【医師監修】エクソソーム・幹細胞培養の仕組みって何?同じ幹細胞培養上清液でも、「何由来」かによって成分が違う?初心者でもわかる基礎知識解説

【医師監修】エクソソーム・幹細胞培養の仕組みって何?同じ幹細胞培養上清液でも、「何由来」かによって成分が違う?初心者でもわかる基礎知識解説

近年、美容や健康の維持・促進に役立つとして、「エクソソーム」や「幹細胞培養上清液」に関連した治療が高い関心を集めています。幹細胞培養上清液は、体が持っている再生力を活用した新しい治療です。加齢に伴って増えるシワ・たるみの改善や、薄毛改善、ダウンタイム軽減などの美容効果が期待されています。医学の世界では多く研究、活用され、可能性を模索される一方、消費者側にとっては「『エクソソーム』と『幹細胞培養上清液』って同じなの?」という疑問や、「『エクソソームで事故があったというのは本当?』など、どこか不透明でわからない、未知だから怖い…という人がいるのも一つの傾向と言えます。

幹細胞培養上清液の治療が気になっている方に向けて、まずは幹細胞培養上清液・エクソソームの仕組みや、それぞれがもたらす効能、基礎知識をわかりやすく解説するので、参考にしてください。

なお、こちらのテーマについては今後NEROではエビデンスなどを用いて重点的に解説していく予定です。
まずは基本・基礎編の記事としてご覧ください。

イラストで解説!そもそも、「幹細胞培養上清液」とは?最近話題の「エクソソーム」と同じ?

■そもそも、幹細胞とは?

幹細胞培養上清液(かんさいぼうばいようじょうせいえき)について説明する前に、まず「幹細胞」について説明しましょう。
幹細胞とは、「皮膚や赤血球などの様々な種類の細胞に分化する能力」と、「自分と全く同じ細胞に分裂する能力」を持った細胞のことです。新たな細胞を作り出したり、自分自身が分裂したりすることで、皮膚や血液などの組織の細胞を入れ替える働きを持っています。

私たちの体はずっと一定なように見えますが、実際には細胞それぞれに寿命があり、永遠に同じではありません。新しい細胞を生み出すことで死にゆく細胞を補い、組織の機能を維持する働きをするのが、幹細胞なのです。怪我をしたり組織がダメージを受けたりした場合も、幹細胞の働きによって組織が修復されます。

例えば、「血液の細胞」は骨や髪を修復することはできず、「髪の細胞」は血液を修復することはできません。
しかし、幹細胞の場合、自分とは異なる細胞に分化(変化して分裂してすること)する「多分化能」を持っていため、これが可能となるのが特徴です。
さらに、「自己複製能=自己細胞を修復する能力」ももっているため、この2つの特性を併せ持つのが幹細胞の特徴です。この性質は、再生医療をはじめとしたさまざまな医療の分野で応用できると期待されています。これからお伝えする幹細胞培養上清液による肌治療も、その性質の恩恵を受けるものの1つです。

■幹細胞「培養上清液」とは?

次に、「幹細胞培養上清液」とは、幹細胞そのものではありません。

幹細胞を培養し、培養液から幹細胞を取り出したあとに、滅菌や遠心分離などで処理した上澄み液のことです。以前は、幹細胞の培養増殖が完成すると、幹細胞を取り出したあとの溶液は、医療廃棄物として処分するものでした。

しかし、「幹細胞を取り出した後とはいえ、幹細胞と同様、有効な物質が染みだし、治療に役立つのではないのか?」という研究者たちの新しい仮説が立てられました。その後、研究や実験が重ねられた結果、実際にいい結果が報告され、幹細胞培養上清液は治療に役立つ「製品」として誕生しました。

 

具体的には、幹細胞培養上清液には、幹細胞の培養過程で放出された「エクソソーム」や「サイトカイン」、「成長因子(グロースファクター)」といった成分が、大量に含まれています。美容医療の分野においては、それらの成分が皮膚の細胞に作用することで、創傷治癒やエイジング対策などの効果が期待できると考えられるようになりました。

現在は、診療科目を限定せず、もちろん美容以外の分野でも用いられています。

【PICK UPコラム】
エクソソームとは?幹細胞培養上清液とは違うものなの?
「エクソソーム」とは、簡単に言えば、ヒト幹細胞上清液から、エクソソームのみをさらに単離したものを示します。単離の方法はさまざまで

  • 遠心分離
  • 沈殿
  • 抗原に対する抗体を利用する
  • 結合を利用する

ものなどさまざまありますが、単離の際の純度や回収量など、業者や分離キット、メーカーなどによりムラがあるといえます。血清などから分離する場合と比較するともともとの培養上清液の量がかなり必要となることや、保管状態・保存濃度によっても効果や反応性が低下することもあります。

簡単にいうと「幹細胞培養上清液」は、細胞の成長や分化をサポートするための物質を提供する役割も含んでおり、「エクソソーム」は細胞から分泌される小さな器官・小胞、ということです。

幹細胞や幹細胞培養上清液にはエクソソーム以外の成分もたくさん含まれています。幹細胞培養上清液にはエクソソーム「」入っている。ということです。
また、現在市場にあるエクソソームの製品は、単一成分と言えるものはほぼありません。
※技術はあるが、経費がかかりすぎるため商品化はできておらず、濃縮の範囲を超えない
(ので、商品を売る際の売り文句の範囲を出ない)のが実態です。
※消費者だけでなく、医師でさえ誤解している人も多いのではないでしょうか。

※エクソソームについては、また別途別の記事でも紹介・深堀りをしていこうとおもいます。

■幹細胞培養上清液には、エクソソームの他に、どんな成分が含まれている?

