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第44回日本美容皮膚科学会総会を総括──「みんなキレイに幸せに」が示した、美容皮膚科の次の方向性

第44回日本美容皮膚科学会総会を総括──「みんなキレイに幸せに」が示した、美容皮膚科の次の方向性

📍 学会現地取材・総括レポート
2026年8月1日〜2日・仙台

「綺麗を強要しすぎない」
「煽りすぎない美容医療へ」

これは美容医療を批判する声ではない。
第44回日本美容皮膚科学会総会・学術大会(2026年8月1日〜2日・仙台)の
会頭、菊地 克子 先生(仙台たいはく皮膚科クリニック院長)が
会場で直接語ってくださった言葉だ。

2日間で約2,000人以上が参加したこの学会は、
しわ・たるみ、シミ・肝斑、酒さ、注入、再生医療、AI、制度・倫理、アピアランスケアまで
幅広い最前線を扱いながら、根底に一本の問いを持っていた。

「美容皮膚科は、誰のために、何のためにあるのか」

この記事では、菊地先生の言葉を軸に、
全25シンポジウム・プログラムから見えた今大会の意味を総括する。
NEROが現地で受け取った「業界の今」をそのまま届けたい。

📋 この記事でわかること
  • 菊地克子大会長が今大会に込めた思想──「美しさを目的にするな」の本意
  • 全プログラムから見えた「今年の美容皮膚科」──9つの論点
  • 「拡張」と「抑制」という二つの潮流
  • これからの美容皮膚科に求められるもの

菊地克子大会長が示したもの──
「美しさはゴールではなく、手段だ」

会頭挨拶に込められた言葉は、シンプルだが深かった。
「みんなキレイに幸せに」というテーマのもと、
菊地先生が語ったのは次のようなことだった。

菊地克子大会長・現地取材(2026年8月2日・仙台)
「美容医療って、いつの間にか『綺麗にならなきゃ』という空気をまとってしまっている。
本来は、誰もが自分らしく幸せに生きるためのものであるはずなのに、と思っています」
「より綺麗になることは手段であって、目標そのものにしてはいけないと思っています。
それだけが目的になると、なっても満足できなくなってしまう。
その人が幸せに社会生活を送れることのほうが、ずっと大切なんです」
「綺麗を強要しすぎない、煽りすぎない美容医療へ。
クリニックに来られる方の中には、
そこまで気にしなくてもいいんじゃないかと感じる方もいらっしゃいます。
医療として、原点に立ち返るタイミングだと思っています」

この言葉の背景には、近年の美容医療が抱える構造問題への問題意識がある。
技術の進化と市場の商業化が交差する中で、
「もっと綺麗に」という圧力が患者に向かい続けている現状。
施術後も満足が得られず、さらに施術を求めるサイクル。
「ちょっともう、そこまで気にしなくてもいいんじゃない、という方もいらっしゃる」
という菊地先生の言葉は、クリニックの最前線から出た言葉だ。

今大会の会頭講演のタイトルは「美容皮膚科は平和と成熟の生業〜東日本大震災15年で思うこと〜」。
美容皮膚科を「平和」と「成熟」という言葉で語る大会長。
それは「何でも叶える産業」から「何をすべきか判断できる医療」への
静かな転換宣言だったと、NEROは受け取った。

