今や、コンプレックスの解消をすることは恥ずかしいことではないと思う人も増え、美容クリニックで治療を受けることを公言する人も増加している時代。医院数も毎年増えている伸び盛りの業界と言えます。
そんな中、「美容医療が気になる・やってみたい」「でも、どこに行ったらいいの?」と悩む方も多いでしょう。
美容クリニックは、使用する機器や薬剤、費用がさまざまで、医師の得意分野も異なります。そのため満足できる美容医療を受けるためには、クリニック・医師選びが何より重要です。今回は「初めての美容医療でどう選べばいいかわからない」「美容医療で失敗したくない」と考えている方へ向けて、美容クリニックを選ぶポイント3点と、カウンセリングでの心構えを解説します。
選び方1:クリニックの診療内容で選ぶ
クリニックを選ぶ際にまず把握するべきことは、「自分の改善したい悩みや受けたい治療に対応しているか」ということです。美容クリニックの診療科には、大きく「美容外科」と「美容皮膚科」があります。それぞれの内容の違いを解説しましょう。なおクリニックによっては、幅広い診療内容に対応している場合も少なくありません。
なおクリニック名として「ビューティクリニック」や「スキンクリニック」と称している場合もありますが、診療科(標ぼう)として一般的なのは上記2種類です。クリニックによっては「脱毛クリニック」や「痩身クリニック」など、特定の分野に特化している場合もあります。
肌トラブル改善や美肌治療なら「美容皮膚科」
メスを使用せず、機器や薬剤など非外科的なアプローチで美肌を目指す分野が、美容皮膚科です。肌トラブルの予防・改善、肌質改善、リフトアップなど、美しさを追究した治療を行います。なお湿疹、水虫など病気の治療は一般皮膚科が適切です。ニキビ(跡ではなく、現在もあるニキビなど)の治療などは保険で受けることができる内容と、自費治療の内容には明確に線引きがあるケースも多いため、保険と自費の治療のいい部分を併せて治療していく必要があります。
【美容皮膚科に適した悩みや行われる治療】
悩み | 行われる治療(例) |
シミ・そばかす | レーザー治療、光(IPL)治療、ピーリングなど |
シワ・小ジワ | ボツリヌストキシン注入、ヒアルロン酸注入、RF治療など |
ニキビ痕・色素沈着 | ピーリング、レーザー治療、ニードル治療、イオン導入など |
たるみ・肌のハリ | ヒアルロン酸注入、肌育注射、ハイフ、レーザー治療など |
くすみ・美白 | 光(IPL)治療、イオン導入、レーザー治療など |
ムダ毛 | レーザー脱毛など |
部分痩せ・痩身 | 脂肪溶解注射、高周波治療など |
外科的なアプローチを求めるなら「美容外科」
メスを使用する形成外科技術を用いて、コンプレックス解消や見た目の美しさを追究する分野が美容外科です。美容整形ともいわれます。外科手術で顏や体のラインを変えたり、パーツを形成したりします。美容皮膚科に比べて侵襲度の高い治療が多い点が特徴です。
【美容外科に適した悩みや行われる治療】
悩み | 行われる治療(例) |
一重・奥二重 | ⼆重術(埋没法・切開法) |
腫れぼったい目 | 脂肪除去、二重術など |
クマ | クマ取り(ハムラ法・裏ハムラ法)など |
鼻の高さ・形 | プロテーゼ挿入、軟骨縫合、ヒアルロン酸注入など |
フェイスライン・輪郭 | 輪郭形成術(骨切り・骨削り)、ヒアルロン酸注入など |
シワ・たるみ | フェイスリフト、糸リフト、ボツリヌストキシン注入など |
バスト(豊胸) | 脂肪注入法、人工乳腺法など |
部分痩せ・痩身 | 脂肪吸引など |
女性器 | 婦人科形成術 |
選び方2:医師の知識や技術力で選ぶ
日本の法律では、医師免許を持っていれば、ルールに基づいて診療科を自由に標ぼうできます(麻酔科・歯科を除く)。専門的な経験を持たない医師であっても、クリニックに「美容外科」や「美容皮膚科」と掲げることも、可能なのです。美容医療の発展は日進月歩で、次々と新しい機器や薬剤、治療法が出てきています。そのため経験があるだけでなく、知識・技術の向上に努めている医師でなければ、安心して任せることはできません。
美容医療を受ける際は、在籍する医師にも注目して、クリニックを選びましょう。医師を選ぶ際の注目ポイントを解説します。
