「再生医療」の闇と光~「若返り」は神への冒涜か、人類の希望か。 海外と日本の再生医療についての法規制の 考え方の違い/日本の再生医療の世界的ニーズとは

「再生医療」の闇と光~「若返り」は神への冒涜か、人類の希望か。 海外と日本の再生医療についての法規制の     考え方の違い/日本の再生医療の世界的ニーズとは

細胞や組織を再生し、若返らせる「再生医療」
世界創造神話がいうように、神が万物を創造したとするなら、人間が自然を操作してその秩序を乱すことは、神への冒涜といえるでしょうか? 人間には、動植物やヒトの生命をどこまで操作し、改造することが許されるのか。 再生医療をタブーや不可侵な領域に感じる人もいる中で、世界は急速に再生医療を発展させており、日本も例外ではありません。美容医療の領域の再生医療を語る前に、世界における「再生医療」そのものについて把握しておきましょう。

また近年、日本に医療を受けに訪れる訪日外国人も増加しています。
一般的に「インバウンド・訪日美容」と言われるジャンルですが、
なぜ外国人は日本に訪れ、美容医療・再生医療を行うのか?
再生医療に関して、世界や日本におけるニーズや現状を解説します。

再生医療は人類の希望?再生医療の世界的な市場規模と今後の展望

再生医療の概要やニーズ、将来の市場規模について解説しましょう。

世界的に研究が進む「再生医療」とは?

「再生医療」とは、疾患や事故、老化などにより機能が損なわれた臓器・組織を修復・再生し、機能を取り戻すために行われる医療技術や医療製品の総称です。再生医療には人や動物の細胞、あるいは人工的な材料が使用されます。

再生医療の実現化のために研究が進められている「幹細胞」の中には、大きく「多能性幹細胞」「体性幹細胞」があります。

多能性幹細胞

(万能細胞)

ほぼ無限に増殖し、多種多様な細胞・組織を作り出す能力を持った幹細胞。代表的なものに「ES細胞」iPS細胞」がある。意図しない細胞に分化したりガン化したりするリスクが課題。
体性幹細胞

(組織幹細胞)

一定の限られた種類の細胞・組織を作り出す能力を持った幹細胞。代表的なものに、骨・軟骨・脂肪細胞などに分化できる「間葉系幹細胞」がある。もともと自分の体の中に自然にある細胞に由来するため、治療に用いやすい点が特徴。

例えば体性幹細胞の1つである「脂肪幹細胞」を用いて、下記の疾患の治療が行われています。

・脊髄損傷
・慢性疼痛
・変形性関節症(膝・股関節・肩・足など)
・乳癌による乳房切除後の乳房再建
・下肢虚血
・皮下軟部組織再建(シワ・たるみ改善)
・毛髪再生 など

再生医療は、これまで治療が困難だった症状や疾患に対して、改善が見込める新しい治療法です。寿命が延びている一方で、老化や慢性的な疾患に苦しむ人も増えている現代において、世界中から期待されている医療分野といえます。

【多能性幹細胞】
①ES細胞(胚性幹細胞)
1981年にイギリスで誕生して以降、再生医療研究の中心的存在だった細胞。受精卵が胎児になる途中の、分裂が始まった胚にある細胞を採取・培養することで作られる。受精卵に近い能力を持ち、体のあらゆる細胞・組織に分化可能。
しかしES細胞を得るためには胚を破壊しなければならないため、「本来赤ちゃん(1人の人間)になれる細胞」を使用する点において倫理的な問題があり、各国で規制されていた。

②iPS細胞(人工多能性幹細胞)
2006年に誕生し、2012年に京都大学の山中教授らがノーベル賞を受賞した新しい細胞。人の皮膚や血液などの体細胞に特殊な遺伝子操作を行うことで、人工的に未分化な状態(多能性幹細胞の状態)にリセットし、作られる。本来、人の皮膚から採取した細胞は皮膚にしか分化できないが、iPS細胞は「初期化」された状態の細胞であるため、さまざまな臓器に分化が可能。
成熟した体細胞(皮膚や血液)から作られるためES細胞のような倫理的問題が起こりにくく、今後の再生医療において重要な役割を持つと期待されている。

【体性幹細胞(組織幹細胞)】
体の中に存在し、各組織や臓器を維持するために新しい細胞を作り出す細胞。体内にさまざまな種類がある。(骨髄に存在し、赤血球や白血球といった血液細胞を作り出す「造血幹細胞」など。)
ただし、多能性幹細胞と比べると分化能が限定的で、分裂回数にも限りがあるのが特徴。
幹細胞の中でとくに注目されているのは、脂肪から採取できる「脂肪幹細胞」。大量に採取しやすく、脂肪だけでなく骨や軟骨、筋肉、心筋などに分化する能力を持つ。美容医療分野でも注目されている。

