この記事では、肌老化とストレスの関係について、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの働きや、慢性的な痛みが睡眠やストレス反応を介して肌の状態に影響する可能性、美容医療におけるペインコントロールの考え方を解説します。
あわせて、2025年に米国で承認された非オピオイド鎮痛薬JOURNAVX®(一般名:スゼトリギン)についても紹介します。
肌老化の原因として、紫外線や加齢を思い浮かべる方は多いでしょう。しかし近年では、慢性的な痛みやストレスが、ストレスホルモン「コルチゾール」を介して肌のバリア機能や恒常性に影響する可能性が報告されています。
痛みとストレス、肌老化の関係を整理しながら、美容医療におけるペインコントロールと、JOURNAVX®が示す新しい作用機序についてわかりやすく解説します。
INDEX
痛みを我慢すると老化につながる?ストレスホルモン「コルチゾール」との関係
慢性的な痛みやストレスを感じると、肌や全身の健康にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。ここでは、ストレスホルモンと呼ばれることもあるコルチゾールと肌老化の関係について解説します。
痛みは脳にとって「ストレス」として認識される
痛みは単なる不快な感覚ではありません。体に危険を知らせる重要な防御反応であり、痛みの刺激を受けると、脳は身体に異常が起きている可能性があると判断し、ストレス反応を引き起こします。
まず、皮膚や筋肉などに加わった刺激は、痛みを感じるセンサーである侵害受容器(痛覚受容器)で感知され、神経を通って脊髄から脳へ伝達。脳で痛みが認識されると、自律神経のうち交感神経が優位になり、心拍数や血圧が上昇するなど、体は緊張状態になります。
さらに、ストレス反応によって副腎皮質からコルチゾールが分泌。コルチゾールは体を守るために働くホルモンですが、慢性的な痛みやストレスによって分泌が続くと、体にもさまざまな変化が生じる可能性があります。
コルチゾールが増え続けると体にどんな変化が起こる?
コルチゾールは生命維持に欠かせないホルモンですが、慢性的に高い状態が続くことは望ましくありません。近年では、過剰なストレスによるコルチゾール分泌の持続が、肌のバリア機能や修復機能に影響する可能性が報告されています。
例えば、免疫機能の低下によって炎症が長引きやすくなり、肌の修復機能が十分に働きにくくなることがあります。また、コラーゲンの分解が促されることで、ハリや弾力の低下につながる可能性も指摘されています。
さらに、慢性的なストレスは睡眠にも影響し、肌の回復やコンディションに影響を及ぼす可能性があります。
近年では、慢性的なストレスやコルチゾール反応と、細胞の寿命に関わるテロメアの短縮や、生物学的年齢の上昇との関連を示す研究も報告されています*¹。
ただし、老化には紫外線や生活習慣、遺伝的要因など複数の因子が関与するため、コルチゾールだけが原因になるわけではありません。
慢性的な痛みは肌や見た目にも影響する可能性がある
慢性的な痛みは、直接肌を老化させるわけではありません。しかし、痛みが続くことで睡眠やストレス、自律神経のバランスが乱れ、その積み重ねが肌や見た目に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、睡眠不足になると、日中に受けた紫外線や乾燥ダメージの修復が十分に行われず、肌のターンオーバーも乱れやすくなるでしょう。また、炎症が長引くことで肌のバリア機能が低下し、乾燥や刺激を受けやすくなることもあります。
さらに、痛みが続くと無意識に表情がこわばり、疲れた印象を与えやすくなる原因に。慢性的なストレスによる血流低下も、肌荒れやくすみ、ハリ不足などにつながる一因と考えられています。
このように、慢性的な痛みは睡眠や炎症、ストレス反応を介して、肌コンディションや見た目の印象にも影響を与える可能性があります。
美容医療でも「痛みを我慢しない」ことが重要な理由
近年の美容医療では、「痛みを我慢すること」が良い施術とは考えられなくなっています。患者の負担に配慮しながら、安心して施術を受けられるようにするためのペインコントロールが重視されています。
施術の痛みを我慢しても治療効果が高まるわけではない
「痛いほど効果がある」と思われがちですが、施術の痛みを我慢したからといって、治療効果が高まるわけではありません。むしろ、強い痛みによって体が動いたり、緊張が強くなったりすることで、患者の負担が大きくなることもあります。
