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ブラジルが美容外科に「6時間ルール」を設けた理由──「まとめて手術」の安全設計を変える規制

ブラジルが美容外科に「6時間ルール」を設けた理由──「まとめて手術」の安全設計を変える規制
🌍 海外規制ニュース
2026年8月20日報道(Medscape)

「豊胸と脂肪吸引を一緒にやりたい」
「どうせ休むなら腹部形成術と脂肪吸引をまとめて」

この発想は合理的に見える。ダウンタイムを一回で済ませられるなら──
でもブラジルは、この発想に対して「制度として待った」をかけた。

Cremesp(クレメスプ・サンパウロ州医師会)が施行した
Resolução nº 400/2026(レゾリューション・ナンバー400/2026)は、
予定手術時間が6時間以上の選択的美容外科手術を、単一セッションで組むことを原則禁止した。
サンパウロ州内の規制だが、問いかけている内容は世界共通だ。

「手術時間」という客観的な数字を安全計画の入口に使う。
シンプルだが、それは「複合手術のリスクを術前に必ず考慮させる」という設計でもある。
この規制が問うているのは、時間そのものではない。

📋 この記事でわかること
  • Resolution No. 400/2026の内容と、例外規定
  • 「6時間」より重要なこと──Cremespが本当に問題にしているもの
  • Vera Cruz Hospitalの暫定報告とその限界
  • 日本の美容外科を受けるとき、今日から使える2つの質問

Resolução nº 400/2026とは何か──
制度の内容を正確に押さえる

規制概要(Cremesp公式発表ベース)
発行機関
Cremesp(クレメスプ)/サンパウロ州医師会
適用地域
ブラジル・サンパウロ州内(州内規制)
原則禁止
予定手術時間6時間以上の選択的美容外科手術を
単一セッションで組むこと
例外
術中の予測外の状況・合併症など、
診療録に技術的正当化が記録された場合
出典:Cremesp公式発表 Resolução nº 400/2026 / Medscape 2026年8月20日報道

「6時間」が問題なのではない──
Cremespが本当に言いたいこと

Cremespは自ら「6時間を単独の基準として見てはいけない」と説明している。

Cremespの公式説明
「この規制の焦点は、術式の組み合わせ・麻酔予定時間・施術部位の数・
同時に行う手術・患者の臨床状態・高周波/超音波/プラズマ/レーザーなどの
技術の併用を含む、リスクを高める複合因子を術前計画の段階で評価することにある。」

つまり「6時間以上かかる計画を立てたとき、立ち止まって全体設計を見直せ」という意味だ。
手術時間はリスク評価の入口になる客観的指標として使われている。
「なぜこの組み合わせを一度にやるのか」を制度的に問わせる仕組みだ。

Cremespが考慮項目として挙げる因子
麻酔時間・術式の複雑性・複数術式の組み合わせ・患者の状態・術後ケア体制
高周波(ラジオ波)・超音波・プラズマ・レーザーなどの技術を同時使用するか否か

暫定データは何を示しているか──
そして何を示していないか

📊 Vera Cruz Hospital(カンピーナス市)暫定報告
※Medscape 2026年8月20日報道に基づく二次情報。Cremesp公式では未確認
規制施行後の暫定7月データとして、罹患率・死亡率の低下、血栓塞栓症ゼロ、輸血ゼロが伝えられている。
Cremespは「大規模病院での予備評価でも良好な結果が見られている」と述べている。
⚠️ このデータの限界
単一施設・短期間の暫定報告であり、規制の効果を決定的に示すものではない。
規制前との厳密な比較設計・追跡期間の十分な確認にはさらなるデータが必要だ。
「良好な初期報告がある」という事実として参照されたい。

日本の美容外科でも使える視点──
術前に確認すべき2つの質問

日本には現時点で同様の規制はない。
でも「手術時間」という視点は、今すぐ患者側が使える判断ツールになる。

📌 術前カウンセリングで使える2つの質問
「今日の計画で、麻酔時間を含めて手術は合計何時間かかる予定ですか?」
「複数の術式を一度に行う医学的な理由は何ですか?それぞれ別の機会に分けることはできますか?」
NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

ブラジルの規制が面白いのは、「禁止する」のではなく
「計画段階で必ず考慮させる」という設計にした点だ。
全面禁止より賢い。医師の判断余地を残しながら、安全への意識を制度に組み込んだ。

「まとめてやった方がダウンタイムが1回で済む」は本当だ。
でも「1回のダウンタイム」と「合併症リスクの上昇」は
必ずセットで考える必要がある。
「なぜこの組み合わせか」の説明を求めることは患者の権利だ。
NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

まとめ

  • ブラジル・サンパウロ州医師会(Cremesp)がResolução nº 400/2026を施行。予定6時間以上の選択的美容外科を単一セッションで組むことを原則禁止(例外あり)。
  • Cremespは「6時間は単独の基準ではなく、術式の組み合わせ・麻酔時間・患者状態など複合因子を術前計画で評価させる入口」と説明している。
  • Vera Cruz Hospitalからは罹患率・死亡率低下・血栓塞栓症ゼロ・輸血ゼロの暫定報告(Medscape報道ベース)があるが、単一施設・短期間の暫定データであり確定的評価には追跡が必要だ。
  • 日本に同様の規制はないが、「手術は合計何時間か」「複数術式を組み合わせる医学的理由は何か」を術前に確認することは今すぐできる安全確認だ。

よくある質問

Q
日本にも手術時間に関する規制はあるか?
日本では美容外科の手術時間を直接規定する法的規制は現時点で存在しない。ただし厚生労働省は美容医療全体の安全管理強化を継続的に進めており、医療機関に適切な体制整備を求めている。「手術は麻酔時間を含めて何時間か」は患者が術前に確認できる重要な安全指標だ。
Q
複合美容外科手術(まとめて受ける手術)は受けてはいけないか?
一律に「受けてはいけない」わけではない。複合手術にはダウンタイムを一度で済ませられる合理性があり、適切な患者選択・術式設計・施設体制のもとで行われる複合手術は合理的な選択肢になり得る。重要なのは「なぜこの組み合わせが医学的に合理的か」を術前に説明してもらうことだ。「効率的だから」だけを理由に選ぶのは避けてほしい。
Q
血栓塞栓症のリスクはどう確認すればよいか?
血栓塞栓症(深部静脈血栓症・肺塞栓症)は長時間手術・長期安静・脱水で起きやすい合併症だ。術前に「血栓予防のプロトコルはどうなっているか」「術後の早期離床の方針は」を確認しておくことを推奨する。また術後に足のむくみ・痛み・息苦しさが出た場合は速やかに施術したクリニックまたは救急に連絡すること。

出典・参考文献

  1. Cremesp(サンパウロ州医師会). Resolução nº 400/2026 および公式声明. cremesp.org.br
  2. Medscape. "Brazil Sets New 6-Hour Threshold for Cosmetic Surgery." August 20, 2026. medscape.com(要ログイン)

安達健一

安達 健一

NERO DOCTOR/BEAUTY 編集長

日本・米国看護師(BSN)・MBA保有。世界の一次医療データをもとに監修。広告主からの影響を受けない独立した編集方針を貫いています。