再生医療の世界的市場規模

【再生医療等製品の将来市場規模予測】

世界市場規模 日本
2020年 1兆円 950億円
2030年 12兆円 1兆円
2050年 38兆円 2.5兆円

出どころ:第1回再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(複数課題プログラム)中間評価検討会 資料5「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業 複数課題プログラムの概要」(2020年3月)

再生医療は、これから発展が期待できる分野です。再生医療に関わる医薬品・機器の「再生医療等製品」や治療法は世界的に注目が高く、各国が競って研究を進めています。
再生医療の市場規模は現在まだ小さいですが、成長率が非常に大きく、世界的に急速に拡大しているのが特徴です。2030年には再生医療が医薬品の1分野として一定の市場を形成し、2040年頃には、2020年の約20倍の市場規模に拡大するとの推計もあります。

日本において、保険診療で使用できる再生医療等製品は、2019年12月には7製品でした。しかし厚生労働省・文部科学省・経済産業省が連携して積極的に再生医療の実用化を進めており、2020年12月には9製品、2024年1月時点では19製品と急速に増加しています。

【PICK UPコラム】再生医療等製品とは?


「再生医療等製品」とは、疾患の治療や予防、体の構造や機能の再建・修復・形成、遺伝子治療を目的に、人あるいは動物の生きた細胞や組織を培養・加工し作られた製品のことです。金属でできた製品よりも人の体になじみやすい特徴があり、医薬品や医療機器と同じように使われます。
再生医療等製品は、医薬品・医療機器と同じく「医薬品医療機器等法」による管理の対象です。通常は、非臨床実験(動物実験など)や臨床研究、治験などを経て、厚生労働省による安全性や有効性に関する審査を通過しなければ、実用化することはできません。(なお「条件及び期限付承認制度」については後述します)
日本で承認を受け保険収載されている再生医療等製品は、19製品です(2024年1月18日時点)。

販売名 一般名 効果または性能(※諸条件あり)
イエスカルタ®

点滴静注

アキシカブタゲン シロルユーセル 大細胞型B細胞リンパ腫・びまん性大細胞型B細胞リンパ腫など
アベクマ®点滴静注 イデカブタゲン ビクルユーセル 再発または難治性の多発性骨髄腫
ゾルゲンスマ®

点滴静注

オナセムノゲン アベパルボベク 脊髄性筋萎縮症
カービクティ®

点滴静注

シルタカブタゲン オートルユーセル 再発又は難治性の多発性骨髄腫
アロフィセル®注 ダルバドストロセル 非活動期または軽症の活動期クローン病患者における複雑痔瘻
キムリア®点滴静注 チサゲンレクルユーセル B細胞性急性リンパ芽球性白血病・びまん性大細胞型B細胞リンパ腫など
ビズノバ® ネルテペンドセル 水疱性角膜症
ハートシート ヒト(自己)骨格筋由来細胞シート 虚血性心疾患による重症心不全
ネピック® ヒト(自己)角膜輪部由来角膜上皮細胞シート 角膜上皮幹細胞疲弊症
オキュラル® ヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シート 角膜上皮幹細胞疲弊症
ジャック® ヒト(自己)軟骨由来組織 膝関節における外傷性軟骨欠損症または離断性骨軟骨炎
ジェイス® ヒト(自己)表皮由来細胞シート 重症熱傷・先天性巨大色素性母斑・栄養障害型表皮水疱症など
テムセル®HS注 ヒト(同種)骨髄由来間葉系幹細胞 造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病
サクラシー® ヒト羊膜基質使用ヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シート 角膜上皮幹細胞疲弊症における目表面の癒着
ステミラック®注 ヒト(自己)骨髄由来間葉系幹細胞 脊髄損傷に伴う神経症候及び機能障害
コラテジェン®筋注用4mg ベペルミノゲン ペルプラスミド 慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症及びバージャー病)における潰瘍
ルクスターナ®注 ボレチゲン ネパルボベク 両アレル性RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィー
ジャスミン メラノサイト含有ヒト(自己)表皮由来細胞シート 白斑
ブレヤンジ®静注 リソカブタゲン マラルユーセル 大細胞型B細胞リンパ腫・濾胞性リンパ腫など

参照:再⽣医療等製品情報|再生医療ポータル

日本の再生医療、先進国で進んでる?遅れてる?

