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医師不在のカウンセリングは違法?厚労省も問題視する美容医療「アップセル」の法的リスク

医師不在のカウンセリングは違法?厚労省も問題視する美容医療「アップセル」の法的リスク
⚠️ 消費者トラブル
2026年8月20日 ABEMA Prime報道

「格安の施術プランで予約したのに、カウンセリングで数十万円の契約を迫られた」
「帰ろうとしたら帰れない雰囲気になった」
「施術内容や価格を決めたのは、医師ではなくカウンセラーだった」

ABEMA TIMES(2026年8月20日)は、美容外科のアップセル問題を特集した。
「施術料金1.9万→30万円に?
密室で高圧説得、"医者以外"の違法カウンセリングも」というタイトルで、
高圧的な即日契約誘導と、医師でない者による治療提案の実態を報じた。

これは一部のクリニックの特殊事例ではない。
厚労省も2024年に整理通知を発出し、国民生活センターも継続的に注意喚起している
構造的な問題だ。
なぜこうなるのか、どう防ぐか。一次情報から整理する。

📋 この記事でわかること
  • アップセルとは何か──「許容できる誘導」と「問題のある誘導」の違い
  • なぜ起きるか──自由診療・密室・売上優先の動機という3つの構造
  • 【制度の視点】厚労省が問題視した「医師でない者が治療を決める」構造
  • 国民生活センターが記録する典型的な4つのトラブルパターン
  • カウンセリング前に知っておくべき5つの知識と、契約後のキャンセル手段

アップセルとは何か──
「許容できる誘導」と「問題のある誘導」

アップセル(upsell)は、顧客が検討しているより高額なプランへ誘導する営業手法だ。
コスメ・美容院・エステでも日常的に行われており、それ自体は違法ではない。
問題は「どんな方法で・どんな状況で・誰が」誘導するかだ。

✅ 許容できる誘導
医師が診察した結果「あなたの状態にはこちらのプランが医学的に適切」と根拠をもとに説明し、
患者が十分に考えた上で自分で選択する。断れる・帰れる環境がある。
⚠️ 問題のある誘導
・「今すぐやらないと手遅れ」など根拠のない不安をあおる
・「今日だけの特別価格」で即断を迫る
・帰れない・断れない雰囲気を意図的に作る
・医師でないカウンセラーが施術内容・価格の最終提案をする
・モニター契約で値引きを演出し高額契約に誘導する

なぜ起きるか──
「自由診療・密室・売上優先」という3つの構造

構造① 自由診療=価格が不透明
保険診療と違い標準価格がない。同じ施術でもクリニックによって数倍の差がある。
「この価格は適切か」を患者が判断する手がかりがない。
構造② カウンセリングルームという密室
個室に一人で入り、長時間対面で説明を受ける環境は断りにくい。
「帰れない雰囲気」は意図的に作られる場合がある。
構造③ 売上優先の動機が働きやすい
国民生活センターは高圧的な即日契約誘導・モニター契約を通じた高額誘導を問題事例として記録している。
売上優先の動機が患者の最善より優先される構造が生まれやすい。

【制度の視点】厚労省が問題視した
「医師でない者が治療を決める」構造

今回のABEMA報道で取り上げられた「医者以外の違法カウンセリング」について、
実は厚労省が2024年に公式な整理通知を発出している。

🏛️ 厚生労働省 2024年整理通知が指摘した問題事例
カウンセラーのみと相談して決まった治療内容を、そのまま医師が実施している事例」を問題として把握。
美容医療における診療体制の適正化を求める通知を発出した。
診察・治療方針の決定は医師が行うべきというのが医師法の原則であり、
カウンセラーが施術内容・料金を最終的に決める構造は
医師法上の問題事例に該当しうるとして整理されている。

⚖️ 知っておきたい根拠:医師法第17条
「医師でなければ、医業をなしてはならない」(医師法第17条)。
カウンセラーが診断や治療内容の決定を行うことは、
この条文に抵触する可能性がある。
「この施術は医師が直接判断・決定しましたか?」と確認することは、
法的根拠のある正当な質問だ。
📋 国民生活センターが記録する典型的な4つのトラブルパターン
① 「今やった方がいい」「今やらなければ間に合わない」と即日契約・施術を迫られた
② モニター契約による値引き感で高額契約に誘導された
③ リスクや副作用を十分理解できないまま契約・施術を受けた
④ クレジット契約や虚偽申告を促された

「医師から直接診察を受けて、医師から施術内容の説明を受けたか」
これを確認することが、最も重要な自衛策の一つだ。

💡 【業界視点】この構造はなぜ長年放置されてきたか
厚労省の整理通知は2024年に出された。
つまり、「カウンセラーが治療を決める」問題は以前から存在していたが、
医師法違反かどうかの判断基準と、取り締まりの主体が不明確だったため
長年グレーゾーンのまま放置されてきた経緯がある。

美容医療は自由診療・自主申告制が基本で、行政の立入検査も難しい。
制度の穴が、悪質な営業手法の温床になってきた。
2024年の通知はその第一歩だが、実効性ある監督体制の構築はまだ途上だ。

