美容医療というと、シミ取りレーザーや二重整形などを思い浮かべる方は多いかもしれません。しかし近年は、体の内側から美容・健康を促進する「美容内科」を掲げる美容クリニックも増えています。美容内科は、美容外科や美容皮膚科と併せてニーズの高まっている医療分野です。健康的で美しく人生を過ごしたいと考える人へ向けて、美容内科について詳しく解説します。
1.美容内科とは
近年、美肌治療や美容整形などの美容医療は、身近な存在になってきています。その中で、「美容内科」を掲げるクリニックが、東京を中心に増加してきました。美容外科と比較するとまだ新しい医療分野である美容内科とはどんな美容医療なのか、解説します。
■美容内科は体の内側から健康・美容にアプローチする医療
美容内科は、美容外科とは異なり、健康的な美しさや予防医療のために「体の内側から」働きかける美容医療です。レーザーで表面から肌をケアしたり、手術で体の一部を除去・形成したりというような、体の外側からアプローチする医療ではありません。美容内科は、体の細胞やホルモン、代謝などの仕組みを理解し体本来が持つ機能を高めることで、時間をかけて根本からの改善を目指すのが特徴です。
美容外科は1978年に診療科として認可され、美容外科医が中心の一般社団法人日本美容外科学会によって、医療の発展が図られてきました。一方美容内科も、科学的根拠に基づいた美容内科医療の構築・普及を目指して、2023年10月に一般社団法人日本美容内科学会が発足されています。美容内科は、これからさらに発展が期待できる分野といえるでしょう。
■美容内科と美容外科、美容皮膚科、形成外科との違い
病院やクリニックに掲げてある「内科」や「美容内科」「美容外科」などの標榜(ひょうぼう)は、医療法に基づいて、患者に分かりやすいよう表示されているものです。専門医でなくても、ルールの中であれば各医療機関が自由に掲げて良いことになっています。
一般的に、美容医療に関するクリニックとしては、「美容内科」のほかに「美容外科」や「美容皮膚科」「形成外科」などをイメージする方が多いでしょう。それぞれの違いを簡単に説明します。
診療科(標榜) | 特徴 | よく行われる治療や処置の例 |
美容内科 | 内科的なアプローチで、美容・健康状態の向上を目指す。 | 美容点滴・美容注射・美容内服薬・ホルモン補充療法・サプリメントなど |
美容皮膚科 | 美容を目的にした皮膚治療を行う。 | レーザー治療・光治療・ケミカルピーリングなど |
美容外科 | 形成外科の1分野。
外科的なアプローチで容姿を整え、幸福度の向上を目指す。 |
二重術・鼻や顎のプロテーゼ挿入・鼻翼縮小・フェイスリフト・ヒアルロン酸注入・豊胸術・脂肪吸引など |
形成外科 | 美容のためではなく、機能の異常や不具合を伴う容姿に対して、手術で修復・再建する。 | ケガ・やけど・ケロイド・瘢痕・口唇口蓋裂や合指症などの生まれつきの疾患・顔面麻痺・乳房再建など |
美容外科と形成外科はよく似ていますが、治療目的が異なります。美容皮膚科と一般皮膚科も同じです。美容医療は、病気の治療が目的ではないため公的医療保険の適用とならず、クリニックによって値段や内容が異なる「自由診療」である点に注意しましょう。
2.美容内科がおすすめの人
出典:photoAC
美容内科は、体の細胞やホルモン、代謝などの仕組みを理解し、体本来が持つ機能を高めるように、内側からアプローチする美容医療です。そのため、健康や美容に関するさまざまな症状・悩みに、幅広く効果が期待できます。具体的には下記のような症状や悩みがある方に、美容内科が向いています。
なかなか疲労回復できない、だるさが取れない方
- ストレスが溜まっている方
- 不眠、睡眠の質が悪い方
- 二日酔いの方
- 冷えやむくみが気になる方
- 性欲の低下に悩んでいる方
- 美白や肌荒れ予防に必要な栄養素を補給したい方
- 免疫力の低下を感じる方
- 思考・集中力が続かない方 など
3.美容内科で行われる具体的な治療例
美容内科では、体の内側から健康・美容を促進するために、一般的に点滴や注射、内服、サプリメントなどを使った美容医療が行われます。美容内科を掲げるクリニックで行われている治療の一部を、具体的に紹介しましょう。なお、メニュー名や内容は医療機関によって異なる点にご注意ください。
※いずれの治療にも副作用やリスクが存在します。詳細は各医療機関にご確認ください。とくに妊娠・授乳中の方は必ず医師への申告が必要です。
■点滴・注射治療
美容内科クリニックでは、点滴や注射のメニューがあるのが一般的です。ビタミンやミネラルといった体に必要な栄養素を補給する治療のほか、プラセンタやエクソソームといった成分を注入する治療があります。
メニュー名(例) | 内容・効果 |
