CLASS CLINIC院長 松本 茂先生へインタビュー。東京・大手町にある「CLASS CLINIC(クラスクリニック)」院長の松本先生は、2023年にアメリカの雑誌で日本の形成外科医TOP5に選出、2024年には同雑誌でアジアの美容外科TOP10に選出された鼻整形のプロフェッショナルです。大学病院勤務時代には科のトップを務められ、その後アジアを代表する美容クリニックで研鑽を積まれた経験の持ち主でもあります。今回は、松本先生が医師として歩まれてきた経歴や成し遂げた実績、今後のビジョンなどをインタビュー。患者様や後輩医師への想いもお話しいただきました。
INDEX
ドクターズプロフィール
CLASS CLINIC 院長
松本 茂(まつもと しげる)先生
順天堂大学医学部卒業後、同大学院で医学博士を取得。「順天堂大学医学部附属浦安病院」形成外科で医局長を、「順天堂大学医学部附属静岡病院」形成外科で診療部長を歴任。その後、「ヴェリテクリニック」で美容医療の世界へ。2024年に自身が院長を務める「CLASS CLINIC」を開業した。
(経歴) 2000年 暁星高校 卒業 2007年 順天堂大学医学部 卒業 2007年 順天堂大学順天堂医院 初期臨床研修 2009年 順天堂大学形成外科 入局 2013年 順天堂大学大学院医学研究科 卒業、医学博士取得 2015年 順天堂大学医学部附属浦安病院 形成外科 医局長 2016年 日本再生医療学会 再生医療認定医 取得 2017年 順天堂大学医学部附属静岡病院 形成外科 診療部長 2018年 ヴェリテクリニック 入職 2021年 ヴェリテクリニック 大阪院 院長 2024年 CLASS CLINIC 開設 (資格等) 日本の形成外科医TOP5に選出(2023年 アメリカ発行雑誌) アジアの形成外科医TOP10に選出(2024年 アメリカ発行雑誌) 医学博士 (所属学会) 日本形成外科学会認定専門医、指導医 日本美容外科学会(JSAPS)認定専門医 日本頭蓋顎顔面外科学会 日本再生医療学会 |
医師としての背景 ~日本の形成外科医TOP5に選ばれたキャリアパス~
―――松本先生が美容医療の世界に進まれるまでの背景を教えていただけますか?
もともと「どこかのタイミングで美容医療の世界に関わりたい」という想いがありました。一方で、目先の売上や給料にあまりこだわりがなかったので、遠回りしてでも自分自身を育てたいと大学卒業後は大学院に進みました。その後も「ときが来たら美容医療の世界に行こう」と思いつつ、自分を高めたいという想いから大学病院に入職。そこでの仕事も面白かったのでしばらく続けました。
そして大学病院で科の責任者まで務めたときに、キャリアの中で一つのゴールに到達したと感じたんです。大学病院でそれ以上のキャリアアップとなると教授を目指すことになると思いますが、正直僕は興味がなくて。そのタイミングで満を持して、美容医療の世界に移ることにしました。
―――松本先生が大学病院で長くご経験を積まれた中で、良かった点をお聞かせください。
1つは、臨床的な経験を多く積めたことです。昨今では専門医*を持っている医師が結構増えたと思いますが、専門医になるのはあくまでいろんな研修が終わったというだけで、スタートラインに過ぎないと思っています。だからこそ、手術の技術や自分の専門性というのは、専門医を取ってからのキャリアで決まると思っています。
もう1つは、大学病院で責任者を務めたことで、マネジメントを学べたことです。患者様に対しても、他科とのやりとりにしても、何かトラブルがあったときの解決の仕方を学べました。あと、お金や人の動き方というのも非常に勉強になりました。大学病院と言っても売り上げは重要な要素なので、経営についても開業前に経験できたのは良かったですね。
*専門医…各診療科において、標準的で適切な診断や治療を提供できる医師のこと。専門研修プログラムに所属して3~5年の専門研修を専攻後、認定試験に合格すれば専門医になれる。原則5年ごとの更新があり、更新のための基準も定められている。
―――松本先生は美容医療界にもともとご興味があったということですが、形成外科に長くいらっしゃる中で「いつかは美容医療界に行く」という軸がぶれなかった要因は何でしたか?
