2026年8月1日〜2日・仙台
2026年8月1日・2日、仙台。
第44回日本美容皮膚科学会総会・学術大会(会頭:菊地克子先生、テーマ:「みんなキレイに幸せに」)に参加した。
会場となったウェスティンホテル仙台では、シミ・肝斑のセッションでも
「レーザー単体に頼らない包括治療」が改めて強調されていた。
NEROとして現場で感じたのは、
「業界がゆっくりと、でも確実に方向を変えている」という感覚だ。
特にここ数年、「レーザートーニング・ピコトーニングを短い間隔で繰り返す」
というアプローチへの警鐘が、国内外で積み上がってきている。
今回の学会でも、その流れは続いていた。
この記事では「業界ではこうなってきている。
だから読者の皆さんにとってこういう判断材料になるかもしれない」
という現場感のある話をお届けしたい。
特定のクリニックや先生を名指しで評価するものではないことをあらかじめお断りしておく。
- ✦「レーザートーニング頻回照射」への学会の潮流──なぜ警鐘が続くのか
- ✦肝斑の「本当の病態」──メラニンだけではなかった
- ✦マイクロニードリング・ニードルRFが「主役級」に浮上してきた理由
- ✦カウンセリングで使える4つの確認ポイント
INDEX
「頻回照射の警鐘」は今年も続いていた──
蓄積してきた研究が示すこと
ここ数年、毎年のように美容皮膚科学会で繰り返されてきたメッセージがある。
レーザーの繰り返し照射により、メラニンを作る細胞(メラノサイト)が過剰にダメージを受けて起こる「白抜け」のこと。
肌がまだらになり、一度起きると元に戻りにくいとされている。
韓国・Jangらの研究(Ann Dermatol 2015・PMC4466296)では、
トーニング後の色素脱失部位ではメラニン色素がほぼ消失している一方、
メラノサイト自体は残存していることが報告されている。
回復に長期を要する例があり、その機序は原著でも「未解明」と明記されている。
NEROが現場で感じたのは、
これが一部の「慎重派」の意見ではなく、
国内外の皮膚科学のコンセンサスとして積み上がってきた流れだということだ。
読者にとって大事なのは、この話を「新しいトレンド」ではなく
「業界全体の認識の更新」として受け取ることだ。
肝斑の「本当の病態」──
メラニンだけではなかった
今年の学会でも改めて議論されていたのが、
肝斑の病態理解の進歩だ。
かつては「メラニン色素が増えすぎた状態」と単純に理解されてきたが、
近年の研究はより複雑な構造を示している。
「メラニンを減らすためにレーザーを当てる」だけでは、
この複雑な病態の一側面にしか対処していない。
だからこそ、「マイルドな改善を維持する」ための多角的な治療設計が
改めて強調されているのだ。
現場で見えた「軸の移動」──
3つの方向性
現場の複数の先生方から共通して聞こえてきた方針は、
おおよそ3つの方向性に整理できる。
「3ヶ月に1回程度」という慎重なスタンスを取る先生も確実に増えてきている。
美容医療診療指針(令和3年度改訂版・厚労科研班編集・日本皮膚科学会ほか複数学会協力)では、
肝斑へのIPL・レーザーの推奨度は「条件付きで弱く提案」に分類されている。
指針原文では遮光の徹底を最優先とし、美白外用・内服などの保存的治療を土台に、
レーザー・IPLは「効果不十分な場合の併用療法」として位置づけている。
参考:美容医療診療指針(令和3年度改訂版・Minds掲載)
マイクロニードリング(極細針で皮膚に微細な穴を開ける技術)に
RF(ラジオ波=電磁波の一種)を組み合わせた施術。
針の先端から直接熱エネルギーを届けるため、
表面の肌ダメージを抑えながら真皮に働きかけられる。
「シルファームX」(韓国VIOL社製・米国FDA承認・国内未承認)「シークレットRF」などが代表的な機器。いずれも国内未承認医療機器のため、自由診療での使用となる点に注意したい。
微細な針刺激で創傷治癒反応(傷を治そうとする体の機能)を誘導しながら、
レーザーのような熱ダメージを表皮に与えにくい設計が注目されている。
ニードルRFは、表皮〜真皮浅層の基底膜再構築・血管成分・老化線維芽細胞にも
同時にアプローチできる点が、肝斑の複雑な病態に合っているという声が多い。
特に「老化線維芽細胞を減らす」というロジックへの注目が高まっており、
学会でも複数の発表・議論が行われていた。
何と組み合わせるかが長期的な結果を左右するという認識が広まっている。
これらを患者さんの肝斑タイプ・皮膚状態・生活習慣に合わせて
どう組み合わせるかが、実はクリニック間で実力差が出やすい部分だ。
カウンセリングで使える4つの確認ポイント
「どのクリニックで、どんな提案を受けたら続けるか」を判断する際の
最低限の問いとして使ってほしい。
万能な答えではなく、担当医師との対話を深めるための材料として読んでほしい。
累積エネルギーの上限を事前に決めておくクリニックの方が安心感がある。
レーザー「だけ」で提案されているなら、なぜその構成なのかの説明を求めたい。
深さ・密度・回数・併用薬の説明があるクリニックの方が、丁寧な設計がされている。
累積照射の中止時期・再評価のタイミング・保湿・遮光・休薬プランが事前に提示されるか確認したい。
まとめ
- ✦第44回日本美容皮膚科学会(2026年8月・仙台)でも「レーザートーニング頻回照射へのリスク認識」の流れは継続。2週間以内の頻回照射を避けるべきという指摘は国内外の研究・総説でも蓄積されている。
- ✦肝斑の病態はメラニンだけでなく、基底膜障害・血管成分・老化線維芽細胞が関与する多因子疾患。レーザー単体では対処しきれない病態理解が進んでいる。
- ✦マイクロニードリング・ニードルRFが主役級の選択肢に浮上。基底膜再構築・血管・老化線維芽細胞に同時アプローチできる点が、肝斑の複雑な病態に合っているという声が増えている。
- ✦カウンセリングで確認すべきは4点:①照射間隔・回数の上限、②内服・外用の土台、③ニードリング系の選択肢、④悪化時の中止基準とリカバリー手順。最終判断は必ず担当医師との対面で。
📌 肝斑の治療設計は、皮膚のタイプ・既往歴・季節・生活習慣によって「最適解」が大きく変わる。この記事はあくまで判断材料の一つとして、担当医師との対話に活用してほしい。
よくある質問(FAQ)
出典・参考文献
- 第44回日本美容皮膚科学会総会・学術大会(会頭:菊地克子先生)2026年8月1日〜2日・仙台 shun-convention.jp/bihifu44/
- Jang YH et al. "Changes in melanin and melanocytes in mottled hypopigmentation after low-fluence 1,064-nm Q-switched Nd:YAG laser treatment for melasma." Ann Dermatol. 2015;27(3):340-342. PMC4466296
- Tian B. "The Asian Problem of Frequent Laser Toning for Melasma." J Clin Aesthet Dermatol. 2017;10(7):40-42. PMID: 29104723.(小規模後方視的報告・23例・1施設)
- 美容医療診療指針(令和三年度改訂版)日本皮膚科学会 / Minds掲載版


