Beauty Tuning Clinic~美容調律診療所~ 院長 西田 美穂先生へインタビュー。外見を作り変えるのではなく、本来の個性を活かして表情筋を調律する“ボトックスチューニング”。福岡・天神にある「Beauty Tuning Clinic~美容調律診療所~」では、患者様の生まれ持った美しさを活かしながらオーダーメイドのボトックス治療を提供しています。今回は、ボトックスチューニングの生みの親である院長・西田美穂先生へインタビュー。ボトックスへの深いこだわりや今後の美容医療の展望について伺いました。
INDEX
ドクターズプロフィール
Beauty Tuning Clinic~美容調律診療所~ 院長
西田 美穂(にしだ みほ)先生
「聖マリア病院」での研修中に昭和大学形成外科チームの手術に立ち会ったことをきっかけに、昭和大学形成外科へ入局。形成外科医として研鑽を積み、福岡県の「川崎病院」では形成外科部長を務める。それと同時期に美容クリニック「見寺絢子クリニック」で非常勤医師として勤務し、美容医療の面白さに目覚める。「Beauty Tuning Clinic〜美容調律診療所〜」を開院し、表情筋を“調律”するボトックス治療法「ボトックスチューニング(BTX-TUNING®)」を提供している。
(経歴) 2000年 宮崎医科大学 卒業、昭和大学形成外科 関連施設研修 2006年 川崎病院(福岡県八女市)形成外科部長 2011年 見寺絢子クリニック(福岡市中央区天神) 2016年 福岡大学博多駅クリニック 美容・形成外科主任 2018年 Beauty Tuning Clinic〜美容調律診療所〜 設立 (資格・所属) 日本形成外科学会認定専門医 日本抗加齢医学会認定専門医 日本美容外科学会正会員 日本美容皮膚科学会正会員 |
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医師としての背景 ~きっかけは祖母の介護、医療業界を変えたいと医師の道へ~
―――まずは、医師を目指したきっかけについて教えてください。
医師を志すようになったのは、私が小学生の頃、祖母が病気になったことがきっかけです。当時、母が祖母の介護のために病院へ通うのによくついて行っていました。その頃の母からは、病院の対応や治療内容に対する不満をよく聞かされていて。病院にはお世話になっていると分かっていつつも、祖母の入退院が繰り返されるたびに翻弄され、苦労している母の姿を見ていたら、だんだんと「祖母や母が苦しめられた医療の現状をなんとかしたい」と思うようになりました。そしてその頃の私は、「医療業界を変えられるのは医者しかない」という考えだったんです。
―――その後、医者になりたいという想いがブレることなく宮崎医科大学(現:宮崎大学)へと入学。卒業後は形成外科医の道へ進まれていますが、そのきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけは、大学卒業後、研修医時代に東京の昭和大学形成外科チームと出会ったことです。私は福岡県の「聖マリア病院」でスーパーローテート研修*を受けたのですが、その一環で麻酔科に在籍していたとき、医局に派遣されていた昭和大学形成外科チームの手術に立ち会う機会がありました。そのチームは、当時の形成外科業界の中でも中心的存在で。そんな“一流”の手術を目の当たりにしたことで、『私もこうなりたい』と形成外科医に強く憧れたんです。その後は、しっかり学びたいという想いで昭和大学形成外科へ入局しました。
*スーパーローテート研修…必修科目(内科・外科・小児科・産婦人科・精神科・救急・地域医療)と選択科目を回りながら、2年にわたって臨床研修を行っていく方式のこと。
美容医療への情熱 ~患者様の人生が今より楽しくなるサポートがしたい~
―――どのような経緯で、美容医療の道へ進まれたのでしょうか?
