
湘南美容クリニック 皮膚科全体統括・西川礼華先生にインタビューしました。
国内最大級の規模を誇る「湘南美容クリニック」で皮膚科全体の統括を務めるほか、SBC東京医療大学の客員教授としてもご活躍されており、国内外の学会にも多数登壇されています。
今回は、西川先生が美容医療の道に進んだきっかけや、日々の診療で大切にしている価値観、そしてSBCメディカルグループならではの強みについて、詳しくお話を伺いました。
INDEX
ドクターズプロフィール
湘南美容クリニック 皮膚科全体統括
西川 礼華(にしかわ あやか)先生
「国立病院機構東京医療センター」の臨床研修修了後、「湘南美容クリニック」入職。
現在は同クリニック皮膚科の全体統括を務める傍ら、SBC東京医療大学の客員教授としても活動している。
国内外の学会に多数登壇しており、メディア出演や掲載実績も多数。
(経歴) 横浜市立大学医学部医学科卒業後、2015年に湘南美容クリニックへ美容皮膚科医として入職。 2018年より皮膚科全体統括に就任。 現在は、SBCメディカルグループ全体において、美容皮膚科分野の治療開発や、医師・看護師への技術教育、安全管理などを幅広く担っている。 臨床症例の解析を通じて、エビデンスに基づく医療の推進にも注力しており、国内外での学会発表や論文執筆など、学術活動にも積極的に取り組む。 これらの実績が評価され、2023年にはSBC東京医療大学の客員教授に就任。 |
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医師としての背景 ~自分の理想を目指せる場として美容医療の道を選択~
―――西川先生が美容医療の道に進んだきっかけを教えてください。
医学部時代から「女性の活躍を支援したい」「社会にインパクトを与える医師になりたい」という想いが強く、NGO活動にも積極的に参加していました。
当時から「見た目がキレイになることで自信が生まれ、活躍の場が広がる」といった美容医療の力には漠然とした関心がありましたが、まだ美容医療はマイナーな分野で、医師としてのキャリアを具体的に描くまでには至りませんでした。
一時は、親が住むウィーンでの医師免許取得も考えていました。
しかし、言語の壁や、自分のやりたい医療との間にギャップを感じ、最終的には断念しました。
そんな進路に迷っていた時期に、「湘南美容クリニック」創業者の相川佳之先生と出会ったことが、人生の転機になりました。
「美容皮膚科医になりたかった」という明確な目標があったわけではありませんが、「より多くのお客さまと関わり、自分の目指す医師像に近づける」と感じたことが、美容医療の道に進む決め手となりました。
SBCメディカルグループの強み ~統括というポジションから、業界の次を描く~
―――西川先生は、SBCメディカルグループの美容皮膚科全体統括という立場ですが、具体的にはどのようなお仕事をされているのでしょうか?
現在、SBCメディカルグループにおける美容皮膚科領域の戦略全般を担当しています。
たとえば、導入する施術メニューの選定や価格の設定、キャンペーン内容の設計、教育体制の構築など、美容皮膚科に関わるほとんどすべてが私の管轄ですね。
SBCメディカルグループは、もともと「湘南美容外科」としてスタートしましたが、現在は「湘南美容クリニック」として展開するだけでなく、「NEO Skin Clinic」、「リゼクリニック」、「ゴリラクリニック」といった複数のブランドにもジョインしています。
それぞれに異なる強みやターゲットがあるため、たとえば脱毛専門だったリゼに美容皮膚科を取り入れるなど、ブランドごとに戦略を練る必要があります。
このようにマルチブランドで全体を見ながら、美容皮膚科としての方向性をつくっていける立場にあるのは、本当にありがたく、光栄なことだと思っています。
年齢的にもまだ若い中で、これだけのスケールの仕事を任せてもらえるのは、とても貴重な経験です。
―――湘南美容クリニックでは、美容皮膚科のお客さまが多い印象ですが、実際はいかがですか?
