2025年12月1日、参院本会議で突如として火花を散らした直美問題。維新の新実彰平議員が放った鋭い質問は、医療供給体制の崩壊を引き起こす重大な警鐘であり、政府の対応を揺さぶった。
若手医師が美容外科に流れる現実が示すのは、美容医療の問題だけではなく、日本の医療制度全体に潜む壊滅的な構造問題だ。
この問題の本質は、医療費引き上げの圧力、さらには医師不足が引き起こす急性期病院の崩壊リスクにまで及んでいる。
INDEX
直美問題が暴露した医療供給体制の崩壊か?
直美問題は、決して美容医療の単なるキャリア選択にとどまらない。
その背後には、日本の医療制度を根底から揺るがす深刻な歪みが潜んでいる。若手医師が自由診療市場、特に美容外科に流れる現実が示すのは、医師不足が深刻化する中で、内科や外科といった基幹診療科が破綻の瀬戸際にあるという事実だ。医療供給体制の崩壊は、もはや時間の問題だ。
この問題は、決して美容医療の問題だけではない。急性期病院や地域医療支援病院が生死をかけた存続の危機に直面しており、その波及効果はすでに医療経営全体に影響を及ぼし始めている。

自由診療の価格可視化と医療費引き上げ圧力とは
美容医療の価格がSNSで拡散され、一般市民がその異常な高額に衝撃を受ける中、保険診療の価格がいかに低すぎるかという事実が次第に露呈してきた。これが引き金となり、医療制度の不均衡が明るみに出る。国民は今、保険診療の不正な安さに気づき始めている。
SNSで広まる自由診療の価格に対し、医療費の引き上げ圧力は今、国民からの強い声となって政府を動かしている。財務省ですらその流れを無視できない状況に追い込まれている。このままでは、医療費は間違いなく引き上げられるだろう。
気になる質疑応答は?
~新実議員と厚生労働大臣の激論~
新実彰平議員の質問
新実議員は、鋭い言葉で政府に迫った。
「資格を得てまもない医師が直接美容外科に就職する、いわゆる“直美”の問題も看過できません。
医師1人を養成するのに1億円ともいわれる公費が投じられるなか、未来ある医師がその国家資格を人の命と健康を守る医療の根幹に使おうとしないことは社会的な損失でもあります。
この、“直美”の問題を政府はどう考えていますか。また本法案が機能し、日本専門医機構の定める専門医のいる美容外科が選ばれる市場を作れれば、医師による“直美”の選択が減ってくるように思います。
“直美問題”に関する本法案への期待について教えてください」
上野厚労大臣の答弁
それに対し、上野厚生労働大臣はこう答えた。
「いわゆる“直美”の問題についてお尋ねがありました。
医師がどのような診療科を選択するかは医師個人の自由ですが、多くの医師が特定の診療科を選択することで、そのほかの必要な診療科で医師不足となることがあれば、好ましい状況ではないと考えられます。本法案においては、美容医療を行う医療機関による定期的な報告・公表制度を創設し、都道府県等が専門医資格の有無、安全確保措置の実施状況等を把握し、公表する、といった内容を盛り込んでおり、これにより適切な美容医療が提供されるような環境の整備をはかってまいります」
医療経営者への警告:医療業界全体の崩壊が迫る!
直美問題はもはや美容医療の枠を超え、日本の医療供給体制全体に壊滅的な影響を及ぼしている。この問題に対して、医療経営者は軽視することなく、即座に対応策を講じなければならない。今後、急性期病院が生き残れるかどうかは、医療経営者がいかに早急に対応できるかにかかっている。
医療業界はまさに変革の時を迎えようとしている。この問題を美容医療の騒動と切り捨てることができるのは、もはや愚か者だけだ。医療経営者として、今すぐに構造的な変革に備えなければならない。
編集長POINT
~直美問題の背後に潜む医療供給体制の崩壊と医療費引き上げ圧力~
「直美問題」は美容医療の枠を超え、医療供給体制の根本的な崩壊を引き起こす構造的転換点
直美問題は、表面的には美容医療のキャリア選択に見えるが、その背景には日本の医療制度全体の歪みが潜んでいる。
医師のキャリア選択が自由診療市場に偏ることで、内科や外科といった基幹診療科の医師不足が深刻化し、医療供給体制の崩壊を招くリスクがあるかもしれない。
この問題は、単なる美容医療の枠を超え、急性期病院の存続リスクや医療費の引き上げ圧力へと波及している。
自由診療市場の価格可視化によって、国民は保険診療の低価格に対して強い違和感を覚え、医療費の引き上げという新たな圧力が財務省にも届きつつある中、医療制度のバランスが崩れつつある現状を示しているのか。
この変化の中で、医療経営者は「美容医療の問題」と軽視せず、医療業界全体の構造変革として捉え、対応することが求められるタイミングに来ているといえるでしょう。

まとめ
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直美問題は医師不足と自由診療市場の歪みが絡んだ複合的な問題。
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美容医療市場の拡大に伴い、基幹診療科の医師不足が深刻化。
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医療費の引き上げ圧力と制度改革が進行中、今後の医療システムの変革が必須。
NEROでは、医療制度改革の進展を注視し続けます。今後も医療業界における倫理とサステナビリティの問題を掘り下げ、日本の医療市場がどのように変革していくかを追い続けます。
