一定期間食事を断つことで、体を正常なリズムに戻せると話題を集める「ファスティング」。減量や腸内環境が整うなどの効果が期待できるため、興味をお持ちの方も多いでしょう。しかし、ファスティングについて調べると、不要な商品購入サイトに誘導されるケースがほとんど。そこで本記事では、基本的なファスティングのセオリーをご紹介します。ファスティング前後に欠かせない準備食・回復食のポイントについてもお伝えしますので、興味がある方はぜひお役立てください。
ファスティングってなに?【断食】とはどう違うの?
ファスティングとは、簡単にいうと一定期間食事を断つこと。具体的には半日~数日間程度、固形物を摂取しないことをいいます。
ファスティングは英語で「断食」を意味するため、ファスティングと断食に明確な違いはありません。しかし断食は、食事だけでなく水すらも断ち、長時間の絶食を行う厳しい修行法です。一方で、ファスティングは固形物を避ければ、水や水分などの摂取は可能。美容・健康を目的にしており、断食とは目指すゴールが異なります。
また、プロテインダイエットも似たような言葉の一つ。
プロテインダイエットは、食事の一部をプロテインが使用された食品に置き換える減量方法です。あくまで食事の置き換えのため、ファスティングや断食のように、固形物を完全に断つわけではありません。体作りに欠かせないタンパク質を上手に摂り入れつつ、摂取カロリーを制限することがプロテインダイエットの大きな狙いとされています。
なお、ファスティングで食事を断つ時間や日数は、16時間~3日程度と幅広く、人によってさまざまです。自分の生活スタイルや体力を考慮しながら、無理のない範囲で始められるのがメリットといえるでしょう。一方で、やり方を誤ると、ファスティング後に断食の反動で食べ過ぎてしまうリスクがあります。ファスティングを成功させるには、正しい方法で実施することが重要なポイントです。
内科医の目線でファスティングがおすすめできる理由とは?
ファスティングは健康増進や体質改善の方法として、現在さまざまな研究が進められています。ここでは、ファスティングにより期待できる3つの効果について説明しましょう。
■腸内環境の改善
ファスティング中は消化活動が休止するため、乱れた食生活によりダメージを受けていた胃腸の働きが回復します。これにより、体内の毒素や老廃物を排出する胃腸本来の機能が活発化。宿便が排出するなど、腸内環境が整いやすくなるとされています。
■免疫力の向上
腸には免疫細胞の約70~80% が集中しています。つまり、胃腸を空にするファスティングは、腸の免疫機能を正常化させる効果が期待できるということです。
また、ファスティングにより細胞の生まれ変わり(オートファジー)も活性化すると考えられています。古くなった細胞が生まれ変わることで、体の不調が改善しやすくなるのです。オートファジーは、もともと仕組みとして体に備わっていますが、16時間以上の空腹が続くことで作用しやすくなるといわれています。
■集中力や記憶力が高まる
グレリンは、空腹を感じたときに分泌されるホルモンです。このホルモンは、ガン予防やストレス改善、炎症を抑制する働きを持ちます。グレリンが記憶力に大きく関わる脳の海馬に届くと、神経と神経をつなぐシナプスが活性化。集中力を高め、記憶力を向上させる効果が期待できます。
【POINT】
医師コメント
ファスティングは体内の修復や代謝を促進し、健康に良い影響を与えると考えています。食事を制限することで、細胞が自己修復に専念し、炎症を減少させる効果が期待されます。ただし、個々の健康状態により異なるため、医師の指導のもとで行うことが重要です。ファスティングは適切な方法で行えば、体脂肪減少や血糖値の改善に寄与し、心臓病や糖尿病のリスクを低減できる可能性があります。しかし、極端な制限は健康に悪影響を与える可能性もあるため、慎重なアプローチが必要です。
具体的なファスティングのセオリーと、やり方
ファスティングは、一定期間食事を断つことで、体のリズムを正常化させることが大きな目的です。ダイエットのために始める方も多い一方で、体のデトックス作用が働き、減量以外にもさまざまな良い効果をもたらすと考えられています。