私が入社した2015年当時は「湘南美容外科」という名称の通り、外科施術が中心でした。
私が皮膚科の責任者に就任したくらいのタイミングで、皮膚科のお客さま数が外科を上回るようになり、クリニック全体としても大きな方向転換が始まりました。
それを象徴するように、ブランド名も「湘南美容外科」から「湘南美容クリニック」へ変更。
その後も試行錯誤を重ね、2024年時点では全体の9割ほどが美容皮膚科のお客さまという状況です。
美容皮膚科は、美容外科以上にトレンドの移り変わりが激しく、新たな治療や技術が次々と登場します。その変化に対して、私たちのような大手グループがどう追随していくのか。
あるいは、私たちがどう時代をつくっていくのか。常に正解がない世界だからこそ、挑戦のしがいがある。
私はその面白さと責任の両方を感じながら、美容皮膚科というフィールドに向き合ってきました。
―――湘南美容クリニック全体として、医療のスタンダードや安全基準をとても重視されている印象があります。実際には、どのような取り組みをされているのでしょうか?
そうですね、まず大前提として“数値化”は非常に大事だと考えています。「もっと良くしていこう」といった感覚的な姿勢だけでは、医療の安全は守れません。
だからこそ、私たちは今の状態を把握するために、あらゆる情報を数値として可視化する仕組みを導入しています。
たとえば、現場で有害事象や副作用が起きた場合には、レベルに応じて報告先が明確に定められていて。
軽微なものなら現場内での対応で済みますが、たとえば傷が残る可能性がある、不可逆的な状態になりうる、そういった合併症については必ず本部に報告。
専任の安全管理部署によってデータ化され、厳密にモニタリングされます。
さらに、治療ごとの合併症発生率を毎月追跡しており、たとえば発生率が0.1%を超えれば即座に使用停止。
同カテゴリーの平均を上回った場合も「注意信号」としてアラートが出るなど、医師の“経験”や“勘”に頼らない、客観的な安全管理体制をグループ全体で整えています。
―――なるほど。新しい治療を導入する際も、かなり慎重に運用されているのですか?
はい、新しい治療を導入する際には、必ず中長期の経過まで確認してからと決めています。
最低でも3ケ月、できれば半年は経過を見ないと、本当の意味での安全性や効果は判断できません。
施術直後の仕上がりがきれいでも、時間の経過とともに硬くなったり、瘢痕(はんこん)が残ったりといったトラブルにつながるケースもあります。
だからこそ、直後の見た目だけで判断しないことを、グループ全体で徹底しています。
また、当グループは従業員数も多く、幅広い層のお客さまが来院されるため、新治療についての検証も多角的に行えることが強みです。
また、導入スピードにも自信があります。というのも、「湘南美容クリニック」は現在、業界最大手という立場にあるため、各メーカーやディーラーが真っ先に最新技術や製品情報を持ち込んでくださいます。
だからこそ、「どこよりも早く情報をキャッチし、どこよりも早く検証をスタートし、どこよりも早く中長期の結果を見極める」そうした体制をグループ全体で構築しています。
美容医療への情熱 ~目の前のお客さまに、想像を超える満足を提供~
―――働くうえで、西川先生が大切にされている“軸”を教えてください。
SBCメディカルグループが掲げている経営理念に『究極の三方良しの実現』という言葉があります。私自身、この考え方はもう骨の髄まで染み込んでいる感覚ですね。
中でも、より具体的で日々の診療に落とし込んで意識しているのが『先客後利(せんきゃくこうり)』という考え方です。これは、まずは“目の前のお客さまに最大限満足していただくこと”を第一に考える、という姿勢。
“料金以上の満足”をお持ち帰りいただく。それが私の一貫した信念です。
たとえば、私たち医師の技術が未熟であれば、それだけでお客さまの満足度は下がり、結果として価値を提供できなかったことになってしまう。
だからこそ、技術を磨き続ける責任をしっかり自覚してもらえるよう、教育体制や指導も大切にしています。
―――西川先生が診療の中で、やりがいや嬉しさを感じる瞬間はどんなときですか?
来てくださったお客さまにご満足いただいて笑顔で帰られる姿を見たときや、「また先生にお願いしたい」とリピートで指名してくださるときは、やはり嬉しいですね。
それに加えて、個人的に最もやりがいを感じるのが、“医療の進化”をお客さまに還元できたと実感できる瞬間です。
たとえば、以前の提供メニューでは「ここまでしか提案できなかったな」と感じていたお客さまに対して、1年後に導入した新しい治療で、「今回はこの方法でさらに良くできますよ」とご提案できたとき。
その結果、お客さまが喜んでくださると、本当にうれしいですね。
美容医療は日々進化している分野なので、その変化をいち早くキャッチし、施術の可能性を広げられることにやりがいを感じています。
美容医療業界について ~自由市場にこそ慎重さを。SBCが貫く根拠ある美の医療~
―――美容医療業界にはどのような課題があると感じていますか?
