老化細胞除去ワクチンの開発に成功したというニュース、耳にしたことがあるのではないでしょうか。老化細胞がなくなれば若返りも可能になるという夢のような話ですが、実用化に向けて研究が進められており、近い将来新たな治療が生まれるかもしれません。そこで今回は、老化細胞除去ワクチンについて詳しく解説します。現在美容クリニックでできるエイジングケアも紹介するので、先進的な美容医療を取り入れたい方はぜひ参考にしてみてください。
1.開発が進む老化細胞除去ワクチンとは
現在、老化細胞除去ワクチンの研究や開発が進められていますが、いったいどんなものなのでしょうか。詳しく確認していきましょう。
■老化細胞とはいったい何?
細胞は分裂して増殖していきますが、細胞の分裂の回数には限りがあり、限界を超えると細胞を分ける能力のない老化細胞になります。また、ストレスや生活習慣病など何らかの原因でダメージを受けて老化細胞になることも。老化細胞は基本的に白血球が食べてくれますが、そのまま身体に蓄積するケースもあります。
蓄積された老化細胞により臓器や組織の機能が低下したり、加齢関連疾患を引き起こしたりするのが、老化のメカニズムのひとつです。老化細胞が蓄積する場所によっても異なりますが、例えば、血管に蓄積すると動脈硬化になりやすいことが分かっています。
さらに、老化細胞の問題点は、SASP因子を放出するところにもあると言われています。というのも、炎症性サイトカインやケモカインといったSASP因子は発がん促進や慢性炎症などを引き起こすからです。さらに周囲の健康な細胞を老化細胞にするという悪循環を引き起こす可能性も懸念されます。
■老化細胞除去ワクチンとは?
老化細胞をピンポイントで除去する老化細胞除去薬の研究も進められていますが、必要な細胞に作用するリスクもあります。そのため、順天堂大学大学院医学研究科循環器内科の南野徹教授らの研究グループが考えたのは、老化細胞だけに作用する抗体をつくること。
細胞は老化すると性質が変わり、表面にGPNMBというたんぱく質が発現することが明らかになっています。GPNMBは正常細胞に発現することはほとんどないため、研究グループはGPNMBの有無が老化細胞かどうか判断する目印になりえることに着目。GPNMBを攻撃する抗体を生み出すことを目的に実験を重ねました。
老化細胞を攻撃する抗体を生み出し、除去する老化除去ワクチンをマウスに接種した結果、動脈硬化の改善や加齢による虚弱の抑制、寿命の延長が確認され、有用性が注目を集めています。現在人体への応用に向けて研究が進められている最中です。今後加齢関連疾患の治療への応用が期待されており、うまくいけば老化予防に大きな影響を及ぼすかもしれません。
2.美容分野においても老化細胞の除去は重要課題の1つに
身体と同様、肌も加齢に伴い老化細胞が増加していきます。肌には従来老化細胞を削除して再生を促す働きが備わっていますが、老化細胞が蓄積するともともとの肌の機能が低下。さらには、老化細胞がたんぱく質や組織を破壊する物質を分泌し、肌の老化を進める原因にもなります。老化細胞の除去によって、肌が再生することにつながるという研究結果も出ており、今後きれいな肌を保つには老化細胞を排出しいかに皮膚の寿命を延ばすかというアプローチが重要になるでしょう。
老化細胞を除去する成分は総称してセノリティクスと呼ばれており、さまざまな機関で研究が進められています。スキンケアアイテムにも各メーカーが研究したセノリティクスが取り入れられており、今後さらなる開発の加速が予想されるでしょう。
3.クリニックでできるエイジング治療3選
エイジングケアは日々のスキンケアだけでなく、美容クリニックで治療する方法もあります。どんな施術があるのか、確認していきましょう。
■ペプチド療法
ペプチド療法は日本ではまだなじみが少ないですが、アメリカやヨーロッパ、韓国ではエイジングケアとして一般的。ペプチドは2つ以上のアミノ酸から構成された分子で、身体の中に存在するたんぱく質の一種です。体内でたくさんのペプチドが細胞と組織つなぐ情報伝達の役割を担います。
採血や唾液などから足りないペプチドを割り出して補うのが、ペプチド療法の流れ。ペプチド薬にはたくさんの種類があり、効果効能も多種多様。若返りに必要な成長ホルモンを増やして老化を防止する以外にも、損傷した部位の創傷治癒、脂肪分解の促進、筋肉増量、集中力アップ、性欲の向上、発毛など、さまざまな悩みにアプローチできるのが特徴です。外見だけでなく内面からの美しさや健康を目指せるでしょう。
■再生医療
再生治療は、幹細胞を用いた先進の治療方法です。幹細胞とはさまざまな組織に変化する特殊な細胞のこと。自分の皮膚から採取した幹細胞を培養して肌細胞を増やし、気になる部位に戻します。肌細胞が増えるとコラーゲンやヒアルロン酸などのハリのもととなる成分を生成する機能が復活。その結果、肌に弾力が生まれ老化の速度を抑える効果が期待できます。
脂肪吸引した脂肪を培養して凍結保存することで、好きなタイミングで必要な分だけ使用できる治療方法もあります。未来の自分に向けて若い脂肪細胞を残しておくと、シワやたるみが気になったときに注入できるでしょう。脂肪注入豊胸に自分の脂肪を使う方法もあります。
レーザー治療をはじめとする従来の美容医療との違いは、肌を内側から生まれ変わらせ継続的な効果が期待できる点。肌悩みを根本から改善したい方におすすめです。
■DNAメチル化時計
治療とは少し意味合いが異なりますが、自分の老化がどれだけ進んでいるかを知るために、生物学的年齢に注目する方法もあります。生物学的年齢とは、暦年齢ではなく細胞や組織の年齢のことを意味し、自身の歳と同じように比例するわけではありません。生活習慣やストレスなどに影響を受けて老化が進むため、若くても生物学的年齢は50~60代というケースもあるでしょう。
生物学的年齢を知る検査はいくつかありますが、世界各国で科学的に信頼されている方法がDNAメチル化時計です。DNAについたメチル基の変化をAIで分析することで、生物学的年齢を正確に把握できるというもの。採血してあとは結果が届くのを待つだけと、検査も簡単です。ただ、結果が判明するまでに時間がかかります。
エイジングケアを行う前に測定しておけば、どこまでのケアを実施するのか目標を定めやすくなります。取り入れたエイジングケアが身体に合っていたかどうかの判断材料にもなるでしょう。
■まとめ
今回は老化細胞除去ワクチンについて詳しく解説しました。このまま研究が進み実用化されることになれば、近い将来細胞レベルで若返りが叶うかもしれません。老化細胞の除去は美容の分野でも重要な課題と認識されており、老化細胞を除去する成分が配合されたスキンケアアイテムも登場しています。現在美容クリニックでできる先進的な治療は、どれも注目度の高いものばかり。内面からの美しさを目指すなら、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
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