毎周期に訪れるPMSや年齢を重ねて現れ始めた更年期に似た症状……これらに悩まされている女性も少なくないのではないでしょうか。これらの症状の改善が期待できるのがホルモン補充療法です。ホルモン補充療法には、いくつかの種類がありますが、今回は塗り薬について解説。ホルモン補充療法における塗り薬に期待できる効果や、メリットなどをお伝えします。ホルモン補充療法が気になっているものの、クリニックの受診は敷居が高く、また痛みを伴う治療は避けたいという方にとって役立つ情報をお届けします。
INDEX
1.女性の健康に関わる「女性ホルモン」とは?
ホルモンとは人間の体の働きを維持、調整する必要不可欠な物質です。脳や体のさまざまな臓器で生成されるもので、アドレナリンやインスリンなど100種類以上があります。ホルモンのうち、女性特有の臓器である「卵巣」でつくられるものが「女性ホルモン」です。そして、女性ホルモンには「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類があり、月経や妊娠をはじめ、女性の体の健康を保つために大きな役割を担っています。
女性の2大ホルモンである、エストロゲンとプロゲステロンについて以下で詳しく解説していきましょう。
■エストロゲンとは?
エストロゲンは、卵胞ホルモンとも呼ばれます。妊娠に備えた体づくりをするためのホルモンで、成長に伴って分泌量が増えていき、生殖器の発達や、女性らしい丸みを帯びた体つきへと導きます。また、コラーゲンの生成を促し、すこやかな肌へ導く作用もあるのです。
分泌量のピークは20代で、40代後半から50代の閉経前になると急激に減少します。
■プロゲステロンとは?
黄体ホルモンとも呼ばれるホルモンです。排卵直後に分泌量が増え、エストロゲンの働きで厚さを増した子宮内膜を安定させるほか、基礎体温の上昇や乳腺の発達にも影響を与えます。
妊娠が成立しない場合は、プロゲステロンは減少していき、その後月経の開始へとつながります。
2.女性ホルモン補充療法とは?
女性ホルモンは女性の体の健康維持に欠かせないものですが、年齢を重ねていくと、エストロゲンやプロゲステロンの女性ホルモンが減少する傾向にあります。また、過度なストレスやダイエットなどが原因でバランスが乱れてしまうこともあるのです。
その結果、体にはさまざまな不調が起こる可能性があります。そこで、有効とされるのが女性ホルモン補充療法です。「HRT」とも呼ばれ、卵巣機能の低下などから起こるエストロゲンの分泌の減少や揺らぎに対し、エストロゲンを補充する療法です。
ホルモン補充療法で用いられる女性ホルモン剤の種類には以下があります。
- 塗り薬
- 貼り薬
- 飲み薬
- 注射
以上のように、ホルモン補充療法には経口タイプ、塗布タイプ、貼付タイプ、そして注射で補う方法があります。
3.女性ホルモン補充療法により効果が期待できる症状
ホルモン補充療法を行うことで、症状の緩和が期待できる症例を紹介します。
H3:3-1.更年期障害
更年期とは、閉経の前後にあたる約10年間の期間のことで、一般的には45~55歳頃にあたります。更年期自体はどの女性にも訪れるものですが、更年期症状の現れ方には個人差があります。症状が重く、生活に影響が出ている状態が「更年期障害」です。
更年期障害の症状を改善するための、有効なホルモン治療として挙げられるのが女性ホルモン補充療法。更年期をはじめ、更年期前後の以下のような症状に効果が期待できます。
- ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)
- 発汗
- イライラ
- 疲労感
- 性欲低下
- 性交痛
- うつ症状
- 不眠 など
以上のように、ほてりや発汗など目に見える症状をはじめ、イライラや怠さなど精神的な症状の緩和にも働きかけます。
■PMS(月経前症候群)
PMS(月経前症候群)とは、主に月経開始3~14日ほど前に現れる症状のことです。毎周期、月経前になると出始め、月経が始まると自然とおさまるとされています。PMSは妊娠が望める世代の8割近くの女性に現れる症状ですが、日常生活がままならないほどの重い症状の方から、比較的症状の軽い方まで、個人差があります。
PMSの主な症状は以下の通りです。
- 頭痛
- 腹部の張りや痛み
- 腰痛
- イライラ
- 不安感
- うつ症状 など
更年期障害と同様に、体に現れる症状と精神的な症状があります。PMSの主な治療法は対症療法とされていますが、ホルモン補充療法を行う場合は、プロゲステロンを補充する治療となります。
■女性の体をすこやかに保つ働き
そのほか、ホルモン補充療法には、女性の体をすこやかに保つ働きも期待できます。女性ホルモンの補充により骨密度が高まり骨粗しょう症を予防できる、血管を健康に保ち動脈硬化や高血圧を予防するなど、健康維持に役立ちます。
また、髪の毛や肌にうるおいやツヤを与えるなど、美容の観点でうれしい効果も期待できるのです。
4.女性ホルモン補充療法の1つ「塗り薬」の効果とは?