再生医療に関する製品は、世界中で開発が活発化しています。日本はその中で、世界有数の先進国と言えるでしょうか?遅れているイメージがあるでしょうか?
実のところ日本は、世界トップと言える状況ではありません。再生医療はまだまだ研究段階のものが多く、実用化されている治療法は数える程度です。
2020年1月時点で集計された再生・細胞医薬品の国別開発製品数は、アメリカが最も多く、238件です。次いで欧州(100件)、中国(54件)になっています。日本は4位(35件)です。

ただし日本は、iPS細胞においては、世界1位の臨床試験数を誇ります。またiPS細胞研究の特許出願数や論文数については、日本はアメリカに次いで世界2位です(2021年3月時点)。
iPS細胞は、2012年に京都大学の山中教授が、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を使ってブタ虚血性心筋症モデル動物の心機能が改善したことを報告しました。世界に先駆けた研究で、ノーベル賞を受賞しています。そのためiPS細胞は、日本が国を挙げて力を入れている研究分野です。しかし現在、世界中で多能性幹細胞(ES細胞・iPS細胞)の臨床試験は増加しています。各国が追い上げてきている形ともいえるでしょう。

また再生医療における日本の特徴は、もう1点あります。それは「再生医療等製品の条件及び期限付承認制度」という日本独自のシステムです。

再生医療等製品の条件及び期限付承認制度は、再生医療等製品を迅速に実用化し、患者に届けるために設けられました。いわゆる「仮免許」のような制度です。
通常の医薬品は、実用化されるまでに治験やさまざまな審査を経て、安全性・有効性についての確認・承認を得なければなりません。しかしそれでは、開発から実際の患者に届くまで長い時間がかかります。そのため、安全性を確保しながらも早期に再生医療の実用化を目指せるよう、2014年に「医薬品医療機器等法」および「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行。条件・期限付承認という日本独自の体制が確立されました。
この制度により、臨床試験(第Ⅰ相・第Ⅱ相臨床試験)で一定の有効性・安全性が示される再生医療等製品については、第Ⅲ相臨床試験を行わずに実用化可能です。また早期承認時から、保険適用となります。対象となる症例や疾患数が少なく、これまで承認までの臨床試験が困難な再生医療等製品であっても、迅速に臨床で活用できるようになりました。

◆制度の違いにおける諸外国との考え方の違いについて
欧米の考え方:リスク・ベースド・アプローチ
米国や欧州とも、再生医療に使われる細胞・組織加工製品の規制において、個々の製品についてリスク分析・評価を行うリスク・ベースド・アプローチが原則です。

製品開発の初期段階から、科学的にリスク因子が評価されます。製品固有のリスク評価を行うことで、パブリック・ヘルスを保護するのが目的です。細胞の加工や非相同的使用の条件以外は、単純にハイリスク・ローリスク製品に分類していません。

また、「ホスピタル・エグゼンプション(病院免除規定)」の考え方も日本と異なります。
ドイツの場合:物の品質をしっかりと見る+製造所査察
イギリスの場合:品目ごとではなく製造所の承認
品質の程度というのは、各国の考え方によって違ってきます。

対して日本の考え方:
厚生労働省から、幹細胞の品質・安全性確保に関する指針が5指針発出されている中で、【排除できるリスクを排除した上で、残されたリスクと患者が受ける潜在的なベネフィットのバランスを取るという形でリスク評価をしていきましょう】という表現に違いがあります。
日本は医師法・医療法・薬事法による法律により、一定は「医師であれば」医師と医療を受けるものとの信頼関係において、一定の自由度が認められている」というのも他国との大きな違いです。

※参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002oguy.html

【PICK UPコラム】条件・期限付承認されている再生医療等製品「ハートシート」
条件・期限付承認されている再生医療等製品の中で、最も早く承認された製品が「ハートシート」です。
これはiPS細胞をもとに心筋細胞を作り、シート状にして心臓に移植する、日本唯一の技術です。重篤な心不全患者に用いられています。細胞のタンパク質を維持したまま移植できるため、生着率が高いのが特徴です。
「ハートシート」は2014年に条件・期限付承認制度が開始されてから、2015年9月に商品として販売。その後、保険診療で用いられながら臨床データが収集されています。

海外から日本の「再生医療」を受けに来る外国人が多い理由とは?