日本の美容医療が抱える最大の課題は、制度の自由度の高さと安全性とのバランスが取れていないことだと思います。
たとえば韓国では、基本的に“当局が正式に認可したもの”しか医療現場では使えません。そのため、一般のクリニックが使用できる薬剤や機器は、かなり限定されています。
一方で日本では、医師の裁量が大きく認められているのが特徴です。
薬事承認を受けていない機器や製剤も医師の判断で使用でき、先端医療の早期導入も可能ですが、“安全性が確立されていない治療が出回るリスク”を抱えている側面もあります。
だからこそ、私たちが重視しているのは、メーカー任せにせず自分たちで情報を精査する姿勢。
「どの国で、どのように使われているか」「そのエビデンスはあるのか」といった点を確認し、国際学会への参加や海外の医師との交流を通じて、常に“正しい情報”へとアップデートしています。
自由度の高い市場であるからこそ、情報の正確性や倫理観は欠かせません。
それを担保することが、私たちSBCメディカルグループの責任であり、美容医療業界がこれから信頼を築いていくために必要なスタンスだと考えています。
――― 先生ご自身も国際学会に多数登壇されていますが、日本の美容医療は世界からどう評価されていると感じますか?
日本の先生方は非常に真面目で、エビデンスに基づいた地に足のついた発信をされてきました。
その積み重ねが、「日本のドクターの言うことは信頼できる」という高評価につながっていると思います。
これは、長年にわたり美容皮膚科の世界を築いてこられた日本の諸先輩方の努力の賜物です。
また、日本人特有の国民性もあるかもしれません。
いわゆる“ゼロリスク神話”のように、小さなトラブルにも非常に敏感に向き合い、再発を防ぐための対策をきちんと講じる文化があります。
海外の医師の中には「多少のトラブルは仕方ない」というマインドの方もいらっしゃいますが、日本の医師は「どうすれば再発を防げるか」を常に考えている。
そうした姿勢が、結果的に高い信頼につながっているのだと思います。
アジアの中で最先端とまでは言えないかもしれませんが、日本は“慎重で信頼できる国”として評価され、“信頼性の基準を示す側”として国際的にも一定のポジションを築けているのではないでしょうか。
―――SBCメディカルグループの国際的な展望について教えてください。
そうですね、今後、SBCメディカルグループとして国際的に発信していくうえで、安全性の評価が1つの大きな焦点になると考えています。
そして、これは私たちのように大規模な症例数を持つ施設だからこそ、担える役割でもあると思います。
たとえば、合併症が100件中の1件と、50,000件中の1件とでは、その意味するところは大きく異なります。
大量の臨床データに基づいてリスクを正しく評価し、具体的な対策を明示する。この姿勢が、世界に向けて発信できる価値だと考えています。
実際、私自身が国際ジャーナルに投稿してきた論文は、すべて合併症をテーマにしたものです。
「この治療がすごい」といった打ち出し方ではなく、「安全に医療を届けるためにはどうすべきか」という視点から、医療の本質に向き合いたい。
そして、そうした姿勢で得た情報を正確に届けることで、日本の美容医療の安全性と信頼性をより一層高めていけると信じています。
読者やお客さまに向けて伝えたいメッセージ ~“好き”だけでは通用しない。プロとしての技術と責任を~
―――近年は美容医療を志す若手医師も増えていますが、先生が感じる「これから求められる姿勢」があれば、ぜひ教えてください。
美容医療の業界は年々競争が激しさを増しているのが現状です。
医師に限らず、他業種からの参入も相次いでいるので、「美容=稼げる」「楽ができる」といった安易なモチベーションで入ると、すぐに淘汰される世界だと私は思っています。
だからこそ私は、面接のときに「今よりも忙しくなるし、厳しくなる。それでも美容に進みたいと本気で思うなら、受けてください」と伝えるようにしています。
覚悟を持たずに飛び込めるほど、甘い業界ではありません。
もちろん、美容が好きでこの世界を志すのは素晴らしいことです。
しかし、大切なことは好きを原動力にしつつ、“プロとしてお客さまを満足させる覚悟”が持てるかどうか。
保険診療には保険診療の厳しさがありますが、美容医療にはお客さまが「お金を払って夢や理想を託す」という独特の責任がある。
だからこそ、それに応えられるだけの知識と技術と努力を、自らの意志で積み上げていけるかどうかが大切だと思っています。