再生医療×アンチエイジングの“複合医療パッケージ”が主流に

バンコクでは、以下を組み合わせた“Longevityパッケージ”が一気に普及している：

• MSC幹細胞治療

• エクソソーム療法

• NAD+点滴

• ホルモン最適化（HRT）

• 遺伝子・エピジェネティック検査

• マイクロバイオーム解析

いずれも、美容施術の延長線ではなく“健康寿命の最大化”を目的とした医療である点が特徴。
「若返る」ではなく、「老化のメカニズムそのものを制御する」アプローチが主流化しつつある。

富裕層ヘルスツーリズムが市場成長を加速

タイ政府は医療ツーリズムを国家戦略化しており、
バンコクには以下の地域から患者が流入している：

• UAE・サウジアラビア（中東）

• シンガポール

• 欧州

• 中国

• 日本（長期滞在者・富裕層観光客）

特に中東富裕層は、
1人あたり30〜80万円規模の長寿医療パッケージ を選択するケースが多く、
市場の拡大に大きく寄与しているという。

バンコクが“アジアのLongevity Hub”として台頭か

従来は美容医療（Aesthetic）で知られたバンコクだが、
近年は以下の領域でも存在感を高めている：

• Biohacking／サイエンス型ウェルネス

• Functional Medicine／精密栄養療法

• 再生・細胞医療

• Longevity医療（健康寿命延伸医療）

国主導で 美容→予防→再生→長寿 の医療エコシステムを構築している点は、アジアでも稀有な例となる。

日本への影響：制度ギャップと“医療流出”リスク

日本は以下の要因により、
長寿医療分野でタイ・シンガポールに後れを取る可能性がある：

• 再生医療提供の規制・ハードル

• 保険制度との整合性

• 施術・療法の認可スピード

• 医療ツーリズムに対する制度対応の遅れ

• 価格の高さ

その結果、
日本人富裕層の「訪タイ医療」流出が現実的なリスクになりつつある。

編集長POINT
アジアの競争軸は“美容”から“健康寿命”へ移行か？

バンコクの動きは、
「若返り」ではなく「老化を管理する」医療 がアジアの新しい主戦場であることを示している。日本の美容医療は成熟しているが、
予防医療・再生医療・長寿医療 の3領域は制度的に制約が多い。

その隙を突くように、
バンコクは国家戦略レベルで“Longevity市場”を取り込み始めた。

2030年、日本の医療競争力は「老化をどう扱うか」で決まる。
このシフトを見誤れば、アジアの医療市場で存在感を失う可能性がある。

まとめ

• バンコクで 再生医療×アンチエイジング が統合し、新市場を形成

• 富裕層医療ツーリズムが Longevity 医療を加速

• アジアの美容医療は 長寿医療（Longevity） へと構造転換

• 日本は制度面で後れを取り、“患者流出”リスクが顕在化

• アジア医療市場は「老化を制御する医療」という新フェーズに突入した

NEROでは、アジア各国における医療制度の変容と自由診療の構造分析を継続的に報じている。 今後も 「医療市場の倫理とサステナビリティ」 をテーマに、日本がどこまで自由診療を拡張すべきか、その境界を問い続ける。