近年、「女性の健康と美をトータルでサポートする」という考えのもと、専門領域に加えて美容医療も提供する婦人科が増えつつあります。
ただし、クリニックの経営安定化や収益の多様化につなげるためには、患者のニーズを的確に把握することが重要です。
そこで今回は、患者が「近所の婦人科にあったら通いたい」と考える施術をランキング形式で解説。
フェムに興味のある方、これから自由診療を増やしたいと思っている先生、患者のニーズに応えられる施術を新たに導入したいと思っている先生にも必見の内容です。
できれば婦人科で受けたい施術ランキング
まずは、患者が「できれば婦人科で受けたい」と考える施術を紹介します。
■第1位 フェムゾーン関連の施術
フェムゾーンは、女性のデリケートゾーンである腟・外陰部・肛門周辺を指す言葉です。フェムゾーン関連の施術は婦人科と親和性が高い領域のため、「専門家である産婦人科医の施術なら、より安心できそう」という患者心理が働きやすいでしょう。
フェムゾーン関連の施術には以下のようなものがあります。
◆VIO脱毛
婦人科通院時にセットで希望されやすい施術。ムレや臭いなどの不快感への対策や、将来の介護への備えとしてニーズがある。
◆黒ずみ・色素沈着治療
「婦人科受診のついでに相談したい」という患者ニーズが多い施術。外用薬ハイドロキノンの処方・レーザー治療・ピーリングなどを行うクリニックが多い。
◆フェムゾーンの引き締め施術・形成術
見えない部分の美しさまでこだわる、美意識の高い層から需要がある施術。引き締め効果が期待できるデバイス治療や、小陰唇縮小・副皮切除など女性器の形を整える形成術などのニーズも増加傾向。
■第2位 更年期・ホルモンバランスの変化とリンクする皮膚科治療
更年期やホルモンバランスの変化に伴う皮膚科治療が受けられるのも、女性の体を熟知した婦人科ならでは。体の状態を総合的に判断し、適切な施術方法や施術時期を提案できるのは大きな強みといえるでしょう。
婦人科で導入されている皮膚科治療には、以下のようなものがあります。
◆美肌治療
ホルモンの低下と肌老化の関連を背景に、「婦人科×美容皮膚科」のニーズに応えられる施術。シミやシワにアプローチする、レーザー治療・光治療(IPL)・トーニングなどが定番。
◆生理周期に伴うニキビ治療
ホルモンバランスに関連するため、婦人科での相談を希望されやすい施術。
◆敏感肌・アトピー性皮膚炎・かゆみ治療
「外陰部や体全体の皮膚トラブルを婦人科で一緒に扱ってほしい」という声がある施術 。
◆脱毛(顔・体)
婦人科受診世代(20代~40代)で需要が安定している施術。
◆FAGA治療(女性の薄毛・抜け毛対策)
ホルモンとの関連性があり、婦人科で相談したい層が存在するためニーズのある施術。
■第3位 美容・QOL向上系
美意識の高い患者やQOL(生活の質)の向上を重視している患者の間で、ニーズが高い施術は以下のとおりです。
◆ダイエット・痩身治療(脂肪溶解注射・GLP-1処方など)
妊娠・出産前後や更年期の体型変化に直結する施術。脂肪溶解注射や、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の処方などがある。
◆点滴療法
婦人科外来に組み込みやすく、収益性も高い施術。グルカゴン点滴・疲労回復点滴・高濃度ビタミンC点滴など、さまざまな種類がある。
◆スキンケア外用薬処方
フェムゾーン関連施術や皮膚科治療との相乗効果が期待できるため、患者ニーズが高い。保湿剤・ステロイド外用薬・ホルモン外用薬などがある。
必ず婦人科で受けたい施術ランキング
世界的な患者ニーズとしては、大きく分けると
- 「QOL改善」分野
- 「検査・予防」分野
の2分野となるようです。
いずれも「負担を減らし、QOLを高めたい」という共通ニーズに基づいており、婦人科における次の導入施策の方向性を示しています。ただし、海外では「検査・予防領域」などが強いのに対し、日本ではあまりニーズがないのが現状です。
施術の検討に際しては、海外と日本ではヘルスリテラシー*のレベル感が違うことに注意が必要です。
*ヘルスリテラシー……健康に関する情報を理解・活用できる力のこと
■第1位 低侵襲治療
従来のものに比べ、体への負担がかかりにくい低侵襲治療は、痛みが少なく回復期間が短縮できるのが魅力。「切らずに治したい」「術後に長期間休みを取れない」といった女性にとって、メリットが大きいといえます。
<具体的>
低侵襲手術(腹腔鏡手術・ロボット手術)・腟デバイス治療(子宮筋腫や腺筋症に対するHIFU、性交痛へのRF治療)・腟ヒアルロン酸注射・性交痛ボトックスなど
■第2位 QOL向上が目指せる施術
