ダイエットや肥満治療において、高い体重減少効果が期待できることから糖尿病治療薬のマンジャロが注目され、SNSでも“痩せる注射”として大きな話題となりました。
そんな中、近年注目を集めているのが、新たに登場した肥満症治療薬のゼップバウンドです。
両者はいずれも同じ有効成分を含んでおり、体重減少効果に期待が寄せられていますが、承認されている適応症や使用条件には大きな違いがあります。
本記事では、マンジャロとゼップバウンドの共通点や相違点を整理しつつ、使用条件、期待される効果や副作用の違いについて詳しく解説。
副作用や使用時の注意点についても触れながら、両薬剤を正しく理解するためのポイントを紹介します。
INDEX
マンジャロとゼップバウンドどう違う?成分・適応症について詳しく解説
まずは、マンジャロとゼップバウンドの共通点と相違点を整理しつつ、それぞれがどのような立ち位置にある薬なのかを見ていきましょう。
■マンジャロとゼップバウンドの共通点―成分・投与方法・開発会社について

出典:イーライ・リリー株式会社
マンジャロ(Mounjaro)とゼップバウンド(Zepbound)は、GLP-1*受容体作動薬とGIP*受容体作動薬の二重作用を持つ「チルゼパチド」を含むペプチド製剤です。成分や容量は全く同じで、開発したのはいずれもアメリカのイーライ・リリー社。週1回皮下注射で投与され、血糖コントロールや体重減少効果が確認されている点でも共通し、両者とも“痩せる作用が期待できる注射”として注目を集めています。
*GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)…消化管ホルモンの一種。インスリンの分泌を促し、血糖値を下げる作用を持つ
*GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)…消化管ホルモンの一種。GLP-1同様にインスリンの分泌を促す働きを持つ。GLP-1作用により、GIPの働きが活性化されることも報告されている
■マンジャロとゼップバウンドの相違点―適応症・承認状況・使用目的などの違い

1.適応症
マンジャロは、2型糖尿病患者のために開発された治療薬です。主に血糖コントロールを目的としていますが、体重減少効果も確認されています。日本では2022年9月に2型糖尿病治療薬として承認され、2023年4月に発売がスタートしました。
一方、ゼップバウンドは、同じ有効成分チルゼパチドを使用した肥満治療薬です。日本では2025年に厚生労働省によって肥満症治療薬として正式に承認され、4月11日から保険適用下での提供が開始されています。
2.保険適用と処方条件
マンジャロは、2型糖尿病の診断を受けており、食事療法・運動療法で改善が見られなかった場合や、他の糖尿病治療薬で十分な効果が得られなかった場合などに保険適用となります。
一方、ゼップバウンドは、適応症である“肥満症の基準”などを満たしている場合に保険適用となりますが、処方要件が厳しく設定されています。保険適用条件の詳細は以下の通りです。
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3.薬価
薬価自体は、ゼップバウンドよりもマンジャロの方が安く設定されています。ただし、保険適用の有無により、負担額は変わります。
美容やダイエット目的の使用は認められている?
