生理や妊娠・出産と深く関わっている“女性ホルモン”。バランスが乱れると心と体にさまざまな症状が出たり、病気の原因になったりします。今回は女性ホルモンをメインテーマに、多い人・少ない人の特徴と考えられる症状と病気をご紹介。ホルモンのバランスを整える方法として、日々の生活で実践できる方法と、美容内科での治療法を解説していきます。
INDEX
1.女性ホルモンはエストロゲンとプロゲステロンの2種類
卵巣で生成される女性ホルモンは、生理や妊娠・出産と深く関わっており、女性の心と体の健康に大きく影響します。女性ホルモンは卵胞ホルモンの“エストロゲン”と黄体ホルモンの“プロゲステロン”の2種類に分かれ、体内での働きが異なります。
女性ホルモンが卵巣で生成されることから「男性には女性ホルモンがない」と思う方もいるかもしれません。しかし、精巣で生成される男性ホルモンの“テストステロン”は一部がエストロゲンに代わるため、男性も少量の女性ホルモンを体内に保持しています。また、卵巣でも男性ホルモンが分泌されるので、テストステロンは女性の体内にも存在します。
■女性ホルモンの種類その1│エストロゲン
エストロゲンは卵胞から分泌されます。思春期~性成熟期の体の成長とともに増えるのが特徴で、20代に最も分泌量が多くなり、更年期頃から少しずつ分泌量が減っていきます。
<エストロゲンの働き>
- 骨の形成
- 自律神経の調整
- 子宮、乳房、膣の成長のサポート
- 丸みのあるボディラインを作る
- 肌ツヤやハリを整える など
■女性ホルモンの種類その2│プロゲステロン
プロゲステロンは黄体から分泌されます。特徴は、月経周期において基礎体温と同時に分泌量が変化すること。体を妊娠しやすい環境に整える役割を担う女性ホルモンです。
<プロゲステロンの働き>
- 基礎体温のコントロール
- 子宮内膜の環境を整える
- 排卵を止める
- 乳腺の発達を促す
2.女性ホルモンが多い人の特徴って?少ないとどうなる?
さまざまな働きを持つ女性ホルモンですが、心身の健康を保つには“バランスを整えること”が欠かせません。ホルモンは少量で影響を及ぼすものなので、ちょっとした乱れが大きな異常につながることもあります。ここでは女性ホルモンが“多い人”または“少ない人”の特徴と起こりうる異変を見ていきましょう。
■女性ホルモンの分泌量は生理周期と年齢で変化する
エストロゲンとプロゲステロンは1ヶ月の間に増減を繰り返し、月経(生理)をコントロールしています。エストロゲンは生理中に少しずつ増加していき、排卵前に分泌量がピークを迎えます。排卵後はエストロゲンが急激に減少。妊娠が成立しないと、次の月経に向けて少しずつ分泌量が下がっていきます。プロゲステロンの分泌量の特徴は、エストロゲンに反比例すること。生理中・生理後は少ない状態が続き、排卵が近づくと少しずつ増えていきます。プロゲステロンの分泌量が急増するのは排卵直後です。妊娠が成立しないと、次の月経に向けて急激に減っていきます。
女性ホルモンの年齢による分泌量の変化を見ると、初潮を迎える時期に急増し、思春期後半の18~20歳頃に少しずつ分泌量が落ち着き始めます。安定して分泌されるようになるのは、20~40代半ばの性成熟期。その後、更年期頃に分泌量が激減し、老年期には男性と同じくらいの分泌量になります。
■女性ホルモンが多いケース
エストロゲンの分泌量が多すぎると、生理が重くなったり、肥満の原因になったりします。過剰分泌が長続きすると女性特有のがんのリスク増加にもつながります。プロゲステロンが多すぎる場合に考えられる症状は、情緒不安定や肩こり、肌荒れなど。生理前の心身トラブルはプロゲステロンが多く分泌されることで起こります。
<女性ホルモンが多いときに起こる病気や症状>
- 生理が重くなる
- 脂肪を蓄えやすくなる
- 無排卵
- 疲労感
- 乳腺症
- 乳がん
- 子宮筋腫
- 子宮内膜症
- 子宮体がん
- 子宮頸がん
- 情緒不安定
- 眠気
- 頭痛
- 腰痛
- 肩こり
- 肌荒れ など
■女性ホルモンが少ないケース
エストロゲンの分泌量が少なすぎると、妊娠・出産に関わる機能低下につながります。また、更年期以降の女性にとって骨粗しょう症や高血圧などの病気のリスクが高まるのは、閉経によってエストロゲンの分泌量が激減することも原因の1つと考えられているのです。プロゲステロンが少なすぎる場合は、黄体機能不全により不妊の可能性が高まります。
女性ホルモンが減ると出る症状の例は、頭痛や抜け毛といった体の症状、不安感やうつ状態といった心の不調など。また、更年期障害は女性ホルモンの減少が原因とされています。
<女性ホルモンが少ないときに起こる病気や症状>
- 頭痛
- めまい
- 動悸
