「美容医療のクリニックを選ぶとき、何を信頼すればいいのか」
その問いに対して多くの患者が頼りにするのが
「学会のガイドライン」や「専門医資格」だ。
その学会自体が今、問われている。
2026年7月6日、ダイヤモンドが日本美容皮膚科学会(JSAD)の内部対立を報じた
(独自取材・有料記事)。
3,000人超が所属する日本最大の美容皮膚科系学術団体で、
現執行部と元理事長グループが7月31日の定時社員総会を巡って公然と衝突している。
この記事でNEROが整理するのは「どちらが正しいか」ではない。
告発する側にも、される側にも問いが向く——この「構造」が何を意味するかだ。
📋 ざっくりまとめ
- ダイヤモンドが2026年7月6日、日本美容皮膚科学会(JSAD)の内部対立を報道。
7月31日の定時社員総会を巡り現執行部と元理事長グループが衝突している。 - 元理事長グループが追及した3つの疑惑(指針の独断発出・料亭32万円会食・身内発注)に対し、
執行部は質問から1週間以内に全項目へ詳細回答済みと反論。 - 最大の衝撃は「告発側」への逆ブーメラン——
改革グループのCOI委員長が「数百万円の申告漏れ疑惑」で学会が調査委員会を設置済み。
その資金源は「ヒルドイド」で知られる製薬会社マルホとされている。 - 余剰金5,000万円の使途・スポンサー格付けの是非も議論になっているが、
現執行部は「公益活動への計画的還元」として問題なしと主張している。
INDEX
対立の構図——登場人物と主張を整理する
まず「誰が誰に何を言っているか」を整理する。
・質問書に1週間以内で全項目回答済み
・余剰金は公益活動へ還元中
・調査委員会を設置し元理事のCOI疑惑を調査中
代表:船坂陽子・日本医科大学名誉教授
・「代議員の会」へ組織拡大(6月)
・7月31日総会で役員交代を要求
・会計の不透明さを追及
元理事長グループが追及した3つの疑惑——執行部の反論も含めて整理する
ダイヤモンドの報道に基づき、追及の内容と執行部の反論を整理する。
NEROは両者の主張をそのまま並べる。判断は読者に委ねる。
最大の衝撃:「告発する側」へのブーメラン——COI委員長の申告疑惑
この対立に決定的な複雑さをもたらしているのが、
「改革を訴える側」から浮上した疑惑だ。
⚡ 最大の衝撃
改革グループの中心メンバーであり、
学会の「COI(利益相反)委員長」——
製薬会社からのカネの流れを監視するトップを務めていた
現役理事に、疑惑が浮上した。
その人物が、製薬会社などから受け取った報酬を
学会に対して「100万円以下」と申告していたのに対し、
実際には特定のNPO法人などを経由した
数百万円規模の報酬を受け取っていた疑いがある
——とダイヤモンドは報じている。
この疑惑についてダイヤモンドが日本美容皮膚科学会に確認したところ、
学会は次のように回答している(ダイヤモンド報道より要旨)。
「2026年2月の理事会において、複数の理事から、改革グループに属する現役理事について学会のCOI規定を明らかに超える利益相反が存在する可能性が指摘された。
当学会では顧問弁護士を含むメンバーによる調査委員会を設置し、
現在、事実関係の調査を進めている。」
出典:ダイヤモンド(2026年7月6日)への日本美容皮膚科学会公式回答・要旨
当該理事はダイヤモンドの取材に対し
「本件については弁護士と対応を協議中であり、指摘のような事実はない」と回答している(ダイヤモンド報道より)。
「告発側の資金源」——マルホとNPOのネットワーク
報道が示すもう一つの構造は、
「改革を訴える側」と特定の製薬会社の関係だ。
報道が示す資金ネットワーク(ダイヤモンド報道に基づく)
役員に宮地良樹氏(京都大名誉教授・理事長)、川島眞氏(副理事長)、および前述のCOI委員長(理事)が名を連ねる。
マルホが製造・販売する医療用保湿剤(ヘパリン類似物質)。
保険適用で処方されるため美容目的への転用が問題視され、
厚労省が適正使用を注意喚起したことでも知られる製品だ。
