突然、顔にポチっとできた小さなニキビ。炎症を起こす前の状態であれば、薬を塗っておけばすぐに治るはず、と考えてはいませんか?しかし、ニキビを一日でも早く、確実に治すためには薬を塗るだけでなく、実はその前後のケアもとても重要なのです。今回は、意外と知らないニキビ治療について、分かりやすく解説。ニキビ治療の保険診療・自費診療の比較や薬の種類、薬を塗る前と後の正しいケアについてまとめています。ニキビが悪化しやすい、痕が残りやすいという方は間違った処置をしている可能性も。適切な治療法やケアについて一緒に学んでいきましょう。
1.ニキビはどうやって治療する?
ニキビは私たちにとって、とても身近な皮膚疾患のひとつ。10代の頃は“思春期ニキビ”、20代以降は“大人ニキビ”と呼ばれ、年齢を重ねるにつれて原因や症状も変化します。そのため、ニキビ治療ではニキビの状態を正しく見極め、適切な治療を行うことが大切です。
ニキビ治療は保険治療が基本!
基本的に、ニキビ治療は皮膚科や美容皮膚科にて保険適用の外用薬(塗り薬)が処方されることがほとんど。症状によっては保険適用の内服薬も併用されます。
<保険適用の外用薬の例>
- デュアック(過酸化ベンゾイル+クリンダマイシン混合薬)※2014年保険適用
- ベピオ(有効成分:過酸化ベンゾイル)※2015年保険適用
- エピデュオ(アダパレン+過酸化ベンゾイル混合薬)※2016年保険適用
- ディフェリン(有効成分:アダパレン)※2016年保険適用
- ゼビアックス(有効成分:オゼノキサシン)※2017年保険適用
- 抗生剤(ダラシン/アクアチムなど)
<保険適用の内服薬の例>
- 抗生剤(ドキシサイクリン/ミノサイクリンなど)
- ビタミン剤
- 漢方薬(荊芥連翹湯/清上防風湯/当帰芍薬散/十味敗毒湯など)
ニキビ治療薬に主に配合されている成分は、ピーリング作用とアクネ菌殺菌作用を持つ「過酸化ベンゾイル」、毛穴の詰まりや面ぽう抑制に効く「アダパレン」の2つです。抗菌や抗炎症作用を持つ薬が多く用いられます。 ニキビは保険診療でも十分に治療できますが、重症化、慢性化すると次のような自費診療をすすめられることもあります。
<自費診療による治療の例>
- イソトレチノイン内服(日本では未承認薬のため、医師の裁量で処方されることがあります)
- ケミカルピーリング
- レーザー治療
- イオン導入
- ダーマペン
自費診療は、難治性ニキビも治療できる点や、即効性があるという点がメリット。ニキビを繰り返す方には、肌質改善も見込める自費診療が向いているかもしれません。しかし一方で、保険診療と比べると治療費がかさむという点がデメリット。保険診療内で治療費を抑えたい方は、重症化する前に早めに治療開始したほうが良さそうです。
ニキビ治療は皮膚科?美容皮膚科?
皮膚科での治療は、ニキビの症状を治すことが目的。初期ニキビから炎症ニキビまで、保険適用内で外用薬・内服薬を処方する治療が基本です。一方、美容皮膚科ではニキビの症状改善だけでなく、肌質改善やニキビ痕の治療まで行います。さらに、ピーリングやイオン導入、レーザー治療など、自費診療を幅広く受けられるという特徴があります。 |
ニキビは4種類!それぞれに適した治療法は?