SNSやメディアで取り上げられることの多いマンジャロとゼップバウンドですが、ダイエット薬として誰でも気軽に使用できるわけではありません。
ここでは、近年、不適切な利用が広がっている問題と、マンジャロとゼップバウンドがどのような目的で使われるべきか、それぞれの医療上の位置づけについて解説します。
■糖尿病治療薬の不適切な処方に関係学会も注意喚起を実施
マンジャロは、日本で2型糖尿病治療薬としてのみ承認・保険適用されているものであり、美容やダイエット目的での使用は正式には認められていません。
それにも関わらず、近年では一部のクリニックにおいてマンジャロが“痩せ薬”として処方される不適切な診療が散見され、“マンジャロダイエット”という言葉まで生まれています。
このように適切でない処方や使用が広まった結果、一時的に本来使用すべき糖尿病患者へ供給が不足したことも。
また、オンライン診療で安易に処方される事例や、実際に健康被害も報告されていることから、その危険性は無視できません。
こうした状況を受けて、日本糖尿病学会や日本医師会などの関係学会は「2型糖尿病を有していない日本人における有効性や安全性は未確認である」と強く警鐘を鳴らしています。
さらに、厚生労働省や消費者庁も、不適切な糖尿病治療薬の利用拡大を問題視し、医学的にリスクが高いとして注意喚起を行っています。
■ゼップバウンドの肥満治療薬としての意義と日本での導入状況
ゼップバウンドはマンジャロと同じ成分・規格で構成されていながら、肥満症および体重関連疾患の管理を目的とした慢性体重管理薬として2023年11月に米国FDAより承認。
欧米を中心に40カ国以上で肥満治療薬として試用されています。
国際的にも“体重管理を目的とした薬”として位置づけられており、単なる美容目的のダイエットではなく、肥満に伴う高血圧・脂質異常・2型糖尿病・睡眠時無呼吸症候群など、体重関連疾患の予防・改善を目的として使用されている点が大きな特徴です。
日本国内でも、ゼップバウンドは2025年4月11日より肥満症治療薬として正式承認され、保険適用下で提供が開始されました。これにより、医学的根拠に基づいた肥満治療薬が新たに利用可能となったのです。
さらに、ゼップバウンドは基本的に、大学病院や総合病院など肥満症の専門的な治療ができる大規模な医療機関においてのみ処方が可能とされています。
医師の管理のもとで投与されるため、安全性と効果の両方を重視したい方にとって肥満治療の新たな選択肢となっています。
体重減少効果や副作用に違いはある?
「実際にどれぐらい痩せる効果が期待できるの?」「具体的にどのような副作用があるのか知りたい」と思われている方も多いでしょう。
本章では、臨床試験データを参考に両製剤の効果について解説するとともに、ぞれぞれの副作用についても詳しく紹介します。
■体重減少効果について―臨床試験で高い成果を記録
日本国内では2025年に肥満症治療薬として正式承認されたばかりのゼップバウンドですが、複数の臨床試験にて効果が報告されています。
その中の大規模臨床試験「SURMOUNT-1試験」では、約2,500人の被験者が参加し、72週で使用患者は平均約21.1%の体重減少を達成。これは、体重100㎏の患者の場合で、約21㎏減量できる計算です。
さらに日本人を対象に行われた「SURMOUNT-J試験」でも、72週で平均体重減少率は約23%を達成しており、非常に高い効果が期待できる肥満治療薬として大きな注目を集めました。
一方、マンジャロも同じ成分・規格で構成されているため、ゼップバウンド同様に高い体重減少効果が見込めるとされています。
ただし、マンジャロは2型糖尿病治療薬として承認されており、対象となる患者は糖尿病を有する人が中心です。そのため、単純な肥満症患者と比較すると効果にやや差が出る場合もあるでしょう。
また、短期間の使用ではどちらも高い体重減少効果が期待できますが、最も重要なのはその後の長期的な体重維持です。
医師の管理のもとで食生活の改善や運動習慣を根付かせながら長期的に継続使用することでリバウンドを防ぎ、より安定した効果を得られやすくなります。
■主な副作用について―共通するリスク・使用時の注意点
マンジャロとゼップバウンドには、いくつかの副作用も報告されています。
両者に共通してみられるのが、食欲不振や吐き気、嘔吐、便秘、下痢など消化器系を中心とした症状です。ほかにも、倦怠感や発赤・腫れなどの注射部位の反応が見られることもあります。
一般的に、薬の使用を始めた初期段階で起こりやすく、時間の経過とともに緩和していくことが多いとされています。
しかし、上腹部の激しい腹痛や吐き気が長期間持続する場合は要注意。頻度は非常に稀ですが、低血糖や急性膵炎、胆嚢炎など重篤な副作用が起こるケースも報告されています。
