膣圧という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「性交時の満足度が下がった気がする」「年齢とともに尿漏れが気になるようになってきた」などの悩みは、膣圧の低下が原因かもしれません。今回は、膣圧が下がる原因や膣圧低下に伴う症状について解説します。また、膣圧が低下したときの対策についてもお伝えするので、膣のゆるみが気になる方は、参考にしてみてください。
1.そもそも膣圧ってなに?
「膣圧」とは、骨盤底筋の収縮により膣にかかった圧力のことです。膣は外陰部の入り口から子宮口に続く筒状の器官で、周辺には骨盤底筋と呼ばれる筋肉が存在しています。骨盤底筋は膀胱や子宮、直腸など骨盤内にある臓器を支えている筋肉や靭帯の総称です。収縮することで、膣や尿道をゆるめたり収縮させたりして排尿や排便のコントロールをしています。
膣の締まりが悪くなるのは、骨盤底筋が弱くなることによる膣圧の低下が原因です。膣圧が低下すると、日常生活においてさまざまな支障が出やすくなります。
2.膣圧が低下する原因は?
膣圧がなぜ低下してしまうのか、その原因を見てみましょう。
■出産により骨盤底筋がダメージを受けている
膣圧が低下する原因の1つが、出産により骨盤底筋がダメージを受けたからです。妊娠や出産を経験することで膣壁が広がると、膣内も大きく引き伸ばされます。出産後、時間の経過とともにある程度は元に戻りますが、完全に戻ることはありません。
また、妊娠すると骨盤底筋にも大きな負担がかかります。出産時に引き伸ばされる・一部が断裂することが原因となり、筋力が低下してしまうのです。
■加齢に伴い女性ホルモンや筋力が低下している
年齢があがるにつれて女性ホルモンの1つであるエストロゲンが減少することで、膣内部の粘膜の厚みが失われ、膣は徐々に萎縮していきます。膣粘膜内にあるコラーゲンが減少し、弾力が低下。さらに、加齢に伴う筋力低下により、膣や尿道を締める力が弱まって尿漏れや膣のゆるみにつながります。
■運動不足により骨盤底筋が弱くなっている
骨盤底筋は、体のほかの筋肉と同じように運動の有無に左右されます。つまり、運動量が減れば骨盤底筋は弱くなるのです。ただし、骨盤底筋は自分の意志によって動かせない不随意筋が多いため、意識して鍛えることは困難です。
■くしゃみや排便時などに腹圧がかかる
腹圧がかかることも、骨盤底筋の負担になります。腹圧がかかるのは、咳やくしゃみをしたとき、便秘になったときなどです。便秘になると排便時に腹圧をかける必要があるため、骨盤底筋に負担が生じます。このほか、間違った方法による腹筋運動や重たい荷物を持つといった行為も骨盤底筋にダメージを与えてしまいます。
■肥満体型で骨盤底筋に負担がかかる
肥満体型の方は、脂肪が普通体型の人よりも多く、その重さの分、骨盤底筋に影響を与えます。骨盤底筋は常に引き伸ばされた状態になってしまうため、ゆるみやすい状態になります。
■姿勢が悪く膣やお尻の筋肉が低下している
悪い姿勢を取っていると、骨盤底筋を正しく使えず筋力が衰えることに。また、同じ姿勢を取っている時間が長いと、お尻や膣周辺の筋力が低下します。背筋を伸ばし姿勢を正して座ったときに、両膝と足首をくっつけて座るのがつらい場合は、骨盤底筋の低下が考えられるでしょう。
3.膣圧が低下するとどうなるの?
