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「適応外使用が増加している」をFDAが認めた──更年期女性のテストステロン治療に何が起きているのか

「適応外使用が増加している」をFDAが認めた──更年期女性のテストステロン治療に何が起きているのか
🌸 更年期・女性ホルモン・FDA
FDA OWH・CDER 公開ワークショップ 2026年9月17日

「更年期になって性欲が落ちた」
「テストステロンが低くなってきた」
こうした悩みを持つ女性は少なくないが、
少なくとも米国では、更年期女性に対するテストステロン療法のFDA承認適応がない。

その現状に対し、FDA(米国食品医薬品局)のOffice of Women's Health(OWH)と
Center for Drug Evaluation and Research(CDER)が
2026年9月17日に公開ワークショップを開催する。
タイトルは「Testosterone Use in Menopausal Women」(更年期女性におけるテストステロン使用)。

これは「FDAがテストステロンを承認しようとしている」という話ではない。
「何がわかっていないかを公開の場で整理して、将来の研究・薬剤開発の方向を探る」というのが公式の目的だ
(FDA公式ページより直接確認)。
「承認適応なし・適応外使用が増加」という現実がなぜ生まれたか、
そして何が「わかっていない」のかを整理する。

📋 この記事でわかること
  • 更年期女性にとってのテストステロン──なぜ関心が高まっているか
  • FDA公開ワークショップの概要・目的・コメント締切(FDA公式確認済み)
  • FDAが整理する8つの「知識ギャップ」──何がわかっていないか
  • 学会(NAMS・ISSWSH)はどう言っているか──HSDDを巡るエビデンス
  • 日本の状況──「女性のテストステロン」は保険適用がなく自費診療が主
  • 「女性版LOH」という言い方が不適切な理由

更年期女性にとってのテストステロン──
なぜ「承認適応なし・適応外使用が増加」という状況になったか

テストステロンは男性ホルモンというイメージが強いが、
女性の体内でも卵巣・副腎から分泌されており、
閉経・加齢とともに低下する。
FDA公式ページは以下のように説明している。

📖 FDA公式ページより(直接確認・要約)

「更年期は卵巣ホルモン(テストステロンを含む)の大幅な低下によって特徴づけられる。
更年期女性へのテストステロン療法の適応外使用(off-label use)が増加しているが、
重要な知識ギャップが残っている。
これらには、性機能・認知・気分・筋骨格への影響、テストステロン値の測定と解釈の難しさ、
とりわけ心血管リスクと乳がんリスクに関する長期安全性データの欠如が含まれる。」

※ FDAにはエストロゲン含有製剤と異なり、更年期女性向けのテストステロン療法のFDA承認適応はない(Federal Register確認)。

つまり現状は:
・女性のテストステロン低下は実在する
・需要があり、適応外で処方されている
・しかしFDA承認適応がなく、長期安全性データも十分でない
という「需要と制度の乖離」がある。
ワークショップはその乖離を公開の場で整理しようとしている。

ワークショップの概要──
何を議論するか・コメントはいつまで

FDA公開ワークショップ「Testosterone Use in Menopausal Women」(FDA公式ページより)
日時
2026年9月17日(火)9:00 a.m. – 4:30 p.m. ET
形式
ハイブリッド(対面:FDA White Oak Campus、Silver Spring, MD・オンライン:YouTube)
主催
FDA Office of Women's Health(OWH)・Center for Drug Evaluation and Research(CDER)
コメント
締切
2026年10月19日 11:59 p.m. ET
Regulations.govのdocket番号:FDA-2026-N-5479

FDA資料が示す論点をNERO編集部で8領域に整理──
何がわかっていないのか

FDA公式ページ・Federal Registerが示す論点をNERO編集部で8領域に整理した(FDAが公式に「8つ」と番号付きで提示しているわけではない)。

① 性機能(Sexual Function)──性欲・性的関心の低下(HSDD)以外での効果・性的満足度への影響
② 認知機能(Cognition)──記憶・実行機能・認知症との関係
③ 気分・精神面(Mood)──うつ症状・情動変動・生活の質
④ 筋骨格(Musculoskeletal Health)──筋肉量・筋力・骨密度への影響
⑤ 測定・解釈の難しさ(Measurement)──女性での正常値の定義・測定法の標準化がされていない
⑥ 心血管リスク(Cardiovascular Risk)──心筋梗塞・脳卒中リスクへの影響
⑦ 乳がんリスク(Breast Cancer Risk)──長期的な乳がん発症リスクのデータ不足
⑧ 長期安全性(Long-term Safety)──10年以上のデータが欠如

学会はどう言っているか──
HSDDへの効果とエビデンスの範囲

学会レベルでは、特定の適応について一定のエビデンスがある。

✅ 学会レベルで支持されていること
・NAMS(北米閉経学会)・ISSWSH(国際女性性健康学会)はHSDD(Hypoactive Sexual Desire Disorder・性的関心低下障害)と診断された閉経後女性に対するテストステロン治療をエビデンスに基づいて支持している
・2019年のグローバル合意声明(PMC掲載)も、HSDDへの使用を「唯一のエビデンスに基づく適応」としている
⚠️ 現時点でエビデンスが不十分な領域
・HSDD以外(認知・気分・筋骨格・活力向上等)への効果は確立されていない
・長期的な心血管リスク・乳がんリスクのデータが不足している
・これらの用途は現時点でエビデンスに基づく推奨の対象外だ

「女性版LOH」という言い方が不適切な理由──
NERO編集部の概念整理

SNSや美容クリニックの広告で「女性の更年期テストステロン低下=女性版LOH」
という表現を目にすることがある。
FDAや学会がこの言葉を使っているわけではないが、NERO編集部としてこの表現が不適切な理由を整理する。