プログラム全体が示した「今年の地図」──
9つの論点

全25シンポジウム・会頭講演・特別講演・アピアランスケアセッションを通じて、
今大会のプログラムを束ねると9つの論点に整理できる。

① しわ・たるみ──依然として中核市場、設計の精度へ
「なぜしわができるのか」というbasicから、Non-surgery治療、デバイスの基本まで。
「Less is More」という文脈が注入セッションでも登場しており、
「盛る美容」から「解剖と適応に基づく精度」へ移行していることが読み取れた。
② シミ・肝斑──病態理解の個別化へ
肝斑のメカニズムupdate・美白剤のエビデンス・遮光指導の重要性が並んだ。
「なんとなく打つ・塗る」から「病態を理解して個別化する」へという流れが強かった。
(NEROの肝斑記事と接続する学会の方向性だ。)
③ 酒さ──見た目の悩みを「疾患」として向き合う
「自信を持って酒さを診断できますか?」という演題が象徴的だ。
診断・赤み・鼻瘤・レーザー×スキンケアの組み合わせ。
見た目の悩みをきちんと疾患として扱う姿勢が今大会でも強調されていた。
④ 注入・スレッド──「まず解剖を学ぶ」という原則回帰
「注入を始める前に学ぶべきこと──解剖、組織の構造」という演題が並んだことは、
技術の普及の裏で起きてきたトラブルへの反省でもある。
「現在・過去・未来」という俯瞰視点で注入を問い直す構成だった。
⑤ デバイス・機器──「機器自慢」から「使い分け」へ
「ターゲットを見極める照射」「クリニックにおける機器導入戦略のリアル」という演題が示すように、
機器の数や高額さではなく、どう使い分け・導入するかに重点が移った。
⑥ 再生医療──「臨床導入の条件」を議論する段階へ
「臨床医が知っておくべき留意点」「法規制・学会提言・患者の視点に基づく診療指針の構築」。
再生医療は期待先行ではなく、ルールを含めて語るフェーズに入った。
細胞外小胞・皮膚幹細胞・毛包再生まで基礎研究も豊富だった。
⑦ AI──「信頼される診療への組み込み方」へ
「皮膚科専門医×AIが拓く、信頼される美容医療の新時代」
「LLM時代の皮膚科診療を考える」──AIは話題づくりではなく、
実診療に信頼性をもって組み込む方法を問うフェーズに入った。
⑧ 制度・倫理・安全──「社会的成熟」の要求
広告規制・制度設計・医療安全・説明義務・医の倫理と経済効率──
これらが独立したシンポジウムとして複数設けられていた。
「美容医療の社会的成熟」を求める声が学会内部から上がっている証拠だ。
⑨ アピアランスケア──「健康な若年層の美容」に閉じない
特別シンポジウムとして「がん治療に関わる皮膚障害」が設けられ、
化学療法誘発性脱毛・爪障害・色素沈着への対応が扱われた。
これこそ菊地先生の「若くて綺麗な人ばかりのためではない」という言葉の体現だった。

「拡張」と「抑制」──
今大会に流れた二つの潮流

全体を俯瞰したとき、今大会は二つの潮流が同時に流れていた。

🔭 拡張の潮流
再生医療・AI・複合治療・国際的課題・新デバイス・男性美容・脱毛症治療
──領域はどこまでも広がり続けている。
「美容皮膚科にできること」は確実に増えた。
⚖️ 抑制の潮流(今大会の特徴)
制度・倫理・広告規制・説明義務・医療安全・患者の期待値調整
──「どこまでやるべきか」「何を断るべきか」という議論が独立テーマ化された。
これは美容医療が成熟期に入ったことの証拠だ。

この「拡張と抑制」のバランスこそ、
菊地先生の「煽りすぎない」「綺麗を強要しすぎない」という思想と重なる。
技術の進化を否定するのではない。
「その技術を、誰の幸福のために、どこまで、どう使うか」
を問うた学会だった。

これからの美容皮膚科に求められるもの──
「何でもできる」より「何をすべきか判断できる」

今大会が示した方向性を、NEROなりに言語化するとこうなる。

第44回日本美容皮膚科学会が示した5つの方向性
1施術の幅は広がる。しかし、全部やることが正解ではない
2適応・限界・合併症対応を含めた専門性が、より重要になる
3患者の期待を調整する力が、技術力と同じくらい重要になる
4美容皮膚科は「美しさを売る」から「生活の質を支える」へ軸足を移しつつある
5美容は、健康な若年層のためだけでなく、老若男女・疾患治療中の人にも開かれている

「一クリニックの医師としては身に余る光栄」と語った菊地先生が、
仙台という地で選んだテーマは「みんなキレイに幸せに」だった。
それは華やかさより、普遍性を選んだ言葉だ。

第44回日本美容皮膚科学会総会が示したのは、
進化する技術の先にある「節度ある美容医療」の姿だった。
美しさを追うことを否定しない。
しかしそれを唯一の目的にせず、その人の幸福や社会生活まで視野に入れる。
その価値観こそが、これからの美容皮膚科の信頼を左右していく。

NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

菊地先生に声をかけてよかったと思っている。
「煽りすぎない美容医療へ」という言葉は、
先生の口から出た瞬間に、今大会全体のコンセプトが一本の線につながった。学会の価値は、発表された技術の数ではなく、
会頭が何を問い、何を語ったかで決まる部分がある。
今年の仙台は、そういう学会だった。