昭和大学で学んだあとは、形成外科医としてさまざまな関連病院や関連施設を転々としていました。そのうちの1つである「川崎病院」では形成外科部長を務めていたのですが、それと同時期に博多にある「見寺絢子クリニック」へ週に1回、勉強とアルバイトを兼ねて通わせてもらっていました。そこで、美容医療の世界の面白さを知ったんです。
―――西田先生が感じられた“美容の面白さ”について詳しく伺いたいです。
形成外科医の私が見てきたのは、病気や外傷、先天性の奇形などだったので、シミやシワを改善する美容医療に本格的に携わったのは「見寺絢子クリニック」が初めてでした。そのとき知ったのは、ヒアルロン酸やボトックスの面白さ。シミが消えたり、肌がきれいになったりしたとき、患者様が「ありがとう」と喜んでくれるのはとても嬉しかったですね。
それまでの自分が携わってきた形成外科治療とは違って「健康な人への治療というのはどうなんだろう?」と葛藤したこともありました。命を救える医者というのは尊い仕事だと思っているので。でも、例えば「シミのせいでお出かけが楽しくない」「鏡を見たくない」という方が、シミがなくなることで人生が楽しくなるなら、その役に立てるのはとても面白い仕事だと思うようになりました。
―――美容クリニックの開業はどのような想いから目指されたのでしょうか?
「見寺絢子クリニック」でそのまま働き続ける道もあったのですが、美容医療の世界に入ってから私の中にはいずれ開業したいという想いがずっとありました。宮崎医大の同級生でもある夫が形成外科研修を経て美容外科医として働いていたため、自分たちの理想とするクリニックを作りたいという想いから、彼と何度も話し合いました。
そうした中で、彼と共通する『本来人は美しい。その美しさに対して過剰な美容医療を行うことは、かえって美しさを損なってしまう。加齢などによって出た不調に対し、なるべく大ごとせずに本来の美しさを取り戻すような美容医療が我々の理想である』という想いのもと、自分達の理想のクリニック開業を目指すようになりました。
―――開業のためにさらなる美容医療のスキルアップを目指されたとのことですが、当時の話を詳しく聞かせてください。
開業に向けてさらなるスキルアップを目指す中で私に足りないと気づかされたのは、美容医療のスキルもですが、“自由診療を提供するうえでの倫理観”。ビジネスに重きを置きすぎることで、肝心の医療を見失ってはいけないと思い至ったんです。
そんな中、「福岡大学博多駅クリニック」で美容・形成外科主任のお話をいただきました。大学病院のクリニックで行われている美容医療は、確かなエビデンスがあり、安全性が確立されている治療を提供するというスタンス。これが私の性にも合っていました。こういった“医者としての倫理を守りつつ、承認や国の制度といった範疇の中で美容医療を行っていく”というやり方を学び直せたことがとても良かったと思っています。
西田美穂先生の強み ~革新的な治療法“ボトックスチューニング”の誕生~
―――西田先生といえばボトックスへの深いこだわりと探求心にいつも驚かされます。ボトックスに興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけとなったのは、「川崎病院」に勤務しているときに出会った1人の男性患者様ですね。その男性は普段車いすで生活されていて、私はお尻の床ずれ治療を担当していました。あるとき、その男性が「俺は顔がずっとしかめっ面で怖いのを何とかしたいんだ」とおっしゃったので、私はボトックスをおすすめしました。そして、そのまま私がその男性へボトックスを打つことになったんです。施術から二週間後、その男性が来院されたときに「今まで何か手伝いましょうか?と話しかけられることなんてなかったのに、最近は声を掛けられることが増えたよ」と話してくださって。それは、きっとボトックスによって眉間のシワがなくなり、顔全体が優しい顔つきになったからだと思うんですね。でも、当時の私には「なんでボトックスを打ったのは眉間なのに顔全体が変わるんだろう?」と理解できなくて。
そこから勉強して、表情筋は感情を表現するために顔全体でさまざまな筋肉が一緒に動くこと、ボトックスはそこに対してダイナミックな制御ができるということが分かり、すごく面白いなと思いましたね。ただ、ボトックスをメインで開業してもやはり患者様は集まりにくいだろうから、最初はできる治療は何でもやるつもりで開業しました。開業当初は、形成外科の保険診療も行っていました。
―――その後、どのようにボトックスをクリニックのメインとして打ち出すことに成功されたのでしょうか?