ニキビの主な原因は、次の3つ。
- 皮脂の過剰分泌
- 毛穴の詰まり
- アクネ菌の増殖
その進行度合いによって、ニキビは以下の4つの種類に分けられます。
①白ニキビ → ②黒ニキビ → ③赤ニキビ → ④黄ニキビ
このうち、③赤ニキビと④黄ニキビは炎症が起こってしまっている状態。放置するとニキビ痕が残りやすいため、早めに対処する必要があります。とくに、黄ニキビまで進行してしまうともうセルフケアではなかなか改善が見込めません。早急に適切な処置を行う必要があるでしょう。
ここからは、それぞれのニキビの特徴と適切な治療法についてご紹介します。
1 【白ニキビ】の特徴と治療法
皮脂が過剰に分泌され、毛穴の入り口が詰まった状態。小さく盛り上がって見え、“面ぽう”や“コメド”とも呼ばれます。
<白ニキビの治療>
炎症が起きていない初期段階のため、基本的にはスキンケアを徹底しましょう。皮脂汚れがたまらないように、肌を清潔に保つことが大切です。
◆保険診療の例
- ディフェリン(アダパレン)
- ベピオ(過酸化ベンゾイル)
◆自由診療の例
- ケミカルピーリング
- エレクトロポレーション
- イオン導入
②【黒ニキビ】の特徴と治療法
白ニキビの中で蓄積された皮脂が毛穴から表面に出てきて酸化した状態。中心が黒く見えます。
<黒ニキビの治療>
基本的には、白ニキビと同様のケアでOK。刺激を与えて悪化させないよう、肌を清潔に保つことを意識しましょう。
◆保険診療の例
- ディフェリン(アダパレン)
- ベピオ(過酸化ベンゾイル)
◆自由診療の例
- ケミカルピーリング
- エレクトロポレーション
- イオン導入
③【赤ニキビ】の特徴と治療法
黒ニキビがさらに進行して軽い炎症を起こしている状態。軽い痛みかゆみ、熱を持つようになります。
<赤ニキビの治療>
特に、赤ニキビの治療に関しては、とにかく炎症を抑えることが重要。 スキンケアだけではなく、炎症を抑える薬を使うことで、進行を抑えることができます。
◆保険診療の例
- ディフェリン(アダパレン)
- ベピオ(過酸化ベンゾイル)
- ゼビアックス
- エピデュオ(アダパレン+過酸化ベンゾイル混合薬)
- デュアック(過酸化ベンゾイル+クリンダマイシン混合薬)
- 抗菌薬の内服
- 漢方薬
◆自由診療の例
- ケミカルピーリング
- フォトフェイシャル
- メソアクティス
④【黄ニキビ】の特徴と治療法
赤ニキビの炎症が悪化し、膿をもった状態。重症化するとニキビ痕や色素沈着を引き起こします。
<黄ニキビの治療>
黄ニキビはクレーター状のニキビ痕や色素沈着が起こる可能性がとても高い状態です。まずは、炎症と膿をできるだけ早く抑える必要があります。
◆保険診療の例
- ディフェリン(アダパレン)
- ベピオ(過酸化ベンゾイル)
- ゼビアックス
- エピデュオ(アダパレン+過酸化ベンゾイル混合薬)
- デュアック(過酸化ベンゾイル+クリンダマイシン混合薬)
- 抗菌薬の内服
- 漢方薬
◆自由診療の例
- ケミカルピーリング
- イソトレチノインの内服
ニキビ治療は市販薬でもOK?
ニキビ治療薬は、市販でも購入が可能です。なかには薬剤師の説明が必須なものもありますが、手軽に購入できるため常備している方も多いのではないでしょうか。しかし、市販薬と処方薬には次のような違いがあるため、使用する際には注意が必要です。
市販薬 | 処方薬 | |
---|---|---|
有効成分の配合量 | 少ない | 多い |
効果の強さ | 弱い | 強く出やすい |
副作用 | 少ない | 強く出やすい |
病院で処方される薬は「医療用医薬品」と呼ばれ、作用や使用方法について医師や薬剤師が管理します。一方で、「一般用医薬品」「要指導医薬品」と呼ばれる市販薬は、添付の説明書に書かれている使用量や使用方法を守れば、誰でも比較的安全に使える点がメリット。しかし、市販薬は処方薬よりも使われている有効成分の数が少なく、効果も弱い傾向にあります。
例えば、軽度のニキビには市販薬でも十分効果がありますが、重症のニキビや長期間治らない場合には、市販薬では十分な効果が得られないことがあります。
市販薬を使ってもなかなか改善しない場合にはニキビの症状と合っていない可能性が高いため、早めに医師に相談し、適切な薬を処方してもらうようにしましょう。
例えば、処方薬にはベピオゲル(過酸化ベンゾイル)やディフェリンゲル(アダパレン)などがあり、これらは強力な抗菌作用や角質剥離作用を持っています。また、内服の抗菌薬や漢方薬も処方されることがあります。
2.薬の効果がアップ!正しい塗り方やケア方法とは?
