日本の美容医療は、韓国やアメリカに比べるとまだまだこれから。でも最近はちょっとずつ空気が変わってきています。SNSでインフルエンサーが症例をオープンにシェアしたり、美容に敏感な世代が「もっと自分らしく生きたい!」と動き始めたり…。
"整形って特別なこと"という壁が、少しずつ"もっと気軽な自己表現のひとつ"へとシフトしているんです。
今回は、日本の美容医療がどんな理由で遅れてきたのか、そしてこれからどんなワクワクする変化が待っているのかをのぞいてみましょう。
日本とグローバル市場における経験者の比較
まずは2つのランキングもとに、日本と海外の美容医療経験の差を比べてみましょう。
■「切らない施術」の利用率が低い日本
〈美容医療を受けたことがあると回答した人の割合〉

出典:BCG Japan(参考にNEROで画像を改編)
意外かもしれませんが、日本は「非外科的施術(切らない施術)」の経験者が世界的に見てもかなり少ないのです。
BCG Japanの調査によると、ボトックスやヒアルロン酸注入、糸リフトなどの非外科的施術9メニューの利用率において、日本はいずれも比較対象国の中で最下位でした。
最も高かったレーザー脱毛でさえ3.4%にとどまり、中国の23%や米国の11%と比べると大きな差があります。
美容機器を用いた肌のタイトニング系治療は、日本1.7%に対して中国17%。
ボトックス注射は、日本1.2%に対して韓国8%・米国7%。
ヒアルロン酸注入では日本0.4%にとどまり、米国や中国の7%と比べると約16倍もの開きがあります。
■「切る施術」韓国と日本では人口比で4倍の差!
〈人口1000人当たりの整形手術件数ランキング〉

出典:Korea Wave
二重手術や鼻形成術などの「外科的施術(切る施術)」に関するランキングをみても、この差は裏付けられています。
国際美容整形外科学会(ISAPS)による2021年の統計をもとにした調査によると、2021年の日本の美容整形手術件数は人口1000人あたり2.13件で世界14位。一方、韓国は8.9件で堂々の1位を記録しており、その差は4倍以上です。
韓国では人口約5,174万人(2021年時点)のうち年間47万人が美容整形手術を受けており、市場規模は約1兆5825億円と世界の4分の1を占める水準に成長しています。
対して日本は人口1億2,570万人(2021年時点)に対し27万人にとどまり、市場規模は約4,000億円。
もし日本で韓国並みの人口比で施術が行われた場合、日本の市場規模は1兆6,000億〜3兆円規模に拡大するポテンシャルを秘めていると試算されています。
出典:BCG Japan「美容医療の利用率は日本が最低」
出典:ISAPS「グローバル調査レポート」
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どうして日本人が「美容医療」に踏み込めないのか?