開業した直後は保険診療だけでなく、女性で外科医ということを活かして女性器治療なども行い、積極的に宣伝していたのですが、その一方で『お試しボトックス』というのをやっていました。一度お試ししてもらえたらきっと良さが分かってもらえると思い、そのために初回は安くしたんです。そうすると、実際にボトックスを打った方の9割ぐらいが、リピートしてくれるようになりました。
―――西田先生独自の“ボトックスチューニング”という治療法は、どのように作り上げられていったのでしょうか?
まず、ボトックスへの固定概念みたいなものを変えたいという想いがありました。ボトックスには『顔がこわばる』『能面みたいになる』というマイナスイメージもあると思います。しかし、実際はむしろ逆で、ボトックスを打つことで顔全体のこわばった表情筋を調整できるんですね。
私は、顔全体の表情筋を調律することでより魅力的な顔つきにできる、というボトックスの新たな価値を知ってもらいたいと考えました。そして、ボトックスのことを“一部のシワをとる注射”と言いたくなかったので 、表情筋を調律するという意味を持たせた“ボトックスチューニング”という名前にしました。
多くの美容クリニックでは、患者様から「額のシワをとりたい」と言われたら額にボトックスを打つというのが一般的。でも、額のシワを引き起こしているのがまぶたのたるみだったとしたら、患者様の本当に求めていることはまぶたのたるみ治療だと思うんです。さらにいえば本当に改善するのは眉間のシワだけで良いのか、全体の表情にとって必要な治療が他にないかどうか、ここまでを分析し、患者様へ伝えることが私の仕事だと思っています。
美容医療業界の今後の課題 ~必要なのは医者の倫理観と向上心~
―――西田先生の考える美容医療業界のこれからの課題を教えてください。
医師の勉強不足は、昨今の美容医療業界の課題だと感じています。かつて日本でボトックスが今ほど普及しておらず、医師がアメリカの製剤を個人輸入していた頃は、アメリカ式の施術が行われていました。つまり日本人向けではなかったので「ボトックスを打ったら失敗した」という人も多くいたんですね。それが今、長い時間をかけてようやく日本人向けの製剤や施術方法へ改善されつつあるのですが、医者の知識や技術はそれほど進歩しているように思えません。例え、ボトックスが上手くいかなかったとしても「ボトックスとはそういうものだから」と、自分の失敗に気づけていない医者も少なからずいるのです。
また、施術後のタッチアップ(経過観察・必要があれば追加施術)は、私のクリニックでは施術メニューとして用意していますが、メニューに含めていないクリニックも多くあります。タッチアップをしたほうが術後の小さな変化にも気づけますし、フィードバックもできる。それでも多くのクリニックで提供されていないのは、医師一人ひとりの方針というよりも、日本の美容医療としてシステムが整っていないからだと思っています。日本の多くの医師がボトックスに対して“もっとうまくするにはどうしたら良いのか”という発想にならないのも、こうした“施術して終わり”という環境に原因があると感じます。
読者へ向けて伝えたいメッセージ ~患者様に寄り添う姿勢を忘れずに~
美容医療とは“医療”なので、患者様を幸せにする、ということがやはり医者としての根本だと思います。ただ、美容医療の世界では利益追求の面が強く、医者として大事な部分を見失いやすいと思うんですね。もちろん、美容クリニックとして利益を得ることも重要ですが、自由診療には『自由』に伴って、診療する医師個人に責任が生じるため、医師として高い倫理観を保つ必要があると思います。
ただ、昨今では医者としての倫理観、価値観を学ぶ前に美容医療のビジネスの世界に飛び込んでしまう医者もいて。倫理観や価値観は医学部を出たからといって自然と備わるわけではなく、さまざまな患者様と向き合うことで身についていくものだと思います。そのステップを踏まずに美容医療の世界に行くことは、とても危険に感じます。
美容医療の世界を目指すのであれば、まず医者としての倫理観を育むトレーニングが必要。自分の中の倫理観を大切に、“医者としての魂”の部分を大事にしてもらいたいと思います。