⚠️ 「女性版LOH」が不適切な理由

LOH(Late-Onset Hypogonadism・加齢男性性腺機能低下症)は男性特有の診断概念だ。
男性ホルモン産生臓器(精巣・視床下部・下垂体軸)の加齢性低下という生理学的背景を持つ。
女性のテストステロン低下は、卵巣・副腎の機能変化による更年期の生理学的変化として理解されるべきものだ。
「女性版LOH」と呼ぶことで「テストステロン補充が当然必要」というニュアンスが生まれやすいが、
女性においてはHSDDの治療以外の適応が確立されていない事実とは乖離がある。

適切な表現:「更年期関連のテストステロン低下」または「更年期におけるアンドロゲン関連の変化」

日本の状況──
女性向けテストステロン治療は保険適用がなく、自費診療が主

日本でも一部で更年期女性へのテストステロン使用が語られている。
標準化された承認適応や保険診療の枠組みとして定着しているとは言いにくく、
自費・適応外使用の文脈で語られることが多い(一次情報での直接確認は別途推奨)。

💡 今回のFDAワークショップが日本に示すこと(NERO編集部の読み解き)

FDAのこの議論が日本の薬事審査・保険適用に直接影響を与えるわけではない。
ただし、FDA・EMAという2つの主要規制当局がデータを集め方向性を示すことで、
将来的に日本のガイドライン・診療指針に影響が出る可能性はある。

現時点で日本で「更年期テストステロン治療」を検討する女性が知っておくべきことは:
・保険適用がなく適応外使用であること
・HSDDへの効果はエビデンスがあるが、それ以外は確立されていないこと
・長期安全性(心血管・乳がん)のデータが不十分であること

NERO編集部の見解

FDAが今回の場を設けた理由は「エビデンスがまだ足りない」からだ。
更年期女性へのテストステロン使用への関心が高まっているが、
「需要がある=安全で有効」とはならない、という基本は変わらない。

医療提供者の視点では、HSDDへのテストステロン治療は学会レベルでエビデンスの整理が進んでいる領域だ。
一方「活力低下・認知・筋骨格」への効果は確立されたエビデンスがない。
適応外であることを明示した上で、リスク・ベネフィットを個別に議論できる診療設計が求められる。

まとめ

  • FDA Office of Women's Health(OWH)とCDERが2026年9月17日に「Testosterone Use in Menopausal Women」公開ワークショップを開催した。ハイブリッド形式(対面・YouTube配信)。コメントは2026年10月19日締切(Regulations.gov docket FDA-2026-N-5479)(FDA公式ページより直接確認)。
  • 米国には現時点で更年期女性向けのテストステロン療法のFDA承認適応がない。適応外使用が増加している中で、FDAが性機能・認知・気分・筋骨格・測定法・心血管リスク・乳がんリスク・長期安全性という8領域の知識ギャップを公開の場で整理しようとしている。
  • 学会(NAMS・ISSWSH・2019年グローバル合意)はHSDD(性的関心低下障害)と診断された閉経後女性へのテストステロン治療をエビデンスに基づいて支持している。ただしHSDDは「唯一のエビデンスに基づく適応」であり、それ以外(認知・活力等)は確立されていない。
  • 「女性版LOH」という表現は不適切だ。LOHは男性特有の診断概念で女性にそのまま適用できない。日本での女性向けテストステロン治療は保険適用がなく、適応外使用が主。今回のワークショップが日本の承認・保険適用に直接影響するわけではないが、将来のガイドライン策定への参照点になりうる(NERO編集部の読み解き)。
Q
「更年期でテストステロンが低い」と言われた場合、どうすればいいか?
まずテストステロン値の測定自体が女性では標準化が不十分で(FDAも「知識ギャップ」に挙げている)、「低い」の基準が明確でないことを理解しておく必要がある。「低いから補充する」という単純な図式はエビデンス上支持されていない。性欲低下(HSDD)や活力低下が主症状であれば、婦人科・更年期外来で他のホルモン(エストロゲン・プロゲスチン)との関係も含めて総合的に相談することを推奨する。テストステロン補充を検討する場合は「適応外使用」であること・長期安全性のデータが限られることを医師と十分に話し合ってほしい。
Q
FDAがワークショップをやると、承認が近いということか?
そうは言えない。今回のワークショップの目的は「現在の科学的エビデンスと知識のギャップを調査し、将来の研究と潜在的な薬剤開発の方向を探る」ことだ(FDA公式ページより)。承認の前提となる製品申請がされているわけでなく、FDAが承認を決定する場でもない。承認にはその後の申請・審査というプロセスが必要だ。ワークショップは「まず何がわかっていないかを公開の場で整理する」段階にある。

出典・参考文献

  1. FDA Office of Women's Health. "FDA Public Meeting: Testosterone Use In Menopausal Women - 09/17/2026." fda.gov(本記事の主要一次情報・直接確認済み)
  2. Federal Register. "Testosterone Use in Menopausal Women; Public Workshop; Request for Comments." federalregister.gov
  3. Global Consensus Position Statement on the Use of Testosterone Therapy for Women (2019). Journal of Sexual Medicine. PMC6821450(★ PMCアクセス番号は投稿前に直接確認推奨)
安達健一

安達 健一

NERO DOCTOR/BEAUTY 編集長

日本・米国看護師(BSN)・MBA保有。世界の一次医療データをもとに監修。広告主からの影響を受けない独立した編集方針を貫いています。