Merz Aesthetics発表 2026年4月8日 / FDA承認 2026年3月31日
「フィラーは顔に注射するもの」
その常識が少しずつ変わっている。
2026年3月31日、FDAはRADIESSE®(カルシウムハイドロキシアパタイト・CaHA)に対して
デコルテのしわ治療という新たな適応を承認した。
Merz Aestheticsが2026年4月8日に正式発表した内容によれば、
これはRADIESSEの第4適応(顔のしわ・手のボリューム・顎ラインに続く)となる。
Merzはこれを「米国でface and body両方に承認された最初で唯一のregenerative biostimulator」と位置づけている。
これはMerz自社の分類・表現であり、FDAがRADIESSEを「regenerative biostimulator」と公式に認定したわけではない。
「顔から身体へ」という美容医療のトレンドが、
FDAの承認というかたちで可視化された出来事だ。
📖 バイオスティミュレーターとは:注入後に組織を刺激してコラーゲン等の産生を促す製剤の総称。ヒアルロン酸系フィラー(補填型)と区別して使われる概念。
📖 デコルテとは:首から胸元(鎖骨周辺)にかけての露出しやすい部位。加齢によるしわが目立ちやすく、顔に次ぐアンチエイジング関心領域として注目されている。
- ✦FDAは2026年3月31日、RADIESSE®(カルシウムハイドロキシアパタイト・CaHA)のデコルテのしわ治療適応を承認した。Merz Aestheticsは2026年4月8日に正式発表した(一次情報確認済み)。
- ✦今回の承認はRADIESSEの第4適応(顔のしわ・手のボリューム・顎ラインに続く)となる。対象は22歳以上・saline 1:2希釈で使用する。安全性データは84週を超えるものがない(Instructions for Use 2026)。
- ✦MerzはRADIESSEを「米国でface and body両方に承認された最初で唯一のregenerative biostimulator」と位置づけるが、これはMerz自社の表現であり、FDAがそのカテゴリを公式認定したわけではない。
- ✦Merzが発表する満足度数値(80%超満足・83%再治療希望等)はすべて企業内部データ(Data on file)であり、研究デザイン・対照群・バイアス評価が公開されていない。独立した査読研究とは区別して読む必要がある。
- ✦今回のFDA承認は米国の承認であり日本の薬機法上に自動的に適用されない。RADIESSEを含むCaHA製剤の日本での承認状況・適応部位は個別に確認が必要だ。
RADIESSEとは何か──
「補填する」から「組織を刺激する」へ
RADIESSE®は、カルシウムハイドロキシアパタイト(CaHA)マイクロスフィアを
カルボキシメチルセルロース(CMC)ゲルに懸濁した製品だ。
2006年にFDAが顔のしわ治療として承認。
以降、手のボリューム補填・顎ラインの改善に適応が拡大されてきた。
従来のヒアルロン酸フィラーが「ボリュームを補填する」製剤だとすれば、
バイオスティミュレーターは「組織を刺激してコラーゲン・エラスチンなどの産生を促す」製剤だ。
RADIESSEのCaHAマイクロスフィアは体内で線維芽細胞を刺激し、
コラーゲン産生を促進するとされている(Merz発表・関連科学文献に基づく。ランダム化比較試験での確立とは別に考える必要がある)。
HA系フィラーよりも作用の持続期間が長いとされ、
「外側からボリュームを補うのではなく内側から組織の変化を促す」という概念設計だ(Merz・関連科学文献に基づく)。
デコルテ適応の詳細──
FDA承認日・対象・希釈法・安全性の限界
Merzは「80%以上の患者が皮膚の引き締まりに満足」「83%が1年後も再治療希望」「90%の医療者が4ヶ月で改善を確認」などを発表しているが、
これらはすべて「Data on file. Merz North America, Inc.」という企業内部データだ。
査読論文ではなく、研究デザイン・対照群の有無・バイアス評価が公開されていない。
「満足度が高い傾向がある」という方向性は参考になるが、独立した査読研究による検証とは区別して読む必要がある。
日本への示唆──
「米国FDA承認=日本でも使える」ではない
日本ではRADIESSE(カルシウムハイドロキシアパタイト製剤)は一部クリニックで自費診療として使用されているが、
薬機法上の承認適応・承認された使用部位は米国とは異なる。
「じゃあ日本でも打てるの?」──おそらく最も多い疑問に先に答える。
結論:FDAの承認は米国の話であり、日本の薬機法に自動的には適用されない。
RADIESSEを日本のクリニックで打てるかどうかは、使用する製剤・部位ごとに薬機法上の扱いを個別に確認する必要がある。
「米国でFDA承認された→日本で安全に使える」という論理は成立しない。
RADIESSEを含むCaHA製剤の日本での承認状況・適応部位は個別に確認が必要だ。
デコルテへの使用を検討する場合も、日本の薬機法上の扱いを確認することを推奨する。
「body aesthetics」というトレンドの文脈──
なぜ「顔から身体へ」が起きているか
顔の美容医療を続けていると、こんな経験をする人が増えている。
「顔はきれいになったのに、デコルテや首で年齢がわかる」
「服を選ぶとき、胸元の開きを避けるようになってきた」
「body aesthetics(ボディ美容医療)」は、顔以外の部位(デコルテ・手・首・腹部等)への注射製剤・機器治療の総称で、近年拡大しているトレンドだ。
顔・身体の非侵襲的スキンリフティング需要が過去数年で増加している。
RADIESSE以外にも、PCL(ポリカプロラクトン)・PDO糸・モノポーラRFなど
「非外科的なボディ治療」が急増している背景がある。
「美容医療=顔」という時代が変わりつつある。デコルテ・手・首・腹部・臀部という「顔以外の加齢変化」に注射製剤・機器治療を使うという需要が高まっている。その背景は:
①「フェイスダウン」した顔を作っても、首やデコルテで年齢がわかる、という患者の気づき
②高齢化に伴う「露出する部位全体のケア」という意識の変化
③バイオスティミュレーターという概念の広がりが「顔以外にも使える」認知を生んだ
今回のFDA承認はその流れに「規制の裏付け」を与えた出来事だ(NERO編集部の読み解き)。
まとめ
- ✦FDAは2026年3月31日にRADIESSE®のデコルテのしわ治療適応を承認。Merz Aestheticsは2026年4月8日に発表(Merz公式ページ直接確認)。22歳以上が対象・saline 1:2希釈で使用。RADIESSEの第4適応(顔・手・顎ライン・デコルテ)となる。
- ✦デコルテにおける安全性データは84週(約20ヶ月)を超えるものがない(Instructions for Use 2026)。Merzが発表する各種満足度数値はすべて企業内部データ(Data on file)であり、独立した研究による検証とは区別して読む必要がある。
- ✦今回のFDA承認は米国の承認であり、日本の薬機法上の承認適応には自動的に適用されない。日本でのRADIESSEを含むCaHA製剤の承認状況・適応部位は個別に確認が必要だ。
- ✦「顔から身体へ」という非外科的body aestheticsのトレンドに、FDA承認という規制の裏付けが付いた。バイオスティミュレーターの適応拡大は今後も続く見通しだが、エビデンスの蓄積と日本の薬事規制の両方を踏まえた判断が求められる(NERO編集部の読み解き)。
出典・参考文献
- Merz Aesthetics. "Merz Aesthetics Receives FDA Approval for RADIESSE® for the Treatment of Wrinkles in the Décolleté Area." April 8, 2026. merzaesthetics.com(本記事の主要一次情報・直接確認済み)
- RADIESSE® Instructions for Use. 2026. (デコルテ適応の安全性情報・Merz公式より)