前述したとおり、女性ホルモン療法は主に4つの種類に分けられます。それぞれのホルモン補充療法について、期待できる効果や利点、注意点を挙げていきましょう。
期待できる効果や利点 | 注意点 | |
塗り薬 | ・塗布量や頻度を調整しやすい
・緩やかに作用する ・胃腸や肝臓への影響が少ない ・陰部への塗布で性交痛の緩和など、局所的に使いやすい |
・効果が出るまでに時間がかかる
・劇的な効果を感じにくい ・基本的には毎日塗る必要がある ・肌にかゆみやかぶれが起こる可能性がある |
貼り薬 | ・長時間にわたりホルモンの血中濃度レベルを維持できる
・胃腸や肝臓への影響が少ない |
・肌に赤みやかぶれなどが起こる可能性がある
・テープを貼るため、見た目に抵抗がある方には不向き |
飲み薬 | ・日常生活に取り入れやすい
|
・塗り薬や貼り薬と比較すると胃腸や肝臓へ影響が出やすい
・毎日服用するケースが多い |
注射 | ・ダイレクトに血中に補充するため、早く効果を感じやすい | ・主には男性ホルモンの補充に用いられる療法で、女性ホルモンの補充に用いられることは少ない |
いずれの方法も、利点があるものの、使用時には注意しておきたい点もあります。
■女性ホルモン補充療法へ不安があるなら塗り薬を検討しよう
以上をふまえ、女性ホルモン補充療法を始めてみたいと思うものの、経口薬や貼り薬には抵抗があるという方もいるのではないでしょうか。とくに経口薬は内臓へかかる負担を懸念するという声も聞かれます。
そのような女性ホルモンの補充療法に不安を抱いている方には、緩やかに効果を発揮し、塗布量や頻度の調整も可能な「塗り薬」であれば比較的取り入れやすいのではないでしょうか。
塗り薬にはクリームとジェルがあり、塗り心地や触感が異なります。これらは膣粘膜や腕・足・腰など塗布部位によって使い分けるのがポイントです。医師に相談するほか、市販品を購入する際は製品の概要をよく確認してみると良いでしょう。
5.女性ホルモン補充療法に共通する注意点
いずれのホルモン補充療法には、以下の共通する注意点があります。治療を始める際には、これらの注意点をよく把握しておきましょう。
■副作用が想定されている
ホルモン補充療法の開始により、以下のような副作用が想定されています。
- 子宮からの不正出血
- 胃痛や吐き気
- 下腹部の張り
- 乳房の張りや痛み
これらの症状は、治療を続けるうちに自然とおさまると想定されていますが、必要に応じて医師に相談しましょう。
■黄体ホルモンを併用する必要がある
女性ホルモン補充療法でエストロゲンのみを補充し続けると、子宮内膜が厚くなりすぎてしまい、子宮体がんのリスク上昇が懸念されています。そこで、ホルモン補充療法を行う際には、プロゲステロンである黄体ホルモン剤を併用して補充するのが望ましいとされています。
ただし、過去に手術で子宮を摘出している方は、子宮体がんの恐れがないためエストロゲンのみの補充で構いません。
■やめどきの見極めが難しい
ホルモン補充療法を受けるうえで「やめたらどうなるの?」という不安を抱く方は多いです。ホルモン補充療法のガイドラインでは、年齢や投与期間には制限がないため、いくつになっても続けることは可能です。一方で、やめることも可能ですが、やめると症状が再発するケースも。
ホルモン補充療法のやめ方や、やめどきの見極めは難しいため、自己判断をせず医師に相談しましょう。
■まとめ
PMSや更年期障害に悩む方は、減少した女性ホルモンを補充することで、症状の改善が期待できます。HRTと呼ばれるホルモン補充療法には、飲み薬をはじめいくつかの種類がありますが、体内への影響が不安な方や、緩やかに効果を実感したい方は塗り薬を検討すると良いでしょう。
効果はゆっくりと現れますが、飲み薬と比較すると内臓への負担も少なくて済みます。また、注射のような痛みを伴う治療でもありません。PMSや更年期障害の改善を目指すものの、ホルモン補充療法への不安がある方は、塗り薬についてクリニックへ相談してみましょう。
・当サイトは、美容医療の一般的な知識をできるだけ中立的な立場から掲載しています。自己判断を促す情報ではないことを、あらかじめご了承ください。また、治療に関する詳細は必ずクリニック公式ホームページを確認し、各医療機関にご相談ください。
・本記事は、執筆・掲載日時点の情報を参考にしています。最新の情報は、公式ホームページよりご確認ください。
・化粧品やマッサージなどが記載されている場合、医師監修範囲には含まれません。