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「レーザーで何度も刻む」時代は終わるのか──仙台・第44回日本美容皮膚科学会から見えた肝斑治療の潮流

「レーザーで何度も刻む」時代は終わるのか──仙台・第44回日本美容皮膚科学会から見えた肝斑治療の潮流

📍 学会現地レポート
2026年8月1日〜2日・仙台

2026年8月1日・2日、仙台。
第44回日本美容皮膚科学会総会・学術大会(会頭:菊地克子先生、テーマ:「みんなキレイに幸せに」)に参加した。

会場となったウェスティンホテル仙台では、シミ・肝斑のセッションでも
「レーザー単体に頼らない包括治療」が改めて強調されていた。

NEROとして現場で感じたのは、
「業界がゆっくりと、でも確実に方向を変えている」という感覚だ。

特にここ数年、「レーザートーニング・ピコトーニングを短い間隔で繰り返す」
というアプローチへの警鐘が、国内外で積み上がってきている。
今回の学会でも、その流れは続いていた。

この記事では「業界ではこうなってきている。
だから読者の皆さんにとってこういう判断材料になるかもしれない」
という現場感のある話をお届けしたい。
特定のクリニックや先生を名指しで評価するものではないことをあらかじめお断りしておく。

📋 この記事でわかること
  • 「レーザートーニング頻回照射」への学会の潮流──なぜ警鐘が続くのか
  • 肝斑の「本当の病態」──メラニンだけではなかった
  • マイクロニードリング・ニードルRFが「主役級」に浮上してきた理由
  • カウンセリングで使える4つの確認ポイント

「頻回照射の警鐘」は今年も続いていた──
蓄積してきた研究が示すこと

ここ数年、毎年のように美容皮膚科学会で繰り返されてきたメッセージがある。

⚠️ 学会・研究が繰り返し示してきた警鐘
肝斑に対して低フルエンス(低出力)のレーザートーニング・ピコトーニングを短い間隔で何度も重ねると、まだらな色素脱失(白抜け)やリバウンド(再燃・濃色化)が起きうる
レーザー・IPL単独での長期安定化は難しい。土台となる「遮光+内服+外用」なしにレーザーだけを重ねるアプローチには限界がある
2週間以内の頻回照射を避けるべきという指摘は、国際誌JCADの原著報告でも明示されている(Tian B. J Clin Aesthet Dermatol. 2017;10(7):40-42)
📖 用語解説:色素脱失(しきそだっしつ)・mottled hypopigmentation
レーザーの繰り返し照射により、メラニンを作る細胞(メラノサイト)が過剰にダメージを受けて起こる「白抜け」のこと。
肌がまだらになり、一度起きると元に戻りにくいとされている。
韓国・Jangらの研究(Ann Dermatol 2015・PMC4466296)では、
トーニング後の色素脱失部位ではメラニン色素がほぼ消失している一方、
メラノサイト自体は残存していることが報告されている。
回復に長期を要する例があり、その機序は原著でも「未解明」と明記されている。

NEROが現場で感じたのは、
これが一部の「慎重派」の意見ではなく、
国内外の皮膚科学のコンセンサスとして積み上がってきた流れだということだ。
読者にとって大事なのは、この話を「新しいトレンド」ではなく
「業界全体の認識の更新」として受け取ることだ。

肝斑の「本当の病態」──
メラニンだけではなかった

今年の学会でも改めて議論されていたのが、
肝斑の病態理解の進歩だ。
かつては「メラニン色素が増えすぎた状態」と単純に理解されてきたが、
近年の研究はより複雑な構造を示している。

肝斑(かんぱん)の病態:現在の理解
要因①
メラニン過剰産生
メラノサイト(色素細胞)が過剰に活性化した状態。ホルモン・紫外線・摩擦などが引き金になる
要因②
基底膜の障害
表皮と真皮の境界にある「基底膜」が弱ることで、色素が真皮側に落ち込みやすくなる
要因③
血管成分の関与
肝斑部位では血管が発達しやすく、血管由来の成長因子がメラノサイトを刺激するとされる
要因④
老化線維芽細胞(Senescent Fibroblast)
老化した真皮の線維芽細胞が「もっとメラニンを作れ」という信号をメラノサイトに送っていると報告されている(近年の注目テーマ)

「メラニンを減らすためにレーザーを当てる」だけでは、
この複雑な病態の一側面にしか対処していない。
だからこそ、「マイルドな改善を維持する」ための多角的な治療設計
改めて強調されているのだ。

