「もう耐えきれない」——イラン戦争が医療器具が高騰....あなたの美容クリニックの施術費用も上がるの?

📌 記事をざっくりまとめると……

  • イラン戦争によるホルムズ海峡の封鎖が、美容クリニックで使う注射器・フィラー・医療機器にまで波及しつつある
  • 「もう耐えきれない」——地域の基幹病院の院長がRKB毎日放送の取材にそう語るほど、原油高の影響は医療の現場にすでに届いている
  • 自由診療は価格統制がない。コスト上昇は施術費用に転嫁されやすい——その構造を知ることが、正しいクリニック選びにつながる

あなたが通っている美容クリニックの施術費用、
気がついたら上がっているかもしれません。

医療器具の高騰・・・施術費用までもしかすると高騰する可能性も・・。

値上げの背景には、クリニックの経営判断だけでは説明できない、世界規模の構造変化が起きている。

2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始した。

その日から、日本の医療現場が静かに揺れ始めた。

「もう耐えきれない」——医療現場の院長が語った言葉

北九州市立八幡病院。
救命救急センターを備える地域の基幹病院だ。

RKB毎日放送の取材に対し、岡本好司院長はこう語った(2026年3月23日)。

「医師会の先生方と話しても、もう耐えきれないんだっていうことをおっしゃる先生方も多い」

同院長が指摘したのは、原油高が医療現場を直撃しているという現実だ。

「原油価格が上がると、プラスチックなど全ての原油をもとにして作られる物質の価格が全部上がっていきます

点滴バッグ、注射器、手袋、縫合器——
医療現場で毎日使う使い捨て器具のほぼすべてが、
石油由来のプラスチック製だ。

これは美容クリニックも同じだ。

「もう耐えきれない」と医療現場の院長が語る。イラン戦争→ナフサ不足→注射器・フィラーの値上がり。美容医療の施術費用が上がる構造的な理由をNEROが解説。

美容クリニックでも同様か?使う注射器まで値上がりするのか

ここで一つ、問いたい。

「ガソリンが高くなった」というニュースは毎日流れている。
でもなぜガソリンと注射器が関係するのか、説明できる人は少ない。

鍵になるのが「ナフサ」という物質だ。

原油を精製すると、ガソリンと一緒に「ナフサ」が生まれる。
このナフサを化学工場で加工すると、プラスチックや合成繊維の原料になる。

つまりナフサが止まると——

  • 注射器・針・カテーテル(美容施術の消耗品)
  • ヒアルロン酸フィラーの容器・包装材
  • 医療用手袋・HIFUの使い捨てチップ

これらすべての製造コストが押し上げられる。

日本のナフサ調達先は中東が約47%。
そのルートを支えるホルムズ海峡が、
今まさに事実上の封鎖状態にある(公益財団法人 中東調査会)。

出光興産や三井化学などの石油化学メーカーがナフサの供給不安を理由に生産削減を相次いで発表し、イランでの戦争が始まってから2週間余りで国内約12カ所のエチレン生産拠点のうち半数が減産している(Bloomberg、2026年3月17日)。

「供給が妨げられる可能性がある」——卸業者からの報告が届き始めた

先のRKB毎日放送の報道の中で、
岡本院長はさらにこんなことも明かしている。

「卸業者から輸入が少し止まって、供給が妨げられる可能性があるというご報告
向こうも仕入れるのに大変なんですって話をされてますね」

「小さな手術器具、内視鏡の検査系の器具、縫合器——
ほとんどのディスポ製品(使い捨て医療用機材)は外国製品を使っているのが現状で、
そういうものは全て値上がりしていきます」

