「女性の体は、一度も同じ状態でいられる時期がない」という表現を聞いたことはありませんか?
月経周期という短いスパンだけでなく、女性は一生を通してホルモンバランスが変化し、心身ともに影響を受けるため、ライフステージごとに悩みや疾患が異なるのが一般的です。
そこで今回は、思春期~老年期まで、女性特有の悩みや疾患を“流れ”として整理します。
INDEX
女性の悩みや疾患は、“年齢”ではなく“ホルモンの波”で変わっていく

出典:厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」
こちらは、厚生労働省が示している「女性ホルモンとライフステージ」に関するグラフです。
グラフの横軸は、女性のライフステージや年齢です。
また、小児期に立ち上がり始め、20代をピークに減少し、老年期終盤に収束する、まるで波のようなピンク色の領域は、女性ホルモン分泌量の変化を示しています。
さらに、グラフ内の緑や白の横棒は、女性特有の悩みや疾患がいつごろ現れやすいかを示したものです。
こちらのグラフは、あくまでも一般的な目安ですが、
『年齢そのものではなく女性ホルモンの波の影響で、現れる悩みや疾患が変化していく』
ということが一目瞭然です。
同じ人であっても年齢に伴い課題が変わる場合も多く、「女性の“今の悩み”は、一時的なものであることが多い」と考える産婦人科医も数多く存在します。
そこで、続くパートからは、女性特有の悩みをライフステージごとに詳しく解説していきましょう。
【コラム】そもそも女性ホルモンとは?
女性ホルモンとは、エストロゲンとプロゲステロンのことで、主に卵巣から分泌されます。これらの女性ホルモンは、排卵・月経だけでなく女性の心身にも大きく影響することが知られています。
エストロゲンとプロゲステロンの主な働きをまとめました。
<エストロゲン>
- 子宮内膜を増殖させて妊娠の準備をする
- 乳房を発達させて女性らしい体をつくる
- 自律神経を安定させる
- 骨量を保持する
- コレステロールのバランスを整える
- 肌のつややハリを保つ
<プロゲステロン>
- 妊娠の成立に向けて、子宮の働きを調整する
- 乳腺の発達を促す
- 体温を上げる
- 食欲を増進させる
- 体内に水分をキープする
- 眠くなる
- イライラしやすくなるなど、気分を不安定にする
出典:厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」より一部抜粋
産婦人科では、必要に応じて採血によるホルモン検査を行います。月経周期に合わせて検査を行うことにより、月経不順・不妊・更年期障害などの原因を探ることができ、治療方針を立てることにも役立ちます。
思春期〜性成熟期前期:体が整いながらも揺らぐ時期
現代女性は妊娠・出産の機会が減少傾向にあり、生涯の月経回数は昭和初期の女性より約10倍多いともいわれています。
そのため、思春期~性成熟期前期は、体が整いながらも揺らぐ時期とされ、月経・女性ホルモンのバランスに関係する悩みや疾患に見舞われやすくなっているようです。
【思春期】10代前半~20歳ごろまで
思春期は、体の成長が急速に進むとともに、精神面でも自立しようとする大人への過渡期です。この時期は、体と心の大きな変化に戸惑いながら、特有の悩みや疾患にも見舞われやすくなるといわれています。
しばらく様子を見ても変化がない場合は、思春期であっても病院を受診することが大切です。
何科を受診すれば良いか分からない場合は、かかりつけの小児科や内科などにまずは相談し、必要に応じて適切な診療科を紹介してもらいましょう。
【性成熟期前期】20代前半~30代半ばごろ
性成熟期は、文字通り女性が性的な成熟を迎える時期で、女性ホルモンの分泌量が安定し、月経周期が整います。
しかし、性成熟期前期は学業や仕事など環境の変化・不規則な生活習慣によるストレスの影響を受けやすい時期でもあります。
性成熟期前期は心身ともに充足感を得やすい時期ですが、気合いだけですべての悩みや不快な症状を乗り切ることは難しいもの。
とくに、学業や仕事などに影響が出ている場合は、忙しいからこそ自分を労わる時間を積極的に作り、ときには専門家に頼ることも大切です。
*起立性調節障害……自律神経の働きの不安定さから、体勢の変化により血圧・心拍が変動しやすくなり、めまい・立ちくらみ・のぼせ・動悸・息切れ・朝起きられないなどの不調が生じる状態
