女性医療クリニックLUNAネクストステージ 院長 中村綾子先生へインタビュー。中村綾子先生は、女性泌尿器科の中でも骨盤底疾患に特化したエキスパートです。現在は、横浜にある「女性医療クリニックLUNAネクストステージ」で院長として多くの患者様の診療をするかたわら、積極的に学会発表も行っています。今回は、中村先生が女性泌尿器科の中でも特にマイナーとされる骨盤底疾患を専門にされた背景や、患者様へのメッセージを伺いました。
INDEX
ドクターズプロフィール
女性医療クリニックLUNAネクストステージ 院長
中村 綾子(なかむら りょうこ)先生
女性に必要な医療がワンストップで受けられる「女性医療クリニックLUNAネクストステージ」の院長。尿漏れや膣の緩みといった女性特有の悩みに、治療のみならず、予防やリハビリなど、多角的なソリューションを提供。保険診療・自由診療の両方で女性特有の悩みに幅広く応えている。
(経歴) 2007年 横浜市立大学医学部卒業、日本赤十字社医療センター臨床研修医 2009年 みなと赤十字病院、横浜市立大学附属病院、藤沢市民病院勤務を経て、横浜保土ヶ谷中央病院に勤務 2013年 女性医療クリニックLUNAで泌尿器科外来を開始 2017年 LUNA骨盤底トータルサポートクリニック 院長 2019年 女性医療クリニックLUNAネクストステージ 院長 (資格) 日本泌尿器科学会認定専門医 日本女性骨盤底医学会認定専門医 (所属学会) 日本泌尿器科学会 日本女性骨盤底医学会 日本排尿機能学会 日本東洋医学会 日本老年泌尿器科学会 日本キレーション協会 |
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医師としての背景 ~女性の健康に貢献するために選んだ泌尿器科医への道~
―――中村先生が医師を志した理由と、医師になってから泌尿器科を選ばれた理由をお聞かせください。
私が医師を目指したきっかけは、中学生の頃に『ER緊急救命室』というドラマを見て、医療の世界がかっこいいと思ったことです。その頃入院することがあったのですが、お世話になった先生もすごくかっこよく見えて。憧れの気持ちが医学部を目指すきっかけになりました。
研修医になった頃には“女性に貢献したい”という想いがあったので、外科系で女性を見ることができる産婦人科を志望していました。昔から手術が好きだったので産婦人科の手術にも入らせてもらっていたのですが、研修したのが産科メインの病院だったので手術が少なくて。産婦人科の次に研修で回った泌尿器科では、手術が多く魅力を感じました。
泌尿器科の指導医が女性だったこと、手術ができて内科的管理もできるのが面白いと感じ、最終的に泌尿器科へ進むことに決めました。
―――中村先生が、女性泌尿器科、中でも骨盤底疾患に特化されるようになった経緯を教えてください。
私が泌尿器科に入った当時は、女性の骨盤底に関する医療があまり発達していませんでした。でも、まだ発達していないということは、これから貢献できる分野ということでもあり、そこに魅力を感じたんです。みんながやっていないマイナーな分野だからこそ、活躍できる場所だと感じました。
女性泌尿器科では尿漏れや膣の緩みなどを扱いますが、当時は「尿漏れは病気じゃない」と言ってしまう医師もいるほど情報が少なかったんです。女性泌尿器の手術もようやく海外から持ち込まれて、本当にごく一部の先生たちがやっていただけという時代でした。
ちょうどその頃に医局におられたのが、現在「女性医療クリニックLUNAグループ」理事長の関口由紀先生でした。当時から女性泌尿器科のパイオニア的な存在だった関口先生と出会い、女性泌尿器科に進みたいという想いが芽生えました。
関口先生には「まずは一般的な泌尿器科の知識をちゃんと身につけること。専門医の資格もしっかり取ってから、女性泌尿器科の道に進みなさい」とアドバイスをいただいたんです。それから一般泌尿器科の知識を深めつつ、女性泌尿器科の学会にも出席しました。2002年には、日本女性骨盤底医学会の前身となったウロギネコロジー研究会ができ、2023年には日本女性骨盤底医学会の専門医制度もできました。それでもまだ、女性泌尿器を扱う医師はすごく少ないですね。
―――読者の方の中には、そもそも「女性骨盤底疾患とは?」という方もいると思います。改めてご説明いただけますか?