また、両製剤は成分・規格・投与方法は共通しているため、副作用も大きな違いはないとされていますが、2型糖尿病治療薬のマンジャロは、インスリンなど血糖値を下げる薬と併用されるケースも多く、ゼップバウンドより低血糖のリスクが高まりやすいといえます。
副作用の傾向は同じでも、使う人の背景疾患や併用薬によって副作用の現れ方に差が出ることがある点には注意が必要です。
実際にSNS上でも「最初の数時間だけ症状があった」というものから「吐き気を感じた」「下痢症状が続いている」といったものまで、リアルな体験談が多数共有されており、個人差があることが伺えます。
4/26土7:30am💉Week2Day1
昨夜二本目💉摂取後の朝なわけだけど、今朝は、微妙な頭痛、微妙な吐き気、喉の渇きなどの症状有。症状は軽いのでもう少し寝ると治る気がする。治らなかったら鎮痛剤を飲もうかな💊
今朝の体重は後ほど測ります🫡#ゼップバウンド #肥満治療薬 #肥満治療 #チルゼパチド— Mrs.ゼップバウンド💉肥満治療中🐽-20kg✨MAX96kg (@MrsZepboundJP) April 26, 2025
空腹感も無い、胸焼け、軽い吐き気は打った後2時間後くらいだけだった。
今は、内臓がきゅるきゅる言ってる程度。
快適過ぎる…。
空腹感と、食欲が消えるのめちゃくちゃ嬉しい😭
— ぁぉ@ゼップバウンド(マンジャロ)治療中 (@a0i_BT) April 29, 2025
引用:@a0i_BT
マンジャロで吐き気、下痢、発熱もあり中止しました。ゼップバウンドも同様な状況になる可能性は高いですか?
— yoozu (@YOOZU) August 17, 2025
引用:@YOOZU
さらに、独断で使用をやめてしまうと、思わぬ不調に見舞われたり、リバウンドリスクが高まってしまったりする可能性もあるでしょう。
そのため、医師と相談のうえで食事療法や運動療法も併用しつつ容量・頻度を調整しながら、安全かつ無理なく長期的な目線で取り組むことが重要です。
マンジャロとゼップバウンドの適応を正しく理解することが重要
高い体重減少効果で注目を集めていたマンジャロですが、2型糖尿病の治療薬として承認されており、ダイエット目的での使用は認められていませんでした。
そこで新たな選択肢として登場したのがゼップバウンドです。
当薬剤は肥満症および体重関連疾患の管理を目的とした慢性体重管理薬に位置づけられ、厳しい使用条件が設定されていることから、痩せ薬のように誰でも気軽に使用できるわけではありません。
さらに、両製剤のいずれにも、副作用や効果の現れ方には個人差があるため、安易な気持ちでの自己使用は大変危険です。
医師の管理のもと生活習慣の改善とあわせて適切に使用することで、長期的な健康と体重管理につながるといえるでしょう。
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| ・当サイトは、美容医療の一般的な知識をできるだけ中立的な立場から掲載しています。自己判断を促す情報ではないことを、あらかじめご了承ください。また、治療に関する詳細は必ずクリニック公式ホームページを確認し、各医療機関にご相談ください。 ・本記事は、執筆・掲載日時点の情報を参考にしています。最新の情報は、公式ホームページよりご確認ください。 ・化粧品やマッサージなどが記載されている場合、医師監修範囲には含まれません。 |
【治療の内容】GIP/GLP-1受動態作動薬:チルゼパチド
【治療期間および回数の目安】数か月~※状態によって異なります。
【費用相場】1ヶ月あたり¥24,000~¥140,000※容量やクリニックによって異なります。
【リスク・副作用等】吐き気、下痢、便秘などの消化器症状、食欲不振、倦怠感、まれに低血糖
【医薬品に関する注意事項について】
・本治療には、国内未承認医薬品または薬事承認された使用目的とは異なる治療が含まれます。
・治療に用いる医薬品は、日本イーライリリー株式会社から各クリニック医師の判断のもと、個人輸入手続きが行われています。個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報は、下記をご参考ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html
・薬事承認を取得した製品を除き、同一成分や性能を有する他の国内承認医薬品および医療機器はありません。
・諸外国における安全性等に係る情報
-マンジャロは、日本イーライリリー株式会社が厚生労働省より「2型糖尿病」を効能・効果として、日本における製造販売承認を取得しています。
-リベルサスは、米国FDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を取得しています。
-重大なリスクや副作用が明らかになっていない可能性があります。
・万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。


