近年、世界的にトレンドとなっているアートメイク。日本でも話題になっており、「やってみたい」と考えている方もいるでしょう。しかし美容大国の韓国では、すでにアートメイクはコスメなどと同じような位置づけにあり、日本よりも価格・技術ともに最先端を歩んでいます。そこで今回は、なぜ日本と韓国でアートメイクに差がついたのかを解説。日本でも良質な施術を受けるには?アートメイクはどうあるべき?といった点にも着目し、アートメイクの今とこれからをお伝えします。
INDEX
アートメイク先進国・韓国とは?
韓国のアートメイクは「価格が安くて技術力が高い」といわれています。まずは韓国のアートメイクの実情と、どのように普及したのかを見ていきましょう。
韓国のアートメイクの現状
日本のアートメイクは7~10万円前後かかるのに対し、韓国では1~3万円程度で受けられます。アートメイクは定期的にメンテナンスをしなければなりませんが、リタッチする際も韓国は無料でできるところがある中で、日本は2万円前後かかるなどトータルコストを考慮しても韓国のほうがかなり費用を抑えられます。
さらに韓国では、より自然でナチュラルかつ、長持ちする技法を独自で開発するなど技術面でも先進的。サロンやクリニック数も多く、韓国のアートメイク施術者はおよそ3万人、日本はおよそ1000人と、施術者数だけでも30倍もの差があります。
今でこそ日本はアートメイクが身近になりましたが、コストやクリニックの選択肢の多さから見ても、渡韓して旅行ついでにアートメイクを受けたほうがお得といわざるを得ないのが実情です。ただし、韓国は施術者が多いぶん競争が激しく、技術力の格差が大きいといった一面もあります。
日本のアートメイクが20年前の韓国といわれる理由
アートメイクの起源は諸説ありますが、美容目的でタトゥーを入れたのはヨーロッパが発祥だとされています。アートメイク自体は1986年以降世界的に流行し、ヨーロッパ式のアートメイクが韓国に流入したのは1995年ごろ。アメリカ・ヨーロッパ・中国の技法を取り入れながらも韓国は独自に発展し、2015年にはアートメイクの最先端を歩むようになりました。アートメイクを産業として確立させた韓国では、いち早く法律を整備するための動きを始め 、専門学校やスクールなどアートメイクを学べる場も日本に比べて充実しているのが特徴です。
<PICK UP> アートメイクの始まりでもあるタトゥーの歴史は非常に古く、古来のエジプトや中国、日本へと遡ります。タトゥーは文化や宗教の一環として行われ、身体にインクを注入して永続的な模様やデザインを施す装飾の一種でした。 医療アートメイクとタトゥーは、技法・目的・リスク・料金・持続性などあらゆる面で異なる特徴があります。アートメイクは医療・美容の一環として行われる施術であり、眉毛やアイライン、リップ、ヘアラインなどの部位に色素を入れることで、自然なメイク効果を持続させるものです。一方のタトゥーは、芸術的なデザインやシンボルを表現させるために行います。また、アートメイクとタトゥーでは、色素を入れる皮膚の層が異なるという点でも明確な違いがあります。 韓国でアートメイクが広まっていた頃、日本は「アートメイクはタトゥーなのか?医療行為なのか?」といった議論の真っ只中でした。そして2005年、国はアートメイクをめぐるトラブルや被害から患者を守るため、長い議論の末にアートメイクを医療行為だと決定します。つまり、韓国がアートメイクを発展させている頃、日本はアートメイク産業の発展に踏み切れていなかったのです。 しかし、そもそもアートメイクは、皮膚に針を刺し、痛みや出血、感染症のリスクを伴う行為です。入れる色素も安全基準をクリアしていないものは、アレルギーなどのリスクがあります。韓国でもアートメイクは医療行為とされており、トップ層のアーティストに確かな技術と高いクオリティがあるのは間違いありませんが、医療資格がなくても施術するサロンがあったり、安全性への配慮がゆるかったりと、すべての施術者が信頼できるとはいいきれません。施術を受ける際は、韓国だからいい、日本だからダメというのでなく、デザイン力・技術力・コスト・安全性を、自らが納得したうえで選ぶ必要があるでしょう。 |
日本のアートメイク業界の特徴
日本ではアートメイクを施術する場合、医師または看護師資格がある人しか行うことができません。そのため基本的には、医師以外の施術者を「アートメイク看護師」と呼んでいます。しかし中には、より専門的な知識と技術を習得し、「アーティスト」として活躍する方も。実は日本のアートメイク業界は、大きくわけて4つの構造に分類されています。それぞれ解説していきましょう。
①美容クリニックでアートメイクを提供
美容皮膚科などのクリニック内で、メニューの一貫としてアートメイクを提供するパターンです。同じクリニックで治療と並行してアートメイクを行えるため、ダウンタイムなどを考慮した計画を立てやすいのが特徴です。美容スタッフとして働きながらスクールに通う方や、先輩看護師から技術を学ぶ方がいます。
②アートメイクに特化したクリニック
アートメイクブランド「メディカルブロー」など、アートメイクを専門とするクリニックもあります。大手の専門クリニックでは看護師の技術力に応じてランクをつけるなど、スキルアップできる体制が整っており優秀な人材が多く輩出されています。患者側も予算に応じて、経験豊富な看護師を指名できるのがメリットです。
③クリニックでアートメイクの実績を積み、独立する
美容クリニックやアートメイク専門クリニックで数年間経験を積み、独立するパターンです。フリーランスのアートメイク看護師としてクリニックに所属する、またはアートメイククリニックを立ち上げるなど、プロフェッショナルに活躍される方が多くいます。
④国際的なディプロマ(証明書)を取得する
世界で通用するアーティストになるには、海外の技術を知る必要があります。しかし海外のアーティストを講師として日本に招いたり、オンラインで学んだりすることはできても、日本ではリアルな施術を学ぶことができません。そこで国内のクリニックで看アートメイク護師を経験後、海外留学や研修に参加し、国際的なディプロマ(証明書)を取得するなどさらなる高みを目指す方もいます。
【日本のアートメイクでも、良質な施術を受ける】ための見極めポイントとは?