高濃度ビタミンC点滴 | 抗酸化作用が強いビタミンCを体内に投与する治療。体のサビを防ぎ、シミ・そばかす改善やトーンアップなど肌を若々しく保つ効果や、免疫力向上、生活習慣病予防に効果が期待できる。
副作用・リスク:めまい、冷や汗、のどの渇き、疲労感など |
ニンニク点滴 | ニンニクに含まれるアリシンやビタミンB1を多く含む点滴。代謝を高め、疲労回復や糖質燃焼に役立つ。疲労の蓄積・風邪の初期・二日酔い回復・免疫力強化などに効果が期待できる。
副作用・リスク:アレルギー反応、下痢、頭痛など |
プラセンタ注射 | 人の胎盤から抽出した成分を投与する治療。自律神経やホルモンバランスを整え、美白・肌の老化防止のほか、慢性疲労・不眠・女性の更年期障害・免疫力向上などへの効果が期待できる。
副作用・リスク:アレルギー反応、発熱、肝機能障害など |
NMN点滴 | もともと人の体に存在しておりビタミンに似た物質である「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」を投与する治療。老化や寿命に深く関係する長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)を刺激し、肌・身体機能を若々しく保つ効果が期待できる。
副作用・リスク:血管痛、関節痛、発熱、悪心など |
幹細胞培養上清液点滴・エクソソーム点滴 | 幹細胞を培養した際に残る上澄み液を利用した治療。成長因子やエクソソームといった成分が含まれ、肌や血管・肝臓などの細胞を活性化させる。全身のエイジングケア(年齢に応じたケア)に効果が期待できる。
副作用・リスク:アレルギー反応、めまい、冷や汗、吐き気、頭痛など |
点滴や注射による方法は、食事やサプリメントなどによる経口摂取よりも体への吸収率が高くなります。美容・健康に効果的な栄養素や成分を効率的に取り入れたいときは、おすすめの治療です。
なお、点滴や注射治療には薬剤による副作用のほか、針を刺すことによる腫れや発赤、内出血などのリスクが存在します。
■内服治療
美容内科では、シミ・肝斑・そばかすなどの予防・改善や、ニキビ・過剰な皮脂などの肌トラブル改善のために、内服薬を処方しています。一般的によく用いられるのは、下記の内服薬です。
一般名(成分) | 特徴 |
トラネキサム酸 | メラニン生成抑制作用や抗炎症作用があり、シミや肝斑治療に用いられる内服薬。
副作用・リスク:吐き気、嘔吐、下痢、過敏症など |
アスコルビン酸・パントテン酸カルシウム | ビタミンC(アスコルビン酸)とビタミンB5(パントテン酸)を配合した内服薬。シミや肌荒れの予防・改善に用いられる。
副作用・リスク:胃部不快感、嘔吐、下痢、過敏症など |
L-システイン | ターンオーバーを整え抗酸化作用のあるアミノ酸を配合した内服薬。シミを改善し若々しい肌作りをサポートする。
副作用・リスク:胃部不快感、便秘、下痢、過敏症など |
トコフェロール酢酸エステル | 抗酸化作用や血行促進作用のあるビタミンEが主成分の内服薬。シミや色素沈着の予防・改善に用いられる。
副作用・リスク:胃部不快感、下痢、のどの渇き、過敏症など |
なお既往歴や現病歴、併用している薬、サプリメントなどによっては、内服できない場合があります。必ず医師に申告のうえ、相談するようにしましょう。
■オーソモレキュラー栄養療法
美容内科では、オーソモレキュラー栄養療法を取り入れているクリニックも多くあります。オーソモレキュラー栄養療法とは、分子栄養学や栄養療法とも呼ばれ、薬ではなく「栄養」を基盤に医療を行う考え方です。基本的な食事と生活習慣に加えて、高用量のサプリメントを活用して栄養素の補充を行います。一人ひとりに適切な種類・量のサプリメントを摂取することで、悩みや症状にアプローチする点が特徴です。
■ペプチド療法
ペプチド療法は、アミノ酸が結合してできている「ペプチド」を用いた治療法です。ペプチドは人の体内に存在し、ホルモンや神経伝達物質、成長因子などの働きをしています。多様な機能を持っているため、病気の治療だけでなく、筋肉量アップや性欲増強、記憶力向上、不眠症など、さまざまな悩みに活用できる期待されています。
日本ではまだ取り入れているクリニックは多くありませんが、世界的に認知されている治療法であり、今後日本でも広がっていく可能性が期待されている治療法です。
■まとめ
日本人の平均寿命は80歳を超えており、「人生100年時代」ともいわれる時代がきています。人が人生を健康的で美しく、かつ幸福に生きるために、美容内科でできるインナーケアは、これからますます広まっていく可能性が高いでしょう。体の表面だけでなく内側からのきれいを目指すために、美容内科での治療やアドバイスを日常に取り入れてもいいかもしれません。
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