日差しが強く、たくさんの紫外線が降り注ぐ夏。しっかりと対策したつもりでお出かけしても、日焼け止めを塗り直したり化粧を直したりするのを忘れて、うっかり日焼けしてしまった方も少なくないでしょう。今回は、夏の日焼けによるシミでお悩みの方に、秋におすすめの美容医療としてIPLとシミ取りレーザーの2つを徹底比較!それぞれの効果や特徴、治療後のケアについてまとめました。シミの種類や肌悩みに合わせた治療法で、健やかな肌を取り戻しましょう。
1.夏の日焼けとシミの関係
「日焼けをするとシミができる」のは周知の事実。しかし、なぜ日焼けがシミの原因になるのかをご存じでしょうか?シミ治療についてお伝えする前に、ここではまずシミができるメカニズムからおさらいしていきましょう。
日焼けを引き起こす紫外線の種類
紫外線は太陽光に含まれる光線の1つで「UVA」「UVB」「UVC」の3つに分けられます。しかし、UVCはオゾン層などの大気圏に吸収されるため、地表まで届きません。実際に肌に影響を与えるのは、UVAとUVBの2種類です。
UVAは波長が長い光線。UVAの20~30%が、真皮まで到達するといわれています。肌に強いダメージを与えるわけではありませんが、皮膚の奥深くでコラーゲンやエラスチンを破壊。弾力やハリに影響を及ぼし、肌のシワやたるみを引き起こします。
一方UVBは、UVAよりも強いエネルギーの光線。波長が短いため肌の奥深くに影響を及ぼすわけではありませんが、皮膚表面にダメージをもたらします。例えば、ヒリヒリとした炎症を引き起こすサンバーンやメラニン色素の沈着で肌を黒くするサンタンなどは、UVBの作用によるもの。また、UVBは皮膚細胞のDNAにダメージを与えることから、皮膚がんとの関連性も指摘されています。
シミが発生するメカニズム
日焼け=シミというイメージを持つ方もいると思いますが、必ずしもそうとはいい切れません。シミができる原因は、メラニン色素の分泌とターンオーバーによる排出のバランスが崩れることだからです。
本来メラニン色素は、紫外線から皮膚細胞を守る働きを持ちます。紫外線を浴びると、表皮基底層にあるメラノサイトが刺激され、メラニン色素が産生。メラニン色素を含む表皮細胞がバリア機能を形成することで、紫外線のダメージを防いでくれています。
しかし長時間太陽光を浴びる、日焼け対策を怠るなどで、肌が必要以上に紫外線に晒されれば、メラニン色素が過剰に分泌。ターンオーバーで排出し切れず、そのまま肌内部に蓄積、沈着してしまいます。これが、シミが発生するメカニズムです。
▽日焼けのメカニズムについて詳しい記事はこちら
秋にシミが目立つ理由は?
秋にシミが目立って見えるのは、夏に受けた紫外線ダメージが時間差で表面化するため。
肌内部で生成されたメラニン色素は、ターンオーバーにより肌表面へと押し上げられ、角質とともに体外へと排出されます。ターンオーバーの正常周期は、健康な方の場合で約28日。つまり夏に生成されたメラニン色素が、ちょうど肌表面に見えてくるのが秋口というわけです。
また、秋は季節の変わり目。夏の紫外線や冷房による乾燥と戦ってきた肌は疲れが出やすく、バリア機能も低下しています。さらに外気の温度や湿度が下がることで肌の水分も奪われるため、秋は肌老化が進みやすいシーズンといわれることも。
しかし、一方で紫外線の強さが落ち着いてくる秋は、シミ治療に適している時期でもあります。夏に受けたダメージをリセットできるよう、自分に合った方法で肌をケアしてあげましょう。
2.IPL光治療とは?
