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「ボトックスだけ打てば終わり」は古い──2026年のRCTが示す目尻ジワ治療の新設計

「ボトックスだけ打てば終わり」は古い──2026年のRCTが示す目尻ジワ治療の新設計

 

「目尻のシワが気になる」

これに対する美容医療の答えは長い間、シンプルだった。
A型ボツリヌストキシン製剤を打って筋肉の動きを抑える。表情ジワが和らぐ。それが長く基本解だった。

しかし2026年7月8日、PubMedに公開された査読論文が、
この「シンプルな答え」に一石を投じた。

ブラジルの研究チームが実施した24例・無作為化・二重盲検・split-face試験は、
「ボトックス単独」と「ボトックス+スキンブースター(Restylane Skinbooster Vital)の併用」を
同じ人の左右の目尻で比較した。

結果が示したのは、
「シワを消す」だけでは評価しきれない「肌の質」という新しい治療軸の存在だ。
目尻ジワ治療の設計が、静かに変わりはじめている。

📋 この記事でわかること
  • 2026年7月公開・PubMed査読論文のsplit-face RCT設計と結果
  • 「シワを消す」から「肌の質を上げる」への治療軸の転換
  • スキンブースターとは何か──ヒアルロン酸フィラーとの違い
  • この研究の限界と、日本での美容医療を受ける人が知っておくべきこと

この試験が特別な理由──
split-face設計という「最も公平な比較」

📖 用語解説:split-face試験(スプリットフェイス試験)
同じ被験者の顔の左右を別々の条件で処置し、比較する試験設計。
「同じ人」を比較するため、体質・年齢・ライフスタイルの差が排除される。
個人差の影響を抑えやすい代表的な比較設計のひとつとされている。

この試験の設計は以下の通りだ。

試験概要
発表
PubMed公開:2026年7月8日(査読済み)
対象
ブラジル人女性24例・目尻ジワ(crow's feet)を有する成人
設計
無作為化・二重盲検・split-face(同一被験者の左右目尻を別条件で処置)
比較条件
両側にabobotulinumtoxinAを注入したうえで、
片側のみRestylane Skinbooster Vitalを追加注入・反対側は模擬注射(プラセボ)で比較
評価項目
EMG activity(筋活動)・シワ重症度(canthal wrinkle severity)・
skin texture(肌理・質感)・患者満足度
出典:PubMed PMID 42420660・2026年7月8日公開

スキンブースターとは何か──フィラーとの違い

スキンブースター(Restylane Skinbooster Vital)とは、
ヒアルロン酸(HA)を皮膚の浅い層に微量ずつ注入する製剤だ。
ボリュームを「足す」ためのフィラーとは異なり、
皮膚のskin texture(肌理・質感)など「肌の質」そのものを改善することを目的としている。
日本でも一部クリニックで提供されている。

試験が示したこと──
「シワを消す」以上の変化

Gensparkの一次情報確認によれば、この試験の主な所見は以下の通りとされている。

EMGと筋活動
EMG(筋電図)の低下は両側でみられた。
筋活動の抑制そのものに大きな群間差はなく、「動きを止める」効果はどちらも発揮された。
シワ重症度とskin texture
目尻ジワ重症度(canthal wrinkle severity)とskin texture(肌理・質感)は、
スキンブースター併用側が3カ月・6カ月時点で良好な結果を示した。
「水分量・弾力」は抄録上では確認できない項目のため、この記事では言及しない。
患者満足度
患者満足度は両群で上昇したが、3カ月時点で併用側が有意に高かった。
⚠️ NEROwからの注釈
この論文はPubMed公開済みの査読論文だが、24例という規模は統計的に限定的だ。
「効果があった」という方向性は示されているが、
「どの程度の効果か」「どんな患者に最適か」を確定するには、
より大規模な研究が必要だ。
NEROwは「方向性を示す研究」として紹介する。

「シワを消す」から「肌の質を上げる」へ──
治療軸の転換が意味すること

この研究が示しているのは、単に「両方打てばいい」ということではない。
より本質的な問いは、「目尻ジワをどう評価するか」という視点の転換だ。

従来

「笑ったときのシワが深い → 筋肉を抑制する → シワが消える」
評価軸:シワの本数・深さ

新しい視点

「シワを和らげるだけでなく、目元のskin texture(肌理・質感)も評価する」
評価軸:シワ重症度+skin texture+患者満足度

ただし今回は24例の小規模試験だ。
「欠点を修正する」から「肌の状態そのものを底上げする」という方向性だ。

NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

「目尻のシワが気になる」という相談に、「ボトックスを打てばいいですよ」とだけ答えるクリニックと、「肌の質も一緒に評価して設計しましょう」というクリニックの差が、今後広がっていくと思う。

この研究は24例と小規模だが、「何を評価するか」という問いを立てた点で重要だ。


患者にとって大切なのは、「どの施術を組み合わせるか」を聞く前に、
「何を改善したいのか」を自分の言葉で整理しておくことだ。
「シワの深さ」を気にしているのか、「目元全体の印象」を気にしているのか──
その答えによって、最適な設計は変わる。
NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

まとめ

  • 2026年7月8日、PubMedに目尻ジワ治療のsplit-face RCTが公開。
    ブラジル人女性24例で「ボトックス単独」vs「ボトックス+スキンブースター併用」を同一人物の左右目尻で比較した。
  • スキンブースター併用側で目尻ジワ重症度とskin texture(肌理・質感)が3〜6カ月で良好、患者満足度も3カ月時点で有意に高かった。ただし24例の小規模試験であり、より大規模な研究が必要だ。
  • この論文が示した視点は「シワの深さだけでなく目元の質感まで評価する」という問い直しだ。24例の小規模試験であり、より大規模な研究の蓄積が今後求められる。
  • 施術を検討する際は「シワの深さを改善したいのか」「目元全体の肌質を改善したいのか」を整理してから相談することで、より適切な設計が可能になる。

よくある質問(FAQ)

Q
スキンブースターは日本でも受けられるか?
Restylane Skinbooster Vitalは日本でも「スキンブースター」という概念の施術は普及しつつあるが、製剤ごとに薬機法上の承認状況は異なる。Restylane Skinbooster Vitalの国内承認状況・取り扱い状況は受診前に確認することを推奨する。「スキンブースター」という言葉は広く使われているが、製剤によって成分・濃度・設計が大きく異なるため、担当医師への詳細確認が重要だ。
Q
この試験での「同日施術」は一般の日本の臨床に当てはまるか?
この試験内では両施術を同日プロトコルで行っている。ただし「試験内での同日施術」と「一般臨床での安全性」は別の話だ。実際の適応・注入層・間隔・安全性は製剤の種類・目元の状態・施術者の判断によって変わる。「同日に受けたい」と考える場合は、担当医師に試験データを含めて事前に相談し、個別に判断してもらうことが前提だ。

出典・参考文献

  1. PubMed PMID: 42420660. AbobotulinumtoxinA combined with Restylane Skinbooster Vital for crow's feet: A randomized, double-blind, split-face trial. Published: July 8, 2026.(査読論文・ブラジル・24例)

安達健一

安達 健一

NERO DOCTOR/BEAUTY 編集長

日本・米国看護師(BSN)・MBA保有。
世界の一次医療データをもとに監修。
広告主からの影響を受けない独立した編集方針を貫いています。