年齢を重ねると徐々に気になり始めるのが「たるみ」…!たるみは一般的に20代後半から徐々に始まり、加齢とともにどんどん進行します。たるみがあると、老け顔や疲れ顔に見えて、気持ちも落ちてしまいますよね。
たるみは顔の表面に現れますが、「皮膚」だけが原因で起こるのではありません。皮膚よりも内側にある「靭帯」や「筋肉」の衰え、そして「骨萎縮(骨やせ)」なども関係しているのです。
今回は、たるみの原因や、骨萎縮によるたるみの予防法について、詳しく&分かりやすく解説します。
INDEX
たるみが起きる基本的な理由について
骨委縮ってなに?たるみとどう関係するの?ということを説明する前に、そもそも、たるみが起きる基本的な理由について説明しましょう。
顔がたるむ仕組み
顔にたるみが起こると、「太ったからたるんだ?」「肌にハリが無くなったからたるんだのかな?」など、人によって、さまざまなたるみの原因を想像するでしょう。そう、たるみの原因は決して1つではないのです。
人の体の構造をイメージしてみてください。顔や体は、いくつかのレイヤーで構成されています。皮膚の表面から順に、次のとおりです。
・表皮
・真皮
・皮下組織(皮下脂肪)
・筋膜
・筋肉
・靭帯
・骨
いくつもの組織の層が重なって顔の形を作っています。そしてこれらの組織は、年齢を重ねることで「退行性変化」を生じるのが自然の摂理です。例えば骨や筋肉が萎縮したり(小さくなること)、肌細胞の数が減ったり、機能が衰えたりするのを、退行性変化といいます。
顔を形作っている組織全体が加齢によって衰え、重なっている層がそれぞれ複合的に関係することで、たるみが起こってしまうのです。
たるみやすい部位
顔の中でたるみが目立つ部位は、誰であっても大体同じです。多くの人は、次の部位で「なんだかたるんできたかも……」と実感するのではないでしょうか。
・目の周り
目尻や目の下、目の上など、目の周辺は酷使することが多く、たるみが非常に起こりやすい部位。上まぶたがたるむ原因として、眼瞼下垂(がんけんかすい)という目が開きづらい状態になっているということもあります。
・ほうれい線
頬と口角の間に現れる溝、ほうれい線。加齢に伴いほとんどすべての人に現れて、老け顔の印象を作るたるみジワです。頬のたるみによって起こります。
・マリオネットライン
口元がたるむことで、口角からあごにかけて真っすぐ伸びるのがマリオネットライン。目立ちやすく、ほうれい線以上に老けて見えてしまうのが特徴です。
・ゴルゴライン
目頭から頬に向かって伸びるゴルゴラインは、とくに骨や靭帯の影響を受けて起こりやすいたるみジワです。そのため骨格や皮下脂肪の量によっては、出現しない人もいます。
・二重あご、フェイスライン
顔全体がたるむことで輪郭のシャープさがなくなり、ブルドック顔と呼ばれるフェイスラインのもたつきや、顔の大きさが目立つようになります。あごは重力の影響を受けやすいため、脂肪の量に関わらず、たるみによって二重あごになる場合も……。
【表層的なたるみ】表皮・真皮など、表層に近い部分でのたるみの原因とそれが起きる理由
「たるみの原因にはいろいろあることが分かったけど、具体的に知りたい!」そんな美意識高めの方へ、レイヤーごとのたるみ原因を簡単に説明していきましょう。
まずは、表層的なたるみの原因について。
顔を形作る組織の中で最も表面側(外側)にあるのは、皮膚ですね。細かく分けると「表皮」や「真皮」です。とくに肌のハリやうるおいを保つ「真皮」は、たるみに大きく影響します。
【真皮層って?】 美肌を目指す人は知っておきたい「真皮層」! 真皮層は、コラーゲンやエラスチンといった繊維組織、水分を保持するヒアルロン酸などで構成される層です。 表皮の10倍ほどの厚さ(1~3mm)があり、肌の弾力やハリ、うるおいを保っています。 |
≪真皮層の主な構成要素≫
成分 | 特徴 |
線維芽細胞 | コラーゲンやエラスチンなど、真皮層を構成する成分を産生する。 |
コラーゲン | ひっぱられても伸びにくい特徴があり、肌の強度や弾力を保つ成分。真皮層の成分の70%を占め、表皮や皮下脂肪を支えている。
立体的・網目状に広がり、エラスチンとも複雑に絡み合う。 |
エラスチン | コラーゲンほど強靭ではないが、ゴムのような性質があり、肌の弾力を保つために重要な役割を果たす。
コラーゲンをつなぎとめるように、ところどころで複雑に絡み合う。 |
ヒアルロン酸 | コラーゲンとエラスチンの隙間を埋め尽くす、ジェル状の成分。クッションのように肌の弾力をサポートする。
水分を蓄える能力が高く、みずみずしい肌を保つために重要。 |
真皮層は、重力に負けず、プルンとした弾力ある肌を保つために重要です。しかし真皮層の主な成分は加齢によって急激に減少していきます。
そのため年齢を重ねるにつれて真皮層は薄くなり、皮膚の弾力やハリはどんどん低下。皮膚が重力に耐えられなくなって、表層的なたるみやシワが起こってしまうのです。
【PICK UPコラム】 年をとると真皮層の成分はどのくらい減少するの?