現場で見えた「軸の移動」──
3つの方向性

現場の複数の先生方から共通して聞こえてきた方針は、
おおよそ3つの方向性に整理できる。

① トーニング・ピコトーニングは「使いすぎない道具」へ
集中期は1〜2週間隔で5〜10回程度、その後は月1回以上に間隔を空けていく。
「3ヶ月に1回程度」という慎重なスタンスを取る先生も確実に増えてきている。

美容医療診療指針(令和3年度改訂版・厚労科研班編集・日本皮膚科学会ほか複数学会協力)では、
肝斑へのIPL・レーザーの推奨度は「条件付きで弱く提案」に分類されている。
指針原文では遮光の徹底を最優先とし、美白外用・内服などの保存的治療を土台に、
レーザー・IPLは「効果不十分な場合の併用療法」として位置づけている。
参考:美容医療診療指針(令和3年度改訂版・Minds掲載)

② マイクロニードリング・ニードルRFが「主役級の選択肢」に浮上
📖 用語解説:ニードルRF(ニードルラジオ波)
マイクロニードリング(極細針で皮膚に微細な穴を開ける技術)に
RF(ラジオ波=電磁波の一種)を組み合わせた施術。
針の先端から直接熱エネルギーを届けるため、
表面の肌ダメージを抑えながら真皮に働きかけられる。
「シルファームX」(韓国VIOL社製・米国FDA承認・国内未承認)「シークレットRF」などが代表的な機器。いずれも国内未承認医療機器のため、自由診療での使用となる点に注意したい。

微細な針刺激で創傷治癒反応(傷を治そうとする体の機能)を誘導しながら、
レーザーのような熱ダメージを表皮に与えにくい設計が注目されている。

ニードルRFは、表皮〜真皮浅層の基底膜再構築・血管成分・老化線維芽細胞にも
同時にアプローチできる点が、肝斑の複雑な病態に合っているという声が多い。
特に「老化線維芽細胞を減らす」というロジックへの注目が高まっており、
学会でも複数の発表・議論が行われていた。

③ 「補助剤の組み立て」がクリニックの実力差を生む
レーザーをどう打つかよりも、
何と組み合わせるかが長期的な結果を左右するという認識が広まっている。
内服:トラネキサム酸(メラニン産生を抑制・血管にも働く)
外用:ハイドロキノン(効果高いが刺激あり)・トレチノイン/レチノイド・アゼライン酸・ビタミンC誘導体など
遮光:酸化鉄入り日焼け止めを含む徹底したUV対策(これなしに治療は成立しない)

これらを患者さんの肝斑タイプ・皮膚状態・生活習慣に合わせて
どう組み合わせるかが、実はクリニック間で実力差が出やすい部分だ。

カウンセリングで使える4つの確認ポイント

「どのクリニックで、どんな提案を受けたら続けるか」を判断する際の
最低限の問いとして使ってほしい。
万能な答えではなく、担当医師との対話を深めるための材料として読んでほしい。

確認① 「何週間おきに、何回まで続ける予定か」
「毎週末通い放題」「無制限」のようなパッケージは、学会の潮流とは逆方向だ。
累積エネルギーの上限を事前に決めておくクリニックの方が安心感がある。
📌 「何回で一段落しますか?その後はどうしますか?」と聞いてみるのが具体的だ。
確認② 「併用している内服・外用は何か、その理由は?」
遮光+内服(トラネキサム酸)+美白外用の「土台」があるかを確認する。
レーザー「だけ」で提案されているなら、なぜその構成なのかの説明を求めたい。
📌 「レーザーだけで改善できますか?内服は必要ないですか?」と率直に聞くとよい。
確認③ 「マイクロニードリングやニードルRFは選択肢にあるか」
肝斑への併用を前向きに検討する姿勢があるかどうかが参考になる。
深さ・密度・回数・併用薬の説明があるクリニックの方が、丁寧な設計がされている。
📌 「ニードルRFは私の肝斑に適合しますか?」と聞いてみるのも一つの手だ。
確認④ 「悪化した場合の中止基準とリカバリー手順は?」
「赤み・濃色化・まだらな白抜けが起きたら次まで様子を見ましょう」は不安が残る。
累積照射の中止時期・再評価のタイミング・保湿・遮光・休薬プランが事前に提示されるか確認したい。
📌 「色素脱失が起きたらどうしますか?」と先に聞いておくと、クリニックの対応力が見えやすい。
NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