日本では海外と比べて美容医療の利用率が低い背景に、社会的・心理的な要因が複雑に絡み合っています。
■匿名批判がつくる「整形=悪」という社会的バイアス
まず大きな壁となっているのが、社会的バイアスです。
芸能人やインフルエンサーの顔に少しでも変化があると「整形したのでは?」と勘繰ったり、整形や美容医療を公表した際には匿名掲示板などで「整形=悪」というレッテルを貼ったりすることは未だに少なくありません。
こうした風潮は一般人にまで影響し、「美容医療を頼ることに抵抗がある」「周囲に知られると後ろめたい」という意識を根強く残しています。
■過去の失敗事例が残した美容医療へのイメージ
美容医療に対する過去のイメージも、多くの人々の行動を縛っています。
例えば「ヒアルロン酸を打つと顔がパンパンになる」「ボトックス注射で表情がこわばってしまった」「整形のやりすぎで顔のパーツが崩れた」といった過去の失敗事例がメディアで取り上げられ、いまだに一般層の中で定着しているのです。
しかし、ヒアルロン酸やボトックスは適切な位置に適切な量を注入すれば、不自然な仕上がりになる心配は少ないもの。
また、確かな技術・センスを兼ね備えた医師を選べば、最低限の治療で大きな効果が期待でき、美容医療を必要以上に繰り返す“整形沼”に陥いるリスクも避けられます。
優秀な美容ドクターも増えている現代。それでも「美容医療=不自然になる・やめられなくなる」という過去のイメージが払拭されきれず、潜在的なニーズを阻んでいます。
■半数以上が抱える“心理的な抵抗感”
個人レベルでの心理的抵抗感も大きな要因です。
「ホットペッパービューティーアカデミー」が2024年、全国20万以上の都市に居住する10代~60代の男女1万3200人に行った調査によると、「美容医療を受けることに抵抗がまあある/かなりある」と答えた人は全体の過半数に達しました。
また「株式会社ビズキ」が全国の20代~50代女性2000人を対象に行った調査によると、美容医療に抵抗を感じる理由として最も多かったのは「費用面」(57%)。
次いで「副作用などのリスク」(45.1%)、「痛み」(44.8%)「ダウンタイム」(35.8%)「施術結果の不確実性」(32%)などが挙げられています。
つまり、美容医療の必要性を感じながらも、経済的負担やリスクへの懸念が「最初の一歩」を阻んでいる現状が浮かび上がります。
このように、日本人が美容医療に踏み込めない背景には、社会的な視線、過去から続く誤解、そして費用や安全性に対する個人的な不安が重層的に存在しています。
出典:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー
出典:株式会社ビズキ Kirei Style
日本の美容医療は少しずつ浸透!整形をすることは「悪」ではない
かつては「整形は恥ずかしい」「職場や学校でバレたら終わり」といった空気が濃厚だった日本の美容医療市場。しかし近年、その価値観は確実に変わり始めています。
「湘南美容クリニック」が300人に対して、美容医療を受けた経験を周囲に話せるかを調査した結果、親(77%)・きょうだい(79%)・同性の友人(84%)には約8割が「話せる」と回答。
美容医療の経験をシェアすることへの抵抗感が少しずつ薄れ、一般的な感覚になりつつあることが分かります。こうした風潮は、美容医療を「人には言えない後ろめたいこと」から「自分の魅力を高めるための1つの手段」として押し上げているといえるでしょう。
■SNSがもたらした「美容医療=自己投資」という意識
さらに日本の美容医療を後押ししているのは、SNSの存在。InstagramやTikTokでは、一般人がダウンタイムやビフォア・アフターをリアルに発信し、だれもが体験談を気軽にチェックできるようになりました。
さらに、芸能人やインフルエンサーが「こんな施術を受けました」とオープンに共有するケースも増加。整形がスキャンダル扱いされていた時代は多くの人にとって過去のものになり、「努力」や「自己投資」として肯定的に受け止められているのです。
■美容医療は「見た目」だけでなく「QOL」もアップデート
もうひとつ注目すべきなのは、美容医療を受けた人が語る「QOL(生活の質)向上」という新しい価値観。
例えば「長年のコンプレックスが解消されて、前向きに人生を歩めるようになった」「若く見られるようになり、人前に出るのが楽しくなった」など、美容医療を受けた方の感想は外見の変化だけにとどまりません。
よく聞かれるのは、自己肯定感や行動力が高まり、日常の幸福度が引き上げられたという声。現代の美容医療は「周囲から抜きん出るための手段」ではなく、「人生をより豊かにするための手段」として捉えられるようになっています。
こうした流れを受けて、日本の美容医療業界は今後さらに利用者が広がる余地があるといえるでしょう。
まとめ
「整形=悪」とみなす偏見は過去のものになりつつある中、「ありのままが美しい」という価値観も根強く存在する日本。
本来、自然体を大切にする人も美容医療を選ぶ人も、どちらも尊重されるべきです。
多様なあり方を認め合うことで美容医療も受け入れられやすくなり、今後さらに市場が拡大していくのではないでしょうか。
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