NEROが届けたいのは技術情報だけではない。
「美容医療はどこへ向かうのか」という問いに、
現場の医師たちがどう答えているかを伝えることだ。「本当に悩んでいるユーザー様へ届ける」という責任の重さは、
こういう現場での取材から支えられている。
次回の学会も、現地から届けたい。
NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

まとめ

  • 第44回日本美容皮膚科学会(2026年8月1〜2日・仙台・約2,000人登録)の会頭・菊地克子先生は「綺麗を強要しすぎない」「煽りすぎない美容医療へ」というメッセージを打ち出した。美しさはゴールではなく、その人が幸せに社会生活を送るための「手段」だと語った。
  • 全25シンポジウムは、しわ・たるみ・シミ・酒さ・注入・再生医療・AI・制度倫理・アピアランスケアまで網羅。「何が流行ったか」ではなく「美容皮膚科はどこへ向かうか」を問うた総会だった。
  • 今大会には「拡張(再生医療・AI・新施術)」と「抑制(制度・倫理・広告規制・安全)」という二つの潮流が同時に流れていた。この二面性こそ、美容皮膚科の成熟期の象徴だ。
  • 求められるのは「何でもできる美容医療」ではなく、「何をすべきか判断できる美容皮膚科」だ。適応・限界・患者の期待値調整まで含めた専門性が、今後の信頼を左右する。
📌 この記事を読んだあなたへ──次のカウンセリングで聞く1つの質問
今大会の医師たちが向かっている方向は、「もっと施術する」ではなく
「あなたに本当に必要な施術は何か」を問うことだ。次にクリニックへ行くとき、こう聞いてみてほしい。
「この施術を、今の私がやらなかったら、どうなりますか?」この質問に丁寧に答えてくれる医師が、あなたにとって信頼できる医師だ。

よくある質問(FAQ)

Q
日本美容皮膚科学会とはどのような学会か?
日本美容皮膚科学会(JSAD)は、美容皮膚科学の進歩と普及を目的とする学術団体だ。皮膚科医・形成外科医・美容外科医など多職種の医師が参加し、美容医療の基礎・臨床・倫理・制度まで幅広いテーマを扱う。年1回の総会は毎年異なる都市で開催され、今回が第44回。2026年は仙台市で約2,000人が参加登録した。
Q
「Less is More」とはどういう意味か?注入との関係は?
「Less is More(少ない方が豊か)」は建築家ミース・ファン・デル・ローエの言葉として知られるが、美容医療文脈では「少量・最小限の施術でより自然な結果を出す」という考え方を指す。今大会の注入セッションでは「Less is More in Perioral Rejuvenation」というタイトルの演題が登場し、フィラーを最小化しつつRFを組み合わせるアプローチが紹介された。「もっと入れれば良くなる」から「最少量で最大効果を」という方向性の転換だ。
Q
「アピアランスケア」とは何か?なぜ美容皮膚科学会で扱われるのか?
アピアランスケアとは、がん治療(抗がん剤・放射線治療)による外見の変化(脱毛・爪障害・色素沈着・皮膚乾燥など)に対して、医療的・整容的にサポートする取り組みのことだ。今大会では野澤桂子先生・藤間勝子先生・船坂陽子先生による特別シンポジウムとして独立して設けられた。「美容皮膚科は健康な若年層だけのものではない」という今大会のテーマを体現するセッションだった。

出典・参考

  1. 第44回日本美容皮膚科学会総会・学術大会 公式サイト. shun-convention.jp/bihifu44/
  2. 菊地克子大会長 会頭挨拶. shun-convention.jp/bihifu44/greeting.html
  3. オンデマンド配信セッション一覧(2026年8月4日時点). shun-convention.jp/bihifu44/docs/On-demand_session.pdf
  4. 菊地克子大会長 現地取材(NERO編集長・安達健一による音声取材)2026年8月2日・仙台

安達健一

安達 健一

NERO DOCTOR/BEAUTY 編集長

日本・米国看護師(BSN)・MBA保有。
世界の一次医療データをもとに監修。
広告主からの影響を受けない独立した編集方針を貫いています。