現時点では多くのクリニックで供給は通常通り維持されている。
しかしこれは「今のところ」の話だ。

事態が長期化すれば——という懸念が、
医療現場の最前線にいる院長たちの口から出始めている。

美容医療が「特に」影響を受ける理由

ここで重要な構造の話をしたい。

保険診療(一般病院・クリニック)では、
診療報酬という「価格の上限」が法律で決まっている。

消耗品が値上がりしても、
患者への請求額を勝手に上げることはできない。
その差額は医療機関が吸収するしかない。

だからこそ院長たちが「もう耐えきれない」と言う。

一方、美容医療は自由診療だ。

価格統制がない。
クリニックは独自に施術費用を設定・改定できる。

コストが上がれば、施術費用に転嫁されやすい。

「値上がりしても我慢しなければならない」保険診療と、
「値上がり分をすぐに価格に反映できる」自由診療——
この構造の違いが、今まさに動き始めている。

「もう耐えきれない」と医療現場の院長が語る。イラン戦争→ナフサ不足→注射器・フィラーの値上がり。美容医療の施術費用が上がる構造的な理由をNEROが解説。

では、私たちはどう動けばいいのか

「施術費用が上がったとしても、
それが正当なコスト反映なのか、便乗値上げなのか、
どうやって見分けるんですか?」

この疑問を持つ方は多いはずだ。

判断のポイントは3つある。

① 理由を説明できるクリニックを選ぶ
「今、消耗品の仕入れコストが上がっています」と
患者に説明できるクリニックは、誠実だ。
理由なく値上げするクリニックとは明確に違う。

② 「安い」だけで選ばない
コスト圧力がかかる中で異常に安いクリニックは、
薬剤の品質・機器のグレード・安全管理のどこかで
コストを削っている可能性がある。

③ 緊急性の低い施術は情勢を見極める
急がない施術であれば、
情勢が安定してから改めて検討するという判断も
十分に合理的だ。

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美容医療は「自己責任の世界」だとよく言われる。

しかし今回明らかになったのは、
自己責任以前に、患者が知らされていない情報が多すぎるという現実だ。

戦争→原油高→ナフサ不足→プラスチック製品の値上がり→美容クリニックの消耗品コスト増→施術費用への転嫁。

この連鎖を知っている患者と知らない患者では、
クリニック選びの質がまったく違ってくる。

「値上がりしていた」という事実を確認するだけでなく、
「なぜ値上がりしたか」を問える患者が、正しい選択ができる。

NEROが伝えたいのは、その一点だ。

→ 関連記事:「改正医療法、4月1日施行——今通っているクリニックは大丈夫?」

まとめ

  • 2026年2月28日のイラン攻撃を契機にホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に。3月31日現在も深刻な通航制限が継続中
  • 医療現場の院長がRKB毎日放送の取材に「もう耐えきれない」と語り、卸業者から「供給が妨げられる可能性」の報告も届き始めている
  • 注射器・フィラー容器・機器部品はすべてナフサ由来。国内石油化学メーカー約半数がエチレン減産を開始
  • 現時点では供給は維持されているが、長期化すれば美容医療への影響は避けられない
  • 自由診療は価格統制がなくコスト転嫁されやすい——保険診療との構造的な違いを理解することが重要
  • 「なぜ上がったか説明できるクリニック」を選ぶ視点が、これからのクリニック選びの基準になる

出典

よくある質問

Q. 今すぐ施術費用が上がりますか?
現時点では多くのクリニックで消耗品の供給は通常通り維持されています。ただし情勢が長期化すれば影響が広がる可能性が高く、気になる方はクリニックに現在の状況を確認しておくことをお勧めします。

Q. どんな施術が特に影響を受けますか?
ヒアルロン酸注入・ボトックスなど注射器を多く使う施術、輸入フィラーを使う施術、HIFU・RF等の最新機器を使う施術は特にコスト圧力を受けやすいです。

Q. 情勢が落ち着けば費用は下がりますか?
一度上がった施術費用が即座に下がるケースは少ないのが現実です。ただし競争の激しい施術(脱毛・ボトックス等)では情勢改善後に価格競争が働く可能性もあります。

Q. 値上げしているクリニックは悪いクリニックですか?
一概にそうとは言えません。正当なコスト増を価格に反映しているクリニックもあれば、便乗値上げのケースもあります。「なぜ上がったか」を説明できるかどうかが、誠実さを判断する一つの基準です。

NERO 安達健一