また、「前回とても痛かった」という経験は、次回以降の施術への不安や心理的な抵抗につながり、施術を継続しにくくなる要因になることも。
そのため現在の美容医療では、治療効果だけでなく、安全性や患者の負担にも配慮しながら、麻酔や冷却機能などを活用して痛みを適切にコントロールすることが重視されています。
美容医療で行われる主なペインコントロール
現在の美容医療では、施術内容や痛みの程度に応じてさまざまなペインコントロールが行われています。代表的な方法は以下のとおりです。
| 方法 | 主な特徴 |
| 麻酔クリーム | 施術部位に塗るタイプの麻酔。皮膚の表面感覚を鈍らせ、レーザー治療やダーマペン、RFマイクロニードルなどで広く用いられる。 |
| 局所麻酔 | 施術部位に注射するタイプの麻酔。その部分の痛みを感じにくくし、切開を伴う施術や注入治療などで使用される。 |
| ブロック麻酔 | 神経の近くに注射するタイプの麻酔。一定範囲の痛みを抑え、鼻やフェイスラインなどの手術で用いられることがある。 |
| 笑気麻酔 | 笑気ガスを鼻から吸入するタイプの麻酔。緊張や不安を和らげ、痛みを感じにくくする。 |
| 静脈麻酔 | 点滴から麻酔薬を投与するタイプの麻酔。意識や痛みの感じ方を抑えた状態で施術を受けられ、美容外科手術などで選択されることがある。 |
| 冷却機能 | 施術部位を冷却する方法。レーザー照射時の痛みや熱感を軽減する役割がある。 |
ペインコントロールの方法は、施術内容や状態に応じて選択されます。気になる痛みや不安がある場合は、施術前に医師へ相談しておくと安心です。
患者も「痛みを我慢しない」ことが大切
ペインコントロールは医療者だけが行うものではありません。患者自身が痛みを伝えることも、適切なペインコントロールにつながります。
例えば、「痛い」と伝えるだけでなく、「チクチクする」「熱さが強い」「我慢できないほど痛い」など、痛みの種類や強さを具体的に伝えることで、施術者は照射条件や麻酔方法を調整しやすくなります。
また、施術前には麻酔の選択肢を確認し、睡眠不足や発熱、体調不良などがある場合は事前に申告しましょう。施術中に普段と異なる強い痛みや熱さを感じた場合も、我慢せずに伝えることが大切です。
美容医療では、患者と医療者がコミュニケーションを取りながら施術を行います。痛みの感じ方や不安を共有することで、施術内容やペインコントロールの方法を検討しやすくなり、患者自身の負担軽減にもつながります。
痛みを「我慢しない医療」へ|JOURNAVX®の登場が示す疼痛管理の新時代
近年、医療では施術そのものだけでなく、痛みを適切に管理することも重要視されるようになりました。その流れを象徴する出来事の一つが、非オピオイド鎮痛薬JOURNAVX®(ジャーナバックス)の登場です。
FDAが承認した非オピオイド鎮痛薬JOURNAVX®とは
JOURNAVX®(一般名:スゼトリギン)は、中等度から重度の急性疼痛を対象とする非オピオイド鎮痛薬です。2025年に米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得し、依存リスクに配慮した新しい鎮痛薬として注目されています。
従来、術後や外傷などの中等度から重度の急性疼痛にはオピオイド鎮痛薬が使用されることがありました。
オピオイドは、強い鎮静作用を持つ一方、依存や乱用、眠気、呼吸抑制などの副作用にも注意が必要です。そのため、オピオイドとは異なる作用機序を持つ鎮痛薬の開発も進められてきました。
JOURNAVX®は、痛みの信号を伝える末梢神経に存在する「NaV1.8(電位依存性ナトリウムチャネル1.8)」に選択的に作用するのが特徴です。
NaV1.8は、痛みの情報を脳へ伝える役割を担っており、JOURNAVX®はこの働きを抑えることで、痛みの信号が脳へ伝わりにくくなるよう作用します。
オピオイドとは異なる仕組みで痛みを抑えることから、新たな疼痛管理の選択肢として期待されている鎮痛薬です。
JOURNAVX®が示す「痛みを適切に管理する」という考え方
JOURNAVX®が注目されている理由は、新しい作用機序を持つ鎮痛薬が登場したことに加え、オピオイドとは異なる疼痛管理の選択肢を示した点にもあります。
急性疼痛の治療では、痛みの程度や原因、患者の状態などを考慮しながら、適切な鎮痛方法を選択することが重要です。JOURNAVX®は、従来のオピオイドとは異なる仕組みで痛みを抑える薬として、疼痛管理の選択肢を広げるものと位置付けられています。
背景には、「痛みを我慢させる」のではなく、「適切に管理する」ことを重視する医療への変化があります。近年では、安全性と治療効果のバランスを考えながら、患者一人ひとりに合わせて疼痛をコントロールする考え方が広がっています。