世界的に再生医療に対する関心が高まる中、海外から日本に再生医療を受けに来る人も増加しています。医療ツーリズムとは何かを解説しましょう。

国も取り組んでいる「医療ツーリズム」とは

医療ツーリズムとは「医療を受けることを目的に他国を訪れること」を意味します。
医療ツーリズムの目的は人によってさまざまですが、あえて海外で医療を受ける目的としては、一般的に以下の理由が考えられます。

自国では受けられない

高度な医療を受けるため

医療技術・資源の不足や制度の問題などで、自国では受けられない治療・検査を受けたいケース。
自国で受けるよりも

質の高い医療を受けるため

自国でも同じような治療・検査は受けられるが、医療技術・資源が不十分で質が高くないケース。
自国で受けるよりも

治療費を抑えるため

自国で治療・検査を受けると高額になるケース。治療内容や国によっては、医療費や渡航費、滞在費を含めても海外で受けるほうが安くなる場合がある。
自国で受けるよりも

早期に治療を受けるため

(待機時間の短縮)

自国で治療・検査を受けようと思うと、待機時間が長期になるケース。治療内容や国によっては、海外で受けるほうが早く受けられる場合がある。

医療ツーリズムはアジアをはじめ世界で盛んになっており、タイやマレーシア、シンガポール、韓国、インドなども国として取り組んでいる事業です。
近年日本も、医療滞在ビザの導入や海外イベントでのブース出展などを行い、医療インバウンド(医療渡航)の受け入れに力を入れています。その理由は、日本が少子高齢化となっていく中、医療を受けに来る外国人が増加することで「日本の医療技術向上」や「日本経済の活性化」といったメリットがあるためです。

【医療ツーリズムを受け入れるメリット】

日本の医療技術向上 世界各国の医療技術・資源と比較されることで、日本の医療技術向上につながる。医療ツーリズムの患者の治療費は自費になるため、医療機関の利益が大きい点も、医療業界の安定化・活性化に効果的。
日本経済の活性化 医療ツーリズムの訪日外国人には富裕層が多いことも特徴。患者・家族が滞在し宿泊・飲食・ショッピングなどを行うことで、インバウンド効果が見込める。

大手旅行会社と病院が連携して医療ツーリズム事業を展開したり、医療通訳や多言語の文書を準備する医療機関が増えたりなど、日本国内では医療ツーリズムへの意識の高まりが見られています。

海外から日本の医療を受けに来る理由は?

日本は、医療を目的とした訪日外国人患者・家族に対して「医療滞在ビザ」を発給しています。コロナ流行前の2015~2019年の集計によると、医療滞在ビザの取得数は年々増加しており、年間成長率は15%です。また、医療滞在ビザを取得した訪日外国人のうち、7~8割は中国人でした。また、ベトナムからの渡航者も増加しています。

医療滞在ビザ総数 中国 ベトナム
2015年 946 829(87.6%) 17(1.8%)
2017年 1,383 1,198(86.6%) 61(4.4%)
2019年 1,653 1,201(72.7%) 333(20.1%)

参考:令和3年度医療国際展開推進事業(医療国際展開推進事業)報告書

海外の人が医療を受けに訪日する理由は、日本の医療水準の高さや、ホスピタリティに対する期待が大きいためと考えられます。
日本の医療は皆保険であり、全国どこの医療機関であっても概ね同じような水準の医療サービスを受けることが可能です。世界の中で見ても、そのような国はあまりありません。また日本は各国と比較して、病床数やMRI・CTなどの医療資源を豊富に持っています。そのため、患者に必要な医療をスピーディーに提供可能です。あらゆる場所から医療機関へアクセスしやすく、休日や夜間の診療体制も整っているなど、安定した医療が提供されています。
さらに日本の医療は、患者中心を原理としたチーム医療が特徴です。患者に寄り添い、常に患者にとっての最善の利益を考えて提供される医療は、日本の大きな強みと言えるでしょう。

日本の再生医療は本当に安全?再生医療を受ける上で注意すべきこと

日本の再生医療は安全で、安心して受けられるのでしょうか?その点については、注意すべきことがあります。それは大きく以下の2点です。

・自由診療で行われる再生医療は、合法であっても安全・有効とは限らない点。
・幹細胞(培養)上清液やエクソソームを使用した治療は再生医療に含まれず、現状は規制対象外である点。

1点ずつ解説します。

自由診療で行われる再生医療は、合法であっても安全・有効とは限らない

2014年、自由診療で実施されている再生医療を規制するために「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行されました。この法律では、自由診療や臨床研究として行われる再生医療について、第1種(高リスク)・第2種(中リスク)・第3種(低リスク)に分類して規制しています。

