ニオイや性交時の痛み、かゆみ、尿漏れなど、女性が抱えるデリケートゾーンの悩みはさまざま。症状によって原因は異なりますが、以前よりもデリケートゾーンのニオイや痛みが強くなってきた場合には、膣萎縮が関係している可能性があります。こちらの記事では、膣萎縮の症状や原因、治療法についてご紹介。自宅でできるケアや美容医療でアプローチする方法についてもお伝えします。「これ以上悪化させたくない」方は、ぜひ目を通してみてください。
INDEX
1.膣萎縮(萎縮性膣炎)はどんな病気?
まず膣萎縮の症状や原因、治療法について詳しくお伝えします。
■膣萎縮の症状
膣萎縮とは、加齢に伴って陰部が乾燥・萎縮すること。萎縮性膣炎や老人性膣炎と呼ばれることもあります。女性ホルモンの分泌量が減る更年期以降に起こりやすい病気です。
膣萎縮の症状は、陰部の痛み(ヒリヒリ・性交痛など)、感度の喪失、おりものの異常、かゆみ、悪臭など多岐にわたります。
ただし個人差があるため、更年期を迎えるすべての女性に症状が見られるわけではありません。中には、ちょっとした陰部の違和感程度に留まる方もいるでしょう。しかしその一方で、性交時に出血したり下着を着けられないほどの強い痛みを感じたりするケースも。異常を感じた場合には、放置することなく適切な治療を受けると良いでしょう。
■膣萎縮が起きる原因
膣萎縮の原因は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少すること。エストロゲンには、膣粘膜のうるおいや弾力を保つ作用があります。
しかし、エストロゲンは年齢とともに分泌量が低下。膣内はみずみずしさや弾力性を失い外傷を受けやすい状態に変化します。また、自浄作用のあるおりものが減少することで、膣内環境も悪化。かゆみやおりものの異常、悪臭などの炎症を引き起こすことが分かっています。
■膣萎縮の一般的な治療法
デリケートゾーンにニオイや痛み、かゆみといった異常が現れた際には、まずは婦人科の医師に相談するようにしましょう。一般的な萎縮性膣炎の治療には、以下のような方法があります。
ステロイド軟膏の塗布
萎縮性腟炎の治療薬には、ステロイド軟膏が用いられることがあります。かゆみや炎症が見られる場合に、とくに効果的です。
市販品の中にもかゆみに効く外用薬はありますが、自己判断での使用はNG。デリケートゾーンのかゆみを引き起こしている原因が、本当に萎縮性膣炎かどうかが分からないためです。ほかの病気の可能性を除外するという意味でも、まずは医師の診察を受けるようにしましょう。
膣内洗浄
エストロゲンの分泌低下の影響を受け、萎縮性膣炎だけでなく細菌性膣炎(細菌性膣症)を引き起こすことがあります。これは、膣内環境を正常に保つラクトバチルス菌が、エストロゲンとともに減少するため。雑菌が増殖した状態の細菌性膣炎には、膣内洗浄で細菌を除去する治療が施されます。
膣錠による抗生物質の投与
細菌性膣炎を併発している場合では、膣内洗浄のほかに抗生物質の膣錠が投与されることがあります。症状や原因菌に応じて、医師が必要な薬を判断します。
女性ホルモン補充療法
女性ホルモン補充療法は、内服薬や外用薬を用いてエストロゲンを補う治療法。症状や体調に合わせて使用する薬剤は異なりますが、効き目に大きな違いはありません。女性ホルモンを投与すれば、一般的に数週間~数ヶ月で萎縮性膣炎の症状は和らぎます。
2.膣萎縮(萎縮性膣炎)を放置するとどうなる?自然に治る可能性は?