幹細胞培養上清液に含まれる成分(エクソソーム・成長因子)の特徴は、以下のとおりです。

エクソソーム 幹細胞から分泌されるカプセル状の物質。メッセージ物質とも呼ばれ、抗炎症作用や組織の修復作用がある。
EGF(上皮細胞増殖因子) 表皮細胞を増産し、皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を促進する。シミ・くすみの改善に役立つ。
VEGF(血管内皮細胞増殖因子) 新たな血管の形成に重要な役割を持つ。血行改善により、発毛・育毛に関与する。
HGF(肝臓細胞増殖因子) 肌細胞や血管など、肝臓以外の組織の再生にも関わる。
aFGF(線維芽細胞成長因子) 真皮層に存在する線維芽細胞を増産。肌のハリをサポートするため、シワ・たるみ改善に役立つ。創傷治癒の促進。
PDGF(血小板由来増殖因子) 皮膚の細胞分裂を促進し、組織修復に関与する。
IGF-1(インスリン様増殖因子) 新しい皮膚細胞の産生を促進。ハリ・弾力の向上や、育毛に役立つ。
KGF(ケラチノサイト増殖因子) 毛母幹細胞を刺激し、発毛・育毛に関与する。
TGF-β(トランスフォーミング増殖因子) 抗炎症・創傷治癒に関与する。

上記は成分の一部であり、幹細胞培養上清液には500種類以上の成長因子が含まれているのが特徴です。幹細胞上培養上清液は、美容に有効な成分を多く含むことから、シワ・たるみ改善や薄毛治療などに効果的と考えられています。また、美容分野以外にも、慢性疾患の改善や生活習慣病の予防など、さまざまな疾患に効果が期待できる治療です。

幹細胞培養上清液の「由来」による種類・分類

なお、幹細胞培養上清液は1種類ではありません。確認しておきたいのは以下2点です。
・何由来か?
・どの人種のドナーによるものか?(国内・海外)
幹細胞を採取した部位によって分けられ、「骨髄由来」「歯髄由来」「脂肪由来」「臍帯由来」の4種類が主流です。何に由来した幹細胞培養上清液かによって、特徴が異なります。

歯髄幹細胞培養上清液 歯にある神経(歯髄)に由来。とくに乳歯由来は、ほかの幹細胞培養上清液より成長因子の効果が高いとされている。
脂肪幹細胞培養上清液 脂肪組織に由来。主に脂肪吸引で採取された脂肪を利用するため、採取の負担が小さい。
臍帯幹細胞培養上清液 臍帯血(臍の緒を流れる血液)に由来。赤ちゃんが育つために必要な成分を多く含んでいる。
骨髄幹細胞培養上清液 骨にある神経(骨髄)に由来。採取に伴う負担が大きいため、主に脊髄損傷や血液疾患の治療で使用される。

【重要POINT】
・ヒト由来ですが、他家(自分以外)の幹細胞を培養した際の上清液となります。
・「上澄み」を加工した「製品」であることを再認識しておきましょう。
・生産元は日本内外にありますが、「海外製のものは「細胞ドナーなどが不明」である場合も多く、一般的に、国産のものを使用するのが安心」と謳うクリニックも多いのが最近の風潮です。

※しかし、遅かれ早かれ海外の日本製よりも良い品質基準を持つ製品が入ってくるものと思われます。国産だから必ずしもいいものというわけではありません。国内外に関わらず、ドナーの安全性や品質基準が担保されている製品を使用しましょう。

【培養上清液】は、「再生医療」にあたるの?

再生医療とは、一般的に「損なわれた体の機能を回復するために、人が本来持っている再生力を活用して行う治療のこと」です。当然ながら「幹細胞」を使用した治療は、再生医療に当たります。

一方、日本は、「再生医療」には明確に分類を定めています。

医院側が、再生医療の取り扱いをはじめるために必要な要素

  1. 厚生労働省が認めた特定認定再生医療等委員会で厳しい審査を受ける
  2. そこで適切と認められれば厚生労働省に治療計画を提出する

この手順を踏んで、はじめて再生医療の治療を行うことが可能となります。
この届出の際、取り扱うと決めた技術や使用する細胞などの治療計画の内容に合わせ、第1種~3種までの「リスク分類」があることは、覚えておきましょう。

