【ステマ規制】初の行政処分!医療法人が高評価投稿で注射割引。患者側が気をつけるべきことは?

【ステマ規制】初の行政処分!医療法人が高評価投稿で注射割引。患者側が気をつけるべきことは?

2023年10月、ステルスマーケティング(以下ステマ)を規制する法案が施行され、翌年6月に初めて行政処分を下されたのはとある医療法人でした。ステマと言えば芸能人やインフルエンサー、一般企業をイメージしがちですが、今回の件では「病院」が対象となり、私たち「一般患者」が関わっていたことから医療業界でも問題視されています。そこでこの記事では、医療法人が処分を受けるに至った背景や、美容医療へもたらす影響を解説。また、今後クリニックを選ぶ際に気をつけたいことや、正しい情報の見極め方をご紹介します。

初めに:ステマ規制の背景と重要性・美容医療界への影響

ステマ規制は、SNSなどを含むインターネット上の偽りの情報発信を防ぐために制定されました。まずはステマ規制がスタートするまでの背景や、美容医療界へどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。

ステマ規制の概要と目的

ステマとは、広告にも関わらず広告ということを明記せずに、第三者が宣伝を行う行為のことです。私たち消費者は普段、SNSやテレビや雑誌、ウェブサイト上の広告を見てサービスや物を購入するか判断しています。その際、はっきりと広告ということが分かっていれば、「誇張表現がされているのではないか?」と疑問を持ったり、ほかの類似商品と比較したりできます。

しかし第三者による口コミや体験談では、事業者の広告による誇張表現が含まれているかどうかまでは判断できません。むしろ、忖度のない正しい意見だと捉えてしまうこともあるでしょう。このように、ステマは第三者を介すことでサービスや物に対する消費者のイメージを誤認させ、選択肢の幅を狭めてしまう可能性があるのです。

これまでステマは倫理上問題があるとされてきたものの、罪に問われることはありませんでした。ですがステマ規制がスタートした2023年10月からは、事業者が商品やサービスを提供し、第三者が口コミや体験談をインターネット上にあげる際は、「PR」や「プロモーション」など広告だと分かる表記をしなければならないと義務づけられています。今後は違反したと判断されると法的措置が下され、従わない場合は罰則が科せられる可能性も。

ただしステマ規制は、あくまでもステマで消費者に誤解を生ませないようにするため、事業者(広告主)に対して規制するための法律です。正式には消費者庁が定める景品表示法の第5条第3号「その他、誤認されるおそれのある表示」の一部に「ステルスマーケティング」が追加された形となり、違反となるかどうかの基準についても、景品表示法の中で詳細に定められています。

とくに現代は、スマホ社会となり年齢問わず口コミや体験談を目にする機会が多いでしょう。実は2016年まではGDP上位9ヶ国の中で、ステマへの規制がないのは日本だけでした。今回の規制スタートで、ようやく世界に追いついたことになります。ステマ規制は、健全かつ自由に選択できる環境を守るためにもなくてはならないルールなのです。

<ステマ規制の対象(※)>

対象者 事業者(広告主)
対象媒体 インターネット・テレビ・ラジオ・雑誌・新聞など

(広告でない個人の感想やCMなどの広告と明確に分かるものを除く)

違反となる例

(一部抜粋)

・事業者が第三者にインターネット上への投稿を依頼・指示し、広告であることを隠している場合

・事業者が無関係の第三者になりすまし、自社の商品の優良さをインターネット上に表示させた場合

・事業者が第三者にインターネット上への投稿を明確に依頼・指示していないものの、事業者の意図に沿っている場合など

美容医療業界への影響は?

もともとステマが横行していたのは、消費者の「広告」に対する不信感や嫌悪感が高まっていたことが原因だと考えられています。一方で、InstagramやYouTubeで広告を開示した投稿が当たり前になってきている今の時代、信頼しているインフルエンサーのおすすめとして広告が認識されやすくなっているとも言われています。

これは美容医療においても同様で、「広告なのは承知の上で、推しインフルエンサーのおすすめなら間違いないはず」と治療や購入に踏みきった経験がある方もいるのではないでしょうか?

本来ならカウンセリングも考慮して口コミは参考程度にするのが望ましいのですが、美容や健康などコンプレックスにまつわる悩みは周囲に相談しづらい側面もあり、インターネット上の口コミで判断する傾向にあります。

インフルエンサーを利用した認知度向上や集患、口コミ対策は美容医療業界でも行われているため、医療機関は口コミが患者側に大きな影響を与えること、違反があれば重大なペナルティが科せられることを再確認し、これまで以上に根拠にもとづいた情報提供を行っていく必要があるでしょう。

しかしステマ規制のグレーゾーンをすり抜けたり、知識不足から違反をしてしまうクリニックやインフルエンサーがいないとも言いきれません。業界全体で透明性を保つよう厳正化していかなければならないのと同時に、患者側でも「この情報はステマではないか?」と疑いの目を持つことも大切です。

初の行政処分の詳細と法律違反の具体例

出典:NHK

そして冒頭でも触れたように、ステマ規制がスタートして初めて行政処分が下されたのが内科診療所Aを運営する医療法人でした。Aは2023年10月、インフルエンザワクチン接種のため受診した患者に、グーグルマップの口コミ評価で最高評価の「星5」または「星4」を投稿するよう依頼。その引き換えに、ワクチン接種料を割引価格にすると伝えたとされています。

