帝京大学医学部 形成・口腔顎顔面外科学講座主任教授 小室 裕造先生へインタビュー!高い倫理観のある美容医療実現に向けて

帝京大学医学部 形成・口腔顎顔面外科学講座主任教授 小室 裕造先生へインタビュー!高い倫理観のある美容医療実現に向けて

帝京大学医学部 形成・口腔顎顔面外科学講座 主任教授 小室 裕造先生へインタビュー。

小室 裕造先生は、目の下のクマ取り・ハムラ法施術の第一人者で、眼瞼下垂の症例も多数手がけた日本を代表する医師です。

長年にわたり現場と教育の両面から美容医療界を支え続けてきた小室 裕造先生は、2025年9月開催の第48回日本美容外科学会(JSAPS)の大会長を務めます。

小室 裕造先生が今大会のテーマに込めた想いや日本の美容医療界が抱える課題、そして若手医師へのエールを伺いました。

ドクターズプロフィール

帝京大学医学部 形成・口腔顎顔面外科学講座 主任教授
小室 裕造(こむろ ゆうぞう)先生

1986年千葉大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院・形成外科、東京都立駒込病院・形成外科などを経て、1998年順天堂大学医学部形成外科講師に着任。米国エール大学を経て、2015年帝京大学医学部形成・口腔顎顔面外科講座教授に着任。

2025年9月開催の日本美容外科学会(JSAPS)第48回総会の大会長を務める。目の下のクマ取り・ハムラ法施術の第一人者で、眼瞼下垂の症例も多数。豊富な経験をもとに、後進の育成や国際学会での登壇など、多方面から日本の美容医療界を支えている。

(経歴)
1986年 千葉大学医学部 卒業
1986年 東京大学医学部附属病院 形成外科
1988年 東京都立駒込病院 形成外科
1991年 東京大学医学部 形成外科
1993年 総合病院 国保旭中央病院 形成外科 医長
1995年 東京警察病院 形成外科 医員
1998年 順天堂大学 医学部 形成外科 講師
1999年 米国 エール大学 医学部 形成外科 留学
2001年 順天堂大学 医学部 形成外科 助教授
2010年 順天堂大学 医学部附属浦安病院 形成外科・美容外科 教授
2015年 帝京大学 医学部 形成・口腔顎顔面外科学講座 教授
(資格)
日本形成外科学会認定 形成外科専門医
日本美容外科学会(JSAPS)認定 美容外科専門医
日本頭蓋顎顔面外科学会認定 頭蓋顎顔面外科専門医
日本形成外科学会認定 皮膚腫瘍外科分野指導医
日本創傷外科学会認定 創傷外科専門医
(所属学会)
日本形成外科学会
日本頭蓋顎顔面外科学会
日本美容外科学会(JSAPS)

▷帝京大学医学部附属病院 形成外科公式HPはこちら
▷小室 裕造先生公式インスタグラム(@dr_komuro)はこちら

第48回日本美容外科学会(JSAPS)のテーマに込めた想い ~美容医療と自信の回復~

帝京大学医学部 形成・口腔顎顔面外科学講座主任教授 小室 裕造先生へインタビュー!高い倫理観のある美容医療実現に向けて

―――第48回日本美容外科学会(JSAPS)総会・第154回学術集会のテーマ「Outer Beauty, Inner Confidence」に込められた小室先生の想いをお聞かせください。

美容医療を受ける患者さんの動機の多くは“外見を美しく整えたい”“若々しく見せたい”という想いですが、根底には“自信を持って日々を生きたい”という切実な想いがあると私は感じています。

鏡を見るたびに感じる、「目がもう少し大きければ」「鼻の形が気になる」「胸が小さいことに悩んでいる」といった容姿へのコンプレックスが、日常での積極性を奪ってしまうこともあります。私はこういった悩みを抱える方々が、美容医療の力で外見を変えることで前向きになり、自信を取り戻す姿を見てきました。

美容医療とは、単に外見を整える医療ではありません。内面の自信を回復させ、人が本来の自分らしく生きていく手助けをする医療だと私は考えています。

形成外科も美容外科も“形を整える医療”である点では同じです。例えば、事故で顔に傷を負った方が治療を受けて社会復帰できるのは、外見の回復がその人の自信の回復に直結しているからといえるでしょう。

外見を整えることで、人は再び自分らしく社会に関わることができる。それは形成外科も美容外科も共通して目指しているところであり、「Outer Beauty, Inner Confidence」はその本質を端的に表したテーマだと考えています。

―――今大会で小室先生がとくに期待されている点について教えてください。

日本では美容医療に対して、医療従事者も一般の方もどこか“特殊なもの”という意識を持っていると感じます。

とくに、形成外科と美容外科の間には溝があると感じていて、我々形成外科医の中にも形成外科と美容外科を別の分野として捉える傾向がある。

今回の学会を通じて、美容外科が形成外科の延長線上にある正当な医療であることを再認識してもらいたいですね。安全で質の高い美容医療の確立に向けて、美容外科と形成外科が手を取り合える機会にしていきたいと思っています。

日本の美容医療業界の現状と課題 ~急速な発展の中で忘れてはならないこと~

帝京大学医学部 形成・口腔顎顔面外科学講座主任教授 小室 裕造先生へインタビュー!高い倫理観のある美容医療実現に向けて

―――現在、日本の美容医療は部位別に高度に細分化されています。この現状を小室先生はどのようにお考えでしょうか。

かつての美容外科は、目を二重に、鼻を高く、バストを大きく、といったものが中心で、施術内容が限られていました。しかし、欧米から入ってきた美容技術がアジア人には適さない場合もあり、アジア人に適した技術を追求していくうちに施術が細分化されるようになりました。

その結果、ひとりの医師が美容の全領域をカバーするのは難しい時代になったと感じます。医師がキャリアの初期段階から狭い分野に特化しすぎると、患者さんにとって最適な治療が何かを正しく見極める力が養われにくくなる。

若手医師にはまず幅広い研修を積んでから、専門性を深めていってほしいと私は考えています。

また、手術を伴わない美容医療もかなり広がったと感じます。日本人の患者さんは、大きな変化よりも自然な変化を、ダウンタイムも極力短いものを美容医療に求められることが少なくありません。

その要望に応えられるレーザーや光治療、注入系の治療、糸リフトなどを受けられる患者さんの数は爆発的に増えています。

機械や薬剤も新しいものがどんどん出てきますが、その中には本当に効果があるのか疑わしいものもあります。日本では、医師が海外から薬剤を個人輸入できますが、これは危険な状態が野放しにされてしまっているとも思います。

アメリカのように、日本においても一定の規制を考えるべき時期にあると思います。医師は、自分が使う薬剤がきちんとしたエビデンスに基づいた安全性が確保されているものかを見極めなければなりません。

学会でも世間に対しても、美容医療の安全性に関わることはしっかり発信していかなければならないと感じています。

―――美容医療の現場において、現在直面している課題にはどのようなものがあると感じますか。

この10年で大きく変わったのは、SNSの影響です。かつては一部の芸能人や接客業の方が中心だった美容医療が、SNSの浸透によって一般の方々にも非常に身近なものとなりました。

その結果、美容医療の需要が急増し、大手チェーンクリニックを中心に施設数が急激に増加。一大産業へと発展する一方で、医療の質や安全性が追いついていないという問題が顕在化しています。

特に経験の浅い医師の増加や、営業主体のカウンセリングによる過剰な勧誘など、医療本来の姿から乖離した事例も少なくありません。美容医療に関わる医師の倫理感を高めることは、喫緊の課題といえるでしょう。

美容医療に限らず、医療事故は一定の率で起きています。美容医療の場合、業界が大きくなってしまった分、合併症のようなトラブルの数も増えやすい状況です。故意に事故を起こす医師はいませんが、中には技術や知識不足が引き起こした悪質といわざるを得ないケースもあります。

日本では過去に、シリコンやオルガノーゲンなどの非吸収性の製剤を注入する豊胸手術でトラブルになった不幸な歴史があるにも関わらず、いまだに同じようなトラブルが起きている。過去の事例に学び、高い倫理観を持たなければなりません。

このように美容医療のネガティブな面が強調されがちですが、ポジティブな面ももっと発信していかなければならないと感じています。高齢化が進んだ日本では、“年齢を重ねても若々しくありたい”と思う高齢者層の需要も高まってきています。

美容医療は、こういった要望に応えられる素晴らしい医療です。

―――昨今、厚生労働省でも美容医療に関する検討会が開かれていますが、業界としてどう向き合うべきでしょうか。

私も検討会に出席しましたが、美容医療に関する消費生活センターへの苦情件数の多さから、厚生労働省も危機感を持っているようです。とはいえ、安易に国による規制に頼ることには慎重であるべきだと思っています。

本来は、業界が自ら課題に向き合い、専門家集団として自浄作用を持つべきではないでしょうか。そのためには厚生労働省と連携しながらも、プロフェッショナル・オートノミー*を確立していく必要があります。

*プロフェッショナル・オートノミー…専門職としての自律性。政府や行政などによる規制を受けない代わりに、医療人が自律的なシステムを構築・行動していくこと。

―――美容医療業界のプロフェッショナル・オートノミーの一例として、大慈弥 裕之先生らがまとめた美容医療診療指針*がありますが、どう評価されていますか。

非常に画期的だったと思います。日本皮膚科学会や日本形成外科学会といった5つの団体が垣根を超え、自由診療を担う美容外科医まで含めて一つの基準を示した意義は非常に大きいといえるでしょう。

こうした指針があれば、“ここまでは安全、ここからは危険”といった明確な基準が共有されやすくなり、安全性の確保につながります。今後も、学会としてこのような枠組みづくりをリードしていくことが求められていると感じています。

*美容医療診療指針…日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本美容外科学会(JSAPS)、日本形成外科学会、日本美容外科学会(JSAS)の5学会共同で作成された指針。美容医療における合併症実態調査と診療指針の作成、医療安全の確保に向けたシステム構築への課題探索研究などについての方針が打ち出されている。北里大学医学部形成外科・美容外科学の大慈弥 裕之医師が研究代表者を務めた。

―――近年、美容医療業界でも話題の直美(ちょくび)*について、小室先生はどうお考えですか

直美になるいくつかの要因の1つに研修制度の問題があると思います。アメリカをはじめ諸外国では大学病院でも美容外科手術を取り扱うのが普通ですし、そこで研修もできます。

しかし日本では、美容外科の研修が受けられる大学病院がほとんどありません。本来なら形成外科の専門医*をとってから美容外科に進むのが筋だと思いますが、美容医療の経験を積もうとすると大手チェーンの美容クリニックで勤務するしかないという現実があります。

若い医師の考え方の変化も、直美が増える要因の1つです。大学病院は当直もあって給料もそこまで高くない。一方で、美容医療クリニックは当直もなく若手医師でもすぐに何千万円という報酬がもらえる可能性のある世界です。

コスパやタイパを重視する今の世代の若手医師にとっては、直美を選ぶ者がいるのも不思議ではないでしょう。この考えに至る背景には医療のシステム的な問題もあるので、一概に直美を選ぶ医師を非難するのはお門違いだと思います。

現在の日本の状況ではきちんとした美容医療の医師を育てるために、大学病院と健全な美容クリニックが連携を組むことも一つの手段だと思います。

*直美(ちょくび)…保険診療の経験なしに自由診療である美容医療に進む医師を指す言葉。「直接美容医療」の略称。

*専門医…標準的かつ適切な診断・治療を提供できる医師のこと。専門医になるには専門研修を受けたのち認定試験に合格する必要があり、原則として5年ごとの更新がある。

日本の美容医療業界の国際的役割 ~日本らしさを武器にさらなる発展を~

―――小室先生は、アジア鼻形成学会2025(RSA2025)の会長も務められています。学会の趣旨や東京で開催される経緯を教えてください。

前述のとおり、西洋から入ってきた美容技術はそのままアジア人に応用できないものも多く、顕著なのが鼻です。欧米では鼻を小さくしたい方が多いのに対し、アジアでは鼻を高くしたい方が多い。

アジア人の解剖学的構造に合わせて技術を改良するためのディスカッションの場が必要であるということで発足したのが、Rhinoplasty Society of Asia(アジア鼻形成学会)です。

アジア鼻形成学会を立ち上げたのは韓国の医師が中心で、第1回会合はマレーシア、第2回会合は中国で開催され、今回の第3回会合が第48回日本美容外科学会(JSAPS)総会に合わせ東京で開かれることになりました。

―――日本の美容医療が国際的な競争力を強化するには、どのような施策が必要だとお考えですか?

日本は人口が減ったとはいえ、まだ国内の患者さんのみでも美容医療が成り立っています。しかし今後のことを考えると、美容医療の分野でも国際化を進めないと手遅れになってしまうのではないかと危惧しています。

日本の美容医療は一大産業となりましたが、使っている機器や薬剤はほとんどが海外製です。しかし日本が持っている高い技術力があれば、日本企業が作れたでしょう。

実際、海外製の機器に使われている部品は、日本製のものが使われていることも少なくありません。ではなぜ日本企業が参入できなかったかというと、薬機法をクリアするために治験が必要になり、参入のハードルが高いからです。

例えば美容大国として認知されている韓国では、インバウンド需要を取り込める産業として国を挙げて美容医療を推しています。日本でもそういった視点を持って、現状の規制を再考してみてはどうかというのが私の考えです。

現状、美容医療の患者さまはアジア各国から韓国に集まっています。しかし、日本人ならではの細やかな手技は国際的にも評価されていて、日本に足を運ぶ人もいます。日本らしさをもっとアピールできれば、日本の美容医療は今後さらなる発展が期待できるでしょう。

若手医師へのメッセージ ~視野を広く持ち、医療の本質を忘れずに歩んでほしい~

帝京大学医学部 形成・口腔顎顔面外科学講座主任教授 小室 裕造先生へインタビュー!高い倫理観のある美容医療実現に向けて

―――最後に、美容医療を志す若手医師へのメッセージをお願いいたします。

私が大学病院の医師であるからこそ感じることですが、専門医は取って欲しいと思っています。美容医療の中でも手術系に行きたい人なら形成外科、非手術系にいきたい人なら皮膚科の専門医を取ると良いでしょう。

専門医を取ると、その後美容医療の道に進んだときの伸びしろが格段に違うと感じています。形成外科でいろんな手術を経験していると、美容の世界でも応用できることがたくさんあります。

回り道だと思われるかもしれませんが、人生の中で4年という期間はわずかなものなので、最低でも専門医を取り、できれば形成外科の診療に10年間程度携わったのちに本格的に美容外科の道に進んで欲しいですね。

美容の領域に多くのクリニックが参入し、またそこに従事する医師も増えています。今後は厳しい競争が予想されますので、基本的な知識や外科技術を身につけておかないと大変な時代になると思います。

それから、古くさいと思われてもやはり医局には所属しておいた方が良いと思います。医局は人脈を拡げるという意味で、非常に大きな意味を持つ場所です。

先輩・後輩として関わった人たちがその後もサポートしてくれることはよくありますし、トラブル発生時にも助け合えます。いつの時代も、人脈というものはバカにできないものです。

美容医療は、素晴らしい医療です。“患者さんが自分の家族だったらどうするか?”という視点を常に持って、患者さんに接してください。

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