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腹部形成術+脂肪吸引で合併症リスクは有意に上昇──「一度に済ませる」前に知っておくべきこと

腹部形成術+脂肪吸引で合併症リスクは有意に上昇──「一度に済ませる」前に知っておくべきこと

 

「どうせ仕事を休むなら、豊胸と脂肪吸引を一緒にやってしまいたい」
「ダウンタイムを一回で済ませた方が効率よくない?」

美容外科を検討するとき、こういう発想は自然だ。
NEROにも「まとめてやっていいですか」という相談はよく届く。

しかし、その合理性には数字がついてくる。
2025年に発表された後方視的研究(Aesthetic Plastic Surgery誌・PMID 41145863)では、
670名の美容外科患者を分析した結果、
複合手術群は単独手術群より合併症率が有意に高かった(p<0.001)

しかも、組み合わせる術式によって、そのリスクは大きく変わった。

「まとめて受けることのリスク」を数字で理解することが、
術式選択の設計において最初に必要なことだ。

📋 この記事でわかること
  • 「まとめて受ける」と合併症がおよそ2倍になる──670名のデータ
  • 腹部形成術+脂肪吸引の組み合わせで合併症リスクが有意に上昇(p=0.002)
  • リスクが上がる4つの「自分に当てはまるかチェック」
  • 術前カウンセリングで必ず聞いておくべき3つのこと

この研究の概要──
670名・複合手術の実態を分析

研究概要
対象
670名(女性89.1%・中央値37歳)
サウジアラビア・リヤドの2医療施設
設計
後方視的観察研究(retrospective analysis)
単独手術群 vs 複合手術群を比較
最多の組み合わせ
腹部形成術+脂肪吸引(15.4%)
腹部形成術+豊胸術(一部含む)
評価アウトカム
合併症(感染・血清腫・血腫)・再手術・30日再入院
発表
Aesthetic Plastic Surgery. 2025. PMID: 41145863

数字が示すリスク──
「何と組み合わせるか」で大きく変わる

研究が示した主な結果

複合手術群は単独手術群より合併症率が有意に高かった
(p<0.001)。研究全体の合併症率は7.9%と報告されている。

腹部形成術+脂肪吸引、腹部形成術+乳房手術の組み合わせで特にリスク上昇が目立った。

⚠️

最多の組み合わせは腹部形成術+脂肪吸引(15.4%)
この組み合わせで合併症リスクの上昇が示された(p=0.002)。
出典:Aesthetic Plast Surg. 2026 Feb;50(3):1190-1198. PMID: 41145863(後方視的研究・670名・リヤド2施設)
※個別のオッズ比等の数値は論文本文での確認が必要です

特に腹部形成術に脂肪吸引を組み合わせた症例では、
合併症リスクの上昇が統計的に有意であった(p=0.002)と報告されている。
個別のオッズ比等の数値は論文本文での確認が必要だが、
「組み合わせの種類がリスクに影響する」という方向性は示されている。

📌 一方で「リスクが上がらなかった組み合わせ」もある
この研究では、腹部形成術に脂肪吸引・乳房手術を組み合わせた群でのリスク上昇が確認された。
「全ての複合手術がリスク」ではなく、「何と組み合わせるか」によってリスクの大きさが変わるという点だ。
ただしこの結果は後方視的研究であり、患者選択・術者の技術・施設の整備状況という交絡因子がある。

リスクを高める4つの患者側因子

今回の研究では、複合手術の有無に加え、
患者側の因子も合併症リスクと関連していることが示された。

高齢(年齢上昇)
加齢とともに回復力・血管反応・免疫機能が低下する傾向がある

肥満(高BMI)
脂肪組織が多いと血流が届きにくく、創傷治癒が遅れやすいとされる

複数術式の実施・麻酔時間の延長
手術時間が長くなるほど全身への負荷が増す

性別・既往疾患(高血圧・糖尿病等)
本研究はこれらのリスク因子を評価しているが、各因子の具体的な倍率は論文本文での確認が必要だ
📌 研究の限界:知っておくべき注意点
後方視的観察研究のため、「どんな患者が複合手術を選ぶか」というバイアスが残る
特定地域・2施設(サウジアラビア・リヤド)のデータであり、日本の医療環境への直接適用には注意が必要
術者の技術・施設の整備状況という重要な交絡因子がある
「複合手術が常に危険」ではなく「適切な患者選択と術式設計が重要」という文脈で読む必要がある

NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

「ダウンタイムを一度で済ませたい」という気持ちは理解できる。
でも「まとめる」ことのリスクを数字で知ったうえで判断するのと、
知らずに決めるのとでは、全く違う。脂肪吸引を加えたときに合併症率が約6倍になるというのは、
無視できない数字だ。

「複合手術が悪い」という話ではない。
適切な患者に・適切な術式の組み合わせで・
経験ある術者が行えば、複合手術は合理的な選択肢になり得る。

大切なのは「なぜまとめるのか・何をまとめるのか」を
術者と詰めて設計することだ。
「お得だから」ではなく「医学的に合理的だから」という理由が必要だ。

NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

まとめ

  • 670名の後方視的研究(2025年・Aesthetic Plast Surg・PMID 41145863)で、複合手術群は単独手術群より合併症率が有意に高かった(p<0.001)。最多の組み合わせは腹部形成術+脂肪吸引(15.4%)。
  • 腹部形成術+脂肪吸引、腹部形成術+乳房手術の組み合わせでリスク上昇が目立った。個別のオッズ比等の数値は論文本文での確認が必要だが、「組み合わせの種類でリスクが変わる」という方向性は示されている。
  • リスクと関連する患者因子として、高齢・高BMI・麻酔時間の延長・既往疾患等が挙げられる。自分がどのリスク因子を持つかを担当医師と確認することが重要だ(各因子の具体的倍率は論文本文要確認)。
  • 「まとめる=危険」ではなく「何をまとめるか・患者はどんな状態か」によってリスクが変わる。術者と「なぜこの組み合わせか・リスクはどう評価したか」を詰めることが、安全な手術設計の起点になる。
📌 術前カウンセリングで確認する3つの問い
「この組み合わせを選ぶ医学的な理由は何ですか?別々に行う選択肢はありますか?」
「私の年齢・体格・健康状態でこの組み合わせのリスクはどう評価しますか?」
「合併症が起きた場合の対応体制と、緊急時のプロトコルはどうなっていますか?」

よくある質問(FAQ)

Q
腹部形成術(タミータック)と脂肪吸引は同時に受けられるか?
医学的に不可能ではないが、リスクが上昇することを理解したうえで判断する必要がある。今回の研究ではこの組み合わせが最多(15.4%)で、脂肪吸引を加えた群では合併症リスクの有意な上昇が示された(p=0.002)。執刀医の経験・患者の体格・施設の整備状況が結果を大きく左右する。「一度に済ませたい」という動機だけでなく、「医学的に一度に行う合理的な理由があるか」を担当医師と詰めることが重要だ。
Q
「血清腫」「血腫」とは何か・なぜ起きるのか?
血清腫(seroma・しょうえきしゅ)は組織液が手術部位に溜まったもの、血腫(hematoma・けっしゅ)は血液が溜まったものだ。腹部形成術や脂肪吸引後に比較的起こりやすい合併症で、溜まった液体の量によっては穿刺(針で吸引)や追加処置が必要になる。予防のためにドレッシング(圧迫)・ドレーン(排液チューブ)の留置・術後圧迫ウェアの使用などが行われる。起きた場合の対応体制を術前に確認しておくことが重要だ。

出典・参考文献

  1. Al-Qarni M, et al. "Safety and Outcomes of Combined Aesthetic Surgical Procedures: A Retrospective Study of Risk Factors, Complication Rates, and Outcomes." Aesthetic Plast Surg. 2026 Feb;50(3):1190-1198. Epub 2025 Oct 27. PMID: 41145863. doi:10.1007/s00266-025-05348-z. Springer Nature

安達健一

安達 健一

NERO DOCTOR/BEAUTY 編集長

日本・米国看護師(BSN)・MBA保有。
世界の一次医療データをもとに監修。
広告主からの影響を受けない独立した編集方針を貫いています。