現場で複数の先生方の話を聞いていて感じたのは、
「レーザーが悪い」という話ではなく、
「使い方と組み合わせが問われている」という流れだ。

「月1通い放題」のパッケージが存在する限り、
読者側が「何回が適切か」を知っておくことは大切だと思っている。


この話を書くことで、現場から「それは言い過ぎ」という反応が来ることもある。
でも学会で複数の先生が同じ方向の話をしているなら、
それはもはや個人の好みや流行の話ではなく、
業界全体の認識の更新として読者に伝えるべきフェーズだと判断した。

最終的な判断は必ず担当医師との対面で。
この記事はその対話を深めるための材料として使ってほしい。

NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

まとめ

  • 第44回日本美容皮膚科学会(2026年8月・仙台)でも「レーザートーニング頻回照射へのリスク認識」の流れは継続。2週間以内の頻回照射を避けるべきという指摘は国内外の研究・総説でも蓄積されている。
  • 肝斑の病態はメラニンだけでなく、基底膜障害・血管成分・老化線維芽細胞が関与する多因子疾患。レーザー単体では対処しきれない病態理解が進んでいる。
  • マイクロニードリング・ニードルRFが主役級の選択肢に浮上。基底膜再構築・血管・老化線維芽細胞に同時アプローチできる点が、肝斑の複雑な病態に合っているという声が増えている。
  • カウンセリングで確認すべきは4点:①照射間隔・回数の上限、②内服・外用の土台、③ニードリング系の選択肢、④悪化時の中止基準とリカバリー手順。最終判断は必ず担当医師との対面で。

📌 肝斑の治療設計は、皮膚のタイプ・既往歴・季節・生活習慣によって「最適解」が大きく変わる。この記事はあくまで判断材料の一つとして、担当医師との対話に活用してほしい。

よくある質問(FAQ)

Q
今通っているクリニックでトーニングを続けているが、やめるべきか?
「やめるべきか」を一律に言える話ではない。照射の間隔・累積回数・現在の肌の状態によって判断が変わる。この記事の4つの確認ポイントを使って、担当医師に「照射間隔と累積回数の見通し」「悪化時の対応」を確認してみることを推奨する。肌に何も問題が起きていないなら、まず現状を医師と一緒に評価してみることから始めるのが現実的だ。
Q
ニードルRFは肝斑に効くのか?どのクリニックでも受けられるか?
ニードルRFの肝斑への適応は全てのクリニックで標準化されているわけではなく、機器の種類・施術者の技術・患者の肌の状態によって効果や安全性が変わる。「シルファームX」「シークレットRF」など複数の機器があり、それぞれ照射設定が異なる。「肝斑に対してニードルRFを使った経験がどのくらいありますか?」とカウンセリングで直接聞くことが、クリニック選びの参考になる。
Q
トランシーノ(トラネキサム酸)の内服だけでも肝斑は改善するか?
トラネキサム酸(トランシーノ等)の内服は、肝斑に対してエビデンスのある選択肢の一つで、美容医療診療指針(令和3年度改訂版)でも遮光・美白外用と並んで保存的治療の柱として記載されている。ただし内服単独でどの程度改善するかは個人差が大きく、遮光の徹底・外用剤との組み合わせが重要だ。市販薬(第1類医薬品)として入手可能だが、長期服用する場合は医師の管理下で使うことが推奨される。

出典・参考文献

  1. 第44回日本美容皮膚科学会総会・学術大会(会頭:菊地克子先生)2026年8月1日〜2日・仙台 shun-convention.jp/bihifu44/
  2. Jang YH et al. "Changes in melanin and melanocytes in mottled hypopigmentation after low-fluence 1,064-nm Q-switched Nd:YAG laser treatment for melasma." Ann Dermatol. 2015;27(3):340-342. PMC4466296
  3. Tian B. "The Asian Problem of Frequent Laser Toning for Melasma." J Clin Aesthet Dermatol. 2017;10(7):40-42. PMID: 29104723.(小規模後方視的報告・23例・1施設)
  4. 美容医療診療指針(令和三年度改訂版)日本皮膚科学会 / Minds掲載版

安達健一

安達 健一

NERO DOCTOR/BEAUTY 編集長

日本・米国看護師(BSN)・MBA保有。
世界の一次医療データをもとに監修。
広告主からの影響を受けない独立した編集方針を貫いています。