【New Topics】銀座みゆき通りクリニックの行政処分――保険診療取り消しの裏側

NEROが、美容医療に関する注目のTOPICSをとりまとめ!


銀座みゆき通りクリニックが保険診療不可に。関東信越厚生局が同クリニックに対し、保険医療機関の指定取消と院長の保険医登録取消を公表した。2017年以降の繰り返しの指導・監査を無視し続けたことが背景にある。なぜこのような事態に至ったのか、保険診療のルールと美容クリニックのリスクを踏まえ、紹介する。

【POINT】

行政の指導・監査を無視し続けた結果、処分が確定
保険診療の適正化を目的とした厳格な監視体制
美容医療と保険診療の境界線に注意が必要

① 事件の発端:繰り返された指導と監査の無視

銀座みゆき通りクリニックは2017年から2023年の間に6回の個別指導を受けたが、正当な理由なく欠席していた。

さらに、2023年から2024年にかけて3回の監査が実施されたが、これも欠席。診断書を提出したものの、そもそもその診断書自体が無効と判断された。

このような繰り返しの無視が決定打となり、関東信越厚生局は院長の保険医登録を取消し、クリニックの保険医療機関指定を取り消す決定を下した。

これにより、同クリニックは今後保険診療を提供することができなくなる。

② 保険診療のルールと監査の役割

保険診療を行う医療機関には、適正な請求を行う義務がある。

厚生局はこれを確保するために、個別指導や監査を実施。不正や不適切な請求の疑いがある場合、まずは指導を行い、改善を促すプロセスがとられる。

しかし、今回のように指導を無視し続けると、監査へと移行し、最終的に行政処分に至る

厚生労働省が公表した2023年度のデータによると、

  • 個別指導:1,464件
  • 新規個別指導:6,576件
  • 適時調査:2,748件
  • 監査:46件
  • 保険医療機関等の指定取消:8件
  • 保険医等の登録取消:13件

不正請求や不適切な対応が確認されると、数十億円単位の返還が求められるケースもある。

③ 美容医療と保険診療の交錯点

美容医療は基本的に自由診療が中心だが、一部の施術では保険診療が適用されるケースもある。

そのため、美容クリニックが保険請求を行う際には厳格なルール遵守が求められる

今回のケースでは、不正請求の直接的な証拠は公表されていないが、「指導・監査を無視した」という事実だけで行政処分が下された

これは、美容医療を提供するクリニックにとっても重要な警鐘となる。今後、自由診療と保険診療を併用するクリニックは、法令遵守の意識をさらに高める必要がある。

編集長ポイント
「自由診療でも無関係じゃない」美容医療クリニックの注意点

「保険診療」と「自由診療」の間に潜むリスク

今回の処分が示すのは、行政の監視が単なる形式的なものではなく、実際に機能しているという事実だ。

保険診療を行う医療機関は、正確な請求と適正な対応を求められるが、そのルールを軽視すれば厳しい処分が下される。銀座みゆき通りクリニックの事例は、単なる書類ミスではなく、行政の指導・監査を無視し続けた結果、業務継続が不可能になった点が本質だ。美容医療は自由診療が中心だが、一部保険診療を扱うクリニックも少なくない。自由診療と保険診療を併用するクリニックほど、ルールの遵守が求められる時代が来ている。

また、患者側のリテラシーも問われる。「美容医療だから保険は関係ない」と思い込まず、保険が適用されるケースではどのような請求が行われているのか、透明性を求める意識が必要だ。

「監査を受ける側」ではなく「監査を受けても問題ない運営」をすることが、今後の医療機関の信頼構築につながる。
これは、美容医療業界だけでなく、すべての医療機関が向き合うべき課題だ。

まとめ
透明性の確保が医療機関の存続を左右する時代へ

今回の銀座みゆき通りクリニックの処分は、指導・監査の軽視がどれほど致命的な結果を招くかを示した。単なるミスではなく、行政の監視を無視し続けたことが、最終的に保険診療の道を完全に閉ざすことになった。

これは、自由診療を主軸とする美容医療クリニックにも他人事ではない。保険診療の一部を取り扱うクリニックはもちろん、自由診療のみのクリニックでも、運営の透明性や法令遵守が経営の安定に直結する時代が到来している。

業界全体としても、患者が安心して医療を受けられる環境づくりが求められる。特に、美容医療は市場が拡大する一方で、「信頼性」と「安全性」が今後の成長の鍵となる。

これからのクリニック経営には、適正な請求、監査対応の徹底、そして患者との透明なコミュニケーションが不可欠だ。「何かあっても対応すればいい」ではなく、「そもそも問題を起こさない仕組み」を持つクリニックこそが、信頼される医療機関となる。