膣萎縮は治療を受ければ症状の改善が見込める病気です。しかし、恥ずかしいからという理由で受診をためらう方も少なくはありません。ここでは、膣萎縮を放置したときのリスクについてお伝えします。
■膣萎縮が自然に治ることはない
結論からいうと、膣萎縮が自然に治ることはありません。萎縮性膣炎は、エストロゲンの分泌量が低下することで引き起こされる病気です。年齢とともに減少するエストロゲンは、放置しても増えることはありません。それどころか症状の悪化に伴って、膀胱炎や頻尿を併発する可能性も。閉経を迎えた女性が膣萎縮で悩むケースは少なくありません。決して恥ずかしい病気ではないため、勇気を持って医師の診察を受けると良いでしょう。
■膣萎縮を治す市販薬はない
市販薬の中には、膣萎縮のかゆみを緩和するものもあります。しかし、それはあくまでも対症療法です。膣萎縮自体を改善する効果は期待できません。状態や原因に合わせた治療を行うには、まずは萎縮性膣炎の診断を受けることが大前提です。痛みや悪臭といったつらい症状を伴う場合には、早めにかかりつけ医に相談するようにしましょう。
■膣萎縮は若い女性でも発症することがある
膣萎縮は更年期を迎えた女性に多い病気ですが、早期閉経や卵巣摘出などでエストロゲンが欠乏している場合には若くても発症することがあります。中でも月経不順や長期間低用量ピルを内服している方、喫煙習慣がある場合は要注意。若い女性が膣萎縮を患った場合には、性生活に影響を及ぼすだけでなくさまざまな感染症を引き起こすリスクが高まります。デリケートゾーンの状態に異常を感じた場合には、年齢に関係なく婦人科への受診をご検討ください。
3.膣萎縮(萎縮性膣炎)を自宅でケアする方法は?
萎縮性膣炎を自分で治すことはできませんが、症状を和らげる方法はあります。
■エクオール含有食品(サプリメント)の摂取
近年の研究で、大豆に含有されるイソフラボンは腸内細菌の働きによりエクオールという物質を産生することが明らかとなっています。エクオールは女性ホルモンとよく似た働きを持つ物質。そのため、体内でエクオールの生成が盛んに行われれば、萎縮性膣炎の症状が和らぐ可能性があります。
しかし、日本人の約半数は大豆イソフラボンからエクオールを産生する力が乏しいとされています。そこで、適しているのがサプリメントでエクオールを補う方法。一定期間の服用で更年期症状に効果を発揮することが分かっています。薬で女性ホルモンを補充することに抵抗がある方や、まずは自宅でのケアをお探しの方にぴったりです。
■クリームによる保湿
クリームによる保湿も、自宅でできるケアの1つ。膣を洗浄したあとは、市販のデリケートゾーン専用クリームやワセリンなどで、丁寧に保湿してみましょう。膣にうるおいを与えることで、乾燥によるかゆみや不快感が軽減する可能性があります。
■潤滑ゼリーの活用
膣の乾きが原因で性交痛を感じる場合には、潤滑ゼリーが有用です。潤滑ゼリーはさまざまなタイプが市販されています。パートナーにも協力してもらいながら、2人に合うアイテムを探してみてください。
4.膣萎縮(萎縮性膣炎)に有用な美容医療
難治性の膣萎縮には、美容医療でアプローチする方法もあります。
■レーザー治療
レーザー治療は、デリケートゾーンに炭酸ガスレーザーを照射し、ふっくらとした膣壁へと導く施術のこと。コラーゲンの生成が促されるため、膣の老化に伴う女性特有の症状を和らげる効果が期待できます。
施術時間は5~10分程度で、痛みやダウンタイムはほとんどありません。当日の入浴と術後3日間の性交渉を控える以外に日常生活での制限はなく、手軽に受けやすいのがメリットです。1度の施術でも効果を実感できる可能性はありますが、2~3回繰り返せばさらに持続するでしょう。
■ペプチド療法
ペプチド療法とは、ペプチドという短鎖のアミノ酸で構成される分子を用いて行う治療のこと。ペプチドは体内で自然に発生する物質で、ホルモンや神経伝達、成長因子といったさまざまな生理活性作用を持ちます。
ペプチド療法では、このようなペプチドの働きに着目。内服や点鼻薬などでペプチドを投与すれば、ホルモン分泌を促すほか疲労回復や筋力アップにも効果が見込めると考えられています。興味がある方は、ペプチド療法を取り入れているクリニックで相談してみると良いでしょう。
■まとめ
膣萎縮は、女性なら誰にでも起こる可能性がある病気です。適した治療を受ければつらい症状を和らげる効果が期待できるため、悩まれている方はまずは婦人科の医師に相談することをおすすめします。そのうえで、効果が見込めないような難治性の膣萎縮には美容医療で治療を受けるという選択も。センシティブな問題だけに相談しにくいかもしれませんが、自分に合った治療法を見つけるためにも信頼できる医師に悩みを打ち明けてみてください。
・当サイトは、美容医療の一般的な知識をできるだけ中立的な立場から掲載しています。自己判断を促す情報ではないことを、あらかじめご了承ください。また、治療に関する詳細は必ずクリニック公式ホームページを確認し、各医療機関にご相談ください。
・本記事は、執筆・掲載日時点の情報を参考にしています。最新の情報は、公式ホームページよりご確認ください。
・化粧品やマッサージなどが記載されている場合、医師監修範囲には含まれません。