これにより、依頼前は口コミ総数184件(うち星5が9件、星1が9割以上)だったものが、依頼後は短期間で269件の口コミが寄せられ、あっという間に投稿欄の9割以上が「星5」評価で埋め尽くされました。何も知らない第三者がこの投稿欄を見れば優良な病院だと誤認してしまいますし、真相を知れば悪い口コミを良い口コミで相殺し、集患を狙いたかったという意図が推測できてしまいます。
消費者庁はこのうち45件をステマ行為にあたると認定し、口コミの取り消しや再発防止を求める措置命令を下しました。ステマ規制は施行前より盛んに警鐘を鳴らしてきましたが、残念なことにこの件で医療従事者が行政処分第1号となってしまったのです。

<PICK UPコラム>
医療業界には、景品法とは別に医療機関による不適切な広告を取り締まるための「医療広告ガイドライン」が存在します。医療広告ガイドラインは厚生労働省が定めるもので、虚偽広告や誇大広告、優劣をつける表現や口コミ・体験談を医療機関が発信することを固く禁じています
消費者庁の景品法と厚生労働省の医療広告はどちらも「優良誤認表示(品質を実際よりも良く見せること)」「有利誤認表示(料金を実際よりもお得に感じさせること)」を規制するために設けられたルールですが、医療広告ではさらに、医療法にもとづく詳細で厳格な特別ルールとなっているのが特徴です。
今回Aが行った行為は口コミを不正に促進し広告そのものを欺く行為だったため、ステマ告示違反と判断されたと考えられます。ステマ規制は広告とみなされる媒体の種類や表示される内容に制限がなく、一般事業者・医療機関といった枠組みを超えて広告全体の在り方を律するものです。
Aがステマ規制を知らなかったかどうかは定かではありませんが、今後はどの医療機関も「知らなった」では済まされないでしょう。景品法と医療広告それぞれを遵守していくことで、医療業界における広告の精度と信頼性がますます高まることを期待したいですね。

美容医療クリニックではどんなことが起きうる?

ステマ規制は広告主を対象としたものですが、知らず知らずのうちに自身がステマ行為に加担している可能性もあります。例えばコスメのサンプルを無料でもらって「広告の表記をせずに良い感想を投稿してほしい」と依頼されたら明らかにステマだと分かりますが、今回のケースのように特典と引き換えに口コミを依頼されるシーンはネット上や街中でもよくあるでしょう。そこでどのレベルだとステマになり、どのレベルだと問題ないのかNERO独自の目線で解説。美容医療クリニックで起こりうるケースをご紹介します。

ケース1「今回の施術に満足したら、良かった点を口コミに書いてください」

これは×。クリニックが患者をコントロールして良い口コミだけを書くよう促進していると判断されます。逆に、「何を書いてもOKなので、口コミをお願いします」であれば問題ありません

ケース2「施術の感想を投稿してくれたら、次回5,000円オフクーポンプレゼント」

これは △ですが、解釈によっては×となる微妙なラインです。口コミの謝礼として割引や特典をつけることはただちに違反になることはないとされています。ただし、「次回5000円オフ」を受け取りたい患者が、マイナスの口コミを投稿することは心理的に少ないと考えられ、恣意的に有利なクチコミを集めていると取られかねないため、客観的な状況などを考慮してクリニックの宣伝だと判断される可能性もあるでしょう。
※なお、「高評価をしてくれたら、次回5,000円オフクーポンプレゼント」の場合は口コミ内容を指示しているため一発アウトです。

ケース3「口コミ投稿のページはここからになります」とQRコードを案内される

これは○。ただ口コミの記載方法を説明されただけなので患者をコントロールしたとは言えません。しかしQRコードの横に「記載例」など見本があった場合は違反となってしまいます。

口コミ業者の見分け方!?患者目線で注意すべきポイントは?

ここまで第三者が広告主に依頼されて口コミを行うステマ告示違反について解説してきましたが、口コミ業者による第三者へのなりすましもステマとなります。美容医療においては口コミが治療内容やクリニック選びに影響しますが、インターネット上にはこうした誤った情報も散見されるため、正しい情報を見極める力を身につけることが大切です。ここでは患者目線で見るべき口コミのポイントをまとめました。ぜひネットで検索する際はチェックリストを活用してみてくださいね。

<口コミを見極めるチェックポイント>

  • 口コミ件数が異常に多い
  • 他院に比べて平均評価が異常に高い
  • 星5と星1で二極化しており中間評価がほぼない
  • 口コミ投稿数が1つしかないユーザーが多くいる
  • 投稿日時が同じ日に集中している
  • 口コミの文字数がほぼ同じボリューム
  • 口コミに宣伝色が濃く現れている
  • 文章に違和感がある・日本語がおかしい

まとめ

ステマの認識が広まる中での規制開始と、対象となるはずがないと思わされていた医療法人の行政処分。消費者であり患者である私たちが思っている以上に、インターネット上の口コミは偽りであふれているのかもしれません。そしてもし自分がステマを行う立場になってしまったら、その口コミを読んだ別の誰かが間違った判断をする可能性もあります。とくに美容医療での口コミは大きな判断材料となり得ます。自分以外の誰かに口コミを促されることの意味を、今一度一人ひとりが再認識する必要があるでしょう

【参考】
※:消費者庁「事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック」(9~10ページ)

・当サイトは、美容医療の一般的な知識をできるだけ中立的な立場から掲載しています。自己判断を促す情報ではないことを、あらかじめご了承ください。また、治療に関する詳細は必ずクリニック公式ホームページを確認し、各医療機関にご相談ください。
・本記事は、執筆・掲載日時点の情報を参考にしています。最新の情報は、公式ホームページよりご確認ください。
・化粧品やマッサージなどが記載されている場合、医師監修範囲には含まれません。

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