IPLは「Intense Pulsed Light(インテンス パルス ライト)」の略。光治療を総称する言葉であり、美容医療ではさまざまな機器が用いられています。
IPL治療の原理と効果
IPLは、広域な波長幅を持つ特殊な光を肌に照射する治療です。
IPLで照射する光には、黒色や赤色、水分に吸収されやすい性質があります。IPLでシミ治療が行えるのは、光を吸収したメラニン色素が熱変性を起こすため。メラニン色素そのものを破壊するわけではなく、熱ダメージを受けたシミが肌表面に浮かび上がり、ターンオーバーの亢進によって徐々に剥がれ落ちていくという仕組みです。
また、IPLで治療を行うと、熱エネルギーが線維芽細胞を刺激するため、コラーゲンの生成が促進されます。コラーゲンは、肌の弾力やハリの維持に欠かせない成分です。光の刺激でコラーゲンの生成が活発になると、乾燥による小ジワやたるみといった肌老化を遅らせる効果も。
このように目的病変に合わせた波長で作用し、コラーゲンの生成を促すIPLは、さまざまな肌トラブルに有用とされています。
<コラム>IPL光治療のメリットとデメリット IPLの光はターゲット組織のみにアプローチするため、肌へのダメージがほとんどありません。痛みやダウンタイムが短く、安全性にも配慮されています。また、波長を細かく切り替えられるため、多様な肌悩みに対応できるのが特徴。顔以外にデコルテや背中、腕などへの照射も可能です。 しかし、その一方で治療効果は比較的マイルド。IPLはメラニン色素そのものを破壊するわけではなく、熱変性させることで排出しやすくし、ターンオーバーによってシミの改善を促します。そのため1回の治療では効果を感じにくいという側面も。濃いシミにピンポイントでアプローチしたい場合や、少ない回数で治療を希望される方には適応とならないことがあります。 |
IPL機器の種類と特徴
IPLには、波長や出力の異なるさまざまな機器があります。ここでは、代表的なフォトフェイシャル・ルメッカ・ライムライトの3つに焦点を当てて、その特徴を比較してみましょう。
↓表は横にスクロールできます
機種 | メーカー | 波長 | 特徴 |
---|---|---|---|
フォトフェイシャルM22 | ルミナス社 | 560~1200nm | 厚生労働省より薬事承認されている機種。IPL光治療ではメジャーな機種の1つで、導入しているクリニックが多数。6種類のフィルターを搭載しており、それぞれの症状に合わせて使い分けることで適切な治療が行える。また、患部を冷やしながら照射するため、痛みや火傷のリスクを軽減できる。 |
ルメッカ※ | INVASIX社 | 500~1000nm | シミに効果的な短波長広域の出力が高くなるよう独自設計された機種。薄いシミへのアプローチに優れており、少ない回数でも治療効果を実感しやすい。また、強いクーリング性能が装わっており、痛みを感じにくい。 |
ライムライト※ | キュテラ社 | 520~1100nm | アメリカのメーカーであるキュテラ社が、日本人医師とともに開発した日本人向けのIPL機種。色白~色黒までさまざまなトーンの肌に合わせて、波長を細かくコントロールすることが可能。メラニン色素やヘモグロビンへの反応が良く、薄いシミから赤ら顔、傷痕の色素沈着まで高い効果を発揮する。 |
※ルメッカとライムライトは、国内薬機法において医療薬品として認証・承認を受けていません。治療に用いる医療機器は、各クリニック医師の判断のもと、個人輸入手続きが行われています。個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報は、下記をご参考ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html
なお、薬事承認を取得した製品を除き、同一成分や性能を有する他の国内承認医薬品はありません。
諸外国における安全性等に係る情報について、ルメッカは米国FDA(アメリカ食品医薬品局)が認定しており、ヨーロッパCEや韓国(KFDA)でもそれぞれの承認基準を満たしています。ライムライトについては、米国FDAが承認しています。
3.シミ取りレーザー治療とは?
シミ取りレーザーとは、レーザーによってメラニン色素そのものを破壊し、自然な色調の肌に改善する治療のこと。ピンポイントに高出力のレーザーを照射しますが、シミができている異常細胞にのみアプローチするため、周辺の正常な部分を傷つけるリスクがほとんどありません。シミ取りレーザーで改善できるシミの種類は、老人性色素斑(一般的なシミ)、そばかす、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)、肝斑など。シミ取りレーザーでは、シミの種類に合った波長の機器を選択することが重要です。代表的なシミ取りレーザーの波長には、ピコレーザーやレーザートーニング、QスイッチYAGレーザーなどがあります。
シミ取りレーザーの仕組み
シミ取りレーザーは、黒い色に反応する特性を持ちます。そのため、シミに照射されたレーザーはメラニン色素に効果的にアプローチ。高い熱エネルギーが発生することで、メラニン色素が分解されます。
熱エネルギーによってバラバラにされたメラニン色素は皮膚に吸収されるか、もしくは老廃物と見なされ、ターンオーバーによって肌表面へと押し上げられたのち、1週間~10日ほどでかさぶたとして自然に剥がれ落ちます。
シミ取りレーザー治療の種類と特徴
ここでは、代表的なシミ取りレーザーの3種類を比較してみましょう。
ピコレーザー | ナノよりも早いピコ(1兆分の1秒)という単位で低出力のレーザーを照射するため、痛みやダメージが少ないのが特徴。メラニン色素を熱ではなく衝撃波によって破壊する。シミやそばかすにピンポイントでアプローチするピコスポット、シミや肝斑を徐々に薄くするピコトーニング、創傷治癒の過程で肌質を改善するピコフラクショナルという3つのモードを搭載しており、肌悩みに合わせた治療が可能。低出力で肌への負担に配慮されているが、微粒子サイズにまで細かくメラニン色素を粉砕するため、ターンオーバーによって排出されやすい。シミ治療としては、主にピコスポットとピコトーニングが用いられる。 |
---|---|
レーザートーニング | 微弱なパワーを皮膚全体に均一に照射することで、肌へのダメージを抑えながらメラニン色素にダメージを与える。高出力のレーザーだと症状が悪化しやすい肝斑や炎症後色素沈着の改善に適している。レーザー治療の中では比較マイルドに作用するため、最低でも5回以上の施術を要するが、ダウンタイムはほとんどなく痛みもそれほど強くない。 |
QスイッチYAGレーザー | 532nmと1064nmの異なる2つの波長を使い分けることで、皮膚の浅い層から深い層までアプローチできる。また、シミや肝斑、そばかすなどの黒い色素だけでなく、あざや刺青といった赤い色素にも対応可能。強いエネルギーで照射するため1回の施術効果が高い。照射時間が非常に短く、周囲の皮膚へのダメージを抑えながらの治療が可能。 |
4.IPLとシミ取りレーザーの徹底比較
ここまでは、IPLとシミ取りレーザーそれぞれの特徴をご紹介しました。しかし、結局どちらを選べば良いの?と思った方もいるでしょう。ここからは、IPLとシミ取りレーザーの違いを深掘りしていきます!
効果の持続性と治療期間の違いは?
効果の現れ方には個人差がありますが、下表はIPL光治療とシミ取りレーザーの一般的な持続性や期間を示したものです。
↓表は横にスクロールできます
治療 | 機器 | 効果の持続性 | 治療期間 |
---|---|---|---|
IPL光治療 | フォトフェイシャルM22 | 1回の照射で1ヶ月程度持続するが、複数回の施術でさらに長持ちする。(3回目には2~3ヶ月ほど持続) | 3~4週間のペースで5~6回程度の治療を推奨。 |
ルメッカ | 3~6ヶ月程度 | 3~4週間のペースで3~5回程度の治療が目安。 | |
ライムライト | 1ヶ月程度 | 4週間ごとに5回以上の治療を推奨 | |
シミ取りレーザー | ピコレーザー | ピコスポット:1~3回で治療が完了。 ピコトーニング:~6ヶ月程度 |
ピコスポット:3ヶ月に1回程度。 ピコトーニング:2~4週間に1回のペースで10~20回程度を推奨。 |
レーザートーニング | ~6ヶ月程度 | 1~2週間おきに5回程度、6回目以降は4週間に1回のペースで10回程度の治療が目安。 | |
QスイッチYAGレーザー | ほとんどのシミは1回の施術で治療が完了。 | 1回で取り切れなかった濃いシミや深いシミは、3週間以上空けてから2~3回の治療が必要。 |
IPL光治療は、広く浅く、マイルドに作用するのが特徴。さまざまな肌悩みに対応できますが、その分効果を実感するまでに時間がかかりやすい傾向にあります。症状が軽い方では半年程度で治療が完了することもあるものの、一般的には繰り返し施術を受けることが重要な施術です。シミの予防効果を見込んで、定期的なメンテナンスとして治療を継続する方も少なくありません。
一方でシミ取りレーザーは、高出力のレーザーをピンポイントに照射できる治療。機種によっても異なりますが、ピコスポットやQスイッチYAGレーザーは1回の施術で高い効果を発揮します。しかし、強いパワーでメラニン色素にダメージを与えるため痛みを感じやすく、局所的な施術では1週間~10日程度のダウンタイムを要します。また、レーザーの刺激によってメラニン色素が過剰に分泌され、炎症後色素沈着を引き起こすリスクも。
しっかりとしたシミ取りの効果を実感したい方にはシミ取りレーザーが向いていますが、ダウンタイムや副作用が少ない治療を選びたい方にはIPL光治療のほうが適しています。
<コラム>コストパフォーマンスの比較
↓表は横にスクロールできます
治療 | 機器 | 想定コスト |
---|---|---|
IPL光治療 | フォトフェイシャルM22 | 費用相場:1万5千~3万円 6回の治療費:9~18万円 |
ルメッカ | 費用相場:3~5万円 5回の治療費:15~25万円 |
|
ライムライト | 費用相場:2~3万円 5回の治療費:10~15万円 |
|
シミ取りレーザー | ピコレーザー | ピコスポット費用相場:直径20mmまでで2~4万円 ピコスポット1回の治療費:2~4万円 ピコトーニング費用相場:1万5千~4万円 ピコトーニング20回の治療費:30~80万円 |
レーザートーニング | 費用相場:7千~3万円 10回の治療費:7~30万円 |
|
QスイッチYAGレーザー | 費用相場:1~3万円 1回の治療費:1~3万円 |
クリニックによるため一概にはいえませんが、一般的にはIPLよりもシミ取りレーザーのほうが費用は高い傾向にあります。というのも、IPLは継続して行うことが想定されているため、セット料金を設定しているクリニックがほとんど。施術回数が多くなるほどリーズナブルに治療を受けられる仕組みです。ただし、IPLは定期的に施術を繰り返すことが想定されています。数年~数十年単位で継続する予定の場合には、結果的にシミ取りレーザーよりも費用が高くなることがあるでしょう。
一方、シミ取りレーザーは照射範囲やシミの大きさによって値段設定されているケースが多く見られます。範囲やシミが狭く小さいほど安い費用で治療を完了できますが、大きくなればその分費用も高額に。しかし、治療が完了すれば、再発しない限りは定期的に照射を受ける必要がありません。1度の費用は高いかもしれませんが、治療を完了できるという意味では、最終的な支払い総額はIPLよりも少なくなる可能性があります。
IPLとシミ取りレーザーはどちらを選ぶべき?
IPL光治療は、波長や出力の細かく調整できるため、肌質や肌悩みに合わせてカスタマイズできるのが特徴です。効果はマイルドですが、シミのほかにもそばかすやくすみ、赤ら顔、たるみ、弾力不足、ニキビ痕の色素沈着など、幅広い悩みに対応しています。また、真皮層にも作用しコラーゲンの生成を促すため、ハリのあるキメ細かな肌へと導きます。シミ治療と並行して、年齢に即したエイジングケアや顔全体のトーンアップ、定期的な肌のメンテナンスをしたい方にはIPL光治療が向いているでしょう。
一方シミ取りレーザーは、ターゲットをピンポイントに狙い撃ちしやすい治療。深く狭い範囲に作用し、薄いシミや濃いシミ、そばかす、肝斑、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)といった幅広い色素沈着の改善に高い効果を発揮します。ダウンタイムがあってもシミを短期間で消したい方、シミ部分だけを少ない回数で治療したい方、大きなシミやあざでお悩みの方に適しています。
まとめ
夏のうっかり日焼けでできてしまったシミ治療として、IPL光治療とシミ取りレーザーをさまざまな角度から比較しました。同じIPLやレーザーの中でも機種によって特徴が異なるため、選択に迷われることがあるかもしれませんが、基本的にIPLは広く・浅く・マイルドな作用、シミ取りレーザーは狭く・深く・強い作用でシミにアプローチします。そのため、顔全体にシミができてしまった場合や広範囲に肌悩みが及ぶ場合はIPL、肌悩みがほとんどなくシミが数ヵ所しかない場合はシミ取りレーザーを選ぶと良いでしょう。
シミ取り治療で後悔しないためには、シミの種類に合わせて正しく機器選定することが重要です。シミ治療を始める場合には信頼できる医師に相談し、自分の症例に適したものを見極めてもらってくださいね。
▽この記事を読んだあなたにおすすめの関連記事
・当サイトは、美容医療の一般的な知識をできるだけ中立的な立場から掲載しています。自己判断を促す情報ではないことを、あらかじめご了承ください。また、治療に関する詳細は必ずクリニック公式ホームページを確認し、各医療機関にご相談ください。 ・本記事は、執筆・掲載日時点の情報を参考にしています。最新の情報は、公式ホームページよりご確認ください。 ・化粧品やマッサージなどが記載されている場合、医師監修範囲には含まれません。 |