美容皮膚科や形成外科などでよく見かけるのが「ケロイド体質の方は施術を受けられない」という注意事項。美容医療を検討している方にとっては、気になる部分ではないでしょうか?本記事では「そもそもケロイド体質って?」という方のために、ケロイドの主な症状や見分け方を解説。ケロイドができたときの治療法についてもまとめました。「自分がケロイド体質かどうか確かめたい」という方は、ぜひ参考として読んでみてください。
1.ケロイド体質とは?
まずは、ケロイドとはどういう症状なのか、解説します。
■ケロイドとは?
ケロイドとは、傷が治るときにコラーゲンなどの線維成分が過剰に増殖し、赤く盛り上がった状態のこと。通常、皮膚にできた傷はおよそ2週間以内に治癒し、数ヶ月後には傷の周囲となじんで目立たなくなっていきます。しかし、その過程で傷が慢性化したり、正常に治癒しなかったりするケースも。そのうちの1つが、ケロイドと呼ばれる症状です。
■ケロイドになりやすいのはどんなとき?
ケロイドを発症しやすいのは、以下のような状態のとき。
- 傷が深い
- 傷が治るまでの時間が長い
- ケロイドができやすい部位(前胸部・背部・下腹部・耳など)に傷がある
- 緊張がかかりやすい部位に傷がある
- 妊娠している
- 高血圧
- 全身に炎症反応がある
- 過度の飲酒や運動によって血流が増加している
ただし、上記に当てはまれば必ず発症するわけではなく、ケロイドとして傷痕が残る方がいれば、きれいに治る方もいます。このように、ケロイドの発症には体質が関係しているとされる一方、どのような因子でその体質が決まるかはいまだ明らかになっていません。
現在、ケロイドの発症に関わっているとされるのは、「高齢になるにつれて発症率が下がる」「白人のほうが黒人よりも発症率が低い」といった年齢や人種、遺伝性、アレルギーの有無など。ケロイドの発症原因についてはまだ解明されていない部分も多く、現在も研究が進められています。
■肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)との違い
ケロイドとよく似た症状として、肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)があります。これらは同じものとして扱われることもありますが、正確には異なる症状です。
違いはさまざまありますが、大きく異なるのは瘢痕化による盛り上がりの範囲と痛みの強さ。ケロイドの場合は、もともとの傷痕の範囲を超えて赤く盛り上がり、痛みやかゆみが強いのが特徴です。一方、肥厚性瘢痕の場合は、赤い盛り上がりが傷痕の範囲を大きく超えて拡大することはありません。痛みやかゆみもケロイドよりは軽度でしょう。
また、ケロイドは治療が難航しやすいのに対し、肥厚性瘢痕は治療の効果が出やすいという違いもあります。ただし、実際にはケロイドと肥厚性瘢痕の中間のような症状も多くあり、判断が難しいようです。
2.ケロイド体質の見分け方
ケロイド体質の見分け方を紹介します。ただ、ケロイド体質の原因がまだ明らかになっていないため、あくまで参考に過ぎません。正しく判断したい方は、医療機関を受診することをおすすめします。
■アレルギーがある
医学的に立証はされていないものの、ケロイドは一種のアレルギーであり、アレルギー体質とケロイド体質に何らかの関係があるという説があります。実際に、ケロイドの治療薬として抗アレルギー薬が処方されており、症状の改善が確認されているようです。そのため、アレルギー疾患がある方は、ケロイド体質の可能性が高いかもしれません。
■ケロイド体質の家族・親族がいる
ケロイド体質には遺伝性もあるといわれているため、家族や親族にケロイド体質の方がいる場合には、自身にも受け継がれている可能性が高いです。ただし、ケロイドの発症には年齢や健康状態などさまざまな要因があり、遺伝によるものか判断しづらいのも事実です。
■手術痕ややけどの痕がケロイドになる
手術痕やケガ、やけどの痕がなかなか元の状態に治りきらず、赤く盛り上がる状態が繰り返されるようならケロイド体質の可能性が高いです。ニキビ痕が残りやすい方も要注意でしょう。ケロイド体質の方は、ピアスホールがケロイド化してしまうこともあるようです。
3.ケロイドの治療法は?注意点はある?
ケロイド体質の可能性が高い方は、不必要な手術や傷痕が残りやすい治療は避けたほうが良いでしょう。ただ、ケロイドはささいな傷でも発症する場合があります。そのため、ケロイドができやすい方は治療法について知っておくと安心です。
■保存的治療法
ケロイドの治療は、患部を切除せずに改善を目指す保存的治療から試みるのが一般的。以下に挙げたような治療法を組み合わせるケースが多くあります。
局所圧迫
患部の固定と安静を目的に、テープやスポンジ、サポーターなどを使って患部を圧迫します。
ステロイド局所注射
注射でステロイド剤をケロイド患部に直接注入し、盛り上がりの縮小化や痛み・かゆみの軽減を目指します。効果には個人差があり、1~2回で効果がみられる方もいれば、何度注射しても改善しない方も。また、治療開始してしばらくはケロイド部分が硬いことで痛みが強く出やすくなります。
外用療法
ステロイド含有テープやステロイド軟膏を患部に貼ります。ステロイド注射と比べて痛みがない点はメリットですが、その分効果は劣ります。
内服療法
「トラニラスト」抗アレルギー薬が保険適用で処方されます。この薬の効果は、痛みやかゆみなどの症状改善や切除手術後の再発抑制。そのため、ケロイド切除手術と併用されることが多い方法です。
レーザー治療
レーザー治療では、ケロイドの中の血管を破壊したり、異常に増加したコラーゲンの分解を促進させたりするものが一般的。2~4週間のサイクルで繰り返し治療を続けることで、改善を目指します。現在では自由診療のため、健康保険は適用されません。
■外科的治療法
ケロイドの多くは保存的治療法がとられますが、ケロイドの影響でひきつれを起こしていたり、見た目がかなり気になったりするようであれば、手術が検討されることもあります。しかし、ケロイドは再発しやすく、手術したことでかえって症状が悪化することも。そのため、手術に消極的な医師が多いようです。また、手術をしたとしても傷痕が完全に消えるわけではないということも、よく理解する必要があります。
4.ケロイド体質だと美容医療の施術は難しい?
ケロイド体質の可能性が高い場合、美容皮膚科や形成外科などで行う美容医療の施術を断られるケースもあります。実際に、クリニックの注意書きでそのような記載を目にした方も多いのではないでしょうか。
具体的には、光治療やレーザー治療などは控えたほうが良いでしょう。ただ、現在では皮膚を傷つけない治療法もさまざまあり、ケロイド体質の方でも受けられる施術が増えてきています。例えば、シミ取りをしたいなら、レーザー治療の代わりにケミカルピーリングや美白外用剤を選択することもできるでしょう。
ケロイド体質の可能性が高いからといって美容医療を諦めるのではなく、美容皮膚科や形成外科などで相談したうえで判断することをおすすめします。
■まとめ
傷痕がきれいに治りにくく、赤く盛り上がってしまう方は、ケロイド体質かもしれません。これは、美容医療の施術を受けたい方にとっては大きな不安材料の1つでしょう。しかし、ケロイド体質でもローリスクで受けられる施術はあります。とにかく、自分で決めつけないことが大切。自身の体質を正しく判断するためにも、信頼できる専門医に早めに相談するようにしましょう。
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