矢野経済研究所 プレスリリース No.4184 / 2026年9月10日発表
2025年、日本の美容医療市場は過去最高を更新した。
矢野経済研究所が2026年9月10日に発表した推計によれば、
2025年の国内美容医療市場規模は前年比102.1%・6,440億円(医療施設収入高ベース)だ。
ただし、矢野自身がプレスリリースで書いた言葉に注目したい。
「低価格施術によって実現した市場の裾野拡大が一巡」──
過去最高更新なのに、これが「注目トピック①」として真っ先に来ている。
これは「市場が止まった」という話ではない。
低価格施術による裾野拡大だけでは伸びにくい段階に入りつつある──矢野はそう読み取れる表現を使っている(NERO編集部の読み解き)。
成長率推移を並べると、その変化は数字にも明確に出ている。
- ✦2025年市場規模6,440億円の数字をどう読むか──成長率鈍化の意味
- ✦矢野が挙げた3つの注目トピック:低価格施術一巡・韓国勢台頭・男性需要
- ✦「拡大から選別へ」──日本市場が次に競うべき軸
- ✦市場成熟と規制強化が同時進行している構造的な意味
- ✦患者・受診者にとってこの変化が何を意味するか
INDEX
成長率推移を並べると見えてくること──
8.8%→6.2%→2.1%という減速
矢野経済研究所の過去プレスリリースと今回の発表を並べると
成長率の減速は明確だ(各年版矢野プレスリリースに基づく・推計値)。
最高値は更新した。しかし成長率は3年で8.8%→6.2%→2.1%と
明確に減速している。
これは「市場が崩れた」のではなく、
低価格施術を軸にした成長エンジンに減速感が出ている段階だと読める(NERO編集部の読み解き)。
矢野が示した3つの注目トピックを読む──
これは「業界への診断書」だ
今回の矢野プレスリリース(2026年9月10日)が「注目すべき動向」として挙げた3点は、
業界の現在地を非常に正確に射ていると思う。
「まずは安く、とにかく来てもらう」というモデルで市場を広げる時代が終わった。
2024年には大手医療法人の倒産もあったが、他の大手や新規参入施設が需要を吸収し市場全体は拡大した(矢野2025年版)。
「価格での差別化」だけでは競争が難しい市場になりつつある。
韓国発の施術・医療施設の存在感が高まっている。
日本市場においてK-beautyとの競合関係が進む傾向がある(NERO編集部の読み解き)。
男性需要の拡大は2024年・2025年調査から継続トレンドとして挙げられている。
脱毛・ニキビ跡・AGA・ボツリヌス製剤など男性向けの入口が広がりつつある。
女性主導だった市場に新しい層が加わってきている。
「ここ3年の流れ」を整理すると──
SNS拡大→価格競争→飽和→次のフェーズ
2023〜2024年:SNSで関心喚起→低価格で初回流入→非外科処置の一般化
キーワード:心理的ハードル低下・再生医療施術の増加・オンライン診療の増加・韓国発素材の流通
2025年:裾野拡大の一巡・大手倒産も・韓国系施設の参入・男性需要の本格化
キーワード:「量の競争」の終焉・次の差別化軸を探す段階
2026年以降(矢野の将来予測):高齢者・男性・インバウンド・リピート率向上が成長源
キーワード:「誰をターゲットにするか」「どう再来院させるか」の戦略競争
市場成熟と規制強化が同時進行──
「拡大しながら透明化が始まった」という現在地
矢野の市場データと並べて重要なのが、
2026年10月1日から施行される医療法第6条の12の2(美容医療機関の定期報告義務)だ
(NEROによる別記事参照)。
・美容医療での健康被害相談が増加している
・カウンセラー主導で治療内容が決まる事例がある
・医師の知識・技能・経験不足に起因すると考えられる被害が発生している
・患者がSNSやネット経由で情報を得る一方で、正確な情報が行き渡っていない
つまり行政の見立ては「量的拡大に対して安全管理と情報の質が追いついていない」だ。
市場は拡大している。しかし行政は「野放しの成長をそのまま認めない」方向に動き始めた。
この対比が、2026年の日本の美容医療の「現在地」を最も鮮明に示している。
消費者は何を基準にクリニックを選んでいるか──
「価格が明瞭」が上位に来る理由
矢野経済研究所の別立て消費者調査(2025年版)によれば、
施設選択理由の上位は「価格が明瞭」「場所がよかった」だった。
美容医療を受けた・受けたい理由の上位は「コンプレックスの解消」「老化予防」「自己肯定感の向上」。
情報源はクリニックのHP・比較サイト・ネット記事が上位で、若年層はXなどSNSが高い。
「価格が明瞭」を重視する消費者が多いということは、
価格の不透明さへの警戒感が背景にある可能性を示している。
厚労省の検討会報告書が指摘する「カウンセリング主導の治療内容決定」などへの問題意識とも符合する。
低価格競争が終わる中で、「安さで選ぶ」から「わかりやすさと信頼で選ぶ」への
消費者行動の変化が起きつつある。
次に生き残るクリニックは「価格が安い」より「価格が明瞭で説明が誠実」なクリニックだという仮説が立つ。
「最高値更新」という数字だけに注目するより、矢野が「裾野拡大が一巡」と書いた表現の方が重要だ。
低価格施術を軸にした成長に減速感が出ているとすれば、
次に何を競うかを明確にしているクリニックとそうでないクリニックの差が、これから数年で開いていく可能性がある。
クリニック経営の視点では、市場の伸びが2.1%に鈍化したという事実は
「新規患者獲得より既存患者のリピート率向上」を設計に組み込む必要性が高まったことを示している。
リピート率・患者満足度・安全管理への投資が経営の次の核心になるという読みは、矢野の将来展望(「既存患者のリピート率向上」)とも整合している。
まとめ
- ✦矢野経済研究所は2026年9月10日、2025年の国内美容医療市場規模を前年比102.1%・6,440億円と推計した(医療施設収入高ベース・民間調査推計)。過去最高を更新したが、成長率は2023年108.8%→2024年106.2%→2025年102.1%と3年連続で鈍化している(プレスリリース No.4184・直接確認)。
- ✦矢野が挙げた2025年の注目トピック3点:①低価格施術と積極マーケティングによる裾野拡大の一巡②韓国発の美容医療施術・医療施設の台頭③男性の美容医療需要の拡大。将来展望として「高齢者・男性需要拡大・インバウンド・リピート率向上を背景に微増傾向」と予測している。
- ✦医療法第6条の12の2(美容医療機関の定期報告義務)が2026年秋に施行予定だ。市場拡大と規制強化が同時進行しているのが2026年の日本の現在地だ。「量的拡大に対して安全管理と情報の質が追いついていない」という厚労省の問題意識と、市場の成熟局面入りが重なっている。
- ✦消費者調査(矢野・2025年版)では施設選択理由の上位が「価格が明瞭」だ。「安さ競争の終焉」×「価格の透明性への需要」という構造は、「価格が安い」より「価格が明瞭で説明が誠実」なクリニックが次の競争で選ばれる、という方向を示している(NERO編集部の読み解き)。
出典・参考文献
- 矢野経済研究所. 「美容医療市場に関する調査を実施(2026年)」. プレスリリース No.4184. 2026年9月10日. yano.co.jp(本記事の主要一次情報・直接確認済み)
- 厚生労働省. 「美容医療の適切な実施に関する検討会 報告書」. mhlw.go.jp
- 矢野経済研究所. 「美容医療市場に関する調査を実施(2025年)」. プレスリリース. 2025年6月. yano.co.jp(2024年・2023年成長率の確認に使用)