ニキビの薬は、塗り方や塗った後のケアによってさらに効果を高めることができます。薬自体の用法・容量を守ることはもちろんですが、効果的な塗り方やケアについても意識してみましょう。
ニキビの薬は、洗顔後に塗るのが一般的です。日本皮膚科学会の「尋常性ざ瘡・酒さ治療ガイドライン」によると、洗顔回数は朝晩1日2回が目安とのこと。ニキビ薬もそのタイミングに合わせて塗り直すようにすると良いでしょう。
<洗顔~ニキビ薬の塗布までの正しい手順>
- 手をきれいに洗う
- たっぷりと洗顔料を泡立てて、顔全体を優しく洗う
- ぬるま湯で優しく洗い、清潔なタオルで水分を拭き取る
- 保湿をしっかり行う
- 薬を塗る(チューブから直接患部へ塗らず、いったん指や綿棒に取ってから塗る)
- (炎症を起こしている場合)薬を塗った上からサージカルテープで患部を覆う
ニキビの薬を塗るときには、清潔に取り扱うことが一番。炎症を起こしている場合には、患部へ雑菌が入らないように、薬を塗った上からサージカルテープで覆っておき、そのサージカルテープにさらに清潔な綿棒で薬を塗っておくのも効果的です。その際には、1日2回は薬を塗り直し、テープを貼り替えるようにしましょう。ただし、これはNEROの監修医師ならではの方法でもあり、一般的な皮膚科医の推奨する対応方法ではないので、ニキビの種類によっては、まれにテープが肌に合わないことで痒みなどが生じることもあるため、初めて使う際には様子を見るようにしてください。
なお、ディフェリン(アダパレン)やベピオ(過酸化ベンゾイル)のように、洗顔後にスキンケアで肌を整えてから使用する薬もあれば、スキンケア前に塗るものもあります。
※なお、ディフェリン(アダパレン)やベピオ(過酸化ベンゾイル)は基本的に夜に使用することが多く、日中の使用は避けるべきです。
ニキビ薬の多くは副作用として乾燥しやすいという特徴があるため、塗るタイミングにかかわらず保湿は徹底するようにしましょう。使用する際には、医師や薬剤師の指示をしっかりと守ることが重要です。
3.難治性ニキビ治療薬として注目!「イソトレチノイン」とは
難治性ニキビ、重症化ニキビの治療薬として処方されることも多いのが、「イソトレチノイン(ロアキュタン)」という内服薬です。欧米では長く使用されているものの日本ではまだ未承認のため、国内では自費診療のみで取り扱いがあります。
イソトレチノインは、ビタミンA誘導体の一種。他のニキビ治療薬とは違い、
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といったメリットがあります。
保険診療でもニキビ治療は十分に行えるとお伝えしましたが、なかには「何度もニキビが繰り返しできてしまう」「治療を続けているのに効果がない」と悩む方もいます。そのような方におすすめされているのが、イソトレチノイン。ケミカルピーリングと併用で取り入れているクリニックも多いようです。
ただし、副作用や注意点も多く、 薬剤のため、医師の指導のもと正しく使う必要があります。保険診療ではなかなか効果が感じられない、というときの最後の選択肢として覚えておくと良いでしょう。
まとめ
ポチっとできた小さなニキビは、適切な薬を正しく塗り、早めに対処することが大切です。そうすることで治療を長引かせることなく、きれいに治すことができるでしょう。ニキビを繰り返しやすい方は重症化を防ぐためにも、自費診療についてリサーチしておくと安心。薬が効かない、むしろ悪化してしまったというときには、早急に専門医に相談しましょう。ニキビは私たちにとって身近な皮膚疾患。治療法や薬の知識も身につけておいて損はありません。健康的な美肌を目指すためにも、ニキビと正しく付き合っていきたいものですね。
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