それでは、膣の締まりが悪いと、具体的にどんな特徴や症状が見られるのでしょうか。
■性交時の満足度が低下する
性行為が気持ち良く感じられない場合、膣圧の低下が影響しているかもしれません。膣がゆるいと、自分自身だけではなく、男性のパートナーも性交時の快感や満足感が薄れてしまう可能性があり、指摘されてしまうことも。性生活がうまくいかないと、相手に対する不満が生じ、結婚生活や恋愛関係に悪い影響が出る可能性もあります。さらには、自尊心や自己評価の低下につながるおそれも。
■尿漏れを起こしやすくなる
膣圧の低下は、膣だけではなく尿道や膀胱を支える力にも影響するため、笑ったときや力を入れたとき、咳をしたときなどに尿漏れを起こす可能性があります。人前で尿漏れを起こしてしまったときは「恥ずかしい」など精神的な苦痛にもつながりやすく、外出や仕事に集中できないなど、日常生活に支障をきたす場合も。
■膣に空気や水が入りやすくなる
膣圧が低下すると、膣内に空気が入りおならのような音が出る「膣ナラ(ちなら)」。膣ナラは性交時や運動時、姿勢を変えるときなどに意図せず出てしまうことがあるため、人前などだと精神的なストレスになるでしょう。とくに性交時に膣ナラが出てしまうと、性行為に対する自信をなくしてしまうこともあります。
また、膣圧の低下により膣口を適切に閉じられなくなっているため、お風呂に入った際にお湯が膣に入り、お風呂から出たときに漏れ出てしまうこともあります。
■骨盤臓器脱(性器脱)が生じる
骨盤臓器脱とは、骨盤内にある子宮や膀胱、直腸などの臓器が徐々に下がってきて、膣から外に出てしまう病気です。骨盤内の臓器は、通常は骨盤底筋やその周りにある組織などに支えられる構造になっていますが、加齢や出産により骨盤底筋などがゆるむと支えが弱くなり、骨盤の中から膣へ下がってきてしまうのです。これが進行すると膣壁が反転し、子宮や膀胱、直腸などが体外に出てしまいます。治すためには手術が必要です。
4.自分の膣圧は正常? 骨盤底筋の衰えをチェックする方法
ここで気になるのが、「自分の膣圧は正常かどうか」ではないでしょうか。膣圧をチェックする方法は主に2つあります。
■自分で膣圧をチェックする
1つ目の方法は、自分で膣圧をチェックする方法です。まずは前述してきたような、膣圧低下に伴う症状があるかどうかを確認してみましょう。1つでも当てはまれば必ずしも膣圧が低下しているというわけではありません。また、自分の指を膣へ挿入して確認する方法もあります。膣が締まるように力を入れ、指が締め付けられるような感覚があれば、膣圧は低下していないだろうと判断できるでしょう。ただしセルフチェックでは、重症度までは判断できないため、注意が必要です。
■クリニックで膣圧を測定してもらう
膣圧の重症度まで確認したい場合、より正確に計測したい場合は、美容クリニックなどで膣圧測定器を使用し計測する方法もあります。専用の膣圧測定器を置いているクリニックもあるため、短時間で検査できます。機械によって測定方法や数値の出方に違いがあるので、日を置いて膣圧の変化を確認したい場合は、同じ機械で測定すると良いでしょう。
5.膣圧が低下したときの対策方法
最後に、膣圧が低下したときの対策についても紹介します。膣圧アップを図るための方法としては、自分で行う方法と美容クリニックで施術を受ける方法の大きく2つあります。
■膣トレーニングを実施する
膣圧は自宅でのトレーニングでも改善が期待できます。膣トレとしてよく知られているのが、立った姿勢や座った姿勢、仰向けなどで実施できる「ケーゲル体操」です。まずお腹の力を抜いて、肛門や膣を引き上げるように力を入れます。そのまま息を止めて5~10分程度キープ。これを数回繰り返します。
また、インナーボールという膣トレグッズを使用した方法もあります。こちらは、膣の中に膣トレ専用のボールを入れ、膣を締めてエクササイズするものです。なお、効果を実感するまでには、2~3ヶ月程度継続すると良いでしょう。
■美容クリニックで膣圧低下に対する施術を受ける
セルフケアによる膣トレは、成果を得られるまでに時間がかかってしまいます。また、膣のゆるみによる症状の中には、膣トレでは思うような効果が得られないことも。短時間で確実に効果を得たい場合は、美容医療の力を借りるのも良いでしょう。膣圧の改善を目的とした美容医療としては、ハイフやレーザー治療などの方法があります。レーザー治療は、高周波RFの熱によりコラーゲンの生産を促すのが特徴。新たなコラーゲンの増加により、弾力性の向上やタイトニング効果が期待できます。施術時間は、膣内の治療であれば15分程度と短時間で、ダウンタイムも少ないのがメリットです。施術を悩んでいる方は、一度クリニックで相談してみるのも良いでしょう。
■まとめ
膣圧の低下は、なかなか人には相談できない悩みかもしれませんが、放っておくと尿漏れや膣ナラなどを引き起こす可能性があります。日常生活に支障が出ることがあるため、膣圧の低下が気になり始めたら、早めに対応しておきましょう。膣のゆるみは、膣トレにより改善を図れますが、効果を実感するまでには数ヶ月続ける必要があります。より早く効果を得たい方は、美容クリニックへ相談してみても良いでしょう。
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