グラフを見ても明らかなように、線維芽細胞やコラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸の数は、加齢によってどんどん少なくなります。 |
【中層的なたるみ】支持靭帯(リガメント)・皮下組織(脂肪)のたるみ、筋肉・筋膜(SMAS)のたるみ
つぎに中層的なたるみは、なにが原因で起こるのでしょうか?ひとくちに中層的と言っても、「皮下脂肪」や「筋肉」「筋膜」「靭帯」など要素がたくさんあります。簡単に、1つずつ解説しましょう。
皮下脂肪の下垂や量の減少
皮下脂肪は、真皮と筋肉の間にある層。皮膚を支えて持ち上げる役割や、クッションとして外部からの衝撃をやわらげる働き、体温を保つ働きなどを果たしている組織です。
加齢によって皮下脂肪のボリュームが減ると、皮膚が余って、たるみが生じます。
また皮下脂肪は、脂肪内のコラーゲン繊維で形が維持されています。しかし加齢とともに繊維の強度が弱まり、支えられなくなると、脂肪が重力に負けてたるみが起こることに……。
とくに頬やこめかみ、目の下、額などは、コケが起こりやすい=皮下脂肪が下に移動しやすい部位です。脂肪が下垂した結果、ほうれい線やフェイスラインにたるみを感じることになります。
筋肉の萎縮
顔の表情を作る表情筋は、使わなかったり不適切な姿勢をとったりすることで、簡単に衰えてしまいます。当然、加齢によっても委縮しやいのが特徴。筋肉が小さくなると、筋肉より表面にある組織を支えられず、顔全体がたるむ原因となります。
過度に動かすと表情ジワの原因になりますが、筋肉を衰えさせないことが大切です。
靭帯(リガメント)や筋膜(SMAS筋層)の衰え
美容医療のたるみ治療に興味がある方は、聞いたことがあるかもしれません。「靭帯(リガメント)」や「SMAS(スマス)筋層」の衰えも、たるみの大きな原因です。
【リガメント って?】 ・眼輪筋リガメント…目の周りの筋肉を支えるリガメント ・眼窩下リガメント…目の下のリガメント ・頬骨リガメント…頬を支えるリガメント ・咬筋リガメント…頬骨の下、耳と口の間にあるリガメント ・顎下(下顎)リガメント…口角の下辺りにあるリガメント皮膚・脂肪・筋肉・骨をしっかりとつなぎ合わせる、接着剤のような役割を持つ組織です。顔には複数のリガメントが存在しています。リガメントがしっかりと皮膚や脂肪を固定し支えていることで、顔にたるみが起こらず肌に弾力を保ってくれるのです。 |
【SMAS(スマス)筋層って?】 顔の皮下脂肪と表情筋との間に存在している、薄い膜状の組織です。ところどころ骨や皮膚に固定されながら、1枚のシート状になって、頭皮~首に広がっています。 SMASを引き上げることで顔全体のリフトアップができるため、フェイスリフトなどのたるみ治療でアプローチされます。 |
リガメントもSMASも、顔の中層に位置して脂肪や皮膚の形を支える重要な組織です。加齢とともにSMASやリガメントが衰えてゆるむと、表面にある皮下脂肪が垂れ落ちて、たるみにつながってしまいます。
【そして真相!「骨萎縮」によるたるみ】骨萎縮ってなに?正体とは
これまでの流れで、「内側にある組織が衰えて小さくなったり力が弱くなったりすると、表面にある組織を支えきれずに、たるみにつながる」ということが分かってきたのではないでしょうか?そう、それは「骨」も同じです。
骨やせ、という言葉を聞いたことがあるかもしれません。どんなに健康な人でも、頭蓋骨をはじめとした全身の骨は、加齢によって萎縮します。つまり、小さくなるのです。
【骨萎縮 ってどういうこと?なぜ起こるの?】 骨の健康には、「骨密度」が関係しています。骨密度とは、骨を構成する成分(カルシウムなどのミネラル)の詰まり具合のこと。骨密度が高いほど、強く健康な骨と言えます。 実は、骨は一生同じ細胞で作られているのではなく、常に溶かされたり(骨吸収)作られたり(骨形成)して、代謝している組織です。もし骨の形成より骨吸収のほうが上回ると、骨密度が低くなり、骨はスカスカで弱い状態になります。骨密度は、男性でも女性でも、加齢によって減少します。 とくに女性は、20歳をピークに徐々に減少。50代頃に閉経を迎えると、急激に骨密度が減るのが特徴です。 【加齢によって女性の骨密度が減る理由】 上記の理由で、体の中のカルシウムが不足します。そして、体はカルシウム不足を調整するために、今ある骨を溶かしてカルシウムを補充しようとするため、さらなるカルシウム不足に……。その結果、頭蓋骨が小さくなってしまうのです。 |