- ほてり
- 不眠
- 肌荒れ、くすみ
- むくみ
- 抜け毛、薄毛
- 情緒不安定
- 月経異常(無月経、生理不順)
- 骨粗しょう症
- 動脈硬化
- 脳梗塞
- 高血圧 など
3.ホルモンバランスが乱れる原因は?チェックリストも
ホルモンバランスが乱れる主な原因は、老化、ストレス、不規則な生活など。生理周期や年齢による女性ホルモンの分泌量の変化と合わせて、これらの原因にも注目することが大切です。ホルモンバランスの乱れについては、以下のチェックリストを参考にしてください。
<チェックリスト>
□ 生理周期が乱れがち
□ 生理痛が重い方である
□ 顔や体のむくみが気になる
□ 過度なダイエットの経験がある
□ 睡眠不足、不眠に悩んでいる
□ 疲れやすい、疲れが取れにくい
□ 肌の調子が悪い
□ 髪のパサつきや白髪が気になる
□ 気分が落ち込みやすい、イライラしがち
□ ストレスが溜まりやすい
□ ひげやすね毛が生えてきた
□ 肩こりや腰痛に悩んでいる
□ めまいや立ちくらみが起こりやすい
□ 冷え性である
□ 生活習慣が不規則
□ 食生活が偏りがち
4.女性ホルモンを増やすには?分泌を促すポイント
続いて、女性ホルモンを増やす・分泌を促すポイントをご紹介します。
■食生活を整える
ホルモン分泌を正しく保つためには、バランスの良い食事が欠かせません。食事のタイミングは1日3回、決まった時間に摂ることを意識しましょう。女性ホルモンを増やすサポート役となる食べ物は、亜鉛や鉄分を多く含むもの。飲み物はイソフラボンを含む豆乳、ビタミンが豊富なハーブティーやビタミン系飲料などです。エストロゲンに似た働きをするイソフラボンを含む食品を積極的に摂ることも1つの方法ですが、大切なのはさまざまな食品をまんべんなく食べること。特定の食品や飲料に偏らないよう、バランスを意識した食生活を心がけましょう。
■睡眠を見直す
睡眠不足は女性ホルモンの分泌を妨げる原因になります。適した睡眠時間には個人差があるものの、成人の目安は6~7時間程度と言われています。また、睡眠の質にも注目しましょう。寝る3時間前には食事を済ませる、体に合う寝具を使う、日中に太陽光を浴びるなどの工夫によって睡眠の質を高めることも大切です。
■ストレスを溜めないように意識する
ストレス発散におすすめの方法は適度な運動です。習慣的な運動は全身の血行を促し、自律神経を整えて女性ホルモンのバランスを安定させます。ほかにも、日光浴をしたり趣味に打ち込んだりすることもストレス発散につながるので、自分に合う方法を探してみましょう。
5.美容内科での治療│女性ホルモンのバランスを整える方法3つ
美容内科で治療を受けることもホルモンのバランスを整える方法の1つ。ここでは、ホルモン補充療法、ペプチド療法、プラセンタ注射の3つをご紹介します。
■ホルモン補充療法
ホルモン補充療法は、更年期の症状緩和を目的にエストロゲンを補う治療法です。不足した女性ホルモンを補うことで、ほてりやのぼせ、発汗など更年期に起こりやすい症状に対する効果が期待できます。
ホルモン補充療法ではエストロゲンとプロゲステロンを併用するのが基本。子宮の有無や閉経から経った時間など、個人の状況により投与方法が変わります。薬剤の形状は、内服薬や経皮薬など。内服薬は皮膚がかぶれやすい方でも使いやすい、経皮薬は肝臓への負担が少ないなど、それぞれ特徴が異なります。
■ペプチド療法
ペプチド療法は、加齢による病気や症状に対しホルモン補充療法と同程度の効果が期待できるとされる治療法です。ペプチド薬はもともと体内で生成されるものを元に作られた薬なので、従来の低分子化合物と比べて期待できる効果が高く、副作用が少ないという特徴があります。ホルモンバランスの乱れをはじめ、不眠や体重増加、婦人科系の悩みなどを抱える方向けの治療とされています。
■プラセンタ注射
胎盤から抽出したプラセンタというエキスを注入する治療法のこと。期待できる効果は、のぼせやイライラのような更年期の症状、免疫強化による健康サポートなどです。プラセンタの注射剤は「メルスモン」と「ラエンネック」の2種類。更年期の症状に悩んでいる方にはメルスモンが向いていると言われています。
■まとめ
女性ホルモンのバランスを整えることは、心と体の健康維持に欠かせません。「最近心や体の不調に悩んでいる」という方はホルモンバランスが乱れる原因のチェックリストを参考に、当てはまる項目が多ければ日常生活の見直しを考えてみましょう。食生活や睡眠、ストレス面の見直しで十分な効果が実感できなければ、美容内科で治療を受けることも選択肢に入れてみてください。
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