ここまで韓国と日本におけるアートメイクの違いを解説しました。日本はアートメイクの歴史が浅いために普及が遅れているものの、現在は成長途中ということが理解できたでしょうか。
「じゃあ、日本にはアートメイクが上手なクリニックは少ないの?」と思う方もいるかもしれませんね。しかし日本にも技術力が高いアートメイク看護師や、アートメイクに理解が深いクリニックは多く存在します。
そこで、ここでは日本でも良質なアートメイクを受けるための見極め方をご紹介します。
ポイント①クリニックではなく施術者の経歴をチェックする
日本で医療行為にあたるアートメイクは、医師または看護師であれば、アートメイクの資格やスキルがなくても施術ができてしまいます。つまりほかの美容施術が評判のクリニックであっても、アートメイクの経験は未熟である可能性もあるということです。クリニックを選ぶ際はアートメイクへの知見の深さや、施術する人の経歴と実績をチェックしておきましょう。
ポイント②症例写真が豊富でトレンドに敏感かチェックする
アートメイクは手彫り・マシン・手彫りとマシンのコンビネーション式と、施術方法もさまざまです。技法も日々進化しているため、最新の技術やトレンドのデザインに対応できるかどうかは大切な判断ポイント。
症例数が多いクリニックは、そのぶん経験が豊富なため安心感があります。SNSで症例を発信している方も多く、理想のスタイルが叶うかどうか事前にチェックしておくことが大切です。
ポイント③カウンセリングに力を入れているクリニックを選ぶ
韓国でアートメイクをする際は、カウンセリング時に言葉の壁が立ちはだかることがあります。その点、日本ならしっかりコミュニケーションがとれるため、要望を伝えやすいのが大きなメリット。どれだけ技術力があるアーティストでも、自分の理想と仕上がりに相違があっては困りますよね。クリニックや施術する人によっても「美の基準」は異なるものです。カウンセリングに時間をかけて、小さな要望も親身に対応してくれるところを選びましょう。
スキンタイプやアートメイクの考え方など……海外と日本の違い
アートメイクはトレンドの移り変わりが早く、同じ眉毛への施術でも地域や時代でデザインも技法も異なります。世界各国から国を代表するアーティストが輩出され日々技術が進化する中で、日本もこうした変化に追いついていかなければなりません。ここでは日本が取り入れるべき海外の技術や、これからのアートメイクのあり方を解説します。
すべてのスキンタイプに適合するアートメイクを
皮膚の色や皮膚の硬さなど、人の数だけ異なるスキンタイプ。アートメイクは色素選びや針の入れ方など、スキンタイプ一つひとつにベストな選択をしていかなければなりません。日本ではアートメイクの促進のためにセミナーや世界大会などさまざまな取り組みがされていますが、やはり実際に経験してみなければ、それぞれの違いを知りつくすことは困難です。アジア・アメリカ・ヨーロッパと、それぞれの国のアートメイクを経験し、技術を取り入れながら、どんなスキンタイプにも対応できることが今後の発展につながるでしょう。
アートメイクに対する考え方をアップデートする必要性も
アートメイクは美容の垣根を超え、一般医療としても応用されています。例えば乳がんで手術した方の乳輪を立体的に描く、脱毛症の方の毛を描く、身体的症状によってメイクができない方にメイクを施すなど、アートメイクで個人の尊厳を守ることも可能です。しかし、海外ではアートメイクを治療の一環として手術とセットにするところもある一方で、日本では医療と美容の区切りが強く、治療とアートメイクは別物と考えられてしまいます。タトゥーの文化がなかったことも背景にありますが、多様性が求められる時代、今後は日本も治療後の外見にまで配慮できる国を目指していかなければならないでしょう。
まとめ
アートメイクは単なるタトゥーではなく、美容の洗練度を上げたり、医療にも応用できたりと、すでに身近な存在へと進化しています。しかし日本におけるアートメイクの考え方や技術力は、まだまだ韓国をはじめとした海外から学ぶことが多くあるでしょう。日本のクリニックには高い安全基準やカウンセリングの丁寧さなど、日本ならではの良さもあります。海外のアートメイクのあり方を受け入れながら、今後さらなる発展を期待したいですね。
・当サイトは、美容医療の一般的な知識をできるだけ中立的な立場から掲載しています。自己判断を促す情報ではないことを、あらかじめご了承ください。また、治療に関する詳細は必ずクリニック公式ホームページを確認し、各医療機関にご相談ください。
・本記事は、執筆・掲載日時点の情報を参考にしています。最新の情報は、公式ホームページよりご確認ください。
・化粧品やマッサージなどが記載されている場合、医師監修範囲には含まれません。