📌 記事をざっくりまとめると……
- 長崎大学病院が2026年4月6日、患者自身の肝細胞から作った「CLiP細胞」を肝臓に移植する世界初の臨床研究を開始したと発表
- CLiP細胞を開発したのは東京医科大学の落谷孝広特任教授——NEROが独占取材し、エクソソームの「本物と偽物」を報じてきた世界的権威
- 拒絶反応が起きにくく大量培養しやすいこの技術は、年間約2000人が移植を受けられずに亡くなっている肝硬変の現実を変える可能性を持つ
2026年4月6日。
日本の再生医療に、一つの歴史的な一歩が刻まれた。
長崎大学病院などの研究チームが、患者自身の肝細胞から作製した「CLiP(クリップ)細胞」を肝臓に移植する臨床研究を世界で初めて開始したと発表した。
そしてこの技術を開発したのが、東京医科大学の落谷孝広特任教授だ。
NEROと落谷教授について
NEROは2025年12月、落谷教授の研究室に独占潜入取材し、エクソソームの「本物と偽物」を世界的権威の視点から報じた。その同じ教授が開発した技術が今日、世界初の臨床研究として動き出した。
NEROが正しい情報を届けてきた研究者の技術が、世界に証明された瞬間だ。
INDEX
肝硬変の現実——年間2000人が移植を受けられずに亡くなっている
肝硬変は、肝臓が線維化して徐々に機能が低下していく進行性の病気だ。
現状では、根本的な治療法は肝臓移植しかない。
しかし日本では深刻なドナー不足が続いており、年間約2000人が肝臓移植を受けられずに命を落としているとされる。
高齢や体力的な問題で移植適応外となる患者も多く、「移植以外の選択肢」を切実に待ち続けている人たちがいる。
CLiP細胞の臨床研究は、その現実に真正面から向き合う取り組みだ。
CLiP細胞とは何か——iPS細胞との違い
CLiP細胞は、2017年に落谷孝広特任教授らが開発した技術だ。
CLiP細胞の作り方
① 患者自身の肝臓から肝細胞を採取(約30グラム)
② 3種類の薬剤を加えて約90日間培養
③ 肝細胞や胆管細胞に分化できる「前駆細胞(CLiP細胞)」に変化
④ 線維化が進んだ患者の肝臓に移植
重要なのは、iPS細胞との根本的な違いだ。
💡 CLiP細胞 vs iPS細胞
iPS細胞は様々な細胞に分化できるが、遺伝子改変が必要で、がん化リスクへの懸念も指摘されている。
CLiP細胞は遺伝子の改変を必要とせず、患者自身の細胞を使うため拒絶反応が起きにくい。またiPS細胞より大量培養しやすいという特徴を持つ。
ブタを使った実験では肝臓の状態が改善したことも確認されている。
世界初の臨床研究——2028年3月までに3人に実施
今回の臨床研究の概要はこうだ。
臨床研究の概要
・対象:肝硬変の患者3人
・期間:2028年3月まで
・目的:安全性の確認と治療有効性の検証
・移植後の観察期間:約1年
・実用化目標:5〜10年後
・分類:再生医療等安全性確保法の「第一種」(最もリスクが高い分類)
・承認:厚生労働省の再生医療等評価部会の審議を経て承認取得済み
長崎大学病院肝胆膵・移植外科の江口晋診療科長は記者会見でこう述べた。
「(ドナー不足や高齢のため)肝臓移植を受けられない患者に、
新たな治療として提案できる自信を持っている」
長崎大学病院 江口晋診療科長(2026年4月6日、記者会見)
出典:日本経済新聞 2026年4月6日
落谷教授とNEROの接点——この研究が持つ「もう一つの意味」
CLiP細胞を開発した落谷孝広教授は、エクソソーム研究の世界的権威でもある。
クラリベイト・アナリティクス社が発表する「高被引用論文著者」に2019年度から6年連続で選出され、ノーベル財団主催の講演に招かれるなど、世界のトップ1%に入る研究者として評価されている。
NEROは2025年12月、その落谷教授の研究室に独占取材で潜入した。
美容医療業界で氾濫する「エクソソーム」という言葉の正体——24品目中、本物のエクソソームマーカー(CD9/CD63)を満たしていたのはわずか数品だったという衝撃の調査結果。そして「誤情報や商業利用が混在する今だからこそ、正しい知識を社会に還元することがメディアの責務だ」という教授の言葉を、NEROは記事にしていた。
そして今日、その同じ落谷教授が開発した技術が、世界初の臨床研究として動き出した。
