医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)2026年10月1日施行
「このクリニック、ちゃんとした医師がいるのか?」
「万が一合併症が起きたとき、どこに相談すればいいのか?」
美容医療を受ける前に、そう思う人は少なくない。
しかしこれまで、美容医療の安全管理体制を患者が比較可能な形で定期的に把握しやすくする仕組みは限定的だった。
2026年10月1日、美容医療の自由診療にも「可視化」の仕組みが入る。
「医療法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第87号)に新設された
医療法第6条の12の2が施行され、
美容を目的とした医療を行うクリニックに定期報告義務が課される。
これは罰則的な「摘発」ではない。
しかし、美容を目的とした一定の医療について、安全管理体制等の定期報告と一定事項の公表という新しい枠組みが入ることを意味する。
何が変わり、患者にとって何を意味するかを整理する。
- ✦美容医療の定期報告義務とは何か──根拠条文・施行日・対象機関
- ✦何を報告するのか──省令で定める事項と検討会報告書ベースで想定される内容
- ✦都道府県の公表義務と是正命令権限
- ✦「摘発」ではなく「可視化」という制度設計の意味
- ✦【患者・クリニック双方への示唆】この制度を使って何を確認できるか
INDEX
定期報告義務の根拠条文を確認する──
医療法第6条の12の2(新設)の核心
令和7年12月12日付の厚生労働省通知(医政発1212第2号)に収録された改正内容によれば、
新設された医療法第6条の12の2は以下を定めている(条文の趣旨・要約)。
報告義務者:
「美容を目的として人の皮膚若しくは歯牙を清潔にし、若しくは美化し、身体を整え、又は体重を減ずるための医学的処置、手術及びその他の治療を行う病院又は診療所」の管理者(省令で対象を定める)
報告先:
都道府県知事(診療所にあっては、保健所を設置する市の市長または特別区の区長)
報告内容:
「医療の安全を確保するための指針の策定その他の措置の状況その他の医療の安全の確保のために必要な情報として厚生労働省令で定める事項」
公表義務:
都道府県知事は、報告された事項のうち「医療の安全の確保のために特に必要な事項として厚生労働省令で定めるもの」を公表しなければならない
是正命令:
都道府県知事は、報告しない・虚偽の報告をした場合に開設者に是正命令を出すことができる
具体的に何を報告するかは厚生労働省令で定められる。現時点では確定していない部分があり、
記事内の詳細は「検討会報告書ベースで想定される内容」として記載している。省令の確定内容は今後の公表に注意が必要だ。
何を報告するのか──
検討会報告書ベースで想定される内容
厚労省の検討会報告書(mhlw.go.jp/content/11201250/001337817.pdf)をベースにした
想定される報告内容は以下の通りだ(省令確定前の参考情報)。
「摘発」ではなく「可視化」──
この制度設計の意味を読む
この制度の設計思想を正確に理解することが重要だ。
・都道府県が「特に必要な事項」を公表することで患者が参照できる
・報告しない・虚偽報告のクリニックに是正命令を出せる
・「どのクリニックが報告しているか」の把握が可能になる
・報告内容の真偽を行政が個別に検証する体制が即座に整うわけではない
・公表される情報の範囲・形式は省令・各都道府県の対応で異なる可能性がある
・施術の質・医師の技術レベルを直接評価する指標ではない
重要なのは、「行政の目が届かない場所」だった自由診療美容医療に、
初めて定期的な報告・公表の仕組みが入るという構造変化だ。
これは短期的な摘発装置ではなく、「安全情報の可視化」という中長期的な仕組みの始まりと読むべきだ。
【患者・クリニック双方への示唆】
この制度を使って何を確認できるか
都道府県が公表する情報を確認する
公表の具体像は省令・各都道府県の対応次第だが、公表内容によっては「このクリニックは報告しているか」を比較しやすくなる可能性がある
カウンセリングで「合併症対応の連絡先はどこですか?」と聞く
報告が義務化される方向にある項目に「合併症・後遺症時の患者相談連絡先」が含まれる(検討会報告書より)。聞いても答えられないクリニックは体制整備が不十分な可能性がある(NERO編集部の読み解き)
「担当医の専門医資格は何ですか?」と聞く
医師の専門医資格の有無も報告対象となる見通し。施術前に確認する習慣を持つことが自衛になる
今回の改正は、美容医療業界に「外から見える情報を整備する義務」が初めて入ったという意味で画期的だ。
しかし実効性はこれからだ。
・省令で確定する報告項目の具体性
・各都道府県がどの情報をどのように公表するか
・是正命令がどのような基準で発動されるか
これらが「制度として機能するか」の鍵になる。
NEROは今後の省令策定・各都道府県の公表状況を引き続き追う。
まとめ
- ✦「医療法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第87号)に新設された医療法第6条の12の2が2026年10月1日に施行される。美容を目的とした医学的処置等を行う病院・診療所のうち厚生労働省令で定めるものの管理者に、都道府県知事等への定期報告義務が課される枠組みだ(一次情報:厚労省通知・医政発1212第2号・2025年12月12日)。
- ✦報告内容の詳細は「省令で定める事項」のため未確定。検討会報告書が提言する内容としては、年1回・安全管理措置の実施状況・医師の専門医資格の有無・合併症時の患者相談連絡先などが挙げられているが、確定は省令の公表を待つ必要がある。
- ✦都道府県知事には「特に必要な事項」の公表義務と、虚偽・不報告のクリニック開設者への是正命令権限が付与される。「報告した=安全が保証される」わけではないが、自由診療美容医療に初めて定期的な可視化の仕組みが入ることの意義は大きい。
- ✦患者にとって今すぐ使えるアクションは「合併症・後遺症時の相談窓口はどこか」「担当医の専門医資格は何か」をカウンセリングで確認すること。これらは報告義務の対象として想定されており、答えられないクリニックは体制整備が不十分な可能性がある(NERO編集部の読み解き)。
出典・参考文献
- 厚生労働省. 「医療法等の一部を改正する法律」の公布及び一部施行について(通知). 医政発1212第2号. 令和7年12月12日. mhlw.go.jp(本記事の主要一次情報・直接確認済み)
- 厚生労働省. 「良質かつ適切な美容医療を提供する体制の確保を図るための検討会」報告書. mhlw.go.jp/content/11201250/001337817.pdf


