたら良い?
肌トラブルを改善しようとレチノール配合製品を購入したものの、「レチノールのせいでニキビが増えた」と感じた場合、その後の使用はNGなのでしょうか。また、どのように対処したら良いのでしょうか。
ここでは、レチノール配合製品の使用によって、ニキビや赤みなどのA反応が出た際の対処法を紹介します。
■レチノール製品の使用を減らす
基本的にはレチノール配合製品を取り入れてニキビができても、そのまま使用してかまいません。ただし、肌の負担になっているため、レチノール配合製品を使う回数を減らしましょう。
また、早く治すためにレチノール配合製品を「ニキビに塗っても大丈夫だろうか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。A反応によって肌が過剰に反応している状態のため、レチノール配合製品をニキビに塗るのは控えましょう。できるだけニキビの上は避けるようにしてください。
■マイルドなレチノール製品を使う
レチノール配合製品を使って肌トラブルが起きるということは、使っている製品のレチノール濃度が自身の肌と合っていない可能性があります。この場合は、一旦レチノール濃度が低い製品に変更するのもおすすめです。
マイルドな製品で肌を慣らしてから、徐々にレチノール濃度を高めると良いでしょう。
■スキンケア製品を見直す
レチノールを配合している製品は、どのスキンケアアイテムと併用してもOKなわけではありません。サリチル酸やAHA(アルファヒドロキシ酸)などのピーリング成分を含有しているものや、ハイドロキノン配合のものは、肌荒れを起こす可能性があります。
レチノール配合製品を使い始めて肌の異変を感じた場合は、今使っているスキンケア製品の成分を見直しましょう。ニキビだけが気になるようなら、ニキビにアプローチするアイテムを取り入れるのもおすすめです。
レチノールが向かない場合は、次世代レチノールといわれる、植物から抽出されたバクチオールを使うのも良いかもしれません。
■症状が治らない場合は医師に相談する
使用回数やレチノール濃度を抑えても症状が治らない、症状があまりにもひどいなどの場合は、レチノール配合製品の使用を中断しましょう。中断しても症状が治らないときは、他に原因があるかもしれません。速やかに医師に相談するようにしてください。
4.レチノール製品の正しい使い方
レチノール配合製品を使い始めて、「最近ニキビが増えたような」と感じる方は、前述した対処法を試してみると良いでしょう。そして、今後レチノール配合製品を使用する予定の方は、これから紹介する正しい使い方を参考にしてみてください。
■低濃度レチノールから始める
せっかくレチノール配合製品を使うなら「高濃度のほうが、効果が出やすいのでは」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、高い濃度のレチノールは肌への刺激が大きいため、肌トラブルが起きやすくなります。
まずは低濃度のレチノール配合製品を使用し、少しずつレチノール濃度を上げていくステップアップ方式を導入すると、肌への負担を抑えられるでしょう。
■使用頻度を調整する
肌への負担を考慮すると、レチノール濃度の他に、使用回数や量も抑えて使うことをおすすめします。肌に大きな刺激を与えず、少しずつ肌をレチノールに慣らしていけるためです。初めは通常量の半分、夜のスキンケアだけに用いるなど、自身で工夫して使うと良いでしょう。
■紫外線対策を行う
レチノール配合製品を使うと、ターンオーバーが促進されて角質層が薄くなり、バリア機能が低下しているケースがあります。バリア機能が低下すると、紫外線などの外からの刺激に弱くなるため、肌が乾燥したり赤みが出たりなどのトラブルを引き起こす可能性が高いでしょう。
普段から紫外線対策は大切ですが、レチノール配合製品を使う場合は、とくに紫外線対策を講じてください。
■保湿をしっかり行う
前述したように、ターンオーバーが促進されると、未熟な細胞が増えます。未熟な細胞は敏感な状態で、まだ保水機能も整っていません。そのため肌が乾燥しやすくなっています。肌が乾燥すると、肌トラブルを引き起こす原因になるため、しっかり保湿しましょう。
■まとめ
「肌トラブルを改善したい」と思ってレチノール配合製品を使い始めたものの、「ニキビが悪化した」となっては意味がありません。しかし、レチノール配合製品が悪いのではなく、肌にビタミンAがなじんでいないためにA反応が出ている可能性や、ビタミンAの代謝がうまくできないケースなどが考えられます。レチノール配合製品を無理に使い続けるのではなく、調整しながら徐々に慣らしていくとスムーズに使用できるでしょう。
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