医師の経歴・資格・所属学会を確認する
多くの場合、クリニックのホームページやSNSなどに医師の経歴や資格、所属学会が記載してあります。治療を安心して任せられる医師かどうか判断するために、下記の項目を参考にするのも1つの方法です。
経歴 | 経験のある診療科は何か(皮膚科、外科、形成外科など) |
資格 | 院内の肩書だけでなく、専門医・認定医など、特定の分野の資格があるか(、形成外科専門医、皮膚科専門医など) |
所属学会 | 学会に所属しているか(形成外科学会、美容外科学会など) |
とくに「専門医」は、一定の研修期間を経て、専門医認定試験をクリアした医師のみが取得できる資格です。専門医を取得している医師は、その分野に関して一定以上の経験や知識・技術があると判断できます。
【PICK UPコラム】美容外科学会って2つあるの? 日本の美容外科学会には、JSAPS(Japan Society of Aesthetic Plastic Surgery)とJSAS(Japan Society of Aesthetic Surgery)の2つの組織が存在しています。名前が似ているため紛らわしいですが、両者は別の団体です。主に次のような違いがあります。 |
<JSAPS> ・形成外科学会から派生した学会で、国際美容形成外科学会(ISAPS)の認定を受けている美容外科学会。学術発表は専門性やリスク評価などの内容が多い傾向。 ・所属する医師の特徴:形成外科医としての経験を積んだ医師、大学病院・関連施設で働く形成外科医 ・美容外科専門医(JSAPS):正会員歴3年以上かつ試験に合格し、10症例の美容外科手術レポート提出を経て認定される。 |
<JSAS> ・開業医が中心となって発足された美容外科学会。 ・学術発表は臨床的で、実践的な内容が多い傾向。 ・所属する医師の特徴:形成外科・皮膚科など幅広い出身の医師、大手美容外科で働く医師 ・美容外科専門医(JSAS):美容外科医として5年間大手美容クリニックに勤務かつ試験に合格すれば認定される。 |
正会員や専門医になるためのハードルが高いのは、JSASよりJSAPSです。しかし両学会は成り立ちや構成する医師が異なるため、一概にJSAPSのほうがJSASよりも優れているとは言えません。 どちらの学会も美容外科の発展を目指し、研究や知識・技術の普及活動を行っています。 また、患者目線で見ても、学術的な観点だけでなく、美的センスやカウンセリングでのなりたい姿をすり合わせるコミュニケーション能力などさまざまな能力をもとに患者と医師の信頼関係や手術、治療の成果は変わるため、その点踏まえると所属している学会において、極端な優劣は発生しないことは言えるかもしれません。 |
医師の得意分野を確認する
ホームページ・SNSで発表されている症例や、医師が保有している専門医・認定医の資格から、医師の得意分野が判断できます。医師の得意分野や専門分野が自分の悩みに合っているか、事前に確認しましょう。
悩み・受けたい治療 | 医師の専門分野 |
肌表面のトラブルの治療(シミ・くすみ・肌のキメ・乾燥・ニキビ・ニキビ痕・肌荒れなど) | 皮膚科医、皮膚科専門医 |
メスを使わずマシンや注入、糸によって顔の形を変える治療(シワ・たるみ・小顔・リフトアップなど) | 美容外科医、形成外科医、マシンや注入のメーカーが認定指導する医師 |
メスを使って顔や体の形を変える治療(美容外科治療・美容整形) | 美容外科専門医、形成外科専門医 |
美容医療は、医師の知識・技術によって治療効果や仕上がり、副作用が大きく左右される分野です。とくに顔や体の一部を切除したり形成したりする外科的治療は、その最たるもの。体にかかる負担が大きいうえに、簡単に修正ができません。そのため専門医資格を持っているかどうかは、医師選びの際の大きなポイントになります。
医師の症例写真を確認する
美容外科治療やヒアルロン酸注入など、顔の造形を変える治療を受けたいなら、医師のセンスと自分の好みが合うかにも注目しましょう。「美しさ」の判断基準は人それぞれです。カウンセリングで仕上がりイメージを共有することも重要ですが、そもそもセンスが合わなければ、治療結果に不満が残る可能性が高まります。そのためホームページやSNSで複数の症例を確認し、好みが合うと感じる医師を選ぶのがおすすめです。