世界の動きに日本も呼応し、女性のQOL向上も重視されるようになりました。以前は女性側が我慢を強いられてきた課題を改善する施術が、今、求められています。とくに、更年期女性からのニーズが高い施術といえます。
<具体的>
腟レーザー治療・腟育注射®・ホルモン補充療法・漢方薬の処方など
■第3位 検査・予防領域
子宮頸がんの原因ウイルスの感染の有無を調べるHPV(ヒトパピローマウイルス)検査や、性感染症に感染しているかどうか調べるSTI検査は、必ず婦人科で受けたいもの。検査結果によっては、投薬や処置が必要になると患者もよく分かっているためです。
ただ、最近は、検査アクセス向上*の観点から、受診しなくても自己採取した検体を検査機関へ発送することでHPVや性感染症への感染有無を確認できる、検査キットの利用も広がっています。
検査機関の提携クリニックに登録しておくと、検査結果が陽性だった患者の受け皿となれるでしょう。
*検査アクセス向上……患者が検査を受けられる機会・検査結果にたどりつくまでの利便性を高めること
■第4位 不妊検査・リプロダクティブ検査/保存治療
キャリア女性層から期待されているのが、「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性や生殖に関する健康と権利)に関する検査や治療です。
自分自身の性機能に問題がないか、欲しいタイミングで望むだけの子どもを持てるかどうかなどを検査で確認したいという女性からニーズがあります。
また、女性の社会進出が高まる中、将来の妊娠に備えて若くて質の良い卵子を凍結する、卵子凍結保存のニーズも高まりつつあるようです。
婦人科でほかの施術を受けたい患者心理とは?
最後に、患者が婦人科でほかの領域の施術も受けたいと思う心理を紐解きます。施術の導入で迷ったら、こちらで紹介するポイントもぜひ参考にしてください。
■かかりつけの婦人科=安心して相談できる場所
女性の体だけでなく、心にも丁寧に寄り添ってくれる診療スタイルの医師がいると、女性から安心して相談できる場所として、「かかりつけの婦人科」に選ばれやすい傾向にあります。
フェムゾーンの悩みは、専門家である産婦人科医にさえ話すことに抵抗を感じる女性も多いもの。そのため、心の機微まで汲み取ってくれる産婦人科医は非常に貴重な存在で、女性が心を開きやすいのです。
■まとめて解決したい
仕事・家事・育児をはじめ、趣味やボランティアなど、多くの女性は毎日を忙しく過ごしています。アクティブな女性ほど自分にかけられる時間は少なく、「できれば1箇所でまとめて効率良く完結させたい」と思う傾向にあるようです。
そのため、婦人科受診のついでに肌・ボディ・フェムゾーンの美容施術が受けられることは理にかなっているといえます。
■デリケートな領域を扱うなら美容も婦人科で完結してほしい
婦人科は、女性の繊細な体の部分であるフェムゾーン関連の医学的な知識や治療技術に特化しているため、女性から信頼されやすい診療科です。
そのため、婦人科でなくても可能な施術でも、「フェムゾーンの美容施術なら、婦人科の先生にお願いしたい」と強く思う患者が多い傾向にあります。
実際、NERO編集部が取材したところ、「婦人科の先生が施術しているクリニックを選んだ」「安心感があり、相談もしやすかった」という声が聞かれました。
施術の導入に際しては、患者の心理を分析してニーズの高さを検討
今回は、近所の婦人科に導入されていたら通いたいと患者が感じる施術をランキング形式で紹介し、患者の心理についても考察しました。
現状では海外と日本では患者ニーズが若干異なりますが、今後は世界の動向に影響を受けることも予想されます。まずは取り入れやすい施術から導入してみて、こまめにニーズを把握し、「患者が通いたくなる婦人科」を目指してみてはいかがでしょうか。
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| ・当サイトは、美容医療の一般的な知識をできるだけ中立的な立場から掲載しています。自己判断を促す情報ではないことを、あらかじめご了承ください。また、治療に関する詳細は必ずクリニック公式ホームページを確認し、各医療機関にご相談ください。 ・本記事は、執筆・掲載日時点の情報を参考にしています。最新の情報は、公式ホームページよりご確認ください。 ・化粧品やマッサージなどが記載されている場合、医師監修範囲には含まれません。 |
【治療の内容】VIO脱毛
【治療期間および回数の目安】4~10週間毎に8~12回程度※個人の状態や機種によって異なります。
【費用相場】1回¥10,000~¥25,000※クリニックや機械の種類によって異なります。