女性骨盤底疾患というのは、尿漏れや膣の緩み、骨盤臓器脱など女性の骨盤内の臓器に関わるトラブルのことです。女性の骨盤底が大きく変化するきっかけは2つあって、1つは妊娠や出産に関わる時期。もう1つは、閉経を迎えて女性ホルモンが急激に変化する時期です。妊娠・出産のときに骨盤底がダメージを受けたことで悩まされている方が増え、閉経して女性ホルモンが減ってくると、さらに悩まされる方が増えます。尿漏れは産後に始まる方が多いですが、小さい頃から夜尿症に悩まされている方は、先天的な骨盤底の弱さがある場合もあります。
患者様の年代的には閉経後の方が多いですが、10代~90代ぐらいまで幅広い年齢層の女性を診ています。教科書に書いてないことも多いので、自分で考えながら治療を進めていくところがすごく面白いんです。
―――中村先生が骨盤底疾患に特化していく中で、苦労されたことはありますか?
やはり専門の医師がすごく少ないので、自分から情報を探さなければ勉強が全然できないという点は苦労しました。教科書もなかったので学会に出たり、手術をしている先生に見学させてもらったりと、一般泌尿器科だけだとわからない分野の勉強も積極的にしました。
また、女性泌尿器科のパイオニアである関口先生のもとに居られたことは、すごく恵まれていたと思います。関口先生と一緒に海外の学科に行きましたが、日本の情報だけではやはり不十分な分野のため、海外からも学んでいかないといけないと感じましたね。
女性泌尿器科医としての情熱 ~認知度を上げるため精力的に活動~
―――骨盤底疾患に対する認知度がまだ低い状況の中、医療業界に向けて何か意識して活動されていることはありますか?
次々に情報を発信していくことが重要だととらえ、学会発表をさせてもらったり、論文を書いたりしています。医療分野の方にとって学会発表は重要だと思いますし、関口先生は積極的に発表されているので、私もそれに倣っていますね。
日本女性骨盤底医学会のほか、日本性機能学会や日本産科婦人科学会でも発表させていただきました。泌尿器科関連の学会や婦人科系の学会でもなるべく発表するようにしていますし、日本東洋医学会でも発表しています。
積極的に発信を続ける中で、興味を持ってくれる先生は昔よりは増えましたし、教授として認識してくれる先生も増えた印象はあります。それでも女性泌尿器科はまだまだマイナーな分野なので、発信をし続けなければなりません。
―――患者様や一般の方に向けて何か意識して活動されていることはありますか?
やはりSNSですね。YouTubeはクリニックでチャンネルを立ち上げて、週1回ぐらいのペースで更新しています。私個人でもインスタグラムで発信していますし、雑誌やテレビのインタビューも積極的に受けるようにしています。
最近でこそ、“フェムテック”という言葉が広まってきたと感じますが、一般の方にとっては女性泌尿器科の話はまだまだ恥ずかしいと感じられる分野ではないでしょうか。ただでさえ恥ずかしいと思われているのに、勇気を出して病院に行っても「年齢的なものです」の一言で片付けられてしまう現状もあります。そこで私ができることは、多くの人が悩まされていることを広めて、恥ずかしいという認識をなくしてもらえるよう発信していくことだと思いますね。
少し前は、つらい思いをたくさんされた末にようやく当院にたどり着く患者様もいらっしゃいました。最近ではインターネットが普及したおかげで、割と早い段階で当院の存在を知り受診してくださる患者様が増えてきたと感じます。中には、娘さんから当院の情報を教えてもらって受診したというお母さん世代の患者様や、友達同士で受診してくださる患者様もいらっしゃいます。性機能に関することだと、カップルで受診してくださる患者様も増えました。フェムテックという言葉の広まりとともに、女性のデリケートな話も少しはオープンに話せるようになってきたのかなと感じますね。
婦人科医療業界の課題と期待 ~適切な医療にアクセスできる環境を作りたい~
―――中村先生が感じている、婦人科医療業界の課題を教えてください。
当院で私は女性泌尿器が専門ですが、内科もやりますし、婦人科や乳腺外科、形成外科、皮膚科の先生もいます。美容系の施術も提供しています。当院に来ていただければ、女性に必要な医療を一通り提供できるようになっていますが、当院のようなクリニックは日本にはまだ少ないと思います。