また、所謂「チャンピオン症例」※最もうまくいった症例 を掲載しているケースもあるため、症例の数についてもしっかりと確認しておけるといいですね。
選び方3:費用で選ぶ
美容医療は疾患の治療が目的ではなく、より美しくなることを目的に行われます。そのため保険適用にならず、提供する側と受ける側双方の同意によって成り立つ自由診療が基本です。同じ機械や薬剤を使った治療でもクリニックによって料金が異なるため、事前に複数のクリニックをリサーチして相場を把握しておきましょう。なお料金の設定は、主に次のような要素が影響します。
・クリニックの立地……都心や駅近など立地の良いクリニックは料金が高い傾向がある。
・人件費……症例を豊富に持つ医師・人気の医師などは料金が高い傾向がある。
・マシンや薬剤の価格……高額なマシンや薬剤を使う治療は料金が高い傾向がある。
・広告費…TV CMや交通広告など、高いコストをかけている場合、料金が高い傾向がある。
一般的に、個人クリニックよりも大手チェーン美容クリニックのほうが安い傾向にあります。またキャンペーンやモニター価格などを設定しているクリニックもあるでしょう。必ずしも高ければ効果がある治療とは限りません。クリニックを選ぶ際は、医師の経歴や症例なども総合的にしっかりチェックすることが大切です。
カウンセリングにおける心構え
いざクリニックを受診すると、カウンセリングが行われます。カウンセリングとは、悩みを相談し、具体的な治療計画について提案や説明を受ける時間のこと。自分に合った適切な美容医療を受けるためには、カウンセリングも重要です。医師・看護師との意思疎通が不十分のまま治療を受けると、後悔する結果になるかもしれません。悩みや仕上がりの希望、治療への疑問については、細かなことでもしっかりと伝えましょう。
またカウンセリングでのスタッフの対応次第では、クリニックを選びなおすことも必要です。カウンセリング時にチェックしたい内容を紹介します。
美容医療の知識を十分持ったスタッフが対応するか
クリニックによっては、医師ではなくカウンセラーや看護師がカウンセリングすることがあります。質問してもごまかされる場合は、知識が無く信頼性に欠けると言えるでしょう。
なお、カウンセリングにあたるスタッフが強引に「安くできる」などの料金のことを言うクリニックには気を付けましょう。あくまでも疑問や不安に対して、スタッフが誠意を持って答えてくれるかが確認したいポイントです。
医師がカウンセリングに参加するか
とくに外科手術の場合は、医師から丁寧に説明があるかは大切なポイントです。実際に治療するのは医師なため、患者としっかりコミュニケーションをとり、悩みや希望に寄り添ってくれる医師を選びましょう。
治療内容を丁寧にわかりやすく説明してくれるか
医療では、治療について患者の理解・同意を得る「インフォームドコンセント」が重視されています。カウンセリングの際、わかりやすく丁寧に説明することは、医療機関として当たり前です。
リスクや副作用をきちんと説明してくれるか
どんな治療にも、何かしらの副作用やリスクが伴います。同意書にサインを求める時点でリスクや副作用についての説明がない場合は、信頼性が低いクリニックです。治療後の経過や起こりうるリスクについて、きちんと説明のあるクリニックを選びましょう。
執拗な勧誘やアップセルがないか
カウンセリングの際に、すぐに契約するよう急かしたり強引に料金の高い治療をすすめたりするクリニックは、信用できません。中には、「当日だから割引ができる」「今たまたまキャンセル枠があいた」「人気の院長が半額で対応してくれる」などと意思決定を当日に迫るようなケースは特に注意が必要です。
まとめ
美容医療は自由診療という特性上、クリニックによって治療内容や費用の幅が大きいのが特徴です。選ぶクリニック次第で、治療の満足度が大きく左右されると言えます。「診療内容が自分の悩みに合っているか」「医師の経歴や得意分野が自分に合っているか」「費用が自分に合っているか」の3つを必ず確認して、美容クリニックを選びましょう。また受診した際は、カウンセリングの内容にも注目してみてくださいね。
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