断る方法・帰れないとき・
契約後のキャンセル手段

その場で断る
「今日は話を聞くだけです。決めるのは別日にします」と最初に伝えておくのが最善策。
国民生活センターは「不安をあおられても、その場で契約・施術しないこと」を明示している。
帰れないとき
「帰ります」と明確に伝える。
それでも引き止められる場合は帰る権利を主張してよい。
帰れない状況そのものが問題であり、そのクリニックを選ぶ必要はない。
契約後のキャンセル
まず国民生活センター(電話:188番)に相談することを推奨する。
契約内容・施術の有無・契約形態によってはクーリングオフや中途解約が認められる場合がある。
医療ローンを組んだ場合も同様に相談先がある。早期相談が重要だ。
📋 クーリングオフが使える条件(特定商取引法)
特定継続的役務提供(医療脱毛・痩身・美肌治療など)に該当する契約は、
以下の条件をいずれも満たすとき、契約書面を受け取った日から8日以内なら無条件でクーリングオフが可能だ。
・役務の提供期間が1か月を超える
・契約金額が5万円を超える
ただし「医療行為」として扱われる施術は特定商取引法の対象外となるケースがあり、
適用可否はケースによって異なる。迷ったら必ず188番に相談してほしい。
NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

「大手チェーンだから安心」は思い込みだ。
規模が大きいほど組織的に売上優先の動機が働きやすく、
構造的なアップセルが起きやすい側面がある。

「テレビCMを打っている」「有名クリニック」は、
カウンセリングの倫理水準の根拠にはならない。


業界関係者の方にも伝えたい。
厚労省が2024年に整理通知を出したのは、
この問題がもはや「一部の悪質業者の話」では済まなくなったからだ。

説明体制・診察の実質・カウンセラーと医師の役割分担を
きちんと設計できているクリニックが、
今後の規制強化の波を生き残る。
そうでないクリニックは、遅かれ早かれ淘汰される。

NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

カウンセリング前に知っておく
5つの知識

📋 自分を守る5つのポイント
「今日は話を聞くだけ」と入室前に決める
当日契約の義務はない。「持ち帰って考えます」は正当な権利だ。
「今日だけ」「今決めないと損」はアップセルのサインとして使う
この言葉が出たら契約しない。帰ることを優先する。
⚠️ 特に「今日すぐ施術を受けると安くなる」は要注意。
施術を受けてしまうとクーリングオフが使えなくなる可能性がある。
初診当日は絶対に施術を受けずに帰ることを鉄則にしてほしい。
施術内容・料金の最終説明を医師から直接受ける
「担当医師から直接聞かせてください」と要求できる。それを断るクリニックは要注意だ。
契約前に「追加費用・解約条件・返金ポリシー」を書面で確認する
口頭説明のみは「言った・言わない」になる。書面要求は正当な権利だ。
迷ったら188番(消費者ホットライン)に相談する
国民生活センター・消費生活センターが契約・キャンセル・ローン問題の相談に応じる。

まとめ

  • ABEMA TIMES(2026年8月20日)が「施術料金1.9万→30万円への誘導」「医師でない者による違法カウンセリング疑い」を報道。国民生活センターも同様の問題を継続的に注意喚起しており、孤立した事例ではない。
  • 問題の構造は自由診療の価格不透明性・密室のカウンセリング・売上優先の動機が働きやすい3つの要因による。「悪質クリニックが一部にある」という話ではなく、制度的に起きやすい構造がある。
  • 厚労省は2024年整理通知で「カウンセラーのみと相談して決まった治療内容を医師が実施する事例」を問題と明示した。医師でない者が治療を実質的に決める構造は医師法上の問題事例に該当しうる。
  • 「今日だけ」「今決めないと損」はアップセルのサイン。その場では契約しないことが最大の防衛策だ。契約後は188番「いやや!」(消費者ホットライン・相談無料)に相談することで、クーリングオフ・キャンセル・返金の可能性を確認できる。

よくある質問

Q
「今日だけの価格」と言われた。その日に決めなければならないか?
決めなくてよい。美容医療は基本的に緊急性のない自由診療であり、「今日やらなければ手遅れ」という医学的根拠はほぼ存在しない。「一度持ち帰って考えます」は正当な消費者の権利だ。国民生活センターも「その場で契約・施術しないこと」を明示している。翌日以降も同じ価格で受けられるかを確認することで、そのクリニックの誠実さも測れる。
Q
すでに高額な契約をしてしまった。取り消せるか?
まず国民生活センター(電話:188番)または消費生活センターに相談することを推奨する。特定継続的役務提供(医療脱毛・痩身・美肌治療など)に該当し、期間1か月超・金額5万円超の契約は、契約書面受取日から8日以内なら無条件でクーリングオフが可能だ(特定商取引法)。ただし「医療行為」扱いの場合は対象外になるケースがある。強迫・誤認誘導があった場合は消費者契約法に基づく取消を主張できるケースもある。医療ローンを組んでいる場合も同様に相談先がある。まず188番(いやや!)に相談するのが最初のステップだ。
Q
「無料カウンセリング」でも油断できないか?
油断できない。「無料カウンセリング」はアップセルの入口として機能する場合がある。長時間の説明・心理的圧力のもとで予定外の高額契約につながるケースを国民生活センターも記録している。「今日は情報収集だけ」という姿勢を入室前から決め、複数クリニックのカウンセリングを比較することで客観的な判断がしやすくなる。

出典・参考文献

  1. ABEMA TIMES. 「施術料金1.9万→30万円に?密室で高圧説得、"医者以外"の違法カウンセリングも…美容医療業界にはびこる"アップセル"問題とは」ABEMA Prime. 2026年8月20日. times.abema.tv
  2. 国民生活センター. 「増加する美容医療サービスのトラブル」. 2023年8月30日. kokusen.go.jp
  3. 厚生労働省. 「美容医療における診療体制等に関する実態調査及び医療法上の取扱いについて」整理通知. 2024年. mhlw.go.jp
  4. 消費者ホットライン:188番(いやや!)(全国共通・相談無料/通話料がかかる場合あり)
安達健一

安達 健一

NERO DOCTOR/BEAUTY 編集長

日本・米国看護師(BSN)・MBA保有。世界の一次医療データをもとに監修。広告主からの影響を受けない独立した編集方針を貫いています。