ニキビ痕の治療として、ダーマペンやポテンツァ、フラクショナルレーザーなどが有名です。しかし深いクレーターに対しては、なかなか治療効果が望めません。TCAクロスは、ほかの治療で改善困難な深い肌の凹みに対して、効果が期待できる治療です。改善しにくいニキビ痕やクレーター・肌の凸凹をつるんと平坦にしたい方へ向けて、TCAクロスについて詳しく解説しました。
INDEX
1.TCAクロスとは?TCAピーリングとどう違う?ニキビ痕・クレーターの新治療
TCAクロスは、ニキビ痕などの肌の凹み・クレーターに対して高濃度の酸を塗布し、あえて皮膚を傷付けることで、皮膚の再構築を促す治療です。TCAクロスについて詳しく解説します。
■TCAクロスは高濃度トリクロロ酢酸を使用したクレーター治療
TCAクロスのTCAとは、トリクロロ酢酸(Trichloroacetic Acid)のことです。TCAクロスでは、肌の状態によって50~100%の高濃度トリクロロ酢酸を、肌の凹みやクレーターにピンポイントに塗布します。
トリクロロ酢酸は、皮膚に触れると化学反応を起こし肌の表面を破壊する、強力な作用のある酸です。破壊された皮膚組織は、自然治癒力によってコラーゲンを作り出し、傷を治そうとします。TCAクロスはその作用を利用して、凹んでいた部分に新たな皮膚組織を作らせることで、肌表面を平坦に近付ける治療です。
なおTCAクロスと似た治療に、TCAピーリングがあります。TCAピーリングもまったく同じ原理でニキビ痕やクレーターを改善する治療です。ただし違いは、トリクロロ酢酸の濃度にあります。TCAピーリングで使用されるトリクロロ酢酸濃度は、10~30%程度です。そのためTCAクロスは、TCAピーリングと比較して作用やダウンタイムが強い治療といえます。
■TCAクロスの施術方法
TCAクロスは強力な作用があるため、全顔に塗布する治療ではありません。頬や鼻、額などにある凹みに対して、ピンポイントに施術します。一般的な治療の流れは次のとおりです。
- 医師による診察・カウンセリングが行われます。
- 細い器具を使用して、治療したいニキビ痕や凹みにピンポイントにTCAが塗布されます。
- 塗布後10~15秒ほどで化学反応が起こり、患部が白く変化します(フロスティングといいます)。施術中は痛みや熱感を伴いますが、短時間のため麻酔は使用されません。
- 軟膏を塗布して施術が終了します。
2.TCAクロスはどんなニキビ痕におすすめ?
一口にニキビ痕といっても、赤みや色素沈着、肌の凹み(クレーター)、肌の盛り上がりなどさまざまな種類があります。TCAクロスは、その中で肌の凹み・クレーターに有用な治療です。
また肌の凹み方にも、深さや形によって大きく3つのタイプがあります。
アイスピック型 | ボックスカー型 | ローリング型 | |
特徴 | 肌表面の凹みは小さい点状だが、奥に深いタイプ。
治療が難しい。 |
「凹」の字のように、90度に近い形で凹んでいるタイプ。底面は平らなことが多い。
ニキビ痕として最も多い。 |
皮膚が下に引っ張られることで凹んでいるタイプ。肌表面は大きくくぼんでいるが、くぼみ方が滑らか。 |
深さ | 表皮・真皮層より深い
皮下組織 |
表皮~真皮層 | 真皮層 |
皮膚断面 | 円錐型で細く深い | 四角く底が平坦 | なだらかに陥没 |
TCAクロスは、高濃度の酸が肌の奥まで作用するため、上記の中でも、とくにアイスピック型の深いニキビ痕に対して効果が期待できる治療です。
3.TCAクロスのメリットは?他のクレーター治療との比較
ニキビ痕の治療はTCAクロスだけではありません。ニキビ痕・クレーター治療としては、ほかに「ダーマペン」「ポテンツァ」「フラクショナルCO2レーザー」「サブシジョン」などがあります。それぞれの特徴や一般的な適応を紹介しましょう。
※なお治療回数や費用、ダウンタイムは、肌の状態や治療内容によっても異なります。
ダーマペン | ポテンツァ | フラクショナル
CO2レーザー |
サブシジョン | TCAクロス | |
特徴 | マイクロニードルによって皮下を傷付けることで、コラーゲンの産生を促す。 | マイクロニードルとラジオ波によって肌の深層に熱エネルギーを届け、コラーゲンの産生を促進。 | 点状に照射したレーザーが、真皮層まで届くことで、治癒過程でコラーゲンの産生を促す。 | 皮膚を引っ張っている線維化した瘢痕組織を針で切り離し、凹みを改善する。 | 高濃度TCAが皮膚の表面で化学反応を起こし、治癒過程でコラーゲンを生み出す。 |
適応 | 浅いボックスカー型・浅いアイスピック型 | 浅いボックスカー型・浅いアイスピック型 | 浅いボックスカー型・アイスピック型 | ローリング型 | 深いアイスピック型・深いボックスカー型 |