ただし、ファスティングを誤った方法で行うと、体調不良やリバウンドを招く要因にもなりかねません。食事を断つ時間や日数によっても異なりますが、ファスティングの前後は準備期間と回復期間を設けるのが一般的です。こちらでは、3日間のファスティングを想定したスケジュールをご紹介します。
■準備期間/1~3日目
準備期間は、徐々に食事量を減らす期間です。準備期間は原則として、ファスティング期間と同じ日数を取ります。
なお、準備食には、おかゆやうどん、豆腐、くたくたに煮込んだ野菜など、消化に良いものを選ぶのがポイント。きのこや海藻類、果物、発酵食品などを積極的に取り入れながら、体の調子を整えていきます。ファスティングに慣れている方は、野菜や果物などのスムージーを準備食として用いてもいいでしょう。
準備期間 | 食事内容 |
1日目 | 食事内容に注意しつつ、バランスの良い食事を心がけます。 |
2日目 | 腹八分目程度を目安に、大豆製品や野菜、海藻類などの消化の良い食事を摂ります。 |
3日目 | ポタージュや味噌汁などの固形物を減らした食事をメインとし、胃腸への負担を軽減させます。また、脱水症状を防ぐために、こまめに水分摂取してください。 |
■ファスティング期間/3日間
準備期間が終了したら、いよいよファスティング期間に入ります。
ファスティング期間 | 気をつけるポイント |
1日目 | 2L を目安に、水や炭酸水などをしっかりと摂ります。 |
2日目 | 空腹感があるときは、野菜ジュースや酵素ドリンクを摂取します。 |
3日目 | 頭痛や倦怠感といった異常が見られる場合はファスティングを中止し、適切な措置を取ってください。なお、体調に問題がなくファスティングを継続する場合は、引き続き水分補給を心がけます。 |
■回復期間/1~3日目
ファスティング後は、回復期間を設けます。
回復期間 | 食事内容 |
1日目 | 液体を多く含んだおかゆや具のない味噌汁など、刺激が少ない食事を摂ります。 |
2日目 | 2日目からは少しずつ普段の食事に戻します。野菜や果物といった消化に良い食材をメインに、食事量を増やしてください。 |
3日目 | 通常の食事内容に戻していきますが、消化に悪い揚げ物や脂質が多く含まれる肉料理などは避けてください。 |
■準備期間・回復期間のおすすめレシピ
ファスティングの前後は、消化に良い食事を心がけることが大切です。献立を立てる際は、「まごわやさしい」を基本にするのがおすすめ。「まごわやさしい」とは、バランスの良い食事がとれる食材の頭文字のことです。
- ま…豆
- ご…ごまやアーモンドなどのナッツ類
- わ…わかめなどの海藻類
- や…野菜
- さ…魚
- し…しいたけなどのきのこ類
- い…いも
どれも身近なものばかりで、和食をベースに献立を考えると、比較的簡単に網羅できます。ただし、動物性タンパク質を含む魚は、準備期間・回復期間は控えるのがベターです。
「まごわやさしい」を取り入れるのにおすすめしたいのが、味噌汁です。味噌汁はさまざまな食材との相性が良く、素材の旨みが溶け込むため満足感もあります。例えば、豆腐やきのこ、葉野菜、じゃがいも、わかめなどを使えば、それだけで5つの食材を網羅することが可能です。また、発酵食品は食材の栄養価を高める ことがわかっています。ファスティングの前後だけでなく、普段から積極的に摂り入れたい食品です。
まとめ
ファスティングで得られるメリットは多岐にわたり、内科医をはじめとする医師が推奨しています。正しい方法で行えば、美容・健康面でさまざまな効果を実感できるでしょう。ただし、無理は禁物です。ファスティング中は摂取カロリーの減少により、頭痛や倦怠感といった不調が現れることもあります。
ぜひこちらの記事を参考に、ファスティングの基本を押さえ、理想的な体づくりを目指してください。
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