美容医療でも「痛みを適切に管理する」という考え方が重要
美容医療でも、施術内容や患者の状態に応じて、痛みを適切に管理することが重要です。
「痛みを適切に管理する」という考え方は、美容医療にも共通しています。
実際の美容医療では、麻酔クリームや局所麻酔、笑気麻酔、静脈麻酔、レーザー機器の冷却機能などを組み合わせ、施術内容や患者の状態に応じたペインコントロールが行われています。
一方で、痛みを完全になくすことが目的ではありません。 レーザー治療では、強い熱感や異常な痛みが熱傷(やけど)などのサインとなる場合もあるため、必要以上に感覚を鈍らせず、安全性とのバランスを考慮することが重要です。
美容医療におけるペインコントロールは、痛みをゼロにすることではなく、患者が安心して治療を受けられる環境を整えることを目的としています。
▽JOURNAVX®の登場が美容医療に与える影響については、こちらの記事で詳しく解説しています。
FAQ|ストレスと肌老化に関するよくある質問よくある質問
Q. コルチゾールとは何ですか?
A. コルチゾールは、副腎から分泌されるストレスホルモンです。炎症を抑えたりエネルギー代謝を調整したりする重要な働きがありますが、慢性的に分泌が高い状態が続くと、肌の状態などに影響を及ぼす可能性があるとされています。
Q. ストレスで肌は老化しますか?
A. ストレスそのものが直接肌を老化させるとは断定できません。しかし、慢性的なストレスはコルチゾールの分泌増加や睡眠不足、炎症の持続などを介して、肌のハリ低下やくすみ、肌荒れにつながる可能性があると報告されています。
Q. 肌の老化を早める原因には何がありますか?
A. 紫外線や加齢に加え、喫煙、睡眠不足、慢性的なストレス、食生活の乱れ、活性酸素、糖化などが肌老化に関与すると考えられています。複数の要因が重なって進行するため、生活習慣を含めた総合的なケアが大切です。
痛みを適切に管理することが、美容医療の新しいスタンダードへ
肌の老化には紫外線や加齢だけでなく、慢性的な痛みやストレスが関与する可能性もあります。美容医療では、適切なペインコントロールが安全性や治療の質を高める重要な要素です。
痛みや不安は我慢せず、医師と相談しながら自分に合った方法で施術を受けることが大切です。
*1参考文献:Basal cortisol, cortisol reactivity, and telomere length: A systematic review and meta-analysis
この記事を読んだあなたにおすすめの関連記事
| ・当サイトは、美容医療の一般的な知識をできるだけ中立的な立場から掲載しています。自己判断を促す情報ではないことを、あらかじめご了承ください。また、治療に関する詳細は必ずクリニック公式ホームページを確認し、各医療機関にご相談ください。 ・本記事は、執筆・掲載日時点の情報を参考にしています。最新の情報は、公式ホームページよりご確認ください。 ・化粧品やマッサージなどが記載されている場合、医師監修範囲には含まれません。 |
| 施術の内容 | JOURNAVX®(ジャーナバックス/一般名:suzetrigine) |
| 施術期間および回数の目安 | 急性疼痛がみられる期間に内服します。 |
| 費用相場 | ¥16,500~¥33,000程度 ※使用量や各クリニックによって異なります。本施術は自由診療(保険適用外)です。国内ではまだ公開価格例が少ないため、現時点で確認できる自由診療価格を基にした目安です。 |
| リスク・副作用等 | そう痒、筋肉のけいれん、血中クレアチンホスホキナーゼ(CPK)上昇、発疹など。 |
| 未承認機器.医薬品に関する注意事項について | ・本施術には、日本国内において薬事承認を受けていない未承認の医薬品を使用します。 ・施術に用いる医薬品は、医師の判断のもと、個人輸入手続きが行われています。個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報は、下記をご参考ください。 https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html ・同一成分を有する国内承認医薬品は確認されていません。 ・諸外国における安全性等に係る情報 ‐米国FDAでは「成人の中等度~重度の急性疼痛に対する治療薬」として承認されています。 ・個人輸入された未承認医薬品による健康被害は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。 |