NERO編集長の視点
NEROが「正しいエクソソームとは何か」を取材した相手が、今日「世界初のCLiP細胞臨床研究」を成し遂げた研究者だ。
美容医療の世界には「エクソソーム」という言葉が溢れているが、その本質を世界レベルで追求している研究者は何をしているのか——それを知ることが、本物の美容医療情報を見極める視点につながる。
NEROは今後も、科学の最前線にいる人物から直接話を聞くメディアであり続ける。
再生医療の「次のステージ」が見え始めている
今回のCLiP細胞臨床研究は、再生医療が「実験」から「臨床」へと確実に移行していることを示している。
患者自身の細胞を使い、遺伝子改変なしに、臓器の再生を目指す——この方向性は、美容医療で進む再生系施術(エクソソーム・PDRN・バイオスティミュレーター)の根底にある科学的思想と通底している。
「修正から再生へ」というパラダイムシフトは、美容医療だけでなく、臓器再生の分野でも着実に現実になりつつある。
まとめ
- 長崎大学病院が2026年4月6日、CLiP細胞を用いた肝臓再生の世界初臨床研究を開始したと発表(日本経済新聞)
- CLiP細胞は患者自身の肝細胞に3種類の薬剤を加えて前駆細胞に変化させたもの。遺伝子改変不要・拒絶反応リスクが低い・大量培養しやすいという特徴を持つ
- 開発者は東京医科大学の落谷孝広特任教授——NEROが独占取材し、エクソソームの真実を報じてきた世界的権威
- 年間約2000人が肝臓移植を受けられずに亡くなっているという現実への、医学からの回答
- 5〜10年後の実用化を目指す。再生医療が「実験」から「臨床」へ移行する歴史的な一歩
よくある質問
Q. CLiP細胞とiPS細胞は何が違いますか?
iPS細胞は皮膚などの細胞に特定の遺伝子を導入して作る多能性幹細胞で、様々な細胞に分化できます。一方CLiP細胞は、患者自身の肝細胞に薬剤を加えるだけで作られるため遺伝子改変が不要です。患者自身の細胞を使うため拒絶反応のリスクが低く、iPS細胞より大量培養がしやすいとされています。
Q. 今回の臨床研究は「第一種」とありますが、それは危険なのですか?
「第一種」は再生医療等安全性確保法における分類で、リスクが最も高い分類に位置づけられます。ただしこれは「危険」という意味ではなく、厚生労働省の再生医療等評価部会による厳格な審議と承認が必要であることを意味します。今回は正式な審議・承認を経て実施されており、安全性確認を主目的とする慎重な研究設計になっています。
Q. 落谷孝広教授はどのような研究者ですか?
東京医科大学医学総合研究所分子細胞治療研究部門の特任教授で、エクソソーム研究の世界的第一人者です。クラリベイト・アナリティクス社の「高被引用論文著者」に2019年度から6年連続で選出され、ノーベル財団主催の講演にも招かれています。日本細胞外小胞学会(JSEV)の理事長も務め、エクソソームの品質基準や正しい情報発信に取り組んでいます。NEROは2025年12月に独占取材を実施しました。
Q. この技術は美容医療にも関係しますか?
直接の治療対象は肝硬変ですが、患者自身の細胞を薬剤で「前駆細胞」に変化させて組織を再生するという発想は、美容医療で広がる再生系施術(PDRN・エクソソーム・バイオスティミュレーターなど)と同じ科学的思想の延長線上にあります。落谷教授はエクソソームの美容・ロンジェビティへの応用研究も並行して行っており、今回の臨床研究の進展は再生医療全体の信頼性向上にもつながります。
出典
- 日本経済新聞「患者の細胞使い肝硬変の再生医療 長崎大学、4月から臨床研究開始」2026年4月6日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG061760W6A400C2000000/
- 共同通信「肝臓再生で世界初の臨床研究 クリップ細胞移植、長崎大」2026年4月6日
- NERO DOCTOR/BEAUTY「エクソソームって本当に効くの?——広告にあふれる言葉の正体を世界的権威が徹底解説」2025年12月10日 https://nero-drbeauty.com/special-article/exosome/