頭蓋骨に骨萎縮が起こると、具体的に次のような変化が表れます。
部位 | 骨の変化 | 顔印象の変化 |
額(前頭部) | へこむ | 額の丸みがなくなる |
こめかみ | へこむ | こめかみの丸みがなくなる |
眼窩
(眼球が収まっている部位) |
穴が外側・下側に拡大する | 目が落ちてくぼむ |
眉間 | 平坦になる | シワが目立つ |
頬 | 平坦になる | 頬がたるみ、ほうれい線・ゴルゴラインなどが目立つ |
鼻 | 穴が横に拡大する | 小鼻が広がり鼻先が垂れる |
下顎 | 短くなる | 二重あごやフェイスラインのたるみが起こる |
骨は、筋肉や脂肪、皮膚などの土台です。そのため骨が小さくなる=土台が小さくなると、その表面にある組織すべてがゆるんだり、垂れさがったりして、たるみを起こしてしまいます。
骨委縮によるたるみを予防するには?重要なのはインナーケア
骨が小さくなると、顔全体がたるんでしまうことがイメージできたでしょうか。加齢によって起こる骨萎縮は、どんな人でも避けられません。しかし、健康な骨格を保とうと意識することで、できる限りたるみを予防することはできます。
たるみ予防のために心がけたいケアをいくつか紹介しましょう。
①食事:意識して摂りたい栄養素は4つ
栄養が足りなければ、骨を作ることはできません。カルシウムが不足すると骨吸収が進み、骨密度はどんどん減少してしまいます。骨を作るために、とくに意識して摂りたい栄養素は次の4つです。
・骨形成に必要な「カルシウム」
・カルシウムの吸収を助ける「ビタミンD」
・カルシウムを丈夫にする「ビタミンK」
・カルシウムとともに骨を作る「マグネシウム」
栄養素 | 多く含まれる食品 |
カルシウム | ・乳製品(牛乳、スキムミルク、ゴーダチーズ)
・魚介類(ワカサギ、干しエビ、シシャモ) ・海藻類(海苔、わかめ) ・緑黄色野菜(小松菜、モロヘイヤ) ・大豆(豆腐、生揚げ、がんもどき) |
ビタミンD | ・魚介類(サケ、イワシ、サンマ、しらす)
・たまご ・干ししいたけ |
ビタミンK | ・野菜類(ほうれん草、小松菜、モロヘイヤ)
・納豆 ・鶏もも肉 |
マグネシウム | ・大豆(がんもどき、豆腐)
・種子類(ごま、アーモンド) ・海藻類(あおさ、海苔、ひじき) |
さまざまな栄養素が、お互いにサポートし合って体を作っています。そのためバランス良く食事することが大切です。
食事で栄養を十分摂ることが難しい場合は、サプリメントを上手に活用するのもおすすめです。
②運動:骨に刺激を与えて細胞を活性化
骨密度をキープ・増加するためには、運動も大切です。骨を作る細胞は、負荷がかかることで活性化されます。
軽い運動でも効果がありますが、骨に衝撃を与えなければ、あまり効果がありません。おすすめは、次のような運動です。
・ウォーキングやジョギング
・階段の昇降
・かかとの上げ下げ運動
・縄跳びやバドミントンなど、ジャンプする動きのあるスポーツ
スクワットなどの筋トレも、筋肉が収縮することで骨が刺激されるため、効果的です。運動は、骨だけでなく美容・健康全般に良い効果をもたらすため、ぜひ取り入れましょう。
③生活習慣:日光浴でビタミンDを産生
カルシウムの吸収を助け、骨形成に欠かせないビタミンD。しかしビタミンDは、食事からだけでは体に十分な量を摂れません。
ビタミンDは、皮膚に紫外線が当たることで、体の中で産生されます。日焼けやシミを気にして紫外線を完全に避けていると、ビタミンD不足に陥り、骨萎縮を進めてしまうのです。
夏なら日陰で15分程度、冬なら1時間程度、日光浴することを意識しましょう。光老化の影響が気になる顔は紫外線対策して、手足などで日光を浴びるのもおすすめです。
まとめ
顔のたるみは、構成するさまざまな層が関係していることが分かりましたか?
中でも「骨」はすべての組織の土台なため、骨が痩せると全体がたるむ原因になってしまいます。骨格美人でいることが、たるみを起こさないための1つの方法です。骨萎縮は、年を取ると誰しもが起こってしまう変化。しかし早いうちから予防を心がければ、その影響は少なからず抑えられます。なるべくインナーケアを取り入れて、骨萎縮を予防しましょう!
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