皮膚科領域において極めて高いブランド認知度を持つ。
5,000万円の余剰金——「誰が余剰金問題を作ったか」という逆説
元理事長グループが追及するもう一つのテーマが
学術大会で発生した巨額の余剰金問題だ。
執行部が示した経緯は次の通りだ(ダイヤモンドへの公式回答より要旨)。
計画的還元の仕組みを明確化し、議事録で全会員に共有中と主張。
「余剰金問題を作ったのは誰か」という問いを立てると、
改革派として名を連ねる森脇氏が当時の理事長だった事実が浮上する。
「問題を指摘する側が、その問題の一因を作った当事者でもある」という
構造的な皮肉が、この内紛の複雑さを象徴している。
NEROが読む「この問題の本質」——2つの構造的課題
誰が正しくて誰が間違っているかは、7月31日の総会以降に明らかになっていくだろう。
NEROが今この段階で整理できるのは「構造的な問い」だ。
申告漏れ疑惑で調査される——この構図は、
「誰がガバナンスを守るのか」という問いそのものだ。
告発の大義と告発者の行動が矛盾するとき、
真の改革は生まれにくい。
製薬会社との関係は美容医療学会全体の課題だ。
「開示されているかどうか」が問われている。
日本医学会のCOI管理ガイドライン(2025年改訂)は、
この開示基準をより厳格化している。
読者として何を確認すべきか——3つの実践的な問い
担当医師のCOI開示状況を確認する
学会発表・論文・講演でのCOI開示は義務だ。
「どの企業から何を受け取っているか」を開示している医師は透明性を保っている。
開示なしで製品推奨をする場合は注意が必要だ。
「この治療はどの学会のガイドラインに基づいていますか」と聞く
エビデンスの根拠を示せる医師かどうかの確認になる。
「効果があります」だけで根拠を示せない場合は一歩立ち止まる価値がある。
「学会の内紛」をスキャンダルではなく業界成熟のシグナルとして読む
対立が表に出ること自体は、透明化の第一歩でもある。
「揉めているから信頼できない」ではなく、
「何が問われているか」を見る視点が読者を守る。
この問題で最も重要なのは「どちらが勝つか」ではない。
「COIを監視するはずのトップが申告漏れ疑惑で調査される」
という構図が生まれたこと自体が、
日本の美容医療学会が抱えるガバナンスの現在地を示している。
告発の動機が何であれ、問題点が表に出たことで
「開示・透明化・第三者監査」の議論が進む可能性はある。
それが患者にとってのプラスになるかどうかを、NEROは見続ける。
「告発する側にも、される側にも問いが向く」——これが医療ガバナンスの現実だ。大切なのは誰かを断罪することではなく、仕組みを良くすることだ。
まとめ
- ダイヤモンドが2026年7月6日、日本美容皮膚科学会(JSAD)の内部対立を報道。
7月31日総会に向けた「元理事長グループ vs 現執行部」の衝突が明らかになった。 - 執行部は追及された3つの疑惑(指針発出・料亭32万円・身内発注)に対し
「質問書受領1週間以内に全項目へ回答済み」と反論している。 - 最大の衝撃は「告発側」へのブーメラン——
COI委員長を務める改革グループ現役理事の申告漏れ疑惑で学会が調査委員会を設置。
資金源はヒルドイドで知られるマルホとされている。 - COI委員長が「監視する側」として申告漏れ疑惑を持たれるという構造的な問題は、
日本の美容医療学会全体のガバナンス課題を示している。
読者が自分を守るには「COI開示の確認」と「根拠を聞く習慣」が有効だ。
よくある質問(FAQ)
出典・参考
- 村上力「日本美容皮膚科学会で『ドロ沼の内紛』進行中!元理事長派が"不透明会計"を追及する一方で製薬マネー漬け疑惑発覚の大ブーメラン」Diamond Online. 2026年7月6日(有料記事・報道事実を参照・文章転載なし).
- 日本医学会「COI管理ガイドライン2025」jams.med.or.jp. 2025年改訂版.
- 第44回日本美容皮膚科学会総会・学術大会 公式プログラム. 2026年8月1〜2日・仙台.