一般的な婦人科クリニックは、妊娠・出産だけを診る、疾患だけを診る、という風にライフステージや疾病により分断されてしまっていますよね。当院は予防から治療まで一連で医療を提供していますが、これは医師だけの力だけではなく、理学療法士や運動療法士、看護師など多くの専門家との協力が必要です。しかし、日本だとこの体制を作るのはなかなか難しいうえ、クリニックとしての利益が出にくいという課題もあります。
あとは、医師の骨盤底疾患の知識が不十分なばかりに適切な治療法を提供できず、結果的に患者様の時間やお金を無駄にしているという課題もありますね。例えば、産後の尿漏れや膣の緩みが軽度の場合、当院では理学療法士さんに入ってもらって進行を予防します。症状がある程度進んでいる場合は、薬を使って治療することもあります。最近は膣レーザーや膣ハイフといった膣デバイスと呼ばれる医療機器での治療も可能ですし、もっと症状が進行している場合は手術になるという流れです。
ところが、手術しなければならない状態の患者様に膣デバイスでお金や時間をかけて治療する医師がいたり、手術をしたとしても術後の生活指導や理学療法には関与しない医師がいたりします。女性泌尿器科の治療をする医師が増えることはいいことですが、もっと正しい知識が広がってほしいと思います。
フェムテックという言葉が広がったとはいえ、先進国のオーストラリアやフランスに比べると、日本の女性はまだまだその恩恵にあずかれていないと思っています。女性泌尿器科は、病気の治療はもちろん、予防やケア、管理のために行ける場所だと認識してほしいですね。
今の日本の婦人科はとても保守的なところがあるので、新しいデバイスや治療に反対される医師も多くいます。保守的な考えの医師にも、新しい治療によって得られた結果をちゃんと分析してほしいですね。そうして、日本の婦人科の新しい分野を開拓していきたいと思います。
読者や患者様へ向けて伝えたいメッセージ ~1人で抱え込まず相談を~
―――患者様に向けてメッセージをお願いします。
女性のデリケートな部分に関わる悩みは、1人で抱えてしまっている方も多いと思います。でも実は、多くの人が同じ悩みを抱えています。全然恥ずかしいことではないので、ぜひ勇気を持って受診してほしいですね。
例え症状がなくても、機能を向上させたいという目的で受診してくださる患者様もいらっしゃいます。保険診療では治療が限られる場合もありますが、当院は自由診療も可能なので、ぜひご相談ください。
―――最後に、若手医師に向けてメッセージをお願いします。
女性泌尿器科は日本だとまだマイナー中のマイナーで、なかなか学ぶ機会もないかもしれません。その分、自分たちで作っていける分野ですし、勉強すればどんどん可能性も広がっていく。特定の分野に特化すれば、トップも目指せます。若手医師がこれから活躍できる分野なので、ぜひ女性泌尿器科に進むことを検討してもらいたいと思いますね。
※「膣(ちつ)」の表記について…学術的には「腟(ちつ)」が正しい表記ですが、当サイトでは読者様の読みやすさを考慮し「膣」と表記しております。
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【治療の内容】
膣への医療用HIFU(高密度焦点式超音波)
【治療期間および回数の目安】
施術後1年以降から再照射可能
※治療期間や回数等は人によって異なります。
【費用相場】
・1回121,000円
【リスク・副作用等】
・熱感、下腹部の違和感、軽微な出血など
【注意事項】
・次の方は、施術をお受けいただけません。
-未成年の方
-婦人科系疾患がある方
-妊娠希望・妊娠中の方
※詳細については医師にお尋ねください。
【未承認医療機器を用いた治療について】
・膣ハイフの治療には、国内未承認医薬品または医療機器を用いた施術が含まれます。
・治療に用いる医薬品および医療機器は、医師の判断のもと、個人輸入手続きが行われています。個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報は、下記をご参考ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html
・国内承認を取得している機器以外は、同一成分や性能を有する他の国内承認医薬品はありません。