*バセドウ病……甲状腺ホルモンが過剰に産生される疾患で、流産・早産のリスクが上昇する可能性がある
妊娠中・産後〜ミドル期:変化と蓄積が現れる時期
20代以降は妊娠・出産を経験する女性も徐々に増え、それに伴い妊娠中や産後に特有の悩みや疾患も生じます。
また、40代以降のいわゆるミドル期は、仕事や家庭などで担う役割の数や責任の重さが増す一方で、それまでの積み重ねが体に現れやすい時期ともいえます。
【妊娠中・産後】20歳前後~
妊娠中は、つわりや体の構造的な変化などによる影響が大きく、心身ともにストレスがかかりやすくなります。
また、出産という大仕事を終えた後に、休む間もなく育児がスタートするため、人によっては不眠不休の状態が産後しばらく続き、心も体も疲れが蓄積していきます。
妊娠・出産は、自分で思っている以上に心身にストレスがかかっている状態です。妊娠中~産後に体の異変を少しでも感じたら、産婦人科に相談するのが◎。
この時期は少しでも休息を取るのがベストなため、産後ケアや近しい人の助けを借りて自分のケアも大切にしましょう。
【ミドル期】40代前半
ミドル期は、女性ホルモンの分泌量がガクッと低下し始める時期です。
それまで感じていた小さな違和感の蓄積が表面化しやすく、女性器・乳房などのトラブルや疾患、日常生活に影響する泌尿器の症状も出やすくなるともいわれています。
ミドル期は、仕事相手や家族など自分以外の人を優先してしまいがちです。
しかし、「私が倒れたら、それこそ周りの人が立ち行かなくなる」と自分自身に言葉をかけてあげてください。
あなたの健康や幸せを維持するためにも、必要に応じて早期に病院を受診しましょう。
*橋本病……甲状腺ホルモンの不足により起こる疾患で、新陳代謝が低下し、全身のむくみ・皮膚の乾燥・脱毛・眠気・悪寒・脱力感・物忘れなどが生じる
更年期〜老年期:ホルモン低下と向き合う時期
更年期~老年期は、女性ホルモンの減少に伴う悩みや疾患が増える傾向にあります。
自分の心身の変化に上手に付き合うため、最近では婦人科や女性泌尿器科などに頼る更年期~老年期の女性も多いようです。
【更年期】45~55歳ごろ
更年期症状の程度には個人差がありますが、45~55歳ごろになると「更年期障害というほどではないけれど、何となく不調を感じる」という女性が増えてきます。
一般的に、更年期は計10年間続くとされ、卵巣の機能や自律神経の働きが低下することにより、更年期症状といわれる様々な不調が現れます。
更年期症状を感じた際、「多くの女性が通る道だから」「今をやり過ごすしかない」などと自分に言い聞かせ、我慢する必要はありません。
生活習慣の見直しや市販の漢方薬・サプリメントなどで対策しても不調が続く場合は、迷わず医療のチカラを頼りましょう。
【老年期】50代後半以降~
老年期は、男性より女性がかかりやすい病気とされる、生活習慣病・骨粗しょう症・認知症などのリスクが高まるといわれています。
健康寿命をできるだけ伸ばす対策が必要になってくる時期です。
老年期の女性の中には、「すでに閉経しているのに、恥ずかしい……」と産婦人科の受診をためらう人もいますが、遠慮は無用。
産婦人科は女性の体と心を熟知した専門家ですから、年齢に関係なく頼ってもちろんOKです。
*ホットフラッシュ……ほてり・のぼせ・発汗などが突然起こる、代表的な更年期症状の1つ
*骨盤臓器脱……子宮・膀胱・直腸などの骨盤内の臓器が徐々に下がり、体外に出てしまう状態
「女性の体は、一度も同じ状態でいられる時期がない」からこそ、ライフステージに応じた対策で自分を労わる
女性ホルモンのバランスに、女性が生涯影響を受け続けるのは逃れようのない事実です。
ただ、「女性の体は、一度も同じ状態でいられる時期がない」ことを否定的に捉えるのではなく、“ライフステージごとの対策を事前に行うことで、安心につなげる”という考え方もあります。
災害への備えと同じで、丸腰でそのときを迎えるのと、将来起こり得るリスクについて情報収集と対策を万全に行ったうえで対応するのとでは、結果に大きな差が出るでしょう。
悩みや疾患が起きてからうろたえるのではなく、いつでも先手を打てるよう、ぜひ今回の記事を参考にしてくださいね。
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