- 2026年5月28〜29日、The Okura Tokyoで第114回日本美容外科学会(JSAS)が開催。テーマは「つなぐ 美、ひらく 未来 ― Tradition Meets Innovation from Japan」
- 会員2,000人超の歴史ある「外科」の学会で、今回はじめて皮膚科専門医・今泉明子先生(今泉スキンクリニック院長)が大会長を務めた
- 最大の見どころは韓国・延世大学/日本のクリニック/学会会場の3拠点をつないだライブ解剖×注入。「外科か皮膚科か」の線引きを越える構成が目立った2日間を、NEROが現地取材した
美容医療は「外科」と「皮膚科」に分かれている。
でも、その境目は本当に必要なのか?
──今年のJSASは、その問いに正面から向き合った学会だった。
2026年5月28日(木)・29日(金)、
The Okura Tokyo(東京・虎ノ門)で開かれた第114回日本美容外科学会(JSAS)。
編集部も2日間、会場で取材した。
🧭 今年のJSASが「つないだ」4つのもの(テーマの読み解き)
外科 × 皮膚科→ 視点の違う二者を「解剖(かいぼう)」という共通言語でつなぐ
日本 × 韓国→ 延世大学・会場・クリニックを3拠点ライブでつなぐ
美容 × 健康→ 睡眠研究の権威・柳沢正史先生の講演で「見た目」と「土台」をつなぐ
医師 × 看護師→ 看護師のキャリアを正面から扱い、職種をつなぐ
※この整理はNEROの独自編集です。プログラム構成から読み取れる範囲でまとめています。
INDEX
「外科の学会」に、皮膚科医の会長が立った
日本美容外科学会(JSAS)は、その名のとおり長らく「外科」を主軸としてきた学会だ。
会員数は2,000人を超え、
いまでは医師だけでなく、看護師、受付、経営に関わる人までを含む学びの場になっている。
今回もっとも象徴的だったのは、大会長の人選そのものである。
注入治療を専門とする皮膚科専門医・今泉明子先生(今泉スキンクリニック院長)が、
皮膚科医としてこの「外科」の学会の大会長を務めた。
今泉先生は2022年に皮膚科専門医として初めてJSAS理事に就任しており、
今回の会長就任はその延長線上にある。
JSAS(日本美容外科学会)は、美容外科に関する研究・技術の普及を目的に設立された学会です。
会員数は2,000人を超え、医師だけでなく看護師や受付、経営に関わる人まで含む学びの場になっています。
今回の第114回は2026年5月、東京・虎ノ門のThe Okura Tokyoで2日間にわたり開催されました。
今泉先生はかねて「もう外科だから、皮膚科だから、という垣根をなくす時期に来ている」と語ってきた。
海外ではすでにその区別は薄れつつあり、
あえて皮膚科医が大役を担うことで、その変化を国内にも持ち込もうとした格好だ。
なぜ「解剖」が、今年のキーワードだったのか
今回のプログラムを貫いていたのが「解剖学(かいぼうがく:体の構造を立体的に理解する学問)」だ。
外科医は、皮膚や組織を立体的に捉えることに長けている。
一方で皮膚科医は、皮膚そのものを「面」から立体へと捉える視点を持つ。
同じ「リフトアップ(顔のたるみを引き上げる施術)」でも、両者ではアプローチが異なる。
今泉先生の考えはシンプルだ。
視点の違う二者が、解剖という「共通言語」を持てば、
もっと精度が高く、満足度の高い治療が生まれる──。
だからこそ今回は、外科と皮膚科が知識をシェアする土台として、解剖を前面に置いた。
皮膚は一枚の布ではなく、表皮・真皮・皮下脂肪・筋膜・筋肉と層が重なる構造をしています。
注入も、デバイス(機器)も、「どの層に効かせるか」で結果が変わる──。
これが今年のJSASの通奏低音でした。
3拠点をつないだ「ライブ解剖」という挑戦
2日目の会長特別企画「Presidentʼs Special Session」は、今回の目玉と言っていい。
韓国・延世大学(ヨンセだいがく)の解剖学教室、
日本の学会会場、
そしてクリニックの3拠点を同時中継でつなぐ構成だった。
注入治療は、
血管の損傷などの有害事象(ゆうがいじしょう:治療に伴う望ましくない症状)が起こりうる領域だ。
だからこそ「どの層に、なぜ注入するのか」を理解することが、
安全性と再現性の向上に直結する。
このご献体を用いた解剖中継は、国内では珍しい取り組みだ。
今泉先生によれば、
JSASでは2016年に理事長の鎌倉達郎先生がフランスのご献体施設と初めて中継をつないだ経緯がある。
ご献体と、生身の人間(実際の患者)と、会場の三者を同じ画面でつなぐことで、
参加者全員が「同じ熱量」で学会に参加できる──
そこに今回もこだわった。
海外の「執刀できない壁」を、映像で越える
外科系のハイライトは、
初日のフェイスリフトセッション「Master to Masters:Surgical Insight Through Video」。
米国の著名なフェイスリフト外科医 Ben Talei 先生らを招いた構成だ。
- 制度の壁:海外の医師は、日本で直接執刀することはできない
- 解決策:日本の医師が事前収録した手術映像をもとに、海外医師と議論する形式をとった
