2026年8月1日〜2日・仙台
「綺麗を強要しすぎない」
「煽りすぎない美容医療へ」
これは美容医療を批判する声ではない。
第44回日本美容皮膚科学会総会・学術大会(2026年8月1日〜2日・仙台)の
会頭、菊地 克子 先生(仙台たいはく皮膚科クリニック院長)が
会場で直接語ってくださった言葉だ。
2日間で約2,000人以上が参加したこの学会は、
しわ・たるみ、シミ・肝斑、酒さ、注入、再生医療、AI、制度・倫理、アピアランスケアまで
幅広い最前線を扱いながら、根底に一本の問いを持っていた。
「美容皮膚科は、誰のために、何のためにあるのか」
この記事では、菊地先生の言葉を軸に、
全25シンポジウム・プログラムから見えた今大会の意味を総括する。
NEROが現地で受け取った「業界の今」をそのまま届けたい。
- ✦菊地克子大会長が今大会に込めた思想──「美しさを目的にするな」の本意
- ✦全プログラムから見えた「今年の美容皮膚科」──9つの論点
- ✦「拡張」と「抑制」という二つの潮流
- ✦これからの美容皮膚科に求められるもの
INDEX
菊地克子大会長が示したもの──
「美しさはゴールではなく、手段だ」
会頭挨拶に込められた言葉は、シンプルだが深かった。
「みんなキレイに幸せに」というテーマのもと、
菊地先生が語ったのは次のようなことだった。
この言葉の背景には、近年の美容医療が抱える構造問題への問題意識がある。
技術の進化と市場の商業化が交差する中で、
「もっと綺麗に」という圧力が患者に向かい続けている現状。
施術後も満足が得られず、さらに施術を求めるサイクル。
「ちょっともう、そこまで気にしなくてもいいんじゃない、という方もいらっしゃる」
という菊地先生の言葉は、クリニックの最前線から出た言葉だ。
今大会の会頭講演のタイトルは「美容皮膚科は平和と成熟の生業〜東日本大震災15年で思うこと〜」。
美容皮膚科を「平和」と「成熟」という言葉で語る大会長。
それは「何でも叶える産業」から「何をすべきか判断できる医療」への
静かな転換宣言だったと、NEROは受け取った。
プログラム全体が示した「今年の地図」──
9つの論点
全25シンポジウム・会頭講演・特別講演・アピアランスケアセッションを通じて、
今大会のプログラムを束ねると9つの論点に整理できる。
「Less is More」という文脈が注入セッションでも登場しており、
「盛る美容」から「解剖と適応に基づく精度」へ移行していることが読み取れた。
「なんとなく打つ・塗る」から「病態を理解して個別化する」へという流れが強かった。
(NEROの肝斑記事と接続する学会の方向性だ。)
診断・赤み・鼻瘤・レーザー×スキンケアの組み合わせ。
見た目の悩みをきちんと疾患として扱う姿勢が今大会でも強調されていた。
技術の普及の裏で起きてきたトラブルへの反省でもある。
「現在・過去・未来」という俯瞰視点で注入を問い直す構成だった。
機器の数や高額さではなく、どう使い分け・導入するかに重点が移った。
再生医療は期待先行ではなく、ルールを含めて語るフェーズに入った。
細胞外小胞・皮膚幹細胞・毛包再生まで基礎研究も豊富だった。
「LLM時代の皮膚科診療を考える」──AIは話題づくりではなく、
実診療に信頼性をもって組み込む方法を問うフェーズに入った。
これらが独立したシンポジウムとして複数設けられていた。
「美容医療の社会的成熟」を求める声が学会内部から上がっている証拠だ。
化学療法誘発性脱毛・爪障害・色素沈着への対応が扱われた。
これこそ菊地先生の「若くて綺麗な人ばかりのためではない」という言葉の体現だった。
「拡張」と「抑制」──
今大会に流れた二つの潮流
全体を俯瞰したとき、今大会は二つの潮流が同時に流れていた。
この「拡張と抑制」のバランスこそ、
菊地先生の「煽りすぎない」「綺麗を強要しすぎない」という思想と重なる。
技術の進化を否定するのではない。
「その技術を、誰の幸福のために、どこまで、どう使うか」
を問うた学会だった。
これからの美容皮膚科に求められるもの──
「何でもできる」より「何をすべきか判断できる」
今大会が示した方向性を、NEROなりに言語化するとこうなる。
「一クリニックの医師としては身に余る光栄」と語った菊地先生が、
仙台という地で選んだテーマは「みんなキレイに幸せに」だった。
それは華やかさより、普遍性を選んだ言葉だ。
第44回日本美容皮膚科学会総会が示したのは、
進化する技術の先にある「節度ある美容医療」の姿だった。
美しさを追うことを否定しない。
しかしそれを唯一の目的にせず、その人の幸福や社会生活まで視野に入れる。
その価値観こそが、これからの美容皮膚科の信頼を左右していく。
まとめ
- ✦第44回日本美容皮膚科学会(2026年8月1〜2日・仙台・約2,000人登録)の会頭・菊地克子先生は「綺麗を強要しすぎない」「煽りすぎない美容医療へ」というメッセージを打ち出した。美しさはゴールではなく、その人が幸せに社会生活を送るための「手段」だと語った。
- ✦全25シンポジウムは、しわ・たるみ・シミ・酒さ・注入・再生医療・AI・制度倫理・アピアランスケアまで網羅。「何が流行ったか」ではなく「美容皮膚科はどこへ向かうか」を問うた総会だった。
- ✦今大会には「拡張(再生医療・AI・新施術)」と「抑制(制度・倫理・広告規制・安全)」という二つの潮流が同時に流れていた。この二面性こそ、美容皮膚科の成熟期の象徴だ。
- ✦求められるのは「何でもできる美容医療」ではなく、「何をすべきか判断できる美容皮膚科」だ。適応・限界・患者の期待値調整まで含めた専門性が、今後の信頼を左右する。
「あなたに本当に必要な施術は何か」を問うことだ。次にクリニックへ行くとき、こう聞いてみてほしい。
「この施術を、今の私がやらなかったら、どうなりますか?」この質問に丁寧に答えてくれる医師が、あなたにとって信頼できる医師だ。
よくある質問(FAQ)
出典・参考
- 第44回日本美容皮膚科学会総会・学術大会 公式サイト. shun-convention.jp/bihifu44/
- 菊地克子大会長 会頭挨拶. shun-convention.jp/bihifu44/greeting.html
- オンデマンド配信セッション一覧(2026年8月4日時点). shun-convention.jp/bihifu44/docs/On-demand_session.pdf
- 菊地克子大会長 現地取材(NERO編集長・安達健一による音声取材)2026年8月2日・仙台