【リスク・副作用等】炎症性浮腫・毛嚢炎・増毛・硬毛化・打ち漏れ・火傷(やけど)など
【未承認機器・医薬品に関する注意事項について】
・本治療には、国内未承認医薬品または薬事承認された使用目的とは異なる治療が含まれます。
・治療に用いる医薬品および医療機器は、各クリニック医師の判断のもと、個人輸入手続きが行われています。個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報は、下記をご参考ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html
・薬事承認を取得した製品を除き、同一成分や性能を有する他の国内承認医薬品および医療機器はありません。
・諸外国における安全性等に係る情報
-重大なリスクや副作用が明らかになっていない可能性があります。
・万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
【施術の内容】脂肪溶解注射
【施術期間および回数の目安】約1~2週間間隔で計3~5回程度 ※状態や製剤によって異なります。
【費用】1ccあたり約 ¥5,000~ ¥10,000 ※本施術は自由診療(保険適用外)です。クリニックによって異なります。
【リスク・副作用等】
【未承認医薬品に関する注意事項について】
・本施術には、日本国内において薬事承認を受けていない未承認の医薬品を使用する場合があります。
・施術に用いる医薬品は、医師の判断のもと、個人輸入手続きが行われています。詳細は厚生労働省の「個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報」をご確認ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html
・薬事承認を取得した製品を除き、同一成分を有する他の国内承認医薬品は存在しない場合があります。
・重大なリスクや副作用が明らかになっていない可能性があります。
・万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
【治療の内容】GLP-1注射(GLP-1受容体作動薬の自己注射)
【治療期間および回数の目安】薬剤によって異なる。1日1回、1日2回、週1回など
【費用相場】月額15,000〜30,000円程度が目安 ※各クリニックによって異なります。
【リスク・副作用等】下痢、便秘、嘔気、急性膵炎など
【未承認機器・医薬品に関する注意事項について】
・本治療には、国内未承認医薬品または薬事承認された使用目的とは異なる治療が含まれます。
・治療に用いる医薬品および医療機器は、各クリニック医師の判断のもと、個人輸入手続きが行われています。個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報は、下記をご参考ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html
・薬事承認を取得した製品を除き、同一成分や性能を有する他の国内承認医薬品および医療機器はありません。
・諸外国における安全性等に係る情報
-重大なリスクや副作用が明らかになっていない可能性があります。
・万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
【治療の内容】ビタミンC主成分の点滴
【治療期間および回数の目安】約1~4週に1回程度
【費用相場】1回 約¥10,000~¥30,000 ※各クリニックによって異なります。
【リスク・副作用等】点滴刺入部位の痛み、腫れ、気分不良、低血糖など
【未承認機器・医薬品に関する注意事項について】
・本治療には、国内未承認医薬品または薬事承認された使用目的とは異なる治療が含まれます。
・治療に用いる医薬品および医療機器は、各クリニック医師の判断のもと、個人輸入手続きが行われています。個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報は、下記をご参考ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html
・薬事承認を取得した製品を除き、同一成分や性能を有する他の国内承認医薬品および医療機器はありません。
・諸外国における安全性等に係る情報
-重大なリスクや副作用が明らかになっていない可能性があります。
・万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。