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000820632.pdf

通常で考えれば、当然「再生医療に含まれるのでは」と考えるものですが、一方、前述のとおり「幹細胞培養上清液」には「幹細胞」そのものは入っていません

エクソソームもまた、現在(2,024年1月時点)法律上はいまだ同様の分類となります。そのため、
幹細胞培養上清液・エクソソームの活用については「再生医療法」の範疇外である
というのが、今現在の見解となります。

【引用元ソース:PICKUP】
参照:令和3年8月20日:厚生労働省「再生医療等安全性確保法における再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直しに 資する研究 報告書」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000820632.pdf

【新規医療技術への対応についての提案】
研究班においては、そもそもエクソソーム等は法で定義している「細胞加工物に該当するのか」という点について議論され、現状は再生医療等安全性確保法の対象である「細胞」という概念には当てはまらず、細胞断片として整理されるものであると結論づけた。

それがどういうことか?というと、再生医療の届け出が出ていない施設でも、場合によっては取り扱いをしている可能性があるということでもあり、逆説的に言うと、「エクソソームや幹細胞培養上清液を用いた治療を希望する場合、きちんと再生医療の届出が出ている施設を選ぶこと」が重要であるといえます。

 

【PICKUP】NERO 監修医師コメント

上述のとおり、「再生医療の届け出をだしていない場合も、培養上清やエクソソームの治療は認められています」
そのため、クリニック側の謳い文句を抜きにして考えれば、
届け出が出ているクリニックと出ていないクリニックで、【培養上清やエクソソームを使用する】場合の大きな安全性の違いはないと考えます。むしろ問題となるポイントは、【再生医療等安全確保法などの最低限の安全性基準に基づいて生産されていない培養上清やエクソソームの製品が市場にあることそのもの】、かつ、【消費者はその商品が安全かどうか判断することが難しい】ことだと思います。ですので、幹細胞治療を行う場合の安全基準である再生医療等安全確保法に基づいて生産されていない培養上清は使わない、というのが重要だと覚えておきましょう。

 

最後に、投与方法による違い

 

美容皮膚科で幹細胞培養上清液を投与する方法 には、主に「塗布」「局所注射(皮下・皮内)」と「点滴(静脈内注射)」があります。局所注射は、注射器により気になる部位にピンポイントに投与する方法です。「静脈内注射(点滴) 」は、体を流れる血液・静脈内に投与する方法のことをいいます。投与方法による作用の違いを解説しましょう。

■塗布

美容皮膚科では、幹細胞培養上清液を塗布によって投与する方法もあります。とくにマイクロニードル(ダーマペン)との併用は、多くのクリニックが導入している方法です。ダーマペンによる創傷治癒促進作用と、幹細胞培養上清液・エクソソームなどによる効果が加わることで、肌をより効率的に整える効果が期待できます。加齢に伴うシワやたるみといったエイジングサイン、毛穴の開き、妊娠線、ニキビ痕など、さまざまな肌悩みにアプローチできる治療です。

■局所注射(皮下・皮内)

局所注射は、とくに効果を出したい部位に、手打ちで幹細胞培養上清液を含んだ注射液を投与する方法です。注入部位の細胞分裂が活性化され、再生が促されます。注入する部位によって、エイジングサイン(シミ・シワ)改善、肌の炎症改善、薄毛改善などに効果的 です。

■点滴(静脈内注射)

点滴(静脈内注射)は、静脈内に、ゆっくり幹細胞上清液を含んだ注射液を注入 する方法です。血流にのって幹細胞上清液が全身に行き渡り、さまざまな細胞を刺激することで、健康・美容効果が見込めます。疲労回復のサポート、術後のダウンタイム軽減、不眠改善、関節痛改善、集中力向上など、全身に効果 が期待できる投与法です。

※点滴・注射での静脈注射については、健康な方には有効性があると考えられている一方で、
・その後の献血・輸血ができなくなる
・がん細胞などを活性化してしまい増悪につながるリスクも示唆されています。
医師の診断により適応かどうかの見極めが必要ですので、信頼できる医師

まとめ

いかがでしたか?「幹細胞培養上清液」「エクソソーム」は、厳密には違うものですが、どちらも美容や健康への効果が期待できる治療として、多くのクリニックで導入されている治療です。

ただし、幹細胞培養上清液・エクソソームを臨床で実用した治療はまだ歴史が浅く、クリニックによって取り扱っている内容やその効能の差も異なります。

そのため、信頼できるクリニックで施術を受けることが大切です。また、エクソソームなどの点滴を受けた場合、治療後は献血ができなくなるという点は認識しておきましょう。幹細胞培養上清液やエクソソームを美容のために使ってみたい方は、メリット・デメリットを考えて選択しましょう。

美肌・美容目的であれば、まずは気になる部分への局所注射やダーマペンなどの治療と組み合わせて塗布・浸透させる方法で試してみるのもおすすめです。

NERO編集部では今後、幹細胞・エクソソームについてもう一段深堀した記事・コラムも執筆予定ですので、お楽しみに!

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