- 意義:執刀できない制約の中でも、技術と考え方を国境を越えて共有できる。実務的で現実的な工夫だった
「見た目」だけではない──睡眠、倫理、看護師のキャリア
今年のJSASがユニークだったのは、
美容を「見た目の変化」だけで語らなかった点だ。
2日目の招請講演には、柳沢正史先生(筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構/WPI-IIIS 機構長)が登壇。
演題は「睡眠の謎に挑む:美容の出発点としての健やかな睡眠」。
柳沢先生は、睡眠・覚醒を制御する神経伝達物質「オレキシン」の発見者の一人として国際的に知られる研究者です。
美容を、施術だけでなく健康や生活の土台から考える──今年の学会の方向性を象徴する企画でした。
さらに、教育講演「医療従事者が知るべき医療倫理」では、
美容医療を希望・実践する人の心理や、倫理と法の観点が扱われた。
「美容医療トラブルシューティング」「安全な周術期管理」など、
安全性と倫理に正面から向き合う企画も並んだ。
注目したいのは、
看護師を主役にした「医師が知るべき看護師のキャリアアップ」のラウンドテーブルだ。
美容医療は医師だけで成り立つものではない。
学会が、関わる職種全体の学びの場であろうとしている姿勢が、
こうした企画にも表れていた。
プログラムから読む、2026年の「現在地」
2日間のプログラムを俯瞰すると、いくつかの傾向が見えてくる。
あくまで「演題の並び」から読み取れる範囲だが、参考までに整理する。
これらはどれも「断定的なトレンド」として語れるものではない。
ただ、外科・皮膚科・内科・経営が一つの学会の中で地続きに並んでいたこと自体が、
今の日本の美容医療の「現在地」を映していた。
【NERO独自取材】閉会直後、今泉会長に聞いた「手応え」
2日間の全日程を終えた直後、
編集部は大会長の今泉明子先生に話を聞いた。
今泉先生は、NERO美容皮膚科部門のアンバサダーも務めている。
── いちばん手応えがあったのは、どこでしたか。
若い先生もベテランの先生も、討論を含めて、すごく活発に議論する場になったと思います。
アカデミックでありながら、やっぱり楽しめるセッションが多かった。
皆さんに楽しんでいただけたんじゃないかと思います。
── 韓国とつないだ解剖の中継。日本では珍しい取り組みでしたが、その意図は。
それと、2016年に理事長の鎌倉先生が、初めてフランスのご献体施設と中継をつないだ経緯があるんです。
ご献体と、生身の人間と、会場をつなぐことで、同じ熱量を持って学会に参加する。
それがすごく大事だと思っているので、そこを一番意識しました。
「アカデミックだが、楽しい」。
専門性の高い議論を、参加者が前のめりで楽しめる場にする──。
会長が語った手応えは、今年のJSASの空気そのものだった。
外科と皮膚科、見た目と健康、医師と看護師──線引きをあえて越える構成が印象的でした。
NERO編集長の視点
学会の価値は、必ずしも「最新の機器が何台出たか」では測れない。
今年のJSASで印象に残ったのは、専門の異なる医師たちが、同じ「層」「解剖」という言葉で議論できる土台をつくろうとしていたことだ。
これは、患者にとっても無関係ではない。
外科か、注入か、デバイスか──選択肢が増えるほど、「自分にとって何が最適か」の判断は難しくなる。
医師同士が視点を共有し、互いの限界と得意を理解していること。
それは回り回って、患者が「比較して選べる」環境の土台になる。
一方で課題も見えた。
社会の関心が高まる今、学会内で交わされる安全性や倫理の議論を、専門家以外にどう届けるか。
「議論を管理する」のではなく、「議論そのもので評価される」場へ──。
それが実現すれば、日本の美容医療の信頼は、もう一段高いところへ向かうはずだ。
まとめ
- 第114回JSASは、テーマ「つなぐ 美、ひらく 未来」を構成そのもので体現した学会だった
- 外科と皮膚科を解剖でつなぎ、日本と韓国を3拠点ライブでつなぎ、美容と健康を睡眠講演でつなぎ、医師と看護師をキャリアの議論でつないだ
- 皮膚科医が「外科」の学会の会長を務めたという事実そのものが、「美容外科」と「美容皮膚科」を分けて考える時代の終わりを象徴していた
- 次回・第115回は2027年5月19日(水)・20日(木)、ホテルニューオータニにて、室孝明先生(ビスポーククリニック)を会長に開催予定。テーマは「Professional Autonomy in Aesthetic Surgery 一見も、一生も」
- 今年「つなぐ」を掲げた学会が、来年は「長期結果への責任」へと焦点を移す。その連続性も読みどころになりそうだ
よくある質問
出典
第114回日本美容外科学会(JSAS)公式サイト 学会長挨拶・開催概要・プログラム/タイムテーブル / 一般社団法人 日本美容外科学会(JSAS)公式サイト 学術集会開催のご案内 / 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)公式サイト 柳沢正史 機構長 紹介ページ / 第114回JSAS 大会長 今泉明子先生 閉会後インタビュー(2026年5月/NERO編集部 独自取材)