僕の親の関係で、形成外科の有名な先生が身近にいたことが大きかったですね。今でこそ表だって批判されることは減りましたが、僕が形成外科にいた頃は“美容医療”と言うと、後ろ指を指されるような風潮がありました。だから僕は、誰にも突っ込まれないような経歴を築いてから美容医療の世界に行って認められたいと思ったんです。実際、僕が開業したときには、大学病院の幹部や理事の方々、形成外科のみならず内科や外科の先生たちからもお祝いや応援をいただきました。これはなかなかないことなので、ありがたいことだと思いますし、このキャリアがあったからこそいただけたお気持ちだと思います。
―――大学病院でキャリアを極められたことが、松本先生のアジアを代表する技術力や、アメリカの形成外科医が選抜する日本の形成外科医TOP5という勲章に繋がったのですね。
本当に遠回りしましたが、そのおかげでやっていけている今があるのだと思います。逆に、医師になって最初から美容外科に入って知名度を上げていくのは、それはそれで本当に大変なことです。遠回りせずすぐに美容医療の世界に飛び込み活躍されているほかの先生方のことは、本当に尊敬しています。
―――大学病院でキャリアを極められた後、松本先生は「ヴェリテクリニック」で美容医療の世界に入られました。形成外科でそれまでやってこられた技術と、美容医療の世界で求められる技術とで、何かギャップを感じられましたか?
「ヴェリテクリニック」は、形成外科医でもかなり技術のある人たちが集まっているクリニックです。なので、「ヴェリテクリニック」でやっていくためには形成外科医の技術は必須でしたし、あれほど高い技術が求められる美容クリニックは日本ではまれだと思います。
「ヴェリテクリニック」に入って一番困ったのは、技術面ではなく集客と自分の発信の仕方でした。それまでやったことのない新しい分野でしたし、僕には大学病院でのキャリアがあったとは言え、一般の患者様にしてみれば無名の医師だったので。どうやって自分の名前を出していくか苦戦しましたが、だからこそ「ヴェリテクリニック」という名のある環境は僕にとってはすごくありがたかったです。
―――そんな中で、松本先生が「ヴェリテクリニック」で学ばれたことや気づきはどんなことだったのでしょうか。松本先生が鼻の整形に専門を絞っていかれた経緯も教えてください。
「ヴェリテクリニック」では、他院で受けた整形手術の修正手術を多く経験しました。そして、日本の美容医療を発展させてきた立役者とも言える福田 慶三先生の下で、“攻めの美容医療”を学べたことは大きかったですね。美容医療における安全と発展のバランスを学べましたし、「ヴェリテクリニック」だからこそできる高度な修正手術も学べたのは貴重な経験でした。
そして、「ヴェリテクリニック」は鼻の手術で有名なクリニックでもあったので、僕が鼻を専門にするというのは自然な流れでしたね。
―――「ヴェリテクリニック」では他院の修正手術が多いということでしたが、修正手術が発生してしまう状況について松本先生が課題だと感じられることはありましたか?
「ヴェリテクリニック」で行っていた修正手術の患者様は、日本国内で手術を受けた方だけでなく、韓国で手術を受けた方も多くいらっしゃいました。僕は韓国の学会にも出席したことがありますが、国によって技術の差があるわけではないと思います。どこの国にいてもできる先生はできるし、できない先生はできないんだな、というのが正直な感想です。
美容医療に興味を持たれる患者様の全員が、最初からメスを使うような大きな手術をされるわけではありません。例えば肌治療のような“入り口”となる治療は、患者様にとっても、マーケットを拡大するという意味でも重要です。だから、大手の美容クリニックが大々的に広告を打って美容医療の入り口になってくれている現状は、美容医療業界全体にとっては決して悪くないと思っています。
一方で、医師の技術力は数値化できません。それなのに「○○手術のプロ」とか「○○手術のナンバーワン」とか、大々的に言った者勝ちになってしまっている現状は課題です。技術力は、誰かと比べて勝ち負けというものではありませんから。
この背景には、“組織化すると技術の平均値は下がってしまう”というジレンマがあると感じます。美容クリニックがドクターを増やして組織を大きくすると、クオリティを平均化して下げざるを得なくなるんです。しかし、先輩医師の劣化版のような部下を作っても意味がありませんよね。
そして、美容クリニックで経験を積んで実力と知名度が上がった先生は、自分で開業してしまいます。なので、美容医療の医師のレベルを上げるには大手クリニックだと限界があって、個人クリニックでないと難しいと思います。
松本先生の強み ~独自の世界観で価値ある医療サービスを提供~
―――松本先生が考える「CLASS CLINIC」でしかできないことは何でしょうか?
