
これまで勤務していたクリニックから独立して自分のクリニックを運営するというケースは少なくありません。それに伴いトラブルが発生することも珍しくなかった時代を経て、最近はポジティブな独立に変化している傾向にあるようです。
これまで頼ってきた医師が独立するにあたり、医師を追って新しいクリニックに変えるべきか否か、悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、患者目線で安心して施術を受けられるクリニック選びのポイントを解説します。
INDEX
美容クリニックの独立事情、今と昔でどう変わった?
美容クリニックの独立事業が、今と昔で大きく変化しています。まずはどのように変化したのか押さえていきましょう。
■昔の美容クリニックの独立傾向
一昔前は、美容クリニック同士の訴訟や対立が多発していました。大手美容クリニックでは、移籍や独立による患者やノウハウの流出を防止するために競業禁止ルールを設けていることがほとんどです。
しかし、ルールを破って顧客情報を持ち出し、トラブルに発展したケースも少なくありません。その結果、訴訟や対立につながることも珍しくありませんでした。
ほかにも、共同経営の分裂でもめるのもよくあるケースです。複数人が美容クリニックを共同経営することも珍しくありませんが、実際に運営した結果方針の違いや報酬の分配などひずみを抱えるケースもあります。
その結果片方の医師がクリニックを去ったり、クリニックが分裂したりすることもあるでしょう。
施術を担当してくれていた医師が突然いなくなり引き継ぎがスムーズにいかないなど、患者にも不利益が生じることもあります。
■現在の美容クリニックの独立傾向
独立して新しいクリニックを立ち上げる際にトラブルが生じることが多かったひと昔前から一転し、現在は退職後も非常勤としてもともと在籍していたクリニックとの関係を維持するケースが増えています。
これは、SNS時代に突入したことが大きく影響していると考えられます。
これまで情報発信をするのはニュースサイトやメディアが基本でしたが、スマホの普及によりSNSが本格的に活用されるようになり、個人単位で気軽に発信できるようになりました。
そのため、口コミやレビューが購買行動に与える影響力が以前よりも増し、美容クリニックの宣伝にもSNSが欠かせない存在に。同時にトラブルが公になるリスクも以前より高まることとなりました。
そのため、美容クリニックは不要なトラブルはできるだけ避けたいというのが本音です。
お客様目線でも、独立をネガティブな気持ちで見るのではなく、医師がもともと在籍していたクリニックと新しいクリニックの両方を前向きに応援するケースが増えています。
美容クリニック、独立の仕方は、なぜその後の集客や患者のクリニック選びにも関係があるのか?
美容クリニックの独立の仕方は、その後の集客やクリニック選びに大きく影響を及ぼします。その理由を押さえていきましょう。
■美容医療は医師との信頼関係が重要!
美容医療は、患者と医師の信頼関係が特に重要な分野です。美容医療は病気を治すのではなく美しさを向上させるための治療がほとんど。
メリットもありますが副作用やリスクがある治療も多く、不安を抱える方も少なくありません。そのため、医師の親身に寄り添う姿勢が大切です。
一度信頼関係を構築した医師に長くお世話になりたいと考える方も多く、長期的なお付き合いになる傾向にあるのも、美容医療の特徴。長期的に付き合うからこそ、医師の考え方や姿勢が重要になります。
■独立時の「良い辞め方・悪い辞め方」が患者に与える影響
クリニックと円満な関係を保ちつつ、応援される形で独立するのが、良い辞め方と言えるでしょう。
反対に、患者様やスタッフを巻き込んだトラブルに発展するのは、悪い辞め方です。
SNS時代の現在、辞め方の良し悪しはどのような形であれ広まると考えておくべきでしょう。そのため、独立時の辞め方は医師のイメージに直結します。
前クリニックに問題があると認識された場合にはその限りではありませんが、基本的に一緒に働くスタッフや来てくれた患者に誠実な対応で終われない医師が新しいクリニックで誠実な対応をしてくれるとは思えません。
現在は美容医療を提供するクリニックも多くあり、悪い辞め方をした医師は今後の集客にも大きなダメージを与えると考えられます。
「箱推し?人推し?」辞めた医師を追いかけるべき?通っていた医院に通い続けるべき?患者目線での見極め方
担当してもらった医師が辞めるケースも少なくないでしょう。そんなときに悩むのが、通っていたクリニックにそのまま通い続けるのか、それとも医師を追いかけて別のクリニックに通うのかという点です。
「箱推し(クリニック推し)」と「人推し(医師推し)」の違いはどこにあるのか、考えていきましょう。
■医師を追いかけるべきケース
医師を追いかけるべきなのは、その医師にしかできない特別な技術やデザインがある場合です。
美容医療は、解剖学の知識や技術力に加えて、個々の骨格や顔立ちに応じたオーダーメイド治療が求められる傾向にあります。
医師の美的センスやバランス感覚も必要となり、その医師にしかできない施術があることも少なくないでしょう。
たとえば骨切りを伴う輪郭形成やデザイン力と解剖学的知識が必要となる豊胸手術、顔全体の調和が重視される鼻形成術、デザイン力と解剖学の知識において自然な仕上がりが求められるヒアルロン酸注入や脂肪吸引など、医師の経験やセンスが大きく影響を与える施術も少なくありません。
