2025年12月、改正医療法が公布・順次施行され、美容医療に対する安全管理体制の報告義務化、情報公開の制度化、さらに医師偏在是正を目的とした開業規制やオンライン診療の法的位置付けが明確化された。
自由診療として拡大してきた美容医療は、今後「見えない医療」ではいられなくなる。
制度改正の背景とは
なぜ「美容医療」が法改正の射程に入ったのか
今回の改正医療法は、医療提供体制全体の再設計を目的としているが、
その中で美容医療が明確に制度の俎上に載せられた点は注目に値する。
背景には、
死亡事故や重篤な合併症、契約トラブルの増加、
SNS広告を起点としたトラブルの多発、
そして医療機関側の安全管理体制が行政から見えにくい構造があった。
厚生労働省の検討会報告書では、
美容医療を巡る相談件数が年々増加し、
「安全管理状況を把握できない」「指導の根拠が不明確」という
行政側の課題が明示されている
制度の中身って?何が変わったの?
美容医療は「報告・公表される医療」へ
改正医療法では、
「美容を目的とした治療」を行う医療機関に対し、
以下の内容について都道府県知事への定期報告が義務付けられる。
-
医療安全を確保するための指針・体制
-
事故防止策の整備状況
-
専門医資格の有無
-
患者相談窓口の設置状況
これらのうち、
患者保護に資する情報は公表対象となる見通しだ。
虚偽報告や未報告があった場合、
是正命令や行政指導の対象となることも明記されている。
これは、美容医療が
「自由診療=自己責任」から
「安全体制を社会に説明する医療」へ転換したことを意味する。
同時進行する制度変化とは
オンライン診療と開業規制が示す“次の管理軸”
改正医療法では、
これまで通知・ガイドライン運用だったオンライン診療が、
正式な医療行為として法律上に位置付けられた。
-
映像・音声によるリアルタイム確認が要件
-
単なるメッセージ診療は認められない可能性
-
急変時対応を含む施設要件の整備が前提
また、医師偏在対策として、
外来医師が過剰と判断された地域では、診療所開設の事前届出制が導入される。
美容医療は都市部集中型の分野であり、
今後、開業や事業拡大に制度的制約が及ぶ可能性が高まっている。
編集長POINT
―「自由診療の時代」は終わったのか
今回の改正医療法は、
美容医療を直接規制する“禁止法”ではない。
しかし本質は、
「制度の外にあった自由診療を、制度の内側へ戻す」という
構造転換にある。
安全管理の報告、情報公開、行政監視。
これは規制ではなく、
信頼を社会に説明できる医療だけが生き残るフェーズへの移行だ。
台湾・フランスなど海外では、
すでに経験要件・資格要件による線引きが進んでいる。
日本もまた、
事故が起きてから動く国ではいられなくなった。
美容医療は
価格競争から、
技術競争へ、
そしていま、
制度適応競争の段階に入った。
まとめ
-
改正医療法が美容医療を制度的監視の対象に
-
安全管理体制の報告・一部公表が義務化
-
オンライン診療が法制化され要件が厳格化
-
都市部での新規開業に制度的ハードル
-
美容医療は“説明責任を負う医療”へ移行
NEROでは、医療制度改革の進展を注視し続けます。今後も医療業界における倫理とサステナビリティの問題を掘り下げ、日本の医療市場がどのように変革していくかを追い続けます。