患者様に対しては、一人ひとりにしっかりと時間を取って向き合っています。じっくり話し合って方針を決め、手術もしっかり時間を取って実施しています。その分単価も上がってくるので、そのあたりが大手のクリニックとは違う点ですね。
「CLASS CLINIC」は、空気感や世界観が振り切っているんです。クリニックに入った瞬間から、独自の世界観を味わってもらうことを大事にしています。待合室や廊下1つ取っても、他の患者様と会わないようセキュリティやプライバシーに配慮。カウンセリングの時間も、30~45分としっかりと取ります。ヒアルロン酸などの注入系の施術の際も、お話しながら1人に30分ほどかけますね。時間を長くかけるのが良い訳ではありませんが、こうした「CLASS CLINIC」の空気感やサービスに価値を感じていただける患者様に選ばれるクリニックでありたいと思っています。
そして、後輩医師のレベルをどんどん上げていくことも考えています。将来的に「CLASS CLINIC」でドクターを増やすとしたら、ゼロから教育して僕が納得できるレベルの人だけを集めたいですね。教育はすごく大事なので、医師同士で情報交換や勉強会を行うような教育のムーブメントで日本の美容医療の底上げをしてくれているのは、良い流れだと思います。
100点満点のうち「みんなで60~70点台を取りましょう」というのが底上げの教育だとしたら、僕は90~99点を取れるような教育をしたいと思っています。これには労力がすごくかかるし、誰にでもできることではありません。だからこそ、僕は後者でありたいですね。
美容医療業界の今後の動向と期待 ~日本の美容医療をブランディングして世界へ~
―――美容医療界の今後の発展や進化を考えたとき、松本先生が感じられる課題があれば教えてください。
たくさんの美容クリニックがある中で、患者様それぞれのニーズに合ったクリニックを選べるシステムが必要だと感じています。レストランに例えれば、予約の取れない高級レストランもあれば、気軽に行けるファミレスもありますよね。一見すると高級レストランのほうが優れているように思えますが、経済的な効果で見ればファミレスも結構な売り上げを出しています。これは、ブランディングと価格の付け方の違いなんです。同じように、医療の世界でもブランディングと価格の付け方が適正化されなければならないと思っています。
そして、海外からの旅行者を美容医療のマーケットに取り込むことも喫緊の課題ですね。日本人の潜在的ニーズもあるので、日本国内での美容医療マーケットは今後も拡大していくと思います。一方で、やはり国内だけではマーケットの限界があるので、海外で日本の美容医療をブランディングして差別化していくことが必要ですね。
読者や若手医師へ向けて伝えたいメッセージ ~美の先にある豊かな人生を~
―――最後に松本先生から、美容医療に興味がある読者の方に向けてメッセージをお願いします。
美容医療の最終目的は自分自身に対する満足度を上げることで、豊かな人生を送ることです。そして、僕たち「CLASS CLINIC」は、患者様をお迎えする立場である以上、僕やスタッフ自身が居心地良くハッピーであらねばならないと思っています。医療を提供する場でありながら、患者様をおもてなしするサービス業である。この両立はすごく意識していますね。
そして、「CLASS CLINIC」の目標は、アジアでも有数のサービスと医療を提供することです。僕たちが提供するサービスや技術、安全性といった価値は、どこにも負けないと自負しています。日本国内でもアジアでも、ひいては世界でも「CLASS CLINIC」の名前が挙がってくることを目指しています。
―――ありがとうございます。次は、この記事を読んでいる若手の医師に向けてメッセージをお願いします。
医師として自分がどうなりたいか、ビジョンを持つことが大事だと思います。僕みたいなキャリアを進むのが正解というわけではありません。それでも、大学病院の形成外科でしっかり経験を積んだモデルケースとして、キャリアプランの参考にしてもらえれば良いですね。
医師として収益を確保することも、それはそれで大事な話だとは思います。ただ、自分自身がどういうドクターになってどういう美容外科医を目指すかによって、必要なキャリアも変わってきますよね。だからこそ、最初に目標を定めて、逆算的にキャリアプランを作るのが良いかなと思います。誰の下で学ぶのかはとても重要だし、技術を学びたいなら、それなりにしっかりとキャリアを積むことも必要です。なりたい姿と、なるための努力や自分の身を置く場所のレベルを乖離させないことが重要ですね。