また、長年の信頼関係が培われている場合も、医師を追いかけることをおすすめします。
美容医療は技術だけでなく、希望を理解して的確な治療の提案ができるかどうかが重要です。長年通っていて自分の希望を理解してくれると感じるなら、ついていく価値はあるといえるでしょう。
ただし、勤務しているクリニックからの円満退社であるかどうかは、しっかりとチェックしておく必要があります。
上記に当てはまる場合であっても、円満退社していないと信頼がおけるかという点で不安が残るでしょう。円満退社している前提のもと、医師を追いかけるかどうか判断することをおすすめします。
■クリニックに通い続けるケース
箱推し(クリニック推し)でそのままクリニックに通い続けるべきケースは、医師の技術がそのクリニックの水準レベルであった場合です。
医師が退職したあとも同じ技術レベルの医師が在籍していれば、担当の医師がいなくなっても同じ水準の治療を受け続けることができます。
また、ピーリングやレーザー治療など、機器や製剤の性能に依存する施術の場合、医師による差はそうありません。これまでに受けていた施術によっては、医師を追いかける必要性はないといえるでしょう。
チーム医療を謳っているクリニックは、施術のクオリティが一定以上に担保されているケースが多い傾向にあります。
チーム医療とは、医師や看護師をはじめすべてのスタッフが連携して、患者様の治療を総合的にサポートする体制のこと。
医師だけが治療を担当するのではなく、それぞれ担当するスタッフが役割分担して満足度を高めているため、クリニックの体制があってこそ医師の技術が光っているように感じている可能性も多いにあるでしょう。
加えて、クリニックの設備やアフターケアが充実しており、長期的な安心がある場合も、箱推しするに足る重要なポイントです。
■見極める時のポイントは?
箱推しするか人推しするかを見極める際は、医師の辞め方に注目することをおすすめします。クリニック側も医師を応援しているかどうかで、円満退社かどうか判断できます。
SNSなどで医師が退社することを報告したうえで、応援するような内容の投稿があるかに注目してみましょう。
クリニックと医師の間で何かしらトラブルがある場合、医師の退社が急に提示される、応援するような投稿が一切ないなど、何かしらの不穏な動きがある可能性大。
また、医師個人のSNSで前クリニックを悪く言うような発信がある場合も、避けた方が無難でしょう。クリニックと医師のSNSはフォローしておき、定期的にチェックすることをおすすめします。
独立後の医師は同じ実力を発揮できる?環境の変化を理解して選択を
独立後は、クリニックを運営していくために試行錯誤するタイミングです。理解しておきたい変化とその対策について解説します。
■独立後すぐは体制が整っていない可能性がある
美容医療は人推しする方も多くいますが、クリニック勤務時と独立後では環境が大きく変化します。
特に独立して間もないタイミングは新しい体制を構築する過渡期であり、チームとしてうまく機能していない可能性もあるでしょう。
その結果、以前のクリニックと比べてチーム医療の質が変わることも考えられます。
医師の持つ技術は変わらなくても、環境の変化は施術の流れや仕上がりに影響を与える要素は多いでしょう。
新しいクリニックの設備やスタッフの体制は十分に整っているか、アフターケアやサポート体制の違いはどうかという点にも注目しておくことをおすすめします。
■箱推しと人推しを冷静に判断するためのポイント
ここまで読んで、箱推しすべきか人推しすべきか悩む方もいるでしょう。医師個人の技術を重視するなら、独立後のクリニックも視野に入れて検討するのがおすすめです。
メニュー内容や設備、料金設定、アフターケアなど、これまでのクリニックとの違う点をピックアップし、納得できる場合は独立後のクリニックに決めるのも良いでしょう。
その際はまずカウンセリングを受け、スタッフの様子や流れなどを確認してきちんと判断することをおすすめします。カウンセリングで納得でき、良いと感じた場合に契約に進みましょう。
これまでの施術環境や継続的なサポートに魅力を感じているなら、これまでのクリニックを利用するのも選択肢の1つです。
ほかの医師でも技術的に遜色がない、クリニックのスタッフの印象が良いという場合には、クリニックを変えない方が良いかもしれません。
また、オープンしてすぐは体制がきちんと整っていないこともあるため、ある程度期間を置いてから独立後のクリニックを検討してみるのも1つの方法です。
独立後のクリニックが安定するまで既存のクリニックを利用し、折を見て検討するのも良いでしょう。
まとめ
今回は美容クリニックの独立事情について解説しました。ある程度技術を磨いたら自分のクリニックを開院したいと考えている医師も少なくありません。
そのため、これまでお世話になっていた医師が独立するのはよくある話です。医師を推して新しいクリニックに通うべきか、そのまま既存のクリニックを利用するべきかは、状況により異なります。
今回ご紹介した点をチェックして、判断してみてはいかがでしょうか。
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