費用
相場 |
全顔:15,000~100,000円
※併用薬剤によって差あり |
全顔:80,000~150,000円
※併用薬剤によって差あり |
全顔:20,000~110,000円 | 2cm×2cm:20,000~30,000円
(全顔:100,000円以上の場合も) |
円) |
治療
回数 |
5~10回 | 2~6回 | 5回 | 3~6回 | 2~6回 |
ダウンタイム | 3日~1週間程度 | 1週間程度 | 1週間~10日程度 | 1~2週間程度 | 1週間程度 |
TCAクロスは、ほかの治療で改善が困難な深いニキビ痕・クレーターに対して効果が期待できる点や、比較的安い費用で受けられる点がメリットです。
ただし多くの場合、1種類のニキビ痕だけではなく、さまざまなタイプのニキビ痕が混在しています。そのため、いずれか1つの治療ですべてのニキビ痕を解決することは難しいことを理解しておきましょう。
4.TCAクロス後の治療経過・ダウンタイム
TCAクロスは1週間程度のダウンタイムがあり、治療経過に注意が必要な治療です。治療後のトラブルを防ぎ、治療効果を最大限に発揮するためには、正しくアフターケアしなければなりません。
TCAクロスの施術後は、次のような経過を辿るのが一般的です。
- TCAクロスを行った部位は、しばらく白くなる(フロスティング)反応が起こります。また、痛みや赤みが数時間ほど続く場合があります。
- TCAクロス後に白くなった部位は、肌の状態によってはかさぶたにならない場合もありますが、数時間~2日ほどでかさぶたになるのが一般的です。
- 1週間程度でかさぶたは自然に剥がれ落ちるため、故意に剥がさないよう注意しましょう。無理に剥がした場合、傷痕が残る原因となります。
- かさぶたが剥がれた後は、赤みが1~2ヶ月残り、徐々にもとの肌になじんでいきます。
TCAクロスの治療後は、患部がかさぶたになるまではメイクができません。ダウンタイムがあるのが前提なため、事前に医療機関に相談し、計画的に施術を受けることが大切です。
5.TCAクロスの副作用・リスク
TCAクロスは化学的に肌にダメージを与える治療です。そのためTCAクロスによる副作用や失敗のリスクをゼロにすることはできません。TCAクロスによって起こりやすい副作用には、以下のことがあります。
炎症後色素沈着 | 酸により炎症が起こるため、メラニン色素が増生されて色素沈着(シミ)が起こる場合があります。通常は一時的ですが、目立たなくなるまでには3~6ヶ月程度必要です。 |
炎症後紅斑(赤み) | 炎症による赤みが長期間続く場合があります。一般的には2~3ヶ月で治まりますが、肌質によっては、赤みが半年~1年以上続く可能性があります。 |
色素脱失(白斑) | 治療部位が白くなったり、色が薄くなったりする場合があります。通常は一時的ですが、残る可能性も否定できません。 |
傷痕が広がる | 治療後にニキビ痕が広がる可能性があります。 |
感染症 | まれですが、治療後に感染症を起こす可能性も考えられます。 |
TCAクロスによってニキビ痕が悪化しないようにするには、適切な診断を受け、自分に適した方法で治療を受けることが大切です。ケロイド体質の場合や極端に肌が弱い場合など、肌質によっては副作用のリスクが高まる可能性があるため、あらかじめ医師に相談しましょう。
6.TCAクロスの治療間隔・回数
TCAクロスは、基本的には1回でニキビ痕をきれいに改善する治療ではありません。治療を繰り返すたびに、少しずつ肌の凹みを改善していくイメージです。強力な酸を使用するため、肌トラブルのリスクを抑えてニキビ痕を改善するためには、適切な治療間隔で複数回の治療を行う必要があります。
ニキビ痕の数や深さによって治療回数が異なりますが、2~6回程度が治療回数の目安です。ダウンタイムが過ぎて赤みなどの症状が落ち着いてから次の治療をするため、治療間隔は1ヶ月程度空ける必要があるでしょう。
治療回数や間隔は肌の状態によって個人差が大きいため、詳しくは主治医と相談してください。
■まとめ
TCAクロスは、比較的安価で、ほかの治療で改善が困難な深いニキビ痕やクレーターに効果が期待できる治療です。ニキビ痕にはタイプによってさまざまな治療方法があるため、クレーター治療で悩んでいる場合は自己判断で諦めず、医療機関に相談してみましょう。
なおTCAクロスを個人で購入し、セルフ施術するのは非常に危険です。重大な副作用や肌トラブルが起こるリスクがあるため、セルフTCAクロスは推奨できません。必ず医療機関のもとで受けるようにしましょう。
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