【再生医療等の分類】

第1種(高リスク) ES細胞やiPS細胞を使う再生医療、遺伝子導入した再生医療、他者の細胞を使用する再生医療など
第2種(中リスク) 患者本人の体性幹細胞(間葉系幹細胞)を使う治療など
第3種(低リスク) 患者本人の体細胞を使う治療など

上記の再生医療を行う場合、国へ届け出を行い、治療計画について審査・承認を得ることが必要です。そのため厚生労働省のホームページからは、国内のどの施設でどのような再生医療が実施されているか、誰もが検索できるようになっています。
参照:再生医療等提供機関一覧(治療)

また、患者の安全を最大限確保するため、細胞を培養する際は専用施設内の無菌下で行うなど、環境に義務を設けている点も特徴です。そのため、厚生労働省ホームページから確認できる施設で受けられる再生医療は、一定水準の安全性を確保しているといえるでしょう。

ただし、再生医療には「保険適用の治療(国の審査・承認を経て実用化された再生医療)」「自由診療の治療(国の審査・承認を受けていない再生医療)」の2パターンがあります。国内で行われている再生医療の多くは、自由診療です。自由診療の再生医療は、科学的根拠に基づいて有効性が認められているとはいい切れません。
日本では、承認を得ていない治療であっても、医師・医療機関(提供者側)と患者(受ける側)との合意があれば自由診療として提供可能です。そのため自由診療で行われる再生医療は、法律には則っていますが、有効性が定かでない可能性があります。すでに確立されている標準治療より効果が乏しい可能性や、思わぬ副作用が出現する可能性がある点に注意しましょう。
治療のベネフィット(利益)とリスク(副作用)を十分に考慮して、受けるかどうか選択することが大切です。

幹細胞(培養)上清液・エクソソームによる治療は再生医療の規制対象ではない

もう1つの注意点は「幹細胞(培養)上清液」や「エクソソーム」についてです。
これは過去の記事でも初心者向け解説した記事がありますので参考にしてください。

幹細胞(培養)上清液やエクソソームの治療は、幹細胞を培養したあとの上澄み液を用いられます。自由診療の枠組みで美容医療でもよく行われる治療です。
幹細胞培養上清液やエクソソームを用いる治療は、細胞自体を使用する治療ではないため、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の第1種・第2種・第3種いずれにも含まれません。そのため、製造環境や原材料・製品の質に水準が設けられていない点が、大きな懸念点です。
規制する法律がないため、不潔な環境や不適切な原材料で製造・保管されていても、分からない危険性があります。
治療を受ける場合は、必ず信頼できる医療機関で受けるようにしましょう。

「信頼できる医療機関を見定めること」は難しいですが、最低限患者側で見定めることができることは、上記を踏まえ、エクソソームなどの再生医療の対象外である治療であっても、施設として第1種・第2種・第3種のいずれかの承認を取っている医療機関で受けることが望ましい、といえるでしょう。

まとめ

再生医療は多くの可能性を秘めており 、病や老いに悩む人類にとっては、希望にもなる医療分野といえます。人生100年時代の中、女性・男性を問わず「若々しく健康に生きたい」「なるべく若い頃の容姿のままで美しくありたい」と思うのは当然です。しかし一方で、再生医療はまだ研究段階の治療も多くあり 、倫理的問題や副作用などのリスクもはらんでいます。しかし、医療の発展は常にそうした研究のもとで行われてきました。再生医療の分野は美容分野だけでなく、各種疾患治療の分野など、健康寿命や長寿に関わる治療方法ともいえます。 そんな中、他国と比較したときに承認制度が臨床先行型であり、とらえ方によっては「緩い」といわれるような日本の体制。
諸外国から「質の高い医療、効果の高い医療が受けられる」という富裕層の旅行客が訪日する理由にも頷ける部分があったのではないでしょうか?

「いつまでも若々しく、美しくありたい」という気持ちを、人間は抑えることができない、といえます。さまざまな葛藤も抱えながら、今後も再生医療は急速に発展していくでしょう。

今後もNEROでは再生医療の特集に力を入れていきます。
お楽しみに!

・当サイトは、美容医療の一般的な知識をできるだけ中立的な立場から掲載しています。自己判断を促す情報ではないことを、あらかじめご了承ください。また、治療に関する詳細は必ずクリニック公式ホームページを確認し、各医療機関にご相談ください。
・本記事は、執筆・掲載日時点の情報を参考にしています。最新の情報は、公式ホームページよりご確認ください。
・化粧品やマッサージなどが記載されている場合、医師監修範囲には含まれません。