新宿に「美容医療トラブル救急外来」誕生──急増する事故の現場対応を担う
美容医療市場の拡大とともに、事故リスクも深刻さを増している。
新宿区の春山記念病院は2025年6月、美容医療トラブルに特化した24時間体制の救急外来を本格始動させた。消費生活センターには昨年度だけで822件の健康被害相談が寄せられ、わずか5年で1.7倍に急増している現実を受けた動きだ。
従来、脂肪吸引や二重手術後の合併症患者が救急搬送されても、施術内容が不明なまま処置に追われるケースが多発していた。同院では、これを解消すべく都内の美容クリニックと事前に施術情報共有の覚書を交わし、「一秒でも早く命を救う体制」を構築している。
現場で何が起きているのか──脂肪吸引後の緊急搬送症例から浮かぶ課題
5月には脂肪吸引を受けた40代男性が血腫による窒息リスクで搬送され、即日で止血手術が行われた。同席した施術医師の情報提供により、原因を即座に特定し手術は成功。「救急病院がなければ死んでいたかもしれない」と患者は語る。
だが全国には、施術情報が不明のまま救急搬送され、処置が遅れるケースが今なお残る。同病院の櫻井医師は訴える。
「命を落とす事例を二度と出さない。そのためにも全国規模での連携が必要だ」

厚労省も動く──法改正を視野に「美容医療トラブル対策」本格検討へ
厚労省も事態を重く見ており、昨年の実態調査で深刻な課題が浮き彫りとなった。
合併症の内訳でも、「熱傷」「重度の形態異常」「皮膚壊死・潰瘍」などが上位を占める。
厚労省検討会は以下の対応を提言している。
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相談窓口の整備と都道府県への報告義務化
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緊急手術対応病院との事前協定義務化
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学会によるガイドライン整備
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今後の医療法改正も視野に制度設計を進行
✒️ 編集長ポイント|“美容医療の救急連携”はもはや贅沢品ではない
今回の動きは、美容医療の「裏側のインフラ整備」がいよいよ制度化フェーズへ入ったことを示す。これまで施術クリニックと救急病院は「別世界」で存在してきた。だがトラブル件数は、制度の未整備を許さない水準に達している。
日本の美容医療市場は拡大し続けるだろう。だからこそ、「施術を行う自由」には「術後リスクへの責任」も伴う。救急搬送先と事前に連携する体制構築は、今後の美容医療の「安全保証インフラ」として必須条件となっていくはずだ。

まとめ
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新宿で美容医療専用の救急外来が本格始動
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合併症搬送時、施術内容共有が処置成功のカギに
